『2時間ドラマ40年の軌跡』(大野茂著、東京ニュース通信社)を読みました。土曜ワイド劇場、木曜ゴールデンドラマ、火曜サスペンス劇場など、1980年代に始まった通称「テレビ映画」の2時間ドラマは、多いときは週8本作られました。本書ではその軌跡を追っています。
2時間ドラマとは何だ
それまでは、ドラマと言えばレギュラーの連続ものでしたが、1980年頃から、2時間の枠を作って一話完結の長編ドラマを作るようになりました。
2時間ドラマ。いわゆる「テレビ映画」ともいわれています。
もちろん、映画本編とは作り方が少し違い、独自の工夫もあります。
たとえば、裏番組がスタートする時報をまたぐ頃のシーンには、他局に移られないようにお色気シーンを入れるとか、CMを入れる前は謎を残すとか、映画館と違い「ながら」で視聴するテレビの特性に合わせて、セリフは説明を多めにするとか……。
そんな2時間ドラマも、なんだかんだで40年続きました。
家政婦、湯けむり、トラベルミステリー、美女、明智小五郎…etc。
シリーズ化されたものもいろいろありました。
本書は、「2時間ドラマは、B級娯楽である」として、かつてのヒット作品や制作の苦労などを振り返っています。
人気シリーズもたくさん振り返っていますが、今回はほんのちょっとだけ振り返ります。
土曜ワイド劇場
2時間ドラマのパイオニアは、テレビ朝日が土曜21時から放送していた、土曜ワイド劇場です。
放送が始まった頃は、まだ週休2日ではなく、サラリーマンにとっては唯一休日前のくつろげるひとときで、謎解きサスペンス、お色気、ホラーなどを中心に構成されました。
戦後最大の誘拐 吉展ちゃん事件
後にたくさんの人気シリーズが放送されましたが、番組を軌道に載せた最大の功労者は、このドラマです。
事件後16年で、加害者・被害者の関係者の多くが存命であるにもかかわらず、犯行現場をロケ地に選ぶほどの「再現ドラマ」に徹したそうです。
泉谷しげるも、さすがに「アンタには人の心がないのか」と恩地日出夫監督に食って掛かったところ、逆に「じゃあ、アンタにはあるのか」と返され、引き下がったそうです。
ものづくりというのは、厳しいのです。
西村京太郎トラベルミステリー
『西村京太郎トラベルミステリー』は、三橋達也⇒高橋英樹、愛川欽也⇒高田純次と役者を交代して続いている人気シリーズです。
江戸川乱歩の美女シリーズ(全33作)
『江戸川乱歩の美女シリーズ』は、天知茂→北大路欣也→西郷輝彦と役者が交代して17年間放送されましたが、やはり天知茂の当たり役でしょうか。
謎解きだけでなく、お色気シーンも売り物でした。
家政婦は見た!(全26作)
『
家政婦は見た!』は、市原悦子の代表作と言ってもいい人気シリーズです。
刑事でも弁護士でもないので、事件は解決しません。
ただ、職権乱用で覗いてかき回すだけ。
そもそも、事件ですらない、その家庭での秘密の話がほとんどです。
家政婦や家政婦協会からのクレームがはいったため、作品を明るく描き、必ず最後に市原悦子も痛い目にあってバランスをとるストーリーにして人気シリーズになりました。
その他
『牟田刑事官事件ファイル』(小林桂樹、全33作)、『タクシードライバーの推理日誌』(渡瀬恒彦、全39作)、『車椅子の弁護士・水島威』(宇津井健、全10作)、『混浴露天風呂連続殺人』(古谷一行、木の実ナナ、全26作)なども有名です。
火曜サスペンス
日本テレビ系では、最初は読売テレビ制作の『木曜ゴールデンドラマ』が始まりました。
そして、3番目に登場したのが、日本テレビの『火曜サスペンス劇場』。いわゆる『火サス』です。
こちらも、土曜ワイド劇場のようなミステリー&サスペンスの路線でしたが、謎解きよりも、事件の背景にある人間模様に力点を描いた構成になりました。
オープニングは、木森敏之の曲によるダイジェスト、そしてエンディングは岩崎宏美の『聖母たちのララバイ』などを毎回流して、ひとつひとつの話は一話完結でも、それらを束ねて一つの番組であるという統一感をもたせました。
監察医・室生亜季子(全37本)
シリーズ最多作品となった人気作品は『監察医・室生亜季子』。
浜木綿子演じる監察医による緻密な物証の積み重ねや、左とん平演じる警部との掛け合いが高い人気作品となりました。
しかし、長く仕事をしている割には、決して2人が結ばれるシーンはありませんでした。
女検事・霞夕子(新も入れて全35本)
『女検事・霞夕子』は桃井かおり、『新・女検事 霞夕子』は鷲尾いさ子、床嶋佳子が演じました。
タイトル通り検事の話ですが、途中で「新」にかわっているので、本数ほどのインパクトはなかったような気がします。
小京都ミステリー(全30本)
『小京都ミステリー』は、ルポライターの片平なぎさが、事件に遭遇する話です。
大映テレビらしく、ツッコミどころがある設定です。
その他
『京都・女性記者シリーズ』(坂口良子、若村麻由美、全15本)、『刑事・鬼貫八郎』(大地康雄、全18作)、『警部補 佃次郎』(西郷輝彦、全21作)、『地方記者・立花陽介』(水谷豊、全20作)、『取調室』(いかりや長介、全19作)、『弁護士・朝日岳之助』(小林桂樹、全23作)、『弁護士・高林鮎子』 (眞野あずさ、全34作)などが人気シリーズとして知られています。
木曜ゴールデンドラマ
2番目に登場した『木曜ゴールデンドラマ』は、愛と感動路線。
私は、このオープニングの音楽がロマンチックで好きでした。
本編以外に、映画番組のように近藤三津枝の解説が入りました。
タレントとしての出演なので敬称略としましたが、のちの衆議院議員です。
Wikiによると、1985年1月17日放送の芦屋雁之助主演『娘よ!! 父ちゃんはお前の花嫁姿が見たかったんや』では視聴率26.5%を記録したといいます。
ということで、ご覧になったドラマはありますか。
2時間ドラマ 40年の軌跡 (TOKYO NEWS BOOKS) - 茂, 大野
色々なドラマがありましたね。懐かしいです。
この中では、「女検事・霞夕子」が面白かったです。桃井かおりのファンで、面白くてよくみていました。鷲尾いさ子になってからもみていましたが、桃井かおりとは演技力が違うので、みるのを止めてしまったのかな。あまり覚えていません。
by coco030705 (2020-07-30 21:21)
明智小五郎は天知茂しか知らない(^_^;)
あれか?ひょうきん族見てそのままフジ見るようになったのか?
by pn (2020-07-30 21:24)
>たとえば、裏番組がスタートする時報をまたぐ頃のシーン には、他局に移られないようにお色気シーンを入れるとか
なるほど〜
そういう 策略があったのですね
私 まんまとはめられていました(笑)
やはり 私が一番印象深いのは
『江戸川乱歩の美女シリーズ』
天知茂の明智小五郎です
当時は ストーリーは
どうでも良くて
お色気シーンばかり
期待しておりました('-'*)
by pigumon (2020-07-30 22:01)
土曜ワイドと火曜サスペンスは時折見てましたね。
パターン化しやすいですが、
中に秀作もあった気がします。
by そらへい (2020-07-30 22:16)
母とぼんやり見ていて、お色気シーンがあると気まずくなって、逆にチャンネルを変えていた記憶が...
by かずおみくん (2020-07-30 23:14)
2時間ドラマ、並べてみるといろいろとシリーズがありますね。
by ナベちはる (2020-07-31 01:32)
2時間ドラマ結構沢山ありましたね。
見てはいなかったのですが家政婦は見たシリーズも
長い時間のドラマだったのですね。
by ヤマカゼ (2020-07-31 06:39)
2時間ドラマは再放送されているので結構録画してしてますが、とにかく走る場面が多いドラマがあります。
急ぐならタクシー使えばいいのに・・・っていつも思いながら観てます。
by kou (2020-07-31 07:07)
懐かしいです。
週に8本の時代もあったんですね~。
サスペンス物が好きでした^m^
by Rinko (2020-07-31 07:43)
今でもBSやCSで再放送してますよね?CSでウッカリ見ちゃうとCMが無いからトイレに行くタイミングが無くて困るパターンに…。あと"お色気の"レベルが低い!
by さすらいの話師 (2020-07-31 08:44)
コメントありがとうございました。2時間ドラマはよく見ます。読んでみたいですね。
by やおかずみ (2020-07-31 10:09)
岩崎宏美さんの『聖母たちのララバイ』が印象に残っていることを考えると『火曜サスペンス劇場』はたまに見ていたのでしょうが、内容自体は浅く薄い感じです。社会人になると仕事が忙しすぎて、ドラマはほとんど見る余裕がなかったです。以前木の実ナナさんを題材にされましたが、『混浴露天風呂連続殺人』は、何度か見た記憶があります。
by 十円木馬 (2020-07-31 14:12)
「家政婦は見た」はパロディシリーズを二つも作りましたね。
by ヨッシーパパ (2020-07-31 17:24)
火曜サスペンスよく見ていましたが、どんな内容かと言われると全く覚えていません(汗)「家政婦は見た」はかなり好きな番組でした。市原悦子さんははまり役でしたね!!
by エンジェル (2020-07-31 22:59)
児童に暴力を振るわれたり、親からは詰問を受けたりして、鏡を見て、若いのにかなりやつれている自分に気づくくだりもあります。
の一文にはドキッとしますね。
たとえは違いますが、今のコロナ医療従事者の皆さんにも同じことが言えるような気がします。
頭が下がる思いです。
by ヤマカゼ (2020-08-01 17:36)