SSブログ

自閉症と重度知的障碍でも普通の学校に進ませたい親の葛藤をどう見るか [障害者]

自閉症と重度知的障碍でも普通の学校に進ませたい親の葛藤をどう見るか

富山に住む、自閉症と重度知的障碍のお子さんをもつ親が、特別支援学校を勧められているのに、普通の小学校に通わせるという記事が話題になっています。障碍を持つお子さんの親御さんの多くは、気持ちは理解しつつも、複雑な思いを持たれているのではないでしょうか。



支援学校という選択肢が受け入れられなかった?


記事に添えられている画像には、「FNSドキュメンタリー大賞」と記載されているので、フジテレビ系列の富山テレビで放送されたようです。

もと記事のOGPを埋め込んでおきます。


知的障害をともなう自閉症障碍児の親御さんが、「選択肢を持っていたい」という理由から、特別支援学校を提案されているにもかかわらず、普通の小学校に通わせている、という話です。

その理由自体は否定しませんが、結論から書くと、私だったら、支援学校を選んでいるでしょうね。

知的障害にも様々な段階がありますが、IQベースでは、80で普通学級、70以上で支援学級、それ未満は支援学校、というのがおおよそのめやすです。

「重度」ということは、たぶん50に満たないはずで(50で「中度」)、しかも自閉症ですと、そもそも日常的なコミュニケーションもたぶん厳しいはずですから、普通学級はちょっとお子さんにも学校側にも気の毒です。

それと、知的障害者の発達というのは、健常者の発達とは、成長のベクトルが違うんです。

これから上の学年に進むほど、簡単に言うと学力や精神年齢などの差は広がると思います。

支援学校が、少なくとも普通の学校よりもきめ細かい指導はありますから、支援学校を信用してもいいのではないかと思います。

せめて、IQが「中度」なら、支援学級に入って様子を見る、という“妥協案”もあったでしょうが……。

まあ、この親御さんは要するに、普通じゃないところに行きたくない選択を認めてほしい、という主張なんですよね。

残念ながら、もと記事についていた、このコメントのとおりだと私も思います。

>頭ではわかってても子どもが障がい者だって認めたくないんだろう
>でも一番辛いのは子どもでしょ
>普通の子達との差が年々広がっていくんだから


ただし、一方ではこういう意見もあるんです。

障碍者同士が結婚したものの、夫は普通学校、妻は支援学校の場合、付き合う人も社会常識も違ってくる、と身内を例にした話です。
うちの姉が障がい者で、同じ障害をもってる男性と結婚したんだが
姉は支援学校に入って、義兄は普通学校の卒業生
普通学校は強制的に健常者との付き合いが発生するから
常識的なこととか、人との付き合い方とか学べるけど
支援学校は同じ障害を持った人や、自分たちのことを考えてくれる教師とだけ付合うので
結果として、姉は未だに障害のある人としか交流できないし
義兄は健常者の友人もいるし、健常者と普通に交流もできる、となっている
なんていうか、常識的なこととか、学校に通っていたら当たり前に学べることとか
そういうのを学べないっぽいんだよな、支援学校って
姉の友人をみても、そういう傾向が顕著にあるわ
だからといって、普通学校にいくことだけが良いことだとも思わんが
その後、社会でちゃんと働いて生活していく、ということを考えるなら普通学校が良いとは思う

これもまた本当のことなんです。

ご自身や身内がそうでないとピンとこないかもしれませんが、みなさんはいかが思われますか。

普通の学校へ行く場合もある


私の長男は、もともと普通の小学校に通う健常児でした。

が、9年前の今日、火災による一酸化炭素中毒で大脳を広範囲に傷害され、遷延性意識障害(いわゆる植物人間)になってしまいました。

何度か転院をしているので、のべ数十人の医師がかかわっていますが、医学の常識から、誰もその後の回復を予想できませんでした。←寝たきりで生涯を終えるということ

別の言い方をすると、医師なり理学療法士なりの言いつけを守っていれば回復できるという見込みも保証もまったくないわけで、こんにちまでの回復のリハビリは、すべて誰にも教わっていないオリジナルによる試行錯誤です。

そういう「自分で考えて切り開く」回復の道筋にある中で、昨年、支援学校高等部ではなく、普通の高等学校を選択しました。

障碍者だけの集団では経験できない健常の同級生による刺激を与えることで、さらなる脳の回復を期待したことが最大の理由です。

つまり、高校生活自体をリハビリの一環ととらえており、他の生まれながらの発達障害のお子さんとは少し事情が違います。

もちろん、生まれながらの障碍がある方でも、過日ご紹介しましたが、弁護士になりたいから、視覚障害があっても普通高校に進むという方もいらっしゃいます。

『全盲の夫婦がみつけた、家族のかたち』懸念を覆した3つの決断

要するに、人それぞれ事情と人生設計で違うし、障碍者だって普通の学校を選ぶことはあり得るということです。




支援学校にも「学園生活」がある


もとより、障碍者だから、絶対に支援学校に進まなければならない、という決まりはありません。

ただ、今回は普通学校でなければならないという事情が見えてこなかったのと、何より親御さんが「重度」という現実と真剣に向き合っていないのではないか、という気がしました。

いずれにしても、困難な中で入れるということはわかっているわけですから、正当な権利以外に、ことさら特別扱いを望むクレーマーにはならないでほしいと思います。

それと、無理だなと思ったら、たとえ学年途中でも支援学校へ転校されたほうがいいと思います。

支援学校でも、普通の学校と同じように、運動会も校外学習も修学旅行も文化祭もあります。

学校を見に行けば、アベックが下校する光景もお目にかかれます。

私は男子校の出身であるだけでなく、毒親の威圧で主体的な進路選択ができなかったので、それを羨ましいと思いました。

過ごし方次第では、キラキラした学園生活もあるのだ、ということです。

お子さんの障碍の現実や、そうした学園生活と向き合えば、支援学校に対する見方も変わってくるのではないかと私は思います。

こうすればうまくいく!知的障害のある子どもの保育 ーイラストですぐにわかる対応法 - 水野 智美, 西村 実穂, 徳田 克己
こうすればうまくいく!知的障害のある子どもの保育 ーイラストですぐにわかる対応法 - 水野 智美, 西村 実穂, 徳田 克己

「発達障害?」と悩む保護者のための気になる子の就学準備 (特別支援教育がわかる本)

「発達障害?」と悩む保護者のための気になる子の就学準備 (特別支援教育がわかる本)

  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2015/01/30
  • メディア: 単行本



nice!(215)  コメント(12) 
共通テーマ:学問

nice! 215

コメント 12

pn

健常者だって学校行ったからまともって訳ではないからねぇ。
by pn (2020-05-26 10:27) 

扶侶夢

「支援学校」に対して社会全体の捉え方が “隔離”という理解の仕方をしている限り、余計な様々な問題が起こりますね。認識の違いですが福祉国家の北欧では考えられない問題だと思います。
by 扶侶夢 (2020-05-26 10:40) 

skeptics

ありがちな話ですね。親御さんにも葛藤はおありでしょうが、本質は児童にあります。
考えさせられます。

by skeptics (2020-05-26 15:12) 

ヨッシーパパ

難しい問題ですね。
by ヨッシーパパ (2020-05-26 17:29) 

lamer

出来る限り共生である事を基本にしたいです。
健常児は不自由な部分を感じないで育つでしょう。
其れがいい事かどうか考えると色々な違いに触れた方だ良いと思います。
軽度もあれば重度もある。
お互いに違いを持ち合って其の違いにどう関り合うかを考えて生きることが大事だと思います。
by lamer (2020-05-26 17:39) 

ヤマカゼ

こればかりは、子供をもった親でないとわかりませんと思います。
by ヤマカゼ (2020-05-26 17:57) 

足立sunny

知的障害というのがどういうぐあいなのか。自分はたぶん小学校入学時はそんな感じで、幼稚園の園長先生の強い押しで擁護学校ではなく普通小学校へ進学でき1年時、2年時はオール1の成績で小学3年後半から徐々にマトモになったので、トライしてみる価値はあるのかもと思っていますが。
by 足立sunny (2020-05-26 18:34) 

mau

難しいですね。どれが正解かのか誰にもわからない
by mau (2020-05-26 22:14) 

いっぷく

>こればかりは、子供をもった親でないとわかりませんと思います。
>by ヤマカゼ (2020-05-26 17:57)
そうですね。たぶん「軽度」「中度」「重度」がどのぐらいのものなのか、どういうことを意味するのかが、当事者でないとなかなか想像がつかないと思います。まあ言葉通り「重度」は「重い」です、
逆に言えば、当事者でありながらそこをスルーするのは、当事一般者から見れば物議を醸す判断と言わざるを得ません。
by いっぷく (2020-05-26 23:11) 

いっぷく

知的障害には、「療育手帳」という身障者手帳にあたるものがありますが、この更新は「おおむね2年ごと」といわれているものの、手帳に期限は記載されません。

つまり、知的障害は時間とともに変化する一時的な「発達の遅れ」ではなく、障碍である(時間をかけて治るものではない)という見定めがあります。←厳密には知的障害は発達障害には含まれません。

それでも「2年ごと」としているのは、子供の場合、同じ認定にはとどまらない場合があるからです。

たとえば7歳⇒15歳で知能がそのままですと、相対的に度数は上がります。つまりより深刻とみなされます。

度数が上がると保護項目が増えるために更新が必要なのであり、治る可能性に期待しているからではないのです。

by いっぷく (2020-05-26 23:12) 

ナベちはる

「選択肢」を持つことは大切なことですが、それを選んだことで本人のためになっているかどうかというのとは別問題ですし、子供も年齢的に「自分はこうしたい」ということを考えて保護者に伝えることも難しい話なので、慎重にならざるをえない問題ですね。
by ナベちはる (2020-05-27 00:50) 

Rinko

ご両親の葛藤は大きなものだったと理解できます。
子どものための選択肢を並べる時、自分のエゴが入っていないか見極める事が大切だなと感じます。難しいですが・・・。
by Rinko (2020-05-27 08:43) 

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます