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森崎東監督、ナンセンスも交えた喜劇を超えた怒劇を描く [懐かし映画・ドラマ]

森崎東監督、ナンセンスも交えた喜劇を超えた怒劇を描く

森崎東監督(1927年11月19日~2020年7月16日)の訃報が飛び込んできました。「『喜劇ではなく怒劇』と自ら称するように、社会から虐げられている庶民の怒りを代弁する作品を生涯撮り続けた」(朝日新聞デジタル)森崎東監督作品は、このブログでも何度かご紹介したことがあります。



森崎東とは誰だ


森崎東監督は、京都大学法学部卒業後、松竹に入社。

野村芳太郎監督や山田洋次監督の助監督、脚本を手がけ、1969年、『喜劇 女は度胸』で監督デビューしました。

野村芳太郎監督はブラックユーモアの世界で、山田洋次監督は叙情的な描き方に力点をおいています。

そして、森崎東監督はそうした手法に加え、より大衆的で、ナンセンスも交えて登場人物がみんなで賑やかに盛り上げている群集劇的な描き方です。

喜劇女は度胸



喜劇女は度胸』(1960年、松竹)は、東京大田区の工場地帯である羽田を舞台に、その住民と労働者の生活を描いています。

倍賞美津子主演第一作目。原案は山田洋次、脚本は大西信行と森崎東、監督は森崎東です。

ビッグバードに移る前の、旧羽田空港を海老取川で隔てた川沿いのあばら屋が舞台です。

海老取川
『喜劇 女は度胸』より

親父が花沢徳衛、母親が清川虹子、子どもたちが渥美清、河原崎建三。

近くの工場で働いている倍賞美津子が河原崎建三と、沖山秀子が渥美清とカップルです。

工場は、今はなき音響・映像機器メーカーの赤井電機です。

沖山秀子がアルバイトで売春しているとか、渥美清は清川虹子がこっそり他の男と関係して作ったとか、喜劇にしてはかなり際どい設定で、そのぶつかり合いも激しい。

倍賞美津子は、労働者のうたごえサークルで、「くそったれ」とか「しんじまえ」などと歌っています。

まさに、喜劇ではなく庶民の怒劇です。

喜劇男は愛嬌



喜劇男は愛嬌』では、少年院を出所した倍賞美津子が、実家の川崎市川崎区に戻り、渥美清ら地域の人々との暮らしを描いています。

映画が始まると、いきなり倍賞美津子が着替えはじめて下着姿になったり、倍賞美津子の実家にトラックが突っ込んでもそのままで生活し続けたりなど、度肝を抜く展開です。

その他、『喜劇 女生きてます』(1971年)『喜劇 女は男のふるさとヨ』(1971年)『喜劇 女売り出します』(1972年)など、『男はつらいよ』とは一味違う「怒劇」の監督・脚本をつとめています。

男はつらいよ フーテンの寅



森崎東監督は、男はつらいよシリーズ第4作の『男はつらいよ フーテンの寅』で監督もつとめていますが、「過激な描写が寅さんの雰囲気に合わないとして、シリーズからはずされる」(https://www.asahi.com/articles/ASN7K3RWMN7KUCLV001.html)そうです。

新珠三千代がマドンナの第3作目ですね。

塀の中の懲りない面々



『塀の中の懲りない面々』(1987年、松竹)は、鈴木則文脚本、森崎東監督ですから、それだけで面白そうな気がしてきます。

鈴木則文は東映で『トラック野郎』を撮った人です。

ですから出演者も、東映でお馴染みの俳優が出演しています。

原作は安部譲二。

自らの獄中体験を小説にしたものです。

安部直也(安部譲二の本名)役は藤竜也。

前科15犯のニセ医者が植木等、タレントkのパトロンと言われた大物役が花沢徳衛、新左翼闘士で超法規的措置により脱獄するのが柳葉敏郎、オカマを装い実は獄中ではご禁制の針をどこからかで入手していた油断ならない受刑者にストロング金剛(ストロング小林)。

その他、川谷拓三、なべおさみ、糸井重里、ケーシー高峰、森山潤久、松沢英司、上杉祥三、浦田賢一、汐路章。

安部譲二自身も受刑者として出演しています。

看守が山城新伍、江夏豊、江戸家猫八。

ヒロインが小柳ルミ子。

直也が更生するきっかけになった母親が丹阿弥谷津子。

これだけのメンバーを揃えて、面白くないわけがありません。

この映画は、当時映画館で見ました。

実録といえば実録かもしれませんが、面白困った人たちの面白困った日常を描いています。

森崎東監督にピッタリのストーリーです。



時代屋の女房



このブログではご紹介したことありませんが、村松友視原作(直木賞受賞作)の『時代屋の女房』(1983年、松竹)も、森崎東監督作品として有名です。

銀色の日傘をさした謎の美女(夏目雅子)が、骨董品店「時代屋」にふらりとやってきます。

彼女に一目惚れした店主(渡瀬恒彦)はさっそく同棲生活を始めますが、なぜか彼女は家出癖がありました。

それにしても、渡瀬恒彦、夏目雅子、大坂志郎、沖田浩之、朝丘雪路、藤木悠……主要な出演者が、みんな鬼籍に入っていることに気づき、なんか悲しくなってしまいました。

その他、『釣りバカ日誌スペシャル』(1994年)『美味しんぼ』(1996年)『ニワトリはハダシだ』(2004年)『ペコロスの母に会いに行く』(2013年)、テレビでは、私が最高と思っている時代劇『長崎犯科帳』(1975年)でもメガホンを撮っています。

森崎東監督作品、ご覧になりましたか。

森崎東監督の生前のご遺徳、お偲び申し上げます。




あの頃映画 「喜劇 女は度胸」 [DVD] - 倍賞美津子, 河原崎建三, 沖山秀子, 渥美清, 森崎東
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あの頃映画 「喜劇  男は愛嬌」 [DVD] - 渥美清, 倍賞美津子, 寺尾聰, 財津一郎, 宍戸錠, 森崎東
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時代屋の女房 - 渡瀬恒彦, 夏目雅子, 沖田浩之, 中山貴美子, 平田満, 藤田弓子, 藤木悠, 大坂志郎, 朝丘雪路, 津川雅彦, 森崎東, 荒井晴彦, 長尾啓司
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男はつらいよ・フーテンの寅 [DVD] - 渥美清, 倍賞千恵子, 前田吟, 森川信, 三﨑千恵子, 森崎東
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masakazoo

時代屋の女房の時代屋は、大井町の交差点に昔実在しておりました。某あの周辺の看護婦さんとお鍋パーティーのときに、その話をしたら、そういえば何かあるねという感じでした。どんな場所でも、見る人の感性で、違うものに見えるのですよね。昔の映画とかドラマ私も好きです。
by masakazoo (2020-07-19 00:38) 

ナベちはる

『釣りバカ日誌』に『美味しんぼ』は知っているので、知らず知らずのうちに見たかもしれません。
by ナベちはる (2020-07-19 01:08) 

pn

寅さんって全部山田監督じゃないんだ。見て無いから内容読んだけど確かに話しの流れがキツイと言えばキツイね(^_^;)
by pn (2020-07-19 09:21) 

kou

『美味しんぼ』もそうでしたか。いろんなジャンルを手がけているんですね。才能豊かな方だったんですね。
by kou (2020-07-19 18:26) 

ヨッシーパパ

監督の名前は、なかなか知らないことが多いです。
by ヨッシーパパ (2020-07-19 18:32) 

skeptics

みんな楽しそうな作品ですね。
考えさせられます。
by skeptics (2020-07-19 22:17) 

そらへい

森崎東監督が「男はつらいよ」を撮っているとは知りませんでした。
「時代屋の女房」も良かったです。これも監督が森崎東監督とは知りませんでしたね。
by そらへい (2020-07-20 21:09) 

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