愛川欽也、『泳ぎたくない川』で苦労して役者稼業へ [懐かし映画・ドラマ]
今日は愛川欽也さん(1934年6月25日~2015年4月15日)の生まれた日です。俳優・声優・タレント・司会者・ラジオパーソナリティ・エッセイストといった肩書を持ち、幅広く活躍しましたが、やはり基本は俳優ではないかと思います。
愛川欽也とは誰だ
愛川欽也は、巣鴨で生まれて中学時代に埼玉県大宮市(現さいたま市)へ転居。
名門県立浦和高等学校に入学しましたが、在学中に演劇にのめり込み、中退して1954年に俳優座養成所(3期生)に入所します。
同級生に合わせて普通に勉強して卒業すれば、そこそこの大学に入って、ソツなくサラリーマン生活を送れたはずですが、不遇な出自が、その時々に後悔しない生き方を選んだように思います。
泳ぎたくない川
「泳ぎたくない川」愛川欽也
— wawatata (@hana_o_kuwata) January 17, 2016
戦中戦後、日本人はがんばた
読んでよかた pic.twitter.com/oJmJiTgecF
本書は、愛川欽也さんが亡くなったときにも話題になりましたが、小説の形式をとった自叙伝です。
非嫡出子として生まれ、母親は女手一つで働いて育てたためずっと貧しく、また疎開先ではよそ者であるだけでなく、父親がいないということでいじめられ、死んでしまいたいと思ったこともあるそうです。
さらに、俳優座養成所に入った後もなかなか芽が出ず、そのうちに母親が唐突に再婚したいからと息子に別れを告げ、最後の晩餐は子供の頃から好きだったオムライスとみそ汁……。
当時のツイッターを見ると、同情と感動が続々と続きますが、その一方で、愛川欽也は糟糠の妻と子ども2人と別れて、うつみ宮土理に走ったわけですから、別にそれほどかわいそうがることもないのです。
ただ、本書を読むと、親の縁が薄く、親は親、子は子としてそれぞれの人生を歩みましょう、というシビアな人生観を否応なしに親から突きつけられていることがわかります。
ですから、子どもを置いてうつみ宮土理と再婚するというのは、世間の人は「冷たい」と思ったとしても、愛川欽也の人生観としては「あり」だったんだろうと思います。
何度も書いてますが、子どもにとって、親の生き方・育て方など、どのような「ほしのもと」だったかというのは、生涯ついてまわるということです。
便利屋さんから俳優へ
レッドマンは、1972年4月24日から10月3日まで、日本テレビ・おはよう!こどもショー 内で放送されました。
— ウルトラQナレーション_bot (@1966yanks) February 28, 2020
おはよう!こどもショー
体操の タケノコにいさん は阿知波信介さん、後のウルトラ警備隊・ソガ隊員
有名なロバくんは スーツアクター兼声優が 愛川欽也さん pic.twitter.com/05yP29AgMO
さて、その後は『おはようこどもショー』のロバくんのぬいぐるみの中身を演じたり、アニメ『いなかっぺ大将』のニャンコ先生の声をあてたりなど、徐々に仕事はふえてきましたが、「顔出し」は、ディスクジョッキーやバラエティ番組の司会だったので、当初は俳優座養成所出身の役者であるとは思われなかったのではないでしょうか。
それが、『白い牙』というドラマの第13話「トランペットは子守唄がお好き」(1974年、日本テレビ)でトランペット奏者を演じた愛川欽也は、役者魂を思い出します。
そして、自分から企画を持ち込んで実現したのが、『トラック野郎』なのです。
トラック野郎
似合いすぎてつい pic.twitter.com/xceEDdsMBr
— ポァポ (@poa_kin) March 11, 2020
『トラック野郎』は、東映のヒット作『仁義なき戦い』が一段落した1975年~1979年の東映で、ドル箱だった全10作のシリーズ作品です。
『トラック野郎』の設定は、長距離を走る、いわゆるデコトラ(電飾したキンキラキンのトラック)に乗る菅原文太(一番星こと星桃次郎)と、愛川欽也(やもめのジョナサンこと松下金造)の巻き起こす騒動です。
基本的な展開は、当時人気絶頂で年間2作公開されていた『男はつらいよ』と同じで、マドンナが出てきて主人公の星桃次郎はフラれる展開です。
クライマックスシーンでは、よんどころない用事のため無茶な走行で車のライトやミラーをメチャメチャにし、パトカーにいつも追いかけられています。
現実なら、免停どころかブタ箱行きと思いますが、今見ると、トラッカーの憧れの生き方や人物像なんだろうなあということがわかり、トラッカーでない私も楽しくなってしまいます。
以前は、アマゾンプライムビデオで無料で閲覧できましたが、今は少しお金を取られますね。
さらば、わが友 実録大物死刑囚たち
中島貞夫『さらば、わが友 実録・大物死刑囚たち』('80東映)法廷闘争で無期懲役を勝ち取った元死刑囚「K・O」氏(カービン銃事件)の手記が原作。彼と他の死刑囚たち(竹内景助/三鷹事件、平沢貞通/帝銀事件、正田昭/メッカ殺人事件、菊池正/雑貨商一家殺人事件)との交流を描く。意外によかった。 pic.twitter.com/3hZpuYuH6V
— ochichan (@ochichan) January 31, 2020
『さらば、わが友 実録大物死刑囚たち』(1980年、東映)は、戦後史上、今も戦慄をもって語り継がれる、凶悪殺人事件の犯人が収監された仙台拘置所における出来事と、死刑囚たちの実態を伝える力作です。
原作は、おそらくは、『さらばわが友』(現代史出版会/徳間書店)だと思われますが、タイトルは死刑囚仲間に別れを言って刑が執行される、という意味です。
本作には、次の人達が「同じ拘置所」として登場します。
カービン銃を使った防衛庁公金横領、高利貸し殺人事件の大沢謙一(磯部勉)←役名は仮名ですが原作者
「三鷹事件」の竹内景助(愛川欽也)
「帝銀事件」の平沢貞通(高橋昌也)
千葉酒屋一家殺し事件の黒木清(永島敏行)
銀座バー“メッカ”殺人事件の正田昭(石田純一)
K子ちゃん殺人事件の坂巻(室田日出男)
帝銀事件と三鷹事件の死刑囚が同じ拘置所で過ごしたという話自体、驚きです。
大沢謙一(磯部勉)は、拘置所に入った時点では未決ですが、死刑判決見込みであることを知り愕然とします。
処刑前に、死刑囚に挨拶する永島敏行に、「元気でな」と叫ぶ竹内景助(愛川欽也)がなんとも切ない。
竹内景助(愛川欽也)は、他の日本共産党員容疑者が無罪になってからは、党が支援活動から距離を置くようになったと妻(市原悦子)に報告を受ける寂しい日々を過ごし、最期は獄死します。
これは実に面白い。機会があれば、ぜひご覧ください。
密葬でフェードアウト
愛川欽也さんは肺がんでしたが、ギリギリまで『出没!アド街ック天国』の出演を続け、降板後はごく僅かな自宅療養で息を引き取りました。
要するに、治療で仕事を休まず、生涯現役を貫きました。
さらに、派手な葬儀を嫌い、うつみ宮土理もそれを守りました。
葬儀については、愛人を参列させなかったとか、前妻は参列しなかったとか、メディアに公表するときはもう密葬を済ませた後だったとか、いろいろ話題になりましたね。
愛川欽也さんが亡くなられた際は、公式発表がないばかりにネットに断片情報が拡散され、かえって騒ぎが大きくなってしまった感があります。葬儀など区切りがつくまで完全に情報をコントロールできれば別ですが、どこか1社でも先行すると、混乱が拡大する懸念も。訃報をどう扱うか、難しい問題です。
— 神庭亮介 (@kamba_ryosuke) November 25, 2015
それらについては、いちいち賛否両論ありましたが、第三者がエラソーに論評することではなく、ご本人、および喪主(うつみ宮土理)が思ったとおりにすれば、それでいい話だと私は思いました。
愛川欽也さんの番組、覚えていらっしゃいますか。
さらば、わが友 実録大物死刑囚たち [DVD] - 磯部勉, 愛川欽也, 永島敏行, 中島貞夫
トラック野郎 御意見無用 - 菅原文太, 愛川欽也, 中島ゆたか, 春川ますみ, ダウンタウン・ブギウギバンド, 由利徹, 鈴木則文, 鈴木則文, 澤井信一郎
泳ぎたくない川 (文春文庫) - 愛川 欽也
司会者のイメージが強いですね。キンキンの愛称が懐かしいです。
by ヤマカゼ (2020-06-25 12:43)
愛川欽也さんと言えばトラック野郎ですね。
以前の仕事上長距離トラックの
運転手の方々との付き合いがあり
デコトラにも乗せてもらいました。
デコトラ結構お金がかかるんです。
by 猫またぎ (2020-06-25 15:08)
欽也さんが亡くなられた時のうつみ宮土理さんの喪失感は、
とても印象的でした。最期までこれだけ愛された欽也さんは
幸せだったと思います。
by 十円木馬 (2020-06-25 15:40)
愛川欽也さん、といえなロバくんのイメージが強かったですが、ニャンコ先生もなんですね。知りませんでした。
亡くなる直前まで仕事をされていたと記憶していますが、強く昭和を感じます。
by kou (2020-06-25 16:15)
学生時代に、勉強しながらキンキンの深夜ラジオを聞いていました。
by ヨッシーパパ (2020-06-25 18:49)
愛川欽也さんと言えば私の場合アド街ック天国の司会者でしょうか・・・欽也さんが亡くなられた時、うつみ宮土理さんが憔悴し切っていたのを覚えています。本当に愛し合っていたのでしょうね。
by エンジェル (2020-06-25 19:07)
愛川欽也さんというとTBSラジオのパーソナリティとして
朗らかなお喋りをされていたのを思い出します。
そのような過酷な生い立ちは知りませんでした。
by そらへい (2020-06-25 20:33)
「さらば、わが友」面白そうですね。最近まともに映画とか見て無いから久々に借りようかな(^^♪
by pn (2020-06-25 20:42)
当時の浦和高校に入れたなら半分東大生みたいなもんです。秀才だったのですね~
自分はロバくん世代ではなくキンキンケロンパ世代ですがトラック野郎の子だくさんのやもめのジョナサンの家の住所の設定が当時住んでいた家の近くだったことを覚えています。
by 青い森のヨッチン (2020-06-25 21:37)
一番に思い出すのはなるほどザ・ワールドかな
by mau (2020-06-25 22:16)