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土屋嘉男、東宝の変身人間シリーズ・怪奇空想科学映画シリーズで活躍 [懐かし映画・ドラマ]



一昨日、三橋達也さんをご紹介しましたが、その出演作品のひとつである『ガス人間第1号』の主演者、土屋嘉男さん(1927年5月18日~2017年2月8日)の生まれた日です。『美女と液体人間』『電送人間』など、東宝の変身人間シリーズ・怪奇空想科学映画シリーズで活躍しました。



土屋嘉男とは誰だ


土屋嘉男は1950年、俳優座養成所に2期生として入り、1952年に『殺人容疑者』(新東宝)で映画デビューしました。

Wikiによると、土屋嘉男は俳優座のトイレで、映画『七人の侍』のオーディションのために来ていた黒澤明監督と出会って着目されたといいます。

『赤ひげ』までの黒澤明作品のほとんどに出演し、俳優座正団員として舞台実績もほとんどないまま1954年には退座して東宝と専属契約します。

黒澤明作品以外には、下記の変身人間シリーズ、ゴジラシリーズなどの特撮映画など、東宝の看板映画に重要な役で出演しました。

東宝が専属契約制を廃止してからはテレビドラマに進出。

時代劇、刑事ドラマなど幅広く活躍しました。

ガス人間第1号


ガス人間・メインタイトル

ガス人間第1号』(1960年、東宝)は、本多猪四郎(本編)円谷英二(特撮)という2人の監督によって作られた特撮アクション映画です。

土屋嘉男は、パイロットになれなかった青年を、応募者の個人情報を入手した博士が自分の実験材料にして、いつでもガス状になることのできるガス人間にされてしまった役を演じました。

銀行強盗事件が起こり、犯人は吉祥寺・富田銀行の課長を殺害して逃走。

岡本賢治警部補(三橋達也)は、パトカーで必死に追跡しますが、五日市街道にある日本舞踊の家元・藤千代(八千草薫)の家の近くて見失います。

藤千代は老人鼓師(左卜全)と稽古中でした。誰も来なかったといいます。

警部補(三橋達也)には、東都新報社会部記者・甲野京子(佐多契子)という恋人がいます。

お互いの職業上、協力しあったり、秘匿しなければならないことを探り合ったりしていますが、京子はさっそく藤千代の取材に走ります。


銀行強盗は東海銀行でも起こり、行員の死因は血管に未知の気体の詰った窒息死でした。

一方、藤千代の金回りが急に良くなりました。強奪された紙幣と藤千代の使った紙幣が一致したため、岡本賢治警部補は藤千代を逮捕します。

すると、今度は大森銀行で事件が起こり、図書館に勤める青年(土屋嘉男)が、犯人は藤千代ではなく自分だと名乗りを上げました。

そして、犯行を再現すると言い、体が白いガスに変わったり、銀行の支配人(宮田洋容)を窒息死させたりしました。

だったらそこで逮捕すればいいわけですが、ガス人間はその時もガスになって逃げてしまいました。

さらにガス人間は、東都新報編集長(松村達雄)のインタビューを受け、自分が人体実験の失敗によって、いつでもガス状になることのできるガス人間にされてしまったのだと話しました。

ガス人間は、図書館で出会ってから藤千代に夢中になり、スポンサーになっていました。件の金も、田舎の土地を売った金だと言って藤千代に渡したのです。

釈放された藤干代は発表会を準備しますが、さすがに銀行強盗とわかったら金は受け取れません。

しかし、ガス人間は藤干代に、「君のすばらしい舞台を世間に認めさせてやりたいんだ」と訴え、藤千代はガス人間の気持ちを受け入れることにします。

警察では、田端警部(田島義文)が、発表会に現われるに違いないガス人間を会場ごと爆破させなければガス人間を殺すことはできない、生かしたままでは、ずっと捕まえることはできない、と決断。発表会のチケットを買い占めて爆破の準備を整えました。

当日、ガスを充満させて、発火装置にスイッチを入れれば爆破できるまでになりましたが、ガス人間はぬかりなく、発火装置のコードを切断していました。

そして演目が終わり、抱き合う藤千代とガス人間。そのとき、ガス人間の死角である彼の背中で藤千代は逃げられないと観念してライターで発火。

一瞬にして会場は燃え上がり、さすがのガス人間も最期となります。

ガス人間最後
『ガス人間第1号』より

ガスの充満した建物の中で、ガス人間と抱き合いながらライターで発火する悲しく壮絶なストーリーです。


このツイートによると、劇場内から拍手が沸き起こったそうです。

私の経験では、『男はつらいよ』の渥美清が若い頃、長い啖呵売のセリフを一気に言ったとき、拍手が起こったことがありました。

いずれにしても、役者冥利に尽きますね。




怪奇空想科学映画シリーズ



『ガス人間第1号』と、その2年前に制作された『電送人間』について、怪奇空想科学映画シリーズと東宝は名付けたそうです。

『東宝特撮映画全史』では、それに『美女と液体人間』(1958年)を加えて、変身人間シリーズと称しています。

土屋嘉男は、その全てに出演しています。

美女と液体人間



美女と液体人間』(1958年、東宝)は、1954年の「第五福竜丸事件」のあったビキニ水爆実験で、ずっと時間のたった東京に「放射能の雨」が降り、人間が液状化してしまったという話です。

4年後ですから、科学的にはさすがにあり得ないと思いますし、第二竜神丸(第五福竜丸がモデルらしい)とすれ違うと、液体人間に次々と液体にされ、2人がようやく逃げ帰ったなどという、被害者感情を逆なでするようなストーリーです。

ただ、当時はそれほど「第五福竜丸事件」が衝撃的で、世間の不安感を反映した作品なのだろうと私は解釈しています。

土屋嘉男は、刑事役で出演しています。



電送人間


電送人間』(1960年、東宝)は、中丸忠雄ら6人は、軍隊時代に金塊を横領します。

その際、横領に反対した中丸忠雄と佐々木孝丸は仲間割れで銃で撃たれますが、2人は生き残り、佐々木孝丸(博士の設定)の作った物体電送機を中丸忠雄が利用。

瞬時に移動してアリバイを作りながら、4人に復讐の殺害を繰り返したという話です。

事件を追う新聞記者が鶴田浩二、刑事が平田昭彦に土屋嘉男です。

このシリーズでは、白川由美が下着姿になるのが“お約束”で、今回ももちろんあります。

それ以外にも、映画に出てきた女性は海軍を思わせるセーラー服でお色気十分。今でも通用しそうです。

電送人間
『電送人間』より

ただまあ、個別のシーンは別として作品全体としては、特撮と精緻な心理描写を両立させた点で、『ガス人間第1号』が一番だと思います。

いずれにしても、この頃の東宝映画は、半世紀以上も前なのに、今見てもほとんど色褪せず面白い作品が色々ありました。






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コメント 8

十円木馬

『ガス人間第1号』というのは知りませんでした。
この年代は、『ナショナルキッド』や『恐怖ミイラ男』
など、優れた特撮映画やTVが多かったのではないでしょうか。
by 十円木馬 (2020-05-18 14:32) 

エンジェル

土屋嘉男さんに関しては全く分かりません。変身人間シリーズですか?ちょっと不気味ですが面白そうです。機会があれば観てみたいと思います。八千草薫さんは大好きな女優の一人です。昨年亡くなられてとても残念でした。
by エンジェル (2020-05-18 14:45) 

pn

昔の東宝特撮シリーズはそこそこ見たけど人間シリーズは興味が無かったんだよなぁ。おっさんになった今は人間シリーズの方が感情移入出来そうだ(笑)
by pn (2020-05-18 20:21) 

ヤマカゼ

昔懐かしの円谷シリーズですね。今にして思うとよくこの様な作品ができたなと感心します。
by ヤマカゼ (2020-05-18 20:28) 

skeptics

以前はテレビで放送していたような気がしましたが、最近は見かけませんね。
考えさせられます。
by skeptics (2020-05-18 21:43) 

mau

どれもゆっくりみたいです!
でも、今は時間がないなぁ…
by mau (2020-05-18 21:55) 

ナベちはる

今見ても当時と変わらない感動を味わえる作品、素敵です。
by ナベちはる (2020-05-19 00:42) 

犬眉母

ほんわかしたキャラクターとは違うは八千草薫さんですね。
by 犬眉母 (2020-05-19 15:35) 

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