下重暁子VS金美齢、家族や人間関係をどう見るかの論争、あなたはどちら派? [社会]
今日は、元NHKアナウンサーでエッセイストの下重暁子さん(1936年5月29日~)の誕生日です。『家族という病』『極上の孤独』(ともに幻冬舎)などで、家族を否定し「孤独」を勧める上梓をしましたが、金美齢さんが「歪んだ家族論」と反論しました。あなたのご意見はいかがですか?
下重暁子VS金美齢の論争とは何だ
下重暁子さんの、『家族という病』と『極上の孤独』は、すでにご紹介しました。
一口に述べると、家族や友人を否定し、「個の自立」を訴えるものです。
一方、金美齢さんは、『家族という名のクスリ』で、人は共同体の中でお互いが支え合うものだ。家族は素晴らしいものだ、という正反対の意見を述べています。
自分の愚痴を絶対化した『家族という病』
「家族という病」なんて言葉が出る時点で下重暁子さん自身がある意味「病」です。
— けんせー (@Kensei19880327) August 25, 2017
話を聞いていると被害妄想で自己中心的な考えが強いです。
不倫も「好きになったら仕方ない」らしいです。
根本的な考え方が、自分が良ければなんでも良いって感じです。
『家族という病』は、下重暁子さんが、自分にとって理想的でない父親に反抗し、「親や家族の期待は子供をスポイルしている」という「愚痴」で、家族の信頼関係を否定しています。
そして、「配偶者は他人」とも述べて、自立した個人の重要性を強調しているのです。
要するに、悪い親や、しょせん他人の配偶者に振り回されるなということらしいのですが、「毒親」や「夫婦の不仲」に不満を持つ人達から同書はウケたらしく、60万部以上売れたそうです。
しかし、今世間で問題になっている「毒親」は、下重暁子さんの父親のような生易しいものではなく、つまり下重暁子さんの父親は、そもそも第三者的にそれほどの毒親とはいえず、何より下重暁子さん自身は結婚して離婚もせず過ごしています。
ですから私には、苦労知らずのおばあさんの世間知らずで自己愛的な愚痴にしか読めませんでした。
百歩譲って、その「愚痴」に共鳴できたとして、自分の環境がそうだからといって、他の家族まですべて『病』に違いないと決めつけるのは、乱暴で失礼な「類推」です。
孤独はいいと言いながら自分の友人を自慢する『極上の孤独』
『極上の孤独』は、下重暁子さんが子供時代、無器用と健康に自信がないことから、人と上手に交われないことが多かったものの、孤独の中で楽しみを見つけた。
だから「孤独」はいいものだ、孤独から逃げるな、という話ですが、そのわりには、やたら友だちの名前が出てくる(笑)のです。
たとえば、句を読む友人として、小沢昭一、永六輔、渥美清、岸田今日子、和田誠、色川武大……
NHKアナの同窓で再会を約束していた野際陽子……
むしろ私は、友達自慢と読めました。だって孤独を勧めるのに、そういう人たちの紹介は不要でしょ?
本当は友人が欲しかったくせに、子供の頃それができなかったことを81歳なって悔しく振り返り、正当化するために「孤独はいい」と言っている、でも自分にはちゃんと友だちがいるんだと途中で自慢したくなった……という論理破綻のエッセイです。
それに対して、こういう本がウケるのは許さない、と、対抗する立場から『家族という名のクスリ』を上梓したのが、女性右派論客として知られる金美齢さんです。
お節介をお互いにやき合うことを勧める『家族という名のクスリ』
『家族という名のクスリ』では、「夫婦、親子、家族、みな一様ではない。衝突があってもいい。余計な波風を立てる必要はないけれど、表面的な取り繕いをするよりもお互いの人生観をぶつけ合い、語り合うことのほうがよほど人生を楽しく有意義にしてくれる」といいます。
本のカバーには、「家庭ほど安らぐ場所はなく、夫婦ほど支え合える関係はない」と断言しています。
さらに、「結婚しないの?」「子供はつくらないの?」「親と同居はしないの?」という言葉を禁句としてはならない。
「共同体の仲間として気にかけてくれている」からこそ出てくる言葉であり、お節介をお互いにやきあうことが大事なのだそうです。
下重暁子さんの意味不明なエッセイよりも前向きですが、ただ、「ぶつけ合い、語り合う」内容は事と次第によるのではないでしょうか。
結婚や親との同居や子どもは、いずれも、聞かれたら、答えるべきかどうか、そしてどう答えたらいいか、人ぞぞれの事情と価値観が関わってくる重くてデリケートな話です。
要するに、きちんとした間柄で、腹を割って話すような内容だと私は思います。
「気にかける」などと軽く表現するようなことではないし、その覚悟と関係もなしに、雑談で交わすような「質問」ではないでしょう。
そして、家族については、下重暁子さんの逆、つまり、自分の家族の話に終始しているだけです。
要するに、下重暁子さんが「愚痴」で、金美齢さんが「自慢」というだけの違いです。
さらに、「独身者は自由を謳歌している、責務を果たせ」と、家庭を持たない人を非難すらしています。これはもう言い過ぎです。
結婚してもしていなくても、社会の一員ならそれぞれ貢献してるし、やはりそうせざるを得ないいきさつで独身の場合もあるのに、居丈高な印象は否めません。
その人の責任ではないのに、毒親だったり、人の縁に恵まれなかったりすることはあります。
ですから、好むと好まざるとにかかわらず、親と絶縁したり、友達がいなかったりせざるを得ない場合もあるのに、そういう人の苦労を金美齢さんはわかっていません。
まとめ
下重暁子『家族という病』読了。2017年読書初めが、まさかの駄本。日本人は“家族”という枠に縛られ過ぎていないか?というテーマは良いのに、客観的データなく筆者の主観のみで結論を出すという酷い評論。元NHKアナらしいのでコネ出版かな。同じテーマの別作家の良質な本を読みたい(切実)。 pic.twitter.com/HQ930VHgi5
— りこ (@Riko5555S) January 13, 2017
まあ結論を述べると、私はどちらも賛成しません。
そもそも下重暁子さんの愚痴は、上のOGPの通り、統計もないただの主観で論外ですが、一般論としても、家族は大切にできるならしたほうがいいと思います。
どんな親でも親は親ですから。
ただし、毒親の「毒」をきちんと議論できる風通しの良い家族(親子)関係でないのなら、それは子どもにとって良い親ではないと思います。
また、人間関係は、議論してわかり合える(信頼関係が構築できる)とは限りません。
たとえば私は、自己愛の強い人は、リアルでもネットでも苦手です。
議論する気もないですね。議論されることは、先方にとっても迷惑でしょう。
つまり、家族関係にしろ、一般的な対人関係にしろ、『病』か『薬』かは一概にはいえず、「ねばならない」と一律に決めつける問題ではないと思います。
かりにおふたりの経験が事実だったとしても、「下重暁子の経験はそうだった」「金美齢の経験はそうだった」というだけのことです。
結局、自分の家族に対する見定めや、他者との過ごし方は、自分で判断するしかないのです。
家族という病 (幻冬舎新書) - 下重 暁子
極上の孤独 (幻冬舎新書) - 下重 暁子
家族という名のクスリ - 金 美齢
家族はその数だけ形があると思います。
自分の経験や考えを語ったとしても、それはあくまでその人・その家族に限定される事でしょうね。
結婚だってやってもいい・やらなくてもいい、どっちでもいいと思っています。
by Rinko (2020-05-29 09:25)
どっちもどっちじゃなかろうかと(笑)
親兄弟友人知人毒にもなれば薬にもなるでしょうに(^_^;)
by pn (2020-05-29 11:47)
本のタイトルってマーケティングベースで付けられているので、読んでみるとガッカリする事が多いですね。
私の場合もタイトルを見て勝手に内容をイメージして慌てて買って、じっくり読んでみたらガッカリしたという事がよくあります。
by 扶侶夢 (2020-05-29 11:50)
家族というのは、結構難しい問題を含んでいるものだと思います。問題のある親は世間にたくさんいると思います。それが、自分に対して攻撃してくるような親だったら、やはり逃げなければなりません。
いい家族は皆がバランスを取っている家族ではないでしょうか。
一概に家族とはこうあるべきだとは言えないでしょうね。
これからは、コミュニティーの時代になるのではないかと思います。自立した人が、気の合う生活しやすい人たち同士でコミュニティを作って一緒に暮らす。同じ家じゃなく、近所とか同じマンションとか。
でも、人間どこまで絆を深められるかは、やはりなかなか難しい問題でしょうね。
by coco030705 (2020-05-29 12:35)
実際に本を読んでいないのではっきりとどちらに賛成かは言えません。私にとって家庭は安らぎの場であって欲しいので、それが叶わなくなった時点で他にそれを求めるかもしれません。それが友人だったり趣味だったりペットだったり・・・それでもいざとなると一番頼れるのは家族です。だから大切にしたいと思います。
by エンジェル (2020-05-29 14:34)
自身を振り返ると、大勢で賑やかにするより、気の置けない
仲間と一緒に過ごすことを好んできました。とは言え決して
孤独が好きだったわけではありません。
コロナ離婚が話題になっていますが、私は家内と二人だけの時間は好きですし、大切にしています。
by 十円木馬 (2020-05-29 14:40)
どちらも、ケースバイケースを切り捨てた極論ですね。
その方がわかりやすくて、本も売れるのではないでしょうか。
考えさせられます。
by skeptics (2020-05-29 15:09)
どのような本であっても共感する人がいれば売れるし、ましてや有名人ならば、そのネームバリューである程度の販売部数は見込めるでしょう。
さらに上手な宣伝活動をすればベストセラーになるかもしれません。
そのために日夜努力している人(出版関係)もいます。
その努力の一つにどうしたら読者の目を引けるかという重要項目があり、センセーショナルな内容というのもあるだけです。
売れた本に対する反対の考えで売るというのも一つの手法でその意見を持った著者を探して本を作るのも手法です。
あらゆる項目(年齢でも収入でも)の平均値がありますが、あくまでも母数全体を人数で除した数値であり、一人ひとりには関係ありません。
ましてや自分の生き方はその人一人一人のオリジナリティであり、本にあるような画一的なものではありません。
家族や友人は大切なものですし、一人でいる時間(孤独)も大切です。
by renbajinharuhi (2020-05-29 17:30)
どちらも読んでいないのであれこれ言う立場ではないですが、家族については長年一緒に居れば思いも変わって来ます。子供は親に干渉されたくないと家を出てひとり暮らしを始めましたが、離れたからこそ以前より連絡を取り合うようになりました。また、疎遠だった実家とも、母親の病気を機に頻繁に行き来するようになったり、年月が家族の形態や考えを変えてゆくのだと思います。なのでこうあるべきと断言は出来ないですね。
by kou (2020-05-29 18:22)
下重さんにしても金さんにしても、結局育った家族の持つ「縛り」からは逃れられないんだなあと感じます。人生の中で新しい「縛り」を自分達で作るチャンスが結婚なのではないでしょうか。無意識の人生観のリセットのためにも、結婚はした方がいいと思っています。
by サボテン (2020-05-29 21:31)
極端な説は人目を引いて売れるのかもしれません
by mau (2020-05-29 21:49)
人によって差が出るものを極端に言ってしまうのは、それもそれで危ない気がします。
by ナベちはる (2020-05-30 00:58)
下重さんはタイトルのつけ方が上手いですね。
つられて読みましたが、ちょっと…???
パートナーはいるし、友達は多いし…
孤独ならではのご様子があまり…
もう御一方のは読んでいませんが、そちらはまた断言しすぎ?
愚痴と自慢とは、良かったですねえ(笑)
by sana (2020-05-30 01:37)