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障害者、障がい者、障碍者……そろそろ使い方の結論を出そう [障害者]

障害者、障がい者、障碍者……そろそろ使い方の結論を出そう

「しょうがいしゃ」を文字で表現する時、「障害者」なのか、「障がい者」なのか、「障碍者」なのか、迷うことはありませんか。一部には、ハンディキャッパーなんてカタカナで表現する人もいます。乙武洋匡さんの動画などを参考に改めて考えてみます。(上の画像は以下のOGPから)



「障害者」か「障がい者」か


以前、先天性右前腕欠損症のパラリンピック水泳・一ノ瀬レイ選手が、テレビ番組で「障害の文字をひらがなにするのが嫌い」と発言して、多くの人が共感したことをご紹介しました。


障害の『害』が、ひらがななのが嫌い。 害やからよくないやろ、でひらがなにする。 私からしたら腕がないのが障害なんじゃなくて、それを持って生きていく社会が害。 私からしたら障害は本人じゃなく社会やから、ひらがなに直して勝手に消さんといてほしい。
これで、ネット民の一部は一ノ瀬レイさんに快哉を叫びました。

しかし、「しょうがいしゃ」のすべてが、一ノ瀬レイ選手に賛成しているかというと、必ずしもそうではありません。

だからこそ、「障がい者」という表記が使われている現実があるわけです。

では、いったい、どう表現するのが正解なの?

「五体不満足」の乙武洋匡さんが、ご自身のYoutubeチャンネル『乙武洋匡の情熱教室』で、この問題に言及された動画を配信しています。

結論を先に書きますと、乙武洋匡さんはいずれにしても本質的な問題ではないとしています。

そして、「個人モデル」と「社会モデル」という言葉を使い、「社会モデル」(メディアなど公的な使用)は信念に基づいた表記を用い、「個人モデル」(個々のやりとり)では、相手の事情や文脈によってケース・バイ・ケースで使い分ける、と述べています。

すでに乙武洋匡さんのブログで書かれていることですが、改めて動画でまとめられているので、要旨をご紹介します。

信念と事情で判断する



10年ぐらい前から、一部の障害当事者や支援団体が、「害」の字は社会の害になっている印象を抱かせるので使うべきではない、というクレームの声を上げたので、ひらがなになっていった。

しかし、そんな事を言うのだったら、障害の「障」という字だって差し障るという意味があるので、となると「しょうがいしゃ」とすべてひらかなければいけなくなり、そのうちハンディキャッパーとかチャレンジドなんて、横文字に逃げていくしかなくなってしまう。←※「ひらく」とは「漢字で表記できるものをひらがなにする」という編集用語

障害当事者のうち、どれぐらいの人達がこの障害という漢字で書いた時の言葉を嫌がっているのかっていうのを調査したことがあるが、30.5%程度だった。

ところが逆に、ひらがなが嫌だという人は43.1%もいた。

自分が嫌なのは、メディアが、なんかうるさい人たちがいるから、ひらいとけば無難なんでしょってなってしまういうこと。

流されるんじゃなくて、しっかり信念を持って使い分けてほしい。

たとえば、千葉市長の熊谷俊人さんは、かなり以前から「私は障害と漢字で表記します」というポリシーを発表。

障害という言葉は、決して障害のある皆さんが社会にとっての害になっているということでもなく、社会に障害があってそれに直面している人たちという意味なんだと。

だから言葉を軟らかくして、なんとなく解決したように見せることには賛成ではなく、社会には障害が存在するんだ。だからそれをきちんとみんなで解消していかなければならないんだという気持ちを込めて、私はこれからも「障害」と漢字で表記しますといった話をしていて、大賛成である。←※NHKも同じ理由で「障害者」と表記しています。

一方、自分(乙武)のあるフォロワーからは、「障害」という漢字の表記にすごく悲しむ人を知ってるから私は使えませんというリプライを頂いたが、目の前の相手によって、使い方を分けることが正解だと思っている。

たとえば、「背が高い」は本来はどちらかといえば褒め言葉として使われる事が多く、少なくとも差別用語ではない。

しかし、小さい頃から背が高いことをからかわれ冷やかされてきた人に対しては、「いやあ、背が高いですね」とは普通は言わない。

その時の相手の事情と文脈によって使い分けているのは、障害のあるなしにかかわらず普段からやっていることだが、なぜか障害者に対しては一律漢字で書くのはやめましょうのような話になってしまう。

言葉の表面だけを取り替えても、障害者に対する世間の意識や、障害があることによる社会的に背負わされる不利益を取り除いていかない限り、いつまでもこの言葉狩りのイタチごっこが続いていくだけである。

という内容です。



で、どうしますか?


今回、「障害者 障がい者」という複合キーワードでツイートを検索したところ、たくさん出てきたのですが、目を通してみると、『「障害者」か「障がい者」かどちらを使うか』という私が期待した内容ではなく、一般的な障碍者についてのツイートでした。

どういうことかというと、ツイートする時、どちらにすべきか書き方に迷ってしまい、結局どちらの顔も立てて、「障害者」と「障がい者」の両方の表記を140字の中に等しく詰め込んでいるのです。

ツイートする人に、そういう気を使わせるのって、どうなの、と私は思いました。

そういうことをやらせていると、世間は「障碍者」というキーワードでものを語ることをしたがらなくなってしまいます。

といいつつ、私もひところは、記事内容ではなく表記の問題で揉めるのはくだらないと思ったので、面倒を避けるために両方の表記を使っていたことがありました。

しかし、それは場当たり的なやり方で何となくすっきりしないと思っていたところ、宝塚市が自治体として公式に「障碍者」で統一するということを知りました。

そこで私は、他の自治体も宝塚市に続くだろうと思い、「発達障害」「身体障害者」のように言葉として出来上がっているものはそのまま「障害」、それ以外は、双方の意見があることを鑑み「障碍」と書くことにしました。

しかし、あれから1年以上たちますが、他の自治体がどこも宝塚市に続いてこないので、ちょっと判断を早まったかもしれません(汗)

ただ、少なくとも「障がい者」と、ひらがなを使って「無難」に問題回避することはやめて、自治体が採用したという根拠があるものを主体的に選択したのはよかったのではないかと思います。

今回の乙武洋匡さんの動画は、結論もさることながら、当事者としてひらがなやカタカナを「逃げる」と表現したことが、率直で得心しました。

まあどの表記にするかは、「信念」に基づいたもので、相手への配慮があればよいと思います。




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コメント 16

ナベちはる

>ひらがなが嫌だという人は43.1%
漢字で書いたときよりも嫌いな割合が多いですね。
どの表記を使うかというのを意識していない証拠かもしれませんね。
by ナベちはる (2020-07-15 01:17) 

なかちゃん

なるほど・・・と思いました。
ボクもしばらくひらがなを使っていた時期があったのですが、やはり『害』というとイメージが良くない程度の意見を聞いての判断だったと思います。
間違ってたつもりはなかったけれど、安易だったんですね(^^;


by なかちゃん (2020-07-15 06:07) 

ヤマカゼ

障害があることはやはり本人にとっても大変なんだと改めて感じます。一言の名前の付け方がこんなにも重くあるとは思ってもいませんでした。
その人の身になって考えるとは難しいですね。
by ヤマカゼ (2020-07-15 06:12) 

pn

どちらかと言うと障害者を社会の障害って思ってる人こそ障害なんじゃないのかなと思うけどそれはまた別の話か。
正直言って漢字書けないので俺が書くとしょうがい者(者は書ける笑)となりますが、これまた関係無い話で(^_^;)

by pn (2020-07-15 06:27) 

Rinko

いつもどちらを使ったらいいのか正直迷っていました。
「本質的な問題ではない」と乙武さんのおっしゃっている通り、どんな思いを持って・どの場面で使っていくかが大切ですね。
by Rinko (2020-07-15 08:01) 

扶侶夢

一時期 “反差別人権保護団体”で働いていた事がありました。そこでリアルな差別状況とか反差別運動とかを見て来て、矛盾と欺瞞に大変悩んだ事があります。

>言葉を軟らかくして、なんとなく解決したように見せることには賛成ではなく、社会には障害が存在するんだ
この部分が大変重要だと思いますね。言葉だけを変えて何だか解決した様な気分になる。一種の免罪符にしている人々は多いです。
私も子供の表記を「子ども」としていた事があって、今もその癖が時々出ますが、意識して「子供」と表記しようと心掛ける様になりました。人権団体に所属しているとそんな事にも気を使わなければならなくなるんですよ(苦笑)
by 扶侶夢 (2020-07-15 10:24) 

十円木馬

乙武さんの「どう表記されようが一緒、自分は障害の漢字に違和感は覚えない。正直生活の障害だからな!」
色々な経験を踏んでいきついた思いだと推察します。
作家の原田マハさんの作品に『さいはての彼女』という小説があります。ハーレーダビッドソンに乗る聴力を持たない少女が登場しますが、その逞しく前向きに生きる姿の前では、文字の表現など小さなことだと思うようになります。
by 十円木馬 (2020-07-15 14:38) 

skeptics

「害」に問題ありと、クレームを付けるのなら代替案をだすべきです。
考えさせられます。
by skeptics (2020-07-15 15:57) 

エンジェル

障碍者の「碍」は馴染みが無かったのですが、いっぷくさんのブログでこのような書き方をする事を知りました。それまではどんな表現をするかなど考えた事もありませんでした。
こちらのブログで色々と勉強させて頂いています。
by エンジェル (2020-07-15 16:41) 

そら

色々と考える事も多く、簡単に答えが出せる問題ではありませんが、今大学、心理や医学系では「障碍者」を使います。
自分の中でももう少し考えたいです。
問題提起をありがとうございます。
by そら (2020-07-15 17:31) 

旅爺さん

障害者とか障がい者などと呼び方が違う言い方があったのは知りませんでした。
by 旅爺さん (2020-07-15 18:11) 

ヨッシーパパ

10数年前に、ろうあ者などの呼び方が変わりましたが、どんどん改善されるのでしょうね。
by ヨッシーパパ (2020-07-15 18:53) 

gardenwalker

こんばんは
なかなか微妙な問題ですよね
昔、耳が聞こえないお客さんの対応で
その親からコテンパンにやり込められたトラウマがあります
何気ない対応が琴線に触れたみたいですが
いまだに何が悪かったのか分かりません
by gardenwalker (2020-07-15 20:40) 

mau

自死と自殺も似たような問題がありますね。難しい
by mau (2020-07-15 21:41) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございます。

「碍」という字は、「さしつかえる」という意味で、本来はこちらが使われていた。という意見は以前からあり、それもあって、私は「障碍」と書くようになりました。
by いっぷく (2020-07-16 04:57) 

ようこくん

私は、ひらがなや「碍」に変わったのを見たとき表現を変えただけで心の本質は変わっていない、逃げているだけじゃないかと思ったことがあります。
子供が大学生のとき「今は子供って漢字で書かないんだって。お供え物じゃないから」と言いました。
「一体何を言ってるのか」とポカンとなりました。
by ようこくん (2020-07-19 17:33) 

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