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脳性まひのバイオリニスト、健常者と戦うことをやめたある手紙 [障害者]

脳性まひのバイオリニスト、健常者と戦うことをやめたある手紙

脳性まひの若手バイオリニスト・式町水晶さんを特集した、『NHK HUMAN』のダイジェスト動画がFacebookのタイムラインに流れてきたので、初出は2018年6月だそうですがシェアします。健常者と「戦う道具」としてバイオリンを弾いてきた気持ちを変えたのは、一通の健常者男児からの手紙でした。



健常者だの障碍者だのってこだわっている自分の負け


バイオリニスト・式町水晶(みずき)さんは、現在演奏で全国を飛び回るバイオリニスト。



3歳で脳性まひと診断され、「手足のリハビリになれば」と母親の勧めで、4歳の時にバイオリンを始めました。

しかし、障碍者という理由でいじめられたので、式町水晶さんにとってバイオリンは健常者と「闘う道具」になりました。

「“努力しても頑張ってもどうせバカなんだよ、障碍なんだよ”とか言われたことがあったから、は? なんでそんなこと言われなきゃなんないんだよ。障碍者バカにしてんじゃないよと思って……」(式町水晶さん)

“健常者を見返してやりたいー”

式町水晶さんは、世界最高のヴァイオリニストになると心に決め、16歳でコンサートも開催しました。

“もう(健常者に)負けはしない”

そんなある日、コンサートを見に来た健常の男の子が、手紙をくれました。

「ぼくもみっくんみたいなバイオリニストになりたいです」

この手紙で、式町水晶さんの気持ちに変化が生じます。

「僕、障碍者と健常者で差別されるのが嫌いでここまで頑張ってきたのに、そうやって健常者だの障碍者だのって言っている時点で自分がこだわっているわけだから、その時点で勝てるはずがないんだなって(思った)」(式町水晶さん)

式町水晶さんは、闘争心を捨て、健常者にも心を開いて演奏者として新たな一歩を踏み出しました。

「結局僕、バイオリンが好きっていう感情よりも、人が好きだからやっているところが大きいんですよね」(式町水晶さん)

式町水晶さんは、やっと自分の本心に気づいたのです。


怨んでいたはずの健常者から「気づき」


誤解のないように一言いたしますと、脳性まひの経験者がすべて、式町水晶さんのようにバイオリンを弾き、自分の心のありようを流暢に表現できるわけではありません。

むしろ、式町水晶さんは、日常生活への支障がもっとも少ない方ではないかと思います。

それはそれとして、わたしは、「障碍者の自己実現」をこれまで何度も記事にしてきましたが、その中でもとくに印象深い動画でした。

障碍者の親御さんの中には、健常者との対話や交流を自ら閉ざしてしまう方々がおられることを、わたしは常日頃から感じています。

たとえば、

「障碍者が普通の高校に行くべきではない、行っても仕方ない」
「インクルーシブ教育なんていうのは、障碍者が健常者と同じことをさせられるから、メリットもないし障碍者に酷なだけである」

なんてことを主張する人もいるのですが、そこに実証的根拠が示されたことはありません。

せいぜい、自分の子どもは重い障害だから、健常者と関わってもたぶん負担にしかならないだろう、という主観だけ。

でも、そんなことはやってみなきゃ、わからないでしょう。

式町水晶さんのケースは、学校生活ではありませんでしたが、障碍者が、怨んでいたはずの健常者から「気づき」を得て、演奏者として一回り大きな自己実現への道筋を掃き清めました。

もし、式町水晶さんが、健常者は敵だという気持ちを徹底させ、「健常者なんかと関わりたくない」と、心を閉ざしたまま演奏者生活を続けていたらどうでしょうか。

きっと、「人が好きだからやっている」という、式町水晶さんの本心は生涯満たされることはなかったでしょう。

その演奏を聞く健常者にとっても、式町水晶さんの生き様も知ることはなく、障碍のあるなし関係なく素晴らしい演奏を評価するという、当たり前のことを経験する機会の損失につながりかねなかったように思います。



障碍者は健常者と関わらないわけにはいかない


繰り返しますが、これはあくまで、バイオリンを弾ける式町水晶さんの話です。

障碍のある人は、その度合いによっては、日頃から疎んじられる扱いを受けています。

が、そうであっても、一般的な障碍者と健常者の関わりとして通じるものはあるのではないかと思います。

私の長男は、先月ある高校のスクーリングに出席しましたが、8年ぶりに普通の学校の体育授業を受け、卓球やバトミントンを初めて経験しました。

高次脳機能障害で、柔軟体操が十分にできないのですが、親子スクーリングで、私のように体の硬いダサい親もいたので、さして目立つことはありませんでした。

卓球は、ラケットに2度しか当たりませんでしたが、そういう生徒はほかにもいましたから、自分が特別「浮いている」ことにもならず、またできないからといって咎められる授業でもなかったので、本人はすっかり「普通の人と一緒にやれた」ことに気を良くして、後日の療育デイでも、卓球の面白さについて周囲にエラソーに問いかけていたそうです。

おいおい、たった1回でもう語れるのか(笑)

でもこの経験で、社会復帰に前向きな気持を抱ければ、それが何よりの成果なんだろうなと思います。

この世の中に生きていく限り、障碍者は健常者と関わらないわけにはいかないのですから、そこから逃げていてはいけないし、また関わることで何かが生まれるかもしれません。

式町水晶さん動画は、それを示唆してくれたのではないかと思いました。

皆さんも、機会があれば障碍のある人とまっさらな気持ちで関わってみてください。人として得るものはきっとあると思います。

孤独の戦士 - 式町水晶
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脳性まひのヴァイオリニストを育てて~母子で奏でた希望の音色~

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エンジェル

素敵な若者ですね✨この方はバイオリニストとして立派に自立されて健常者を超えていると思います。
by エンジェル (2020-02-18 13:10) 

Boss365

こんにちは。
男の子からの手紙、子供はある時は「空気を読まない」ので傷つく発言をしますが、素直な気持ちの手紙はストレートに式町水晶さんに響いたみたいですね。発想の転換は重要と感じます。小生、中学生の時に軽度の脳性まひ・友人と机を並べて勉強していました。社会生活で難しい問題は多々あると思いますが、大人や健常者・障碍者も壁のない社会が理想と感じます!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2020-02-18 13:12) 

skeptics

>>「疲れたんですよ、もう闘争本能で生きるのが」

恨みや憎しみが、心の支えというのは不自然ということ。
憎む努力より、分かり合う努力のほうが前向きです。

考えさせられます。

by skeptics (2020-02-18 15:47) 

ヨッシーパパ

ハット目覚める瞬間があったのですね。
by ヨッシーパパ (2020-02-18 17:29) 

pn

勝ち負けにこだわり過ぎると疲れますよ。
by pn (2020-02-18 20:37) 

なかちゃん

とっても素敵なお話だと思います。
健常者 vs 障碍者なんて、健常者の中にもどれだけそう考えている人がいるのかは分かりません。
でも、実際に障害を持って生きている方がそう感じておられるなら、それは不幸だけれど事実なんだと思います。
そんなつまらない考え方に、一日も早くすべての人に気付いてほしいです。

by なかちゃん (2020-02-18 21:23) 

ナベちはる

回数が少なかろうともそれがちょっとしたことでも、出来ればとても嬉しいものだと思います。

それでいい方向に行けば万万歳ですね。
by ナベちはる (2020-02-19 00:45) 

ヤマカゼ

音楽とか楽器演奏は人を癒す力があります。
バイオリンの音色の原点と自分がなんでバイオリンをひいているのか、自分なりの答えをだしたのですね。

by ヤマカゼ (2020-02-19 07:10) 

HOLDON

どんな人も悟る、ということは誰よりも戦って悩んで苦労した後のことなんですね。
差別も憎しみも劣等意識も失くなる・・・
どんな人も手を取り合ってニッコリとできる・・・
人間のすばらしさを感じます。
by HOLDON (2020-02-19 07:37) 

Rinko

実は兼ねてからいつかやってみたいと思っていたハンディキャップヨガの勉強を今年はスタートさせようと、手始めに初級障がい者スポーツ指導員の養成講座を受講しました。
障がい者の方々から学ぶこと、すごく多いですね。
by Rinko (2020-02-19 08:14) 

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