遠隔操作する分身ロボットによって、脊髄損傷の大けがで首から下がまったく動かなくなった山﨑拓弥さんが、契約社員として社会復帰した様子を、NHK HUMANがダイジェスト動画をFacebookに投稿しているのでシェアします。(画像は動画から)
松江から大阪のロボットを動かす
タイトルは、『“自分で働いた収入で暮らしたい”分身ロボットと歩む日々』です。
こちらがツイッターのOGPです。
場所は、大阪の洋菓子店。
設置されたロボットが、手を動かしながらスピーカーを通して話します。
遠隔で操作しているのは、松江市(←大阪ではない!)の介護施設で暮らす山崎拓弥さん。
スティックでiPhoneにタッチ操作して、遠方のお店のロボットを通して接客しています。
山崎拓弥さん「何飲んでるんですか」
お客さん「タピオカです」
山崎拓弥さん「あ、タピッてるんですね」
“生きた会話”に驚くお客さん。
中途障碍者の不幸と生き方
動画によると、山崎拓弥さんは5年前、自宅のベランダから誤って転落。
脊髄を損傷する大怪我を負い、首から下は全く動かないそうです。
しかし、不幸中の小さな幸いは、首から上が無事だったこと。
食べさせてもらえば、ご飯を噛んで飲み込むこともできるし、脳も異常なく事故前と同じように判断力もあり、会話もできます。
ただ、「脳は正常だが体が動かない」もしくは「体は自分で動かせるが脳障害がある」といった中途障碍は、生還できたらできたで辛いことが待っています。
山崎拓弥さんは言います。
「この先、死ぬまで30年、40年、ずっと同じこのまんまの生活を想像したとき、耐えられないというのはありました」
よく、障碍者になってわかったことがあるから「障碍者になってよかった」とか、「がんになってありがとう」のような体験談があります。
が、それはもう、そうなってしまったから、そう言って自分の気持につじつまを合わせているだけではないかなと私は思っています。
少なくとも、中途障害者は、生まれながらの障碍をもつ方とは異なり、事故によりそれまでの人生で積み重ねてきた生活能力を突然不可逆的に失うのです。
その「機会の損失」と向き合わずに、「障碍者になったからこんなこともわかった、あんないいこともあった」と言ったところで、「じゃあ、私も障碍者になりたいな」などと同調する人はだれもいないでしょう。
決してきれいごとでなく、中途障碍というのはその人の生涯に決定的なダメージとなります。
しかし、だからといって、そこで生きることに全面的に絶望してしまうのか、その中からどうやって活路を見出すのか、を考えるのかで人生は変わってきます。
前職の経験で社会復帰
山崎拓弥さんにとって転機となったのは、東京で開催されたロボットカフェ。
昨年、このブログでは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の永廣柾人さんが、世界で初めて開店した、分身ロボットカフェ「DAWN ver.β」の試験オープンで、
ロボット店員を遠隔操作したことをご紹介しました。
病気や障碍などで外出が難しい人が、ロボットを遠隔操作して接客する試みです。
山崎拓弥さんは、事故前は大手居酒屋チェーンで店長をつとめていました。
その経験を生かして、カフェを切り盛りする役割を担いました。
各テーブルを見まわして、会話の少ないお客がいたら、メンバーに指示を出すのです。
この仕事ぶりを見て、カフエの協賛企業が、山崎拓弥さんと契約社員(雇用契約)を締結しました。
お店では、商品が売れないと、ロボットを介して手振りで人をひきつけ、試食へ誘います。
山崎拓弥さんの甥御さん「すごい、すごいと思いました」
山崎拓弥さん、天井を仰いでドヤ顔。
5年ぶりに給料も振り込まれました。
安定した収入で生活保護から脱却することが、山崎拓弥さんの障碍者になってからの大きな目標だそうです。
どう生きていったらいいかを前向きに考える
「障碍の有無に関係なく、普通にできる仕事をしたい」という山崎拓弥さんの求めていることは、テレワークの普及で一気に実現の道筋が開けてきました。
もちろん、これは不幸中の小さな幸いで「脳」が無事だったことと、山崎拓弥さんの前向きな気持によって実現したことですから、障碍があっても誰でもこうなれる、というわけではありません。
ただ、何もしなければ、山崎拓弥さんは寝たきりで余生を過ごすことは間違いなく、また社会と切れてしまうことで、精神面や、認知機能においても支障が生じたのではないかと思います。
どのような立場であっても、自分はこれから生きるうえで何がしたいのか、そのためにはどうしたらいいのか。
いつも前向きに考えることで、チャンスも訪れるかもしれないと思いました。
「ひとりではたどりつけない世界へ~分身ロボットと歩む日々~」 - 宮崎あおい(表記できない為、「崎」の字を使用しています。)
>どのような立場であっても、自分はこれから生きるうえで何がしたいのか、そのためにはどうしたらいいのか。
この気持ちが大切ですね。“決してクサらない”というのは私の信条でもあります。障害の有る無しに関わらず、他人に教えられるものを持っている人はそれだけで価値がありますね。
by 扶侶夢 (2020-06-16 14:32)
この記事の本来の主旨ではないのですが一言。
最近は科学が人類の発展や幸福に寄与していない、と考えるとが多くなっていましたが、それは人間の方が科学技術を旨く使い熟せていないことの裏返しでもあるのだなと「分身ロボットカフェ」の記事を読んで思った次第です。
つまり人は人である以上、どんな境遇であれ自分を生かせる場は必ずあるのだという真実に行き当たりました。
何ごともけして諦めない。そこに活路はあるのだと思いたい。
by U3 (2020-06-16 14:38)
NHKのドキュメント番組
『“自分で働いた収入で暮らしたい”分身ロボットと歩む日々』
私も リアルタイムで観ました
ハンディを ものともせず
逞しく 生きていく
というのは
口で易々と云うほど
容易いものでは
到底 ないはずです
「安定した収入で生活保護から脱却することが
大きな目標」
とのお言葉
心に 深く
突き刺さりました
当然ながら 私
この 強い精神力
足下にも 及びません
by pigumon (2020-06-16 17:04)
多くの人が自立出来る環境作りが大切ですね(^_^)v
by yokomi (2020-06-16 17:07)
この番組は拝見しました。
希望をみつけた発言が印象的でした。
by ヤマカゼ (2020-06-16 17:55)
AIの進化、普及を凄いですね。
by ヨッシーパパ (2020-06-16 19:08)
完全な分身ロボットが先かサイボーグが先か。
どっちにせよ脳死だとダメか。
by pn (2020-06-16 19:37)
文字入力だけは良く聞きますが、ロボット接続は初めて知りました!
可能性が広がりましたね
by mau (2020-06-16 19:46)
自身の体験から、人間は生きているのではなく、「生かされている」と信じています。天から与えられて生かされたからには、どのような境遇にあってもそこには必ず存在する理由があると思っています。
by 十円木馬 (2020-06-16 20:12)
ボクも障碍ではないけどシロアリ野郎に歯茎を食われて大変な想いをしました。
だから、『〇〇になったからこんなこともわかった、あんないいこともあった』なんて絶対に言えません。普通に喋れるようになるまでのリハビリは大変でしたよ(^^;
結局はいろいろと最後まで努力する人が努力しない人よりは笑顔で生きていけるのではないでしょうか?
by なかちゃん (2020-06-16 21:16)
お客を呼び込んだりリアルタイムで会話していることを見ていると、それが遠隔操作されたロボットであるというのを忘れてしまいそうです。(もちろん、遠隔操作をしているのは人間なのですが…)
by ナベちはる (2020-06-17 01:06)
中途障害者は障がいを抱えてからの気持ちの建て直しが容易ではないでしょうね。。。
それを乗り越えて自分の力で得た5年ぶりのお給料は本当に嬉しいものだったと想像します^^
by Rinko (2020-06-17 08:00)
これなら、全世界に就職口が開かれますね。
by skeptics (2020-06-17 21:39)
これからは、ロボットに仕事を奪われる時代が来る、
なんて言われていますが、操縦する人は人間なんですね。
by 犬眉母 (2020-06-18 20:10)