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大坂志郎、邦画初の接吻映画俳優から70年代の名バイプレーヤーへ [懐かし映画・ドラマ]

大坂志郎、邦画初の接吻映画俳優から70年代の名バイプレーヤーへ

きょうは大坂志郎さん(1920年~1989年)の命日です。映画史上には、邦画初のキスシーンを演じた俳優として語り継がれますが、1960~80年代にかけて、ホームドラマや刑事ドラマ、時代劇などたくさんのドラマや映画のバイプレーヤーとして演じた姿が記憶に残ります。(上の画像はhttps://www.google.com/search?q=%E5%A4%A7%E5%9D%82%E5%BF%97%E9%83%8E&sxsrf=ALeKk01IhXdru53uLz6kr98JHCXiBCO1bA:1583182401266&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=2ahUKEwi-kZGF1vznAhWUFIgKHWbJDtYQ_AUoAXoECBYQAw&biw=1536&bih=722 より)



大坂志郎とは誰だ




大坂志郎は、まず日本映画史上最初の接吻映画として騒がれた『はたちの青春』(1946年、松竹)で、幾野道子とキスシーンを演じたことから触れなければならないでしょう。

リアルタイムはもちろん、その後も私はこの映画を見ていないのですが、占領政策を進めていたGHQの指導によるといいます。

恋愛映画にキスシーンは不可欠であると推進したことが多くの書籍やサイトには書かれています。
『はたちの青春』のキスシーンを、観客は興奮と困惑とともに受けとめた。映画人や評論家のあいだでも、歓迎する声がある一方で、物語上「必然性を欠いている」などといった批判もあった。https://bunshun.jp/articles/-/2598
まあ、今では当たり前になっていますけどね。

そのときは、「演じるにあたり2人の間にオキシドールを染み込ませた小さなガーゼを挟んでいた」(講談社編『昭和 二万日の全記録 第7巻 廃墟からの出発』講談社)そうです。

上映された5月23日が「キスの日」というのは私も初めて知りました。

映画、テレビドラマで幅広く活躍


しかし、大坂志郎さんが残した功績はそれだけではありません。

1960~80年代にかけて、映画とともに、やはり創成期から成熟期にかけてのテレビドラマを支えた名バイプレーヤーとしての実績が燦然と輝いています。

お嬢さん社長




お嬢さん社長』(1954年、松竹)は、昭和の歌姫といわれた美空ひばりが主演です。

祖父の代行で社長をつとめるものの、社内の悪徳幹部たちは、たとえ16歳の“お嬢さん社長”であろうが容赦なく策略を巡らせ、社長も堂々と受けて立ち戦うという話。

大坂志郎は、“お嬢”を応援する社長付きの社員役です。

だいこんの花



だいこんの花』(1970年~1977年、NET=現テレビ朝日)は、息子・竹脇無我のラブロマンスと、父親・森繁久彌の“暴走老人”としてのエピソードをおりまぜながら、それでもお互いを尊重しあう父子の日々を描いた全5部のドラマです。

森繁久彌は軍隊時代は元海軍大佐巡洋艦艦長。

当時の部下が近所に住んでいて、森繁久彌にいつも振り回されているという展開ですが、その部下の一人が大坂志郎です。

大坂志郎の妻が加藤治子ですが、加藤治子は森繁久彌の亡くなった妻にうりふたつ。

いつも2人は森繁久彌に優しいのですが、もうひとりの部下(2部以降は牟田悌三)の妻(春川ますみ)は、ときどき怒りを爆発させるのが見どころです。

石立鉄男ドラマシリーズ



おひかえあそばせ』(1971年4月7日~1971年9月22日、全13話)『パパと呼ばないで』(1972年10月4日~1973年9月19日、全40話)『雑居時代』(1973年10月3日~1974年3月27日、全26話)などは、おなじみ石立鉄男主演のホームコメディです。

大坂志郎は、『おひかえあそばせ』では定年後の第二の人生を送る6人の娘の父親、『パパと呼ばないで』でははやとちりで酒に飲まれる米屋の主人、『雑居時代』では繊維会社の部長を務める5人の娘をもった真面目なサラリーマン、という役でした。

どんな役でも、市井の庶民をしっかりと演じられていたと思います。

大岡越前



『大岡越前』は、『水戸黄門』と交代で放送されていた人気時代劇。

大坂志郎は、レギュラーで同心をつとめていました。

東映の重役俳優だった片岡千恵蔵も出演していました。

このように現代劇だけでなく、時代劇も実績を作られていました。



テレビ映画でもドラマでも


『パパと呼ばないで』(第3話)と『新だいこんの花』(第20話)と、大坂志郎さんは出演していませんが、『寺内貫太郎一家』(第1話)のシーンをそれぞれ比べてみます。

ちなみに、すべて向田邦子さんの脚本です。

大きな違いがあります。

『パパと呼ばないで』は、主要な登場人物(大坂志郎)でも背を向けているのに、

202003030303.png

『新だいこんの花』や

202003030340.png

『寺内貫太郎一家』は、必ずテーブルの手前の一辺を開けて座っています。

202003030305.png

それは、カメラに出演者の顔が入るようにそうしているわけですが、背を向けている大坂志郎が、右端の江守徹のセリフを受けて、次のカットでは酒を飲みながらセリフを言っています。

202003030321.png

しかし、そのカットを撮っているであろう位置にカメラはありませんでした。

いったい、いつ大坂志郎と向き合う位置に移動したのか。

実は、同じシーンを役者が何度も演じ、その都度カメラが違う位置から何度も撮って、ひとつのシーンとしてつなぎ合わせています。

これは、映画の撮り方なのです。

一方、『新だいこんの花』や『寺内貫太郎一家』は、手前の空いている一辺に向けて、正面と両脇から同時に3台のカメラを回しています。

ですから、1回の芝居で、セリフを言う登場人物の表情を追えるようになっています。

再現性と瞬発力。同じドラマでも求められるものが微妙に違っていました。

前者を「テレビ映画」、後者を「テレビドラマ」もしくは「スタジオドラマ」といいましたが、今は、カメラも小型軽量化し、撮影の仕方もおそらく変わったと思いますし、何よりフィルム撮影がなくなってしまいました。

もちろん、大坂志郎は、どちらであってもきちんと仕事をされました。

大坂志郎さんはもう没後31年になりますが、作品はご覧になったことはありますか。

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renbajinharuhi

私的には大岡越前の村上源次郎役ですね。
大岡越前のスピンオフ作品の疾風同心では主役の風間俊介(和田浩治)すっとびの辰三(高橋元太郎)は変わっていないのに村瀬源兵衛に名前が変わっていたのが不思議でした。

by renbajinharuhi (2020-03-03 10:21) 

pn

ポンと浮かぶのはやっぱ大岡越前ですね。って言うか何故か現代劇の印象が無い(^^ゞ
by pn (2020-03-03 10:26) 

扶侶夢

大阪志郎さんは見た事ない人はいないくらいの超一級バイプレイヤーでしたね。
でも邦画初のキスシーンを演じてたのは知りませんでした。岡田英治さんの「また逢う日まで」が邦画初のキスシーンだとばかり思っていました。
by 扶侶夢 (2020-03-03 12:32) 

エンジェル

ここに挙げられているドラマはほとんど見たはずなのですが、大坂志郎が出ていた事ははっきり言って覚えていません。覚えていたのは大岡越前だけです。でもこうして写真を見せていただくと「あ、確かにこの人ドラマに出てた」と思い出されました。温厚なイメージを持っています。
by エンジェル (2020-03-03 15:37) 

caveruna

大阪志郎さん、子供のころ、遠い親戚だと聞いた記憶があります。
by caveruna (2020-03-03 16:01) 

ヨッシーパパ

母方の叔父になんとなく似ていて、親近感を覚えていました。
by ヨッシーパパ (2020-03-03 18:46) 

八犬伝

知らなかったなあ
日本初の人だったのですかあ。
by 八犬伝 (2020-03-03 20:27) 

そらへい

ホームドラマ、時代劇、いつもおられましたね。
存在を強調しないけれど確かにそこにいる名バイプレーヤーでした。
by そらへい (2020-03-03 20:57) 

Boss365

こんにちは。
大坂志郎さん、名バイプレーヤーとしてお顔は存じてあげています。「はたちの青春」は全く存じ上げていないですが、日本映画史上最初の接吻映画に驚きです。「大岡越前」のちょんまげ同心姿はよく覚えています。また「パパと呼ばないで」の米屋の主人の記憶も多少ある程度です。やや斜めを見ながら滑舌良く話す印象があります!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2020-03-03 22:33) 

kyon

新ブログに伴いアイコンも新しくなりました。
今後ともよろしくお願いします^^
没後そんなに年月が流れたのですね。
by kyon (2020-03-04 00:06) 

ナベちはる

今では珍しくないシーン、最初にやったときは批判も出るというところに時代を感じます。
by ナベちはる (2020-03-04 00:32) 

ヤマカゼ

懐かしい顔ですね。
小さいころ、テレビで弥次喜多を見たことあります。
by ヤマカゼ (2020-03-04 06:47) 

クッキー

大坂志郎さんは味のある、無くてはならないベテラン
脇役さんでしたね。
by クッキー (2020-03-05 16:59) 

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