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原爆の日に思い出す、アニメ番組『タイガーマスク』と原爆ドーム [懐かし映画・ドラマ]

原爆の日に思い出す、アニメ番組『タイガーマスク』と原爆ドーム

今日は広島に原爆が投下された日です。それぞれ振り返るブログ記事やツイートなどが更新されていますが、私は原爆の日というと、アニメ番組『タイガーマスク』が、原作にない原爆ドームをキーワードにした話を思い出します。当時のアニメ番組には深いメッセージ性がありました。(上の画像は下のOGPより)



タイガーマスク



『タイガーマスク』は、梶原一騎原作、辻なおき作画による虚実ないまぜのプロレス漫画です。

虚実ないまぜというのは、オンタイムの日本プロレスの興行を描き、実在のレスラーも登場させながら、その中にタイガーマスクという架空のレスラーも参加していることです。

講談社の、ぼくら⇒週刊ぼくらマガジン⇒週刊少年マガジンと3誌で連載されました。

1969年にアニメ化もされています。

簡単にストーリーを振り返ると、孤児施設『ちびっこハウス』の伊達直人は、動物園に遠足に行った時、トラのように強くなりたいと言って一人で集団を離れてしまいますが、そのときに居場所のない子ををさらってプロレスラーを育成する虎の穴に誘拐されます。

虎の穴は、一流悪役レスラーを育成する機関で、修了者は覆面をかぶって悪の限りを尽くして相手を叩きのめす。そして、報酬の一定割合を虎の穴に支払うという掟でした。

伊達直人は優秀な成績で修了したので、虎のマスクを与えられましたが、出身の『ちびっこハウス』の経営が苦しかったために、持っているお金をみんな払ってしまい、虎の穴にお金を払えなくなります。

そのために、虎の穴からは「裏切り者」扱いされ、次々刺客が差し向けられますが、タイガーマスクはその都度、反則には反則で対抗したり、フェアな試合運びを貫いたりして戦うという話です。

原作では、梶原一騎ワールドらしい荒唐無稽なトレーニングが描かれましたが、実在のジャイアント馬場やアントニオ猪木が、これまだ実在するボボ・ブラジルフレッド・ブラッシーらと対戦しているので、子供時代の私は、虚実の取り合わせに戸惑いながらも、当時テレビの人気コンテンツだったプロレスを扱った漫画として、毎回楽しく読んでいました。

さて、原作は当初月刊誌で50ページでしたので、ひと月に4~5回放送するアニメ番組は、すぐに追いついてしまいます。

そこで、原作にはないテレビだけのオリジナルな話が時々入るのですが、そのひとつが、第50話『此の子等へも愛を』という広島を舞台にした話です。

あらすじ



巡業で広島を訪れた伊達直人は、原爆ドームを見て、原爆の傷跡に深い感慨を抱きました。

アントニオ猪木が買ってきた、原爆ドームの模型に魅せられた伊達直人は、ちびっ子ハウスにも同じものを贈ろうと、製造元の職人夫妻に、デパートで売られている値段以上で引き取りたいと申し出ますが、職人夫妻は断ります。

手仕事なので量産できず、ここで売ってしまったら問屋に卸せず、以後の取引を断られてしまうからです。

夫妻の子供は小さいのに、内職に励む両親の邪魔をしないように、外で遊んでいました。

お金でなんとかしようと思ったことを恥じ、そして職人夫妻の事情に納得した伊達直人は、翌日デパートで商品の予約をして広島を発ちました。

アントニオ猪木が譲ってくれれば無問題だったのに……。

それはともかくとして、この話は、ツイッターでもしばしば話題になります。

私はプロレスファンの一人として、この話にふたつ伏線を付け足しておきます。

背景にドリーの来日


おそらく「原爆ドーム」を題材にしたかったのは、放送前年の暮れに、日本プロレスに、当時世界最高峰とされたNWA世界ヘビー級選手権者のドリー・ファンク・ジュニアが来日して、はじめて世界選手権が行われたのですが、そのドリーが原爆ドームに来ていたことがあると思います。

外国人レスラーが、広島の巡業に来て原爆ドームを見学するのははじめてではありませんが、ドリー・ファンク・ジュニアの場合は、現役世界チャンピオンの来日であり、かつ、妻、父のドリー・ファンク・シニア、弟のテリー・ファンクらと一緒に来ていたので、当時のプロレス雑誌が、グラビアページを使って取り上げていたのです。



大門大吾の役割



しかも、この回の伏線ストーリーとして、広島市で少年時代を過ごした(つまり被爆者か)大門大吾という、原作にはない虎の穴出身の日本人レスラーを設定しています。

タイガーマスクがインドのアジアリーグに参加した際、自らも日雇いの建築労働者で苦労していた大門大吾が、「日本は平和になったが、世界ではまだまだ苦しんでる子供たちがいる」と警告して、栄養失調でお腹だけポコンと出ている物乞いのインドの子どもたちを見た伊達直人を得心させます。

製作者の「広島」(つまり反戦)に対する思いとともに、帝国主義(植民地支配)と人民への収奪や格差を結びつける、かなり深いメッセージを解すことができます。

放送された日本テレビは、正力松太郎が開局者。

日本人に政治的なことを考えさせないために、娯楽へ誘う目的で開局させたことや、自身がCIAのスパイであることなどが、こんにち公然となっています。

その日本テレビで、木曜日の19時から放送していた30分の子供向けアニメ番組ですら、こんなに深いメッセージが放送されていたのが1970年代前半のテレビ界でした。

それだけ、当時は自由な時代だったのかもしれません。

さて、今日の75回目の原爆の日のテレビ放送、印象に残るものはありましたか。




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コメント 10

ナベちはる

年を経るにつれて「遠く」なっていくもの、アニメやドラマといった形を含めて風化・消滅しないように伝えていかないといけないですね。
by ナベちはる (2020-08-07 00:38) 

萌田かずきち

大好きなタイガーマスクネタありがとうございます。
主に再放送で観ましたが、大門大吾とのタッグが
特に好きでした。
今でも1番好きな男性声優は、富山敬さんです!
あんなカッコイイ声出せる声優さん、他にいませんね(*´ω`*)。
by 萌田かずきち (2020-08-07 02:37) 

風太郎

初代タイガーマスクが養護施設の運動会で来てくださったことがあり、
マスクを被ったまま綱引きをしました。子供たちは大喜び!
マスクを外した顔は若々しくて2枚目だったのを思い出します。
by 風太郎 (2020-08-07 05:52) 

pn

猪木、模型が相当気に入ってたんだなぁ(笑)
by pn (2020-08-07 06:15) 

taku1_lily

結局
ちびっ子ハウスの子供たちは伊達直人イコールタイガーマスクってことを知らぬまま終わったんでしたっけ?
by taku1_lily (2020-08-07 06:29) 

Rinko

当時は何の気なしに見ていたアニメですが、深いですねー。
75年目の原爆記念日のニュース番組で、15年前に撮られた原爆を作ったアメリカ人科学者と広島の被爆者二名の対談の様子が取り上げられていました。科学者の頑なな態度に怒りを通り越して残念さしかありませんでした。戦争ってエゴのぶつかり合いのような気がしてなりません。
by Rinko (2020-08-07 08:47) 

やおかずみ

面白そうな内容ですね。機会があれば見てみたいです。
by やおかずみ (2020-08-07 10:59) 

十円木馬

『タイガーマスク』はTVでよく見ていたつもりでしたが、
この原爆ドームの話は知りませんでした。原爆ドームは数えきれない程訪れましたが、負の遺産として深く心に刻まれます。原爆に関して一番記憶に残っている漫画は『はだしのゲン』ですね。
by 十円木馬 (2020-08-07 15:52) 

ヨッシーパパ

原爆ドームには、日中はもちろんのこと、暗くなってからも見学したことがあります。
暗くなってからも通りがかりの人が居るので、そこまでではありませんが、もしいなかっら、一人で歩くのが少し怖い気がします。
by ヨッシーパパ (2020-08-07 17:27) 

そらへい

タイガーマスク、弟の後ろから時々見ていましたが
そんな深い回があったとは知りませんでした。
by そらへい (2020-08-07 21:26) 

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