前進座89周年で思い出す『遠山の金さん捕物帳』と『伝七捕物帳』 [懐かし映画・ドラマ]
前進座という歌舞伎劇団が、22日で創立89周年を迎えます。歌舞伎というと、マニアでない限り馴染みが薄いように感じるかもしれませんが、実際の演目は歌舞伎・現代劇・児童劇と多彩なレパートリー。さらに『伝七捕物帳』など時代劇ドラマでもおなじみです。(上の画像は下段右が時代劇専門チャンネルサイトより)
前進座とはなんだ
1931年、前進座は河原崎長十郎・中村翫右衛門らが結成しました。
1931年(昭和6年)。劇団「前進座」が旗揚げしました。中村翫右衛門、河原崎長十郎らの歌舞伎俳優が松竹の独占的興行姿勢に反発し旗揚げした劇団で、歌舞伎・時代劇・現代劇・児童劇と多彩な演目で今も活動しています。歌舞伎系劇団としては旗揚げから女優が在籍していた事も異例でした。 pic.twitter.com/nudWjFgKPZ
— 戦前~戦後のレトロ写真 (@oldpicture1900) November 21, 2016
前進座というと、かつては多くの座員が入党したり、毛沢東主義の中国共産党シンパを除籍したり、政見放送で志位和夫委員長とともに所属俳優が出演したりなど、日本共産党との結びつきがイメージされますが、個々には自由民主党石橋湛山氏、読売新聞務臺光雄氏、そして現在では林真理子氏ら、保守派からも支持を得てきました。
興行収入で座員の生活を保障する給料制が創立以来の理念ですが、それには財政的基盤が必要です。
その基礎を作ったのは、やはり1969年に中村翫右衛門(三代目)と息子の中村梅之助が『風林火山』に出演し、人気を博したことにあると思います。
とくに、1970年代は、中村梅之助がNET⇒テレビ朝日と専属契約を交わし、劇団としても番組の制作協力に携わったことで、財政的に潤っただけでなく、名前を売ったことで初めて東京・歌舞伎座、国立劇場大劇場、東京・日生劇場などに進出でき、全国からの「一億円募金」もあって自前の劇場(前進座劇場)もできたほどです。
前進座出身の主な役者
前進座に籍をおいたことのある主な役者です。
河原崎長十郎
河原崎三兄弟(河原崎長一郎、河原崎次郎、河原崎建三)のお父さんです。毛沢東文化大革命の中国共産党を支持して除名されてしまいました。
河原崎三兄弟(再掲) pic.twitter.com/MxFy6CkYJW
— 胡乱 (@uron45102) November 6, 2017
三兄弟は、岩下志麻がいとこにあたります。
加東大介
『続・社長漫遊記』(1963年、東宝)より
長門裕之、津川雅彦の叔父さんです。
戦争で抑留期間が長く、帰国後は政治色の強い演劇から距離を置くために退座したといわれています。
沢村国太郎(5代目)
松山英太郎、松山政路のお父さんです。
「怪奇大作戦」を観ていて、ふと野村洋役の松山省二さんが気になり調べてみたら、お兄さんがあの松山英太郎さんでした。確かにそっくりだものなあ。今まで気付かなかったのがおかしいほどだ。こういった芝居が出来る様になりたい。#怪奇大作戦#松山英太郎 pic.twitter.com/VtEjRDQrq6
— コバ・ジュン(小林淳一) (@kobajun1219) October 17, 2018
松山英太郎さんも前進座の舞台に上がっていました。
中村翫右衛門 (3代目)
面白そうな映画もやってないから座頭市の第一話を観る。
— じいや羊毛 (@jiiyayoumou) May 19, 2020
監督は森一生。
これはもう映画ですわ。
中村翫右衛門のPRビデオですわ。
美しいわ! pic.twitter.com/6M1YMFWfLT
中村翫右衛門は、中村梅之助のお父さんであり、現役で活躍する中村梅雀のおじいさんです。
ファミリーヒストリー「中村梅雀~名優の家に生まれて 祖父の事件の真相~」 - NHK 祖父は名優、中村翫右衛門。父は「遠山の金さん」などでおなじみの、中村梅之助。今回、祖父・翫右衛門が関わった、戦後まもなくに起きた、ある事件の真相が明らかになる。 https://t.co/er6kGdT9F3
— 伊勢アカフク (@t_k1970) September 9, 2019
中村梅雀さんも、いい役者だと思いますが、三代目中村翫右衛門の面構えと存在感は素晴らしすぎます。
なるほど、こういってはなんですが板の上の役者(舞台役者)だけに留めておくのは惜しい、映画やドラマの需要がある方だと思います。
次に、前進座の俳優が出演し、前進座自体が制作協力したドラマの代表的なものをご紹介します。
遠山の金さん捕物帖
中村梅之助の遠山の金さんのテーマ曲。親分&子分ズ??気前が良くて二枚目で???
— 西明石家 (@nishi_akashiya) September 22, 2017
遠山の金さん TVサイズ 親分&子分ズ https://t.co/FIocfpfHQ6
⇒遠山の金さん、一番印象に残る俳優は誰?
これまで遠山金四郎景元を演じた俳優はたくさんいますが、もっとも人気があるのが、中村梅之助演じる『遠山の金さん捕物帖』です。
「丸顔は時代劇で成功しない」と言われていたのを見事に覆しました。
中村梅之助版は、あとに作られる『遠山の金さん』のモデルとなりました。
遠山の景元は、普段は遊び人の金さんとして市中をうろうろしながら事件を追っているのですが、金さんに調査報告をする虎吉役の今村民治(現藤川矢之輔)、与力高崎靖之進(中村靖之介)、金さんのアジトである飲み屋の常連八五郎(瀬川新蔵)などは前進座所属で、下記の『伝七捕物帳』にも引き続き出演しています。
大変好評なドラマでしたが、東映太秦村(京都)の撮影の為、舞台公演に支障をきたすことから2年で終了します。
しかし、その人気と完成度の高さを他局が放っておきませんでした。
伝七捕物帳
@retoro_mode
— 自来也 (@jiraiya2771) August 12, 2018
『伝七捕物帳』(中村梅之助版)
指締め?エンディング主題歌
「江戸の花」(第26話 - 第160話OP、第1話 - 第160話ED)
作詞:千家和也
作曲:吉田正
唄:橋幸夫
「よーっ、ヨヨヨイヨヨヨイヨヨヨイヨイ、めでてぇな!」 pic.twitter.com/jdv9XiVQZF
惜しまれながらも番組を終了した中村梅之助に対して日本テレビは、東京調布の日活撮影所で撮影し、春夏クールはプロ野球中継が合計12回あるため、スケジュールも楽になるからと口説き落とします。
そこで制作されたのが、親指と人差指でヨヨヨイヨヨヨイヨヨヨイ、ヨイ、メデテえなと拍子木を打つ『伝七捕物帳』(1973年10月2日~1977年10月11日、ユニオン映画/NTV)でした。
『伝七捕物帳』DVDより
主役は黒門町(今の上野)の伝七(中村梅之介)。
江戸の岡っ引きです。もとは罪人。しかし、彼を見込んだ江戸北町奉行・遠山景元(中村梅之助の二役)が直々に紫房の十手を与えました。
ただ、奉行が直接雇うものに与える紫房とは与力。岡っ引きはその下の同心の裁量ではたらく身分です。
つまり、伝七は「岡っ引き」でありながら、実は与力の権限を奉行から与えられている、という設定です。
本作は、さらに前進座の出演者が増えました。
伝七の下っ引きであるかんざしの文治は今村民路⇒藤川矢之輔。
『伝七捕物帳』第32話より
なんと、現在の前進座代表です。
純庵文化講演会の後は前進座俳優「藤川矢之輔さん」の人情話「芝浜の革財布」を落語で!宮川町の舞妓さんも参加でこれから「おでん」の会が始まります!宮川町お茶屋「春富」好意!!
— 円 純庵 (@jyun_an) November 3, 2011
参加者大喜び!! pic.twitter.com/22D9eCgQ
『遠山の金さん』では飲み屋の常連だった瀬川新蔵は、今度は「赤っ鼻の五平」といって、いつも伝七とゲシュニン探しを張り合って負けてしまう岡っ引きです。
伝七のライバル的岡っ引きの赤っ鼻の五平(瀬川新蔵)、鼻の赤色メイクが回が進むごとにエスカレートしてませんかね? pic.twitter.com/zkVEard8w9
— 胡乱 (@uron45102) September 23, 2019
この赤鼻が人気で、瀬川新蔵は単独でCMに出たこともあります。
遠山の金さんも面白いですが、この伝七捕物帳も完成度の高い、何度見ても飽きない娯楽時代劇です。
橋幸夫の主題歌もよかったですね。
時代劇ドラマの復活を
昨今のテレビドラマは、時代劇が壊滅状態ですが、今回のコロナ禍で過去のドラマを放送するCSやBSの視聴が増えたといいます。
収束後も、引き続きひな壇バラエティには自粛いただいて、こうした娯楽時代劇を地上波でまた復活させてもらえないものか、などと考えています。
時代劇はお好きですか。
伝七捕物帳 DVD-BOX 1 - 中村梅之助, 高橋長英, 今村民路, 紀比呂子, 和田幾子, 中村靖之介, 瀬川新蔵, 陣出達朗, 中村梅之助
伝七捕物帳 [レンタル落ち] 全9巻セット [マーケットプレイスDVDセット商品] - 中村梅之助 高橋長英
今年はコロナのせいで、せっかく進出した国立劇場公演を中止したそうです。
by おっつぁん (2020-05-22 13:07)
懐かしいですね。銭形平次の寛永通宝をビシバシ投げるシーンも、心から離れないです。5円玉やたら集めましたね。
by ヤマカゼ (2020-05-22 18:52)
懐かしい時代劇ですが、ほとんど見たことが無いです。
by ヨッシーパパ (2020-05-22 19:22)
修学旅行で紫の房の十手買ったっけなぁ(^^♪
by pn (2020-05-22 20:31)
伝七親分は、私の子どもの頃のヒーローでした。
紫房の十手と正木流万力鎖とを使って、悪人を殺さずにつかまえる。
弱い人の味方になって、悪をくじく。
まじめ一本の早瀬の旦那も好きでした。
DVDを入手して、いまでも時々見ては涙を流しております。
by skekhtehuacso (2020-05-22 22:08)
昔…祖母とよく見ていた番組です。歌舞伎の方とは知りませんでした。興味深いです。
by mau (2020-05-23 00:03)
赤っ鼻、遠くから見ても目立ちそうなぐらいに赤いですね。
by ナベちはる (2020-05-23 00:56)
再放送でも時代劇は見たいです。
一番昔は「三匹の侍」だったかな・・・
古ければ古いほど見たい(笑)
by HOLDON (2020-05-23 06:05)
西荻窪に住んでいた時、
吉祥寺に行く途中で「前進座」の前を通りました。
なんとなく前衛劇の劇団かと思ってましたが
違ったのですね。
by そらへい (2020-05-23 16:06)