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『無罪請負人刑事弁護とは何か?』刑事司法、特捜検察、マスコミの問題点を鋭く指摘 [社会]

『無罪請負人刑事弁護とは何か?』刑事司法、特捜検察、マスコミの問題点を鋭く指摘

『無罪請負人刑事弁護とは何か?』(弘中惇一郎著、KADOKAWA/角川書店、kindle版)が、AmazonUnlimitedストアに入っていたので読みました。弘中惇一郎弁護士といえば、小沢一郎氏への国策捜査、薬害エイズ事件、三浦和義ロス疑惑事件などの弁護人を受任。それらを無罪にしたことで、“無罪請負人”の異名を取りました。


その辣腕弁護士が、日本の刑事司法の問題や特捜検察の腐敗ぶり、世論を真実から遠ざけるメディアの問題点などを提起しています。

本当に確固たる容疑があったのか


弘中惇一郎弁護士といえば、最近ですと、ルノー・日産・三菱アライアンスの社長兼最高経営責任者を務めていた、カルロス・ゴーン被告の弁護人としてテレビに登場しました。

カルロス・ゴーン被告については、経営者だから、労働者を酷使して、自分は悪どく金を儲けて私腹を肥やしていたのだろうと思っている人が多数かもしれません。

そういう人を弁護する弁護士というのは、悪人を弁護する批判されるべき弁護士と思われがちです。

そうでなくても、無罪判決を勝ち取った、陸山会事件の小沢一郎氏にしろ、薬害エイズ事件の安部英氏にしろ、ロス事件の三浦和義氏にしろ、マスコミには「怪しいだろう」と思わせられる悪人情報があふれかえっていました。

しかし、そもそも論として、彼らに本当に確固たる容疑があったのでしょうか。


小沢一郎氏については、土地取得の時期を、代金支払時ではなく移転登記時にしたという、別に誰も困らない「手続き上の『間違い』」だけで、秘書当事者を有罪にして刑事事件として処罰する国策捜査が行われました。

安部英氏は血友病の学者で、ウイルス学は畑違いであるばかりでなく、そもそも医療現場にいた時はエイズウイルス自体発見されていませんでした。

三浦和義氏の殴打事件は、凶器も発見されないのに実刑判決がくだされ、「疑惑の銃弾」事件は一罪一勾留の原則を破り、わざわざ保険金詐欺と殺人に分けて逮捕。さらに日本で無罪が確定したのにアメリカで起訴するというべらぼうな展開でした。


いずれも、容疑の根拠に疑問があるものばかりです。

しかし、日本の刑事裁判は有罪率99%以上といわれ、いったん起訴したものの有罪には威信をかけています。

そのために特捜検察は、マスコミ報道を利用して容疑者にした人を「悪人」として描き、世間の後押しを得て強引に捜査を進めているといいます。

たとえば、三浦和義氏のイメージ上の疑惑(目立ちたがり)の発端とされた、米軍ヘリで重体の妻を病院に運んだ際、発煙筒を手に持ってぐるぐる回す芝居がかった場面は、実はメディア側が考え出して三浦氏にやらせたものだったといいます。

真相は、明かされなければわかりませんね。

捜査機関や刑事事件のあり方を問う


では、なぜそのような強引な捜査が行われるようになったのでしょうか。

高度成長期から低成長、景気後退へと経済が失速していく中で、巨額の贈収賄事件が発生する素地は限りなく小さくなっていきました。

しかし、重要事件を扱うことで特別扱いされていた東京地検特捜部は、自身の金看板がプレッシャーとなり、微罪や形式犯でも無理やり立件することになったのではないか、その姿勢が冤罪にもつながっていると弘中惇一郎弁護士は述べています。

もう、東京地検特捜部は時代的役割を終えたのではないか、というのが本書の指摘です。

そして、刑事事件化と真相究明は矛盾するという指摘も興味深い。

つまり、刑事裁判とは、客観的な真相を明らかにするのではなく、被告人を処罰できるかどうか、そのための証拠集めを判定しているに過ぎないというわけです。

民事事件には和解という解決方法があるのに、刑事事件が「黒」か「白」でしか答えを出せないというところに無理があるのではないか、と懸念しています。

事実報道ですらあてにならない刑事事件


私も最初は、三浦和義氏は目立ちたがり屋で、そのためなら何でもしそうなイメージがありました。

しかし、無罪判決後も、万引疑惑などマスコミ報道が続くにつれ、「本来の容疑を離れてなぜそこまでして追い回して悪者にしたがるのか」と疑うようになり、アメリカで起訴されて自殺したことを報道で知った時は、「これは追い詰められた結果だろう」と憤りすら感じました。

小沢一郎氏については、当時からおかしいと思ったので、私は懐刀であった平野貞夫元参議院議員に話を持ちかけて、批判本をプロデュースしました。

といっても、私は政治家として小沢一郎支持というわけでもなかったし、平野貞夫さんとも一面識もないんですよ。あくまでも国策捜査批判の精神です。

当時はSo-netブログでも、小沢一郎批判当たり前で、そうでない私は浮きまくってましたけどねー

要するに、事件はマスコミ報道を鵜呑みにしないほうが良いということです。

本書によると、たとえば、薬害エイズ事件は、安部英氏の部下が証言したという「事実」がありますが、その部下は、検察から自分の責任になることを示唆されて、つまり脅かされて安部英氏が悪いように証言したのではないか、と書かれています。

つまり、憶測はもちろん、たとえ事実報道であっても、真実ではない場合もあるのです。

結局の所、弁護士ってなんだろう


たしかに、凶悪事件の被告人弁護士に対して、「なんでそんな奴の弁護なんかするんだ。被害者のことも考えてやれよ」と言いたくなる気持ちはわかります。

でも、その弁護士は、もちろん被告人を守っているわけですが、それだけでなく、権力とマスコミによって作り上げられたイメージと「(有罪ありきの)結論」と戦う、という刑事裁判そのもののあり方を守っているのだ、ということを本書で改めて知ることが出来ました。

良くも悪くも、弁護士ってなんだろう、という疑問を抱かれた方は、ぜひご覧頂きたい書籍です。

無罪請負人 刑事弁護とは何か? (角川oneテーマ21)
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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2014/04/10
  • メディア: Kindle版



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wildboar

直近でもあったように刑事で負けて民事で勝つということが時々あります。
裁判になる事件の一つの事実は一つなので、相反する決定がそのままになっていることがおかしいなぁと常々思っています。
刑事と民事が異なる判断をしたのであれば、我が国の司法として、司法自らが事実を追及すべきと思うのですがいかがですか?


by wildboar (2019-12-23 19:19) 

なかちゃん

仕事でな何度か弁護士の方と話したこともありますし、裁判の中で向かい合ったこともありますが、人それぞれだと思います。素人のボクから見ても『こやつきっとアホだ』みたいなのもいました。
せめてアホな弁護士にだけは巡り会いたくないです(^^;

by なかちゃん (2019-12-23 20:41) 

pn

弁護士もピンキリだろうからねぇ(^_^;)
by pn (2019-12-23 21:04) 

テリー

弁護士も、外科医と同じで、ピンキリですね。
アメリカのGood wife、Suits などを見ると、まさに、そう感じますね。
by テリー (2019-12-23 21:19) 

mau

報道されるのは偏ってることもあるので、当事者しかわからないことも多いのだろうと思います。
by mau (2019-12-23 23:37) 

ナベちはる

有能や優秀と言われるような弁護士もいれば、そうでない弁護士もいれば…

裁判沙汰自体がお世話になりたくないものですが、もしそうなってしまったときも後者の弁護士にお世話にはなりたくないです。
by ナベちはる (2019-12-24 01:01) 

kou

離婚裁判に巻き込まれたことがありますが、弁護士は勝訴を勝ち取りました。自分は法廷出席を何度も断りましたが、結果的に根負けし、聞き取り調書を提出することちなりました。その調書が決定打となった事には複雑な思いです。
考えるに、この弁護士は優秀だったのでしょうね。
by kou (2019-12-24 07:35) 

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