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『「してはいけない」逆説ビジネス学』川田利明ネガティブ開店談 [トレンド]

『「してはいけない」逆説ビジネス学』川田利明ネガティブ開店談

『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』(川田利明著、ワニブックス)を読みました。1990年代のプロレスブームを支えた“四天王”プロレスの1人である川田利明さんのラーメン店開店体験談です。



川田利明さんと言えば1982年、足利工大付属高から全日本プロレスに入団。

1990年代は、どんな大技をかけられてもカウント2.9で跳ね返し、果てしなく戦う“四天王プロレス”で、全日本プロレスに空前の盛況をもたらしました。

それが2010年を過ぎた頃、引退宣言もせず、いつの間にか『麺ジャラスK』というお店を始めていました。




川田利明
川田利明の近況を伝える『日刊ゲンダイ』(2012年6月12日付)
『日刊ゲンダイ』(2012年6月12日付)によると、飲食業はプロレスラー時代からの憧れだったとか。

「日本全国を転戦しながら、その土地土地のうまいモンを食べてきたからね。いつか自分の店を持ちたいと思ってて、本格的に準備を始めたのは4年くらい前かな。ハッスルがなくなり、無所属で新日本プロレスやノアのリングに上がってた頃に、高円寺にある知り合いの中華料理店で料理のイロバを教えてもらったんだ。最初のうちは赤字でも仕方ないと覚悟して始めたけど、ず~っと赤字だなあ、ハハハ」

「ず~っと赤字」と本人も告白していますが、本書は、「ラーメン屋なんて止めろ」「脱サラなんて考えるな」と、ネガティブな“アドバイス”に貫かれています。



人を使うのが苦手なので全て一人で切り盛り。

ラーメンのスープ作りはもちろん、唐揚げも自分で作るので、体がいくつあっても足りないわりに儲からない。

ベンツ3台を売り、20キロ痩せ、現役レスラー時代よりも病院通いが多くなった。

資金繰りの大変さやコスト管理、客対応などの苦労もこれでもかというぐらい出てきます。



異色のビジネス本という批評も多いですね。

しかし、冷静に考えると、それらは当たり前の話を書いているだけなのです。

ラーメン店は参入はしやすいけれど、1年でつぶれる店が圧倒的多数。

そもそも経営コンサルを行う人は、飲食業を、「利益を考えたらもっともやってはいけないジャンル」としています。

修行に時間がかかり、開店時のイニシャルコストがかかり、開店後も利益率がよくない上に、「味」という「表現物」なので、簡単に他人に作り方を教えられず、さりとて自分しか作れない味では自分は休むことができない。

その中で、川田利明さんが10年続いているということは、愚痴や禁忌を書きつらねながらも、「だからこそ、それを乗り越えてやっていることが楽しい」ということだと私は解しました。

現役時代からツンデレのキャラクターなんです、この方は。

最初にハードルを設ける“伝統”


ではなぜ、こんな表現をするのでしょうか。

ご本人の意図や自覚はわかりませんが、私が思うに、これはもう、川田利明さんが現役時代在籍していた、全日本プロレスの“伝統芸”ともいえるのではないでしょうか。

アントニオ猪木のマスコミ受けする挑発話を額面通りとりあげ、そこから逃げているかのような報道をされていたジャイアント馬場は、もともと用心深かった上に、信用できる記者としか話をしなくなりました。

マスコミに対しては、素直に答えず、はぐらかしたり、無視したりといった「ハードル」をもうけ、それを乗り越えた人だけをちょっと信用してみようか、という慎重な段取りをとっていたのです。

私もそれで、手荒な洗礼を受けたことがあります。

その昔、力道山の息子で、百田義浩という人が全日本プロレスに在籍していました。

私が、力道山について話を聞こうと電話取材をかけたところ、いきなり怒り出して、「訪ねてこないで電話で済ませるとは何事か、馬鹿じゃないの、気は確か? 何考えてんの……」と、エンエンと罵詈雑言と詰問を繰り返されました。

私は、「これではもう話は聞けないな……」と半ば諦めながらも、懸命になだめていたところ、一段落した百田義浩さんは、「…で、オヤジがどういう人だったか、という話ですが……」と、急に冷静に本題に入ったので、拍子抜けしたことがあります。

ジャンボ鶴田さんも、はぐらかす物言いをしながら、こちらを品定めするところがありました。

でもそういう人たちだ、ということをあらかじめ知らないと、なかなか理解はむずかしいでしょうね。

それはともかくとして、バラ色なこともいいですが、具体的な苦労話をきちんと書いている本書は、これまでにない貴重なビジネス書だと思います。

川田利明さんはきっと、本書を「想定内だ」と受け流して開業する人に期待しているのでしょう、

プロレスファンだけでなく、一般的な読み物として十分面白いと思いますよ。

本書は、10日に電子書籍版もリリースされました。

開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学
開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学

開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学

開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学

  • 作者: 川田 利明
  • 出版社/メーカー: ワニブックス
  • 発売日: 2019/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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pn

病院増えたってトコがワンオペの地獄道を物語る、味見もしてるから内蔵もぼろぼろだろうなぁ。
by pn (2019-12-12 11:44) 

なかちゃん

そういえばそういうプロレスラーがいましたね ^^
結構好きな選手だったんですけどね。そっか、ラーメン屋さんになっていたんだ(^^;

by なかちゃん (2019-12-12 18:38) 

ヨッシーパパ

職場近くの駅前でラーメン屋が何度も入れ替わり、途中でカレー屋も出来ましたが、結局チェーン店にラーメン屋に落ち着きました。
なかなか大変な商売ですね。
by ヨッシーパパ (2019-12-12 18:57) 

足立sunny

でも、まあ、すぐにつぶれる場合が多いとしても、誰でも開業できるっていうのはラーメン店の魅力ではありますね。
by 足立sunny (2019-12-12 20:18) 

starwars2015

スープの開発や仕込みは過酷そうですよね。
脱サラして飲食店でも開こうかなんて軽い思いで店を開くと
やけどしますね。
by starwars2015 (2019-12-12 23:18) 

mau

読んでみたくなりました
by mau (2019-12-12 23:42) 

ヤマカゼ

楽しく仕事ができるのはいいですね。
麺ジャラスk行ってみたいですね。
by ヤマカゼ (2019-12-13 06:59) 

犬眉母

>>ベンツ3台をスープに溶かした…

ラーメン屋さんだけでなく、作家としても
素質あるように思います。
by 犬眉母 (2019-12-13 14:07) 

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