So-net無料ブログ作成

『自己愛的(ナル)な人たち』(岡野憲一郎著、創元社)「自分はイケてる、それを認めない周囲や社会が悪い」のか [障害者]

『自己愛的(ナル)な人たち』自己愛性パーソナリティ障害考察

『自己愛的(ナル)な人たち』(岡野憲一郎著、創元社)を読みました。「自分はイケてる」「本当はもっと社会的に認められるべきだ」といった承認欲求が肥大化すると、たんなる自己陶酔にとどまらずに周りは振り回されます。著者が臨床心理士としての経験から自己愛について述べています。




自己愛とはなんだ


いろいろな側面がありますが、「自己愛」を一言で述べますと、「自分は優れていて素晴らしく特別で偉大な存在でなければならない」と思い込む、要するに一見自分を愛しているようでいて、実は「ありのままの自分を愛することができ」(Wikiより)ないことです。

私はふだんから、ブログ記事で「自己愛」を否定的、批判的に述べていますが、それがわかりにくい方もおられるかもしれません。

自分を好きになって、自分を大事にすることの何が悪いんだ」と。

好きかどうかは内心の自由であり、良いも悪いもありません。。

問題にしているのは、自分を「大事」にするあまり、都合が悪くなったら他者に嘘をついたり、裏切ったり、自分の不遇をもっぱら社会や周囲の人のせいにしたりして思考停止していませんか、ということです。

自分の価値観を絶対的な物差しにしてふるまい、社会(規範など)との整合性や、他者との相対化を放棄すれば、そのひずみは社会や他者が被ることになるのです。

つまり、「自己愛」というのは、結局、自分の価値を下げることになる、自分自身への独りよがりな陶酔や自己防御ということです。

イギリスの精神科医・ロゼンフェルドは、自己愛性パーソナリティ障害について、厚皮(thick skinned)と薄皮(thin skinned)という2タイプの分類をしていますが、本書でもそれを踏襲した説明がなされています。

厚皮型の自己愛者


厚皮型というのは、ツラの皮が厚い、厚顔無恥、という意味で、わかりやすい自己愛者だそうです。

ですから、このような特徴があります。

1. 他の人々の反応に気づかない
2. 傲慢で攻撃的
3. 自分に夢中である
4. 注目の的である必要がある
5. 「送話器」はあるが「受話器」がない
6. 見かけ上は、他の人々によって傷つけられたと感じることに鈍感である 

まあこれだけはっきりと図々しいタイプだと、さすがに「いやあ、自分はこんなんじゃないよ」と、ほとんどの方は思われるでしょう。

しかし、気をつけたいのは一見わかりにくい、次の「薄皮型」なのです。

薄皮型の自己愛者


もうひとつの薄皮型の自己愛者を、著者は「隠れナルな人たち」と呼んでいます。

一見、人嫌いな人たち、孤独の好きな人たち、自己主張に積極的ではない人たちといいます。

1.批判や拒絶に対する恐れのために、職業、学校活動を避けている。
2.好かれているという確信がないと新しい人間関係が作れない。
3.親密な関係でも遠慮がちであり、親密となるには批判なしで受け入れられていると確信したり、繰り返し世話をされるということを必要とする。
4.批判などに過敏であること。
5.不適切という感覚や低い自尊心があるため、新しい対人関係では控えめである。
6.自分が劣っていると感じている。
7.新しいことに取り掛かりにくい。
(以上の基準の4つ以上を満たす必要がある)。

用心深そうな薄皮型の自己愛者ですが、「恥」をかくことを非常に恐れているといいます。

自分が、他者に比べて劣っていたり、弱い存在だったりすることを自覚することに伴う、強烈な苦痛が耐えられないというのです。

ただ、これは学問的に典型的な、いわば極端な分類であり、実際には「厚皮」「薄皮」は表裏一体で、時として混在している。

著者は、小沢一郎氏を例に上げてそう述べています。

小沢一郎氏はともかくとして、そういう人は身近にいると私も思います。

たとえば、自分が創造主で王である自分のブログでは、どれほどの大人物なんだ、と思えるほど勇ましいキャッチコピーや社会評論記事の並んだ「厚皮」のくせに、リアルでは友達もいない「薄皮」で、社会人としてもさしたる功績も残していないとか。

今は、SNSやブログという、リアルで不本意な人でも、自己満足できる代償行為のようなツールがありますから、別に各ツールはそのつもりで作られたわけではなくても、薄皮型自己愛者の温床にならざるを得ないと思います。

でも最終的には、リアルな人対人。自己実現は、ネットの世界だけでは完結できませんよ。

自閉症スペクトラム障害(アスペルガー)的な自己愛者たち


著者は、「アスペルガー障害ないしはASDを持った人たちも、時々すごくナルシストに見えてしまうことがある」と述べています。

ASDというのは、いつぞやご説明した、ADHDの「多動」がないタイプです。

要するにこの著者は、発達障害者の一部も自己愛的だといっているのです。

しかし、この指摘は「書かずもがな」であり、差別や偏見助長の蛇足だと思います。

自閉症スペクトラム障害やASDは、他人の立場に立つ思考や、空気を読むことが苦手なのですから、現象的には「自己愛」のように見えるでしょう。

ただし、それは脳の障碍から、意図的にやらないのではなくそれができない(苦手)とはじめから分かっていることです。

その他、本書では婚活詐欺殺人の木嶋佳苗(恋愛詐欺のナルシシスト)、クリントン元米大統領、金正恩朝鮮労働党委員長、三島由紀夫らの自己愛を探り、医師、美人、母親など、いろいろな立場の自己愛も考察しています。

誰でも自己愛者になり得る


著者は、「自己愛はみんなが持っている。自己表現の欲求は自然なものであり、むしろそれがないほうが心配だろう」と述べています。

だからこそ、どこからが度を超えた「独りよがりな陶酔」かを、見極めておく必要があるのだと思います。

いかがですか。「厚皮型」や「薄皮型」、当てはまりましたか。

自己愛的(ナル)な人たち
自己愛的(ナル)な人たち

自己愛的(ナル)な人たち

自己愛的(ナル)な人たち

  • 作者: 岡野 憲一郎
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2017/11/10
  • メディア: 単行本



nice!(195)  コメント(12) 
共通テーマ:学問

nice! 195

コメント 12

風太郎

「like」と「love」
自分を好きになる、のと愛することは別なんですね。
by 風太郎 (2019-12-24 10:07) 

pn

厚皮の1、3、6です(^^ゞ
by pn (2019-12-24 10:17) 

Boss365

こんにちは。
難しいですね。小生の読解能力のなさに嫌気を感じます。
「厚皮型」は分かりやすく一般的な感じですが・・・
「薄皮型」を見分けるのは難しそうです。
リスト項目にある意味当てはまっている感じ?ナルかな?
お互いに本当の親友と思っている人は数名程度です。
今でもリアルな体験を重要視していますが・・・
ネット等の普及で知り合い方は広がりました。
自己愛の自己表現の仕方、気を付けたいですね!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2019-12-24 12:03) 

なかちゃん

どの部分をとってみても、少しずつ自分に当てはまるところがあるようにも見えるし、そうでないようにも思えるし、難しいですね(^^:
そういえば昨夜、いっぷくさんの記事に自宅のPCから伺おうとしたら、いきなりウィルスバスターが『危険です』と出ました。こちらのマシンの勘違いならいいのですが。

by なかちゃん (2019-12-24 12:59) 

犬眉母

「自分はイケてる」と考えるところが、すでにずれているかも。
評価は自分が自分に下すものではなく、他者が下すものですから。
by 犬眉母 (2019-12-24 20:10) 

skeptics

頷けますね、頷けます。
by skeptics (2019-12-24 21:22) 

チナリ

こんばんは。

当たっているところがあるような、ないような・・・。

私には自分自身の判断が難しいです。

by チナリ (2019-12-24 21:42) 

coco030705

こんばんは。
面白い分析ですね。こういるナルな人って、結構周りにいると思います。
さて、自分はどうなんだろうと思いました。自分ではまともなつもりですが、他人からみたらナルなところがあるかもしれませんね。自分を観察しなければいけないなと思いました。
by coco030705 (2019-12-24 23:09) 

mau

薄皮の定義でちょっとどきっとしました
by mau (2019-12-25 00:19) 

ナベちはる

「自分が好きでないと人も愛せない」ということもありますが、そこでいう「自分が好き」と「自己愛」ではレベルが違うはずなので、まずは自分自身はどちらなのかというのを分析する必要がありそうですね。
by ナベちはる (2019-12-25 01:14) 

いっぷく

コメントありがとうございます。

「厚皮」「薄皮」の特徴をあらわした箇条書きは、本書からそのまま引用しています。
by いっぷく (2019-12-25 05:12) 

Rinko

2タイプあるんですね。
それぞれを読んでいて誰かに当てはめてみたり、自分にあてはめてみたり。ホント、誰にでも多かれ少なかれその性質はありそうですね。
by Rinko (2019-12-25 09:27) 

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます