『愛の渇き』三島由紀夫原作を浅丘ルリ子と石立鉄男で映画化 [懐かし映画・ドラマ]
『愛の渇き』(1967年、日活)を久しぶりに見直したのですが、まだブログに書いたことがなかったのでご紹介します。三島由紀夫の小説を映画化したもので、藤田繁夫と蔵原惟繕が共同で脚色し、蔵原惟繕が監督した作品。浅丘ルリ子と石立鉄男が出演しています。
あらすじ御免
浅丘ルリ子・中村伸郎《愛の渇き》…昭和42/1967年、監督/蔵原惟繕 pic.twitter.com/iBxDhtda1b
— BON (@1632bdkrst) April 30, 2017
杉本悦子(浅丘ルリ子)は、自殺を考えるほど夫の浮気により嫉妬で苦しみましたが、自分が死ぬ前に夫が腸チフスで急死。
死後も杉本家に住み、いつか義父の弥吉(中村伸郎)と関係をもっていました。
広大な農場と広い邸宅では、園丁(庭師)の三郎(石立鉄男)、女中の美代(紅千登世)が暮らしています。
石立鉄男の若さに魅かれていった浅丘ルリ子は、石立鉄男のために靴下を買いましたが、美代は嫉妬でそれを捨てました。
美代は三郎の子供をみごもっていたのです。
浅丘ルリ子は、嫉妬からお腹の子を堕胎させました。
『愛の渇き』の浅丘ルリ子が美し過ぎて悶絶 pic.twitter.com/NOKu7rMc79
— haru (@haruyuqui) February 5, 2018
中村伸郎は隠居の身分だったのですが、浅丘ルリ子と東京に出て現役復帰をすることにしました。
その東京行がせまった頃、浅丘ルリ子は堕胎させたことを告白して自分がいかに苦しんだかを石立鉄男に尋ねるのですが、石立鉄男は思い通りの反応をしてくれず、浅丘ルリ子は、自分だけがやきもきしたのかと悔しくなります。
が、浅丘ルリ子が背を向けて帰ろうとすると、石立鉄男は襲いかかります。
浅丘ルリ子はびっくりして声を上げ逃げようとするのですが、そんなとき、中村伸郎が何事かと、血相を変えて鍬を持ってかけつけると、浅丘ルリ子はその鍬で石立鉄男に一撃……。
弥吉「何故殺した」
悦子「私を苦しめたからです。誰もわたしを苦しめることなどできませんのよ」
浅丘ルリ子は、舅にも別れを告げ去っていきました。
愛憎・嫉妬を描ききる
「愛の渇き」(1967) 原作:三島由紀夫。監督:蔵原惟繕。撮影:間宮義男。主演:浅丘ルリ子。裕福な一族…夫に先立たれ義父の愛人になった次男の妻、悦子…長男夫婦・三男の未亡人と二人の子・女中・庭師の青年…青年への悦子の愛憎・嫉妬・悲劇を描く…浅丘ルル子の妖艶な美しさに観惚れる… pic.twitter.com/gVJprojqsC
— 岡田次雄 (@tk2yokada) April 18, 2019
『愛の渇き』は、浅丘ルリ子にとって代表作であるとの自負がある三島由紀夫原作の同名の映画化です。
浅丘ルリ子の役はかなり複雑な女性です。
理屈で考えたら、おかしな人かもしれません。
しかし、人間はときおり、非合理で不条理で無慈悲な言動もあります。
しかし、それは理屈としては変でも、どうしてもそうせざるを得ない内なる思いがあったもので、原作にしろ映画にしろ、それを描ききっているということでしょう。
浅丘ルリ子は、『男はつらいよ』で4回リリーさんを演じているので、そのイメージが強いかもしれません。
つまり、ズバッと物を言うタイプです。
本作はそれとは真逆のキャラクターかもしれません。
余談ですが、『男はつらいよ』のマドンナでは、リリーさんこそ寅さんにピッタリという評価はありますね。
でも別の見方をすれば、4回も出て結ばれないのだから、本質的に結婚相手としては相容れないということではなかったのかと私は思います。
舅役の中村伸郎は、田宮二郎版の『白い巨塔』で東教授を演じた人、といえば思い出していただけるかもしれません。
杉村春子の記事で書きましたが、中村伸郎は文学座の大幹部でありながら、三島由紀夫のために劇団を離れました。
三島由紀夫が書いた『喜びの琴』という劇が、反共主義思想を信じる主人公として描かれていたために、キャスティングされた北村和夫がセリフの一部を拒絶しました。
杉村春子ら幹部は上演中止とし、三島由紀夫は退団。
すると、三島由紀夫に心酔していた大幹部の中村伸郎を筆頭に、青野平義、奥野匡、荻昱子、賀原夏子、北見治一、丹阿弥谷津子、寺崎嘉浩、仁木佑子、真咲美岐、南美江、宮内順子、水田晴康、村松英子ら、これまた知名度のある俳優が大量に追従して離脱しました。
これは、左翼的立場にある杉村春子が、劇に政治を持ち込み三島由紀夫を切ったようにいわれますが、それはタカ派的脚本を確信犯的に書いた三島由紀夫の側にもいえる“お互い様”です。
だた、中村伸郎はそうしたイデオロギーを超えて、劇作家としての三島由紀夫を選んだのだと思います。
その意味では、浅丘ルリ子だけでなく、中村伸郎にとっても本作は大切な作品だったんだろうなと思います。
女の愛の心理、エゴなど愛に渇いた女の異常な断面
1967年2月18日『愛の渇き』(藏原惟繕監督 出演:浅丘ルリ子 山内明ほか)公開。
— 日活映画配信 (@nikkatsu_rights) February 18, 2016
文壇の鬼才、三島由紀夫原作による同名小説の映画化。女の愛の心理、エゴなど愛に渇いた女の異常な断面を鋭く追求した異色文芸大作。
Youtube:https://t.co/4QEX8svwnu
今回もOGPをたくさん埋め込みましたが、50年以上前の作品であるにも関わらず、今も検索するとたくさんのツイートが出てきます。
三島由紀夫の小説はお好きですか。
映像化されるとニュアンスは異なるかもしれませんが、「女の愛の心理、エゴなど愛に渇いた女の異常な断面を鋭く追求」した原作を、浅丘ルリ子は妖艶に演じていると思います。
鑑賞されることをおすすめしたい一作です。
愛の渇き - 浅丘ルリ子, 山内明, 中村伸郎, 楠侑子, 石立鉄男, 藏原惟繕, 藏原惟繕, 藤田繁夫
愛の渇き (新潮文庫) - 由紀夫, 三島
最近三島作品を読む機会があり、文学座の幹部が
三島に心酔する気持ちが漠然と分かるような気が
します。このブログを拝見して、原作も一度読んで
みようと思います。
by 十円木馬 (2020-05-23 13:26)
中村伸郎さん、しゃがれ声の俳優さんでしたね。
何がと言うわけではありませんが
印象に残っています。
by そらへい (2020-05-23 16:00)
メイクにそれほど時間がかからない頃(失礼)の浅丘ルリ子と、もじゃもじゃ頭でない石立鉄男は必見です。
考えさせらます。
by skeptics (2020-05-23 16:40)
文学座といえば俳優座と並ぶ大劇団。作家か劇団か、究極の選択ですね。
by おっつぁん (2020-05-23 16:55)
昭和のこの時代の作品は人間模様のドローっとしたのが多いですね。
by ヤマカゼ (2020-05-23 18:35)
浅丘ルリ子さんは、こんな妖艶な役もこなされたのですね。
by ヨッシーパパ (2020-05-23 19:06)
最初の写真の右下は一瞬中尾ミエに見えた(^_^;)
by pn (2020-05-23 20:20)
よく見ていたのは、テレビのドラマに出演されている石立さんですが、文学座にいらっしゃったのですね。
by ハマコウ (2020-05-23 20:30)
昔の女優さんの美しさは次元が違う気がします。
by mau (2020-05-23 21:20)
浅丘ルリ子さん、「艶っぽさ」の度合が凄いですね。
by ナベちはる (2020-05-24 00:51)
浅丘ルリ子さんは、好きな女優さんです。
激しい役を演じるのが上手だと思います。
三島由紀夫の作品もかなり読みました。「春の雪」も
映画化されましたね。きれいな映画でした。
by coco030705 (2020-05-24 01:09)