ボボ・ブラジル、力道山戦試合放棄とジャイアント馬場との握手 [スポーツ]
今日はボボ・ブラジルのリングネームで知られるヒューストン・ハリスさん(1924年7月10日~1998年1月20日)の生まれた日です。ミシガン州ベントンハーバー出身のアフリカ系アメリカ人で、黒人レスラー初の世界チャンピオン。日本にも15回来日しました。(画像はOGPより)
ボボ・ブラジルとは誰だ
ボボブラジルをもじってw
— いっちー (@consasake) July 8, 2020
イロイロあってw#まよレコ pic.twitter.com/uYlnTPwekg
ボボ・ブラジル、名前はプロレスファンでなくてもかなり知られているのではないでしょうか。
2メートル近い強靭な肉体と、上から叩き落とすような頭突きであるココバット、ジャンプして当てるアイアンヘッドバットなどで、トップレスラーになりました。
古今東西のプロレスラーで、誰が最強か、という議論が特に日本のファンは好きです。
私は、ボボ・ブラジルではないかと思います。
シュートマッチに強いといわれている一部のレスラーは、相手の耳をちぎるだの、尻の穴に指を入れるだのという、手段を選ばないやり方なら勝てると言ういかがわしい「強者」もいますが、リングで、殴る蹴る極めることだけで戦うなら、私はボボ・ブラジルだと思います。
もっとも、ボボ・ブラジルの真骨頂はたんにレスラーとして強いだけでなく、人格者としても最高であることではないかと思います。
相手レスラーに対して、試合ができなくなるような怪我はさせないとか、商品価値を守るといったプロとして大切なことを守ったからです。
いや、
— 脂 (@aburamashi) November 4, 2019
ほぼ豚汁(ぶたじる)じゃなくて
ボボ・ブラジル pic.twitter.com/mnnU8CODnH
昨今、黒人差別反対のデモや暴動が米国で起きていますが、ボボ・ブラジルの頃は、もっと露骨でひどい差別があったと思います。
人格に疑問符がつく「名レスラー」はたくさんいますが、誰もボボ・ブラジルのことは悪く言わないし、ボボ・ブラジルが良識あるふるまいで、かつレスラーとして実績も残したからこそ、黒人レスラーがアメリカマットではたらけるようになったとジャイアント馬場は自著で褒め称えています。
それを垣間見ることができる試合をご紹介します。
世界最強レスラーは日本のレスラーの商品価値を守った
日本のプロレス開祖、力道山戦
力道山vs.ボボ・ブラジル(JWA・1957年8月14日) https://t.co/fYb5OpuzWU @YouTubeさんから
— クンジャ (@doodle3451) April 22, 2020
ボボ・ブラジルが、1957年に初来日したときの試合です。
ボボ・ブラジルの、ブロンズ像のような体格が凄い。
頭突きによって、日本の英雄、力道山がいともかんたんに崩れていく姿がリアルです。
実力の違いはシロウトでもわかります。
力道山は額から出血……。
ところが、この瞬間、ボボ・ブラジルは、試合放棄をしてしまいます。
とても、力道山に恐れをなして戦意喪失、という展開ではないのに、どうして?
しばらくして呼び戻されたボボ・ブラジルですが、既にリングシューズは脱いでおり、「二本目」もほとんどファイトせずに再び試合放棄してしまいました。
力道山は、試合放棄に怒って2度とボボ・ブラジルを呼ばなかった、といわれますが、私は少し違う見解です。
力道山は、ボボ・ブラジルに自分が敵わないことがわかったから呼ばなかったのです。
ボボ・ブラジルは、このまま、日本プロレス界の英雄である力道山を倒してしまったら、日本のプロレス市場はスターを失い大変なことになる、という思いでリングを去ったのです。
力道山の商品価値を守ったのです。
大木金太郎との頭突き合戦
力道山の死後、ジャイアント馬場、アントニオ猪木、大木金太郎という“三羽烏”と呼ばれた弟子たちが活躍し、プロレスは第二期黄金時代を迎えました。
その中で、大木金太郎は頭突きを得意とし、ではボボ・ブラジルと、どちらが強いのだろう、という関心がファンに高まりました。
2人の直接対決となったタッグマッチ。
ボボ・ブラジルと大木金太郎の頭突き合戦は、最初こそ、どちらも「効いていない」という素振りで互角でしたが、徐々に大木金太郎の形勢が悪くなり、ボボ・ブラジルがジャンプして当てると、大木金太郎はガクンと膝をつきました。
さあ、本来なら、頭突き合戦に勝ったボボ・ブラジルが一気呵成に攻め込めるチャンスです。
ところが、それ以来ボボ・ブラジルは、大木金太郎に対する頭突き攻撃を一切やらず逃げ回りました。
そこだけ見ると、ボボ・ブラジルが大木金太郎の頭突きに恐れをなしたように見えます。
しかし、私は、これも対力道山戦と同じ理由で、大木金太郎の商品価値を守ったのだと思います。
業界的には「カタイ(下手という意味)」といわれている大木金太郎が、もしその頭突きの威力すらイメージを損ねたら、レスラーとしては決定的に商品価値を失います。
以後、2人のシングルは何試合かありましたが、ボボ・ブラジルがジャンピングヘッドパットを大木金太郎に打ち付けることは2度とありませんでした。
こうしたエピソードを書くと、勝てる相手を本気で潰さないのはインチキだという人もいるかも知れませんが、興行は街のチンピラの喧嘩でも、果し合いでもありません。
相手レスラーに試合ができなくなるような怪我はさせないとか、レスラーの商品価値を守って「仕事をする」というのは、プロとして大切なことです。
内容で自分の試合を“決勝戦”に
ジャイアント馬場vs.ボボ・ブラジル(JWA・1969年5月16日) https://t.co/mAadZq7GOw @YouTubeさんから
— 帝国大喜利団 (´・ω・` ) (@ogiridan) August 21, 2019
日本で、もっとも手の合うレスラーは、やはり遠慮なくぶつかれる大型レスラーのジャイアント馬場だったのだろうと思います。
これは、第11回ワールドリーグ優勝戦(1969年)の試合です。
興行としてこのリーグ戦は、諸事情からアントニオ猪木に初優勝させたかったのです。
予選は日外8人ずつ参加して総当りで日外2人ずつ同点となり、優勝戦は第1試合がジャイアント馬場対ボボ・ブラジル、第2試合はアントニオ猪木対クリス・マルコフ。
それぞれの勝者が決勝戦を行うことになっていましたが、放送時間その他の事情(笑)で、決勝戦を行わずにこの2試合で猪木の優勝を決めたかったのです。
そこで、格落ちのマルコフは猪木の相手にして猪木が確実に勝てるようにして、ジャイアント馬場には難敵ボボ・ブラジルをあてて2人は引き分けで共倒れすることを狙いました。←試合時間は引き分けにしやすい前座並みの「30分1本勝負」という短時間にされました。
つまり、ジャイアント馬場VSボボ・ブラジルは、アントニオ猪木初優勝の引き立て試合扱いだったわけです。
しかし、2人はふてくされず、手を抜くどころか、30分、でかい者同士がリングを狭しと動き回り、ジャンピングヘッドバットも32文ドロップキックも惜しみなく出し合い、レスラーとしては決して大型ではないアントニオ猪木では表現できないダイナミックな試合を展開。
時間切れで引き分けると、ボボ・ブラジルの方から握手を求めてきました。
そのときの、「俺たちの試合こそが、優勝決定戦にふさわしいよな」といいたげな、ボボ・ブラジルの表情が忘れられません。
ボボ・ブラジルにとってこの試合は、当時日本のチャンピオンでありながら、アントニオ猪木優勝の機運で埋没してしまったジャイアント馬場の魅力を引き出す狙いもあったと私は思っています。
ボボ・ブラジルは、自分さえ良ければいいというファイトをしない、レスラー間の信頼を獲得したレスラーだったのです。
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おおーボボ・ブラジル!
なっつかしいですね。この記事で見なければ思い出すことはなかったと思います。有り難うございますm(_ _)m
by kou (2020-07-10 23:08)
直接見たことはない、でも強烈に覚えていること。
それは「ボボ」が九州弁では淫語のため、九州ではボボとは呼ばれてなかったと、高校の友人からハナタカで教えられたこと。
by かずおみくん (2020-07-10 23:34)
試合放棄の理由がすごいです。ショービジネスとしての試合なんですね。
by mau (2020-07-10 23:53)
>2人はふてくされず、手を抜くどころか、30分、でかい者同士がリングを狭しと動き回り
どんな状況でも正々堂々と勝負すること、スポーツマンですね。
by ナベちはる (2020-07-11 01:14)
久しぶりにプロレスの話題ですね。休みになると夜中に移動すことが多く、埼玉のFMで春日萌香さんがDJされているのを時々ききます。一度見に行ってみたいと思っているのですが。最近では公開観戦ではなくネットの有料サイトでもみれるとか。
by ヤマカゼ (2020-07-11 06:10)
ほぼ豚汁がツボです(笑)
それはさて置き黒人さん故の苦労あっての相手に対する思いやりもあったのではなかろうかと。
by pn (2020-07-11 06:18)
「そういった見方もあるのだ」と、いっぷくさんには教えていただいております。ありがとうございます。
15回も来日した理由がよくわかりました。
by ハマコウ (2020-07-11 07:03)
親がプロレスとか好きで、よく観ていましたが!
私は全然覚えがないです、このレスラーさん。
by shiho (2020-07-11 07:23)
この時代はまだ小学生で、プロレスは筋書きのない真剣勝負と思って夢中で観戦していました。ボボ・ブラジルも記憶にありますが、いっぷくさんのような観察力は自分になかったですね。当時は、ビル・ロビンソンの「人間風車」が好きでした。
by 十円木馬 (2020-07-11 09:37)
強くてしかも人格者とはまさにヒーローですね
それにしてもブラジル人ではなかったのかぁ(衝撃)
by 青い森のヨッチン (2020-07-11 10:57)
ボボ・ブラジルは日本で活躍して有名でしたね。
猪木は爺に頭下げたよ・・なんで?。
by 旅爺さん (2020-07-11 11:52)
第11回ワールドリーグ優勝戦の対馬場戦は内容・質 共に素晴らしい試合でしたね。握手した時の馬場の気持ちが分かる様な気がします。
by 扶侶夢 (2020-07-11 12:38)
子供心に、憎めないレスラーでした。
by ヨッシーパパ (2020-07-11 18:41)
プロレスは、危険な技を掛けたり、凶器で血を流したりするのですから、対戦相手との信頼関係がなかったら成り立ちません。
レスラーに人格は必要です。
考えさせられます。
by skeptics (2020-07-11 20:51)