きょうは、すまけい(須磨啓、1935年9月4日~2013年12月7日)さんの7回忌です。「アングラの帝王」と称されたほど舞台の実績は豊富ですが、映画では『キネマの天地』(1986年、松竹)で第29回ブルーリボン賞助演男優賞など各賞を受賞。映画『男はつらいよ』シリーズにも準レギュラーで出演するなど“山田組”で活躍しました。
『キネマの天地』
『キネマの天地』(1986年、松竹)は、松竹大船撮影所50周年記念作品と銘打ち、当時、年間2本制作されていた『男はつらいよ』を1本休んで制作。
松竹が、撮影所を大船に移転する直前の1934年頃の松竹蒲田撮影所を懐古しています。
当時の監督や俳優、女優をモデルとした人たちが出演しています。
馬の脚しか役が来なかった「出来損ないの役者」の渥美清と、自分が愛した女優が産んだ娘の田中小春(田中絹代がモデル)を有森也実、
緒方監督(小津安二郎がモデル)が岸部一徳、内藤監督(斎藤寅次郎がモデル)が堺正章、川島澄江(岡田嘉子がモデル)が松坂慶子、川島の恋人(杉本良吉がモデル)が津嘉山正種などなど。
日本共産党の大幹部が勧めたとも指摘されている、岡田嘉子と杉本良吉の逃避行。
その代役で田中絹代にお鉢が回ってきますが、うまく演じることができません。
すまけいは、映画監督役として田中絹代を厳しく叱りつけ、助監督の中井貴一がフォローします。
しかし、役者としてはコバカにしていた渥美清に芸の路の厳しさを諭された有森也実は、気持ちが吹っ切れます。
予告編が公式チャンネルからYoutubeにアップロードされています。
私は、いい映画だと思うのですが、興行的にはあまり振るわず、つまり商業的価値は与えられず、資料的価値のみを残したという、ちょっと残念な結果だったんですが、商業的表現活動の難しいところですね。
舞台は現存、しかし映画館は全滅
舞台となった松竹キネマ蒲田撮影所の跡地には、現在、大田区民ホール・アプリコが建っています。
そして、大田区民ホール・アプリコの前にある芝生の一画に、当時、撮影所の正門前を流れていた逆川(さかさがわ) に架かっていた「松竹橋」を模した橋柱が造られています。
蒲田というと「工場の街」と思われがちですが、このブログで
何度も何度も書いているように、京浜工業地帯の中核は羽田や森ヶ崎といった東京湾沿いの町で、蒲田や大森は、どちらかというと商業で発展した町です。
映画はその大きな柱だったのです。
蒲田は、松竹の撮影所があっただけでなく、映画館が多かったことでも知られています。
全盛期は合計19館。
それが平成になり、わずかに残っていた、蒲田西口駅前商店街(サンライズ通り)の、テアトルカマタ(東映系)、蒲田宝塚(松竹と東宝)が、今年閉館され、ついに映画館は全滅しました。
子供の頃からよく利用していた映画館でしたから、大都市集中型配給のシネコンに加え、時間が経つとDVDやテレビ放送されるビジネスモデルであるとはいえ、19館が全滅というのは寂しい限りです。
舞台や映画、テレビドラマで活躍
Google検索画面より
すまけいについては、以前も書きましたが、20年ぐらい前に、『
今は昔、栄養映画館』(竹内統一郎作)という舞台を見に行ったことがあります。
同作は、ネットで検索すると、現在も何度も演じられている、比較的小さい規模の小屋では定番の作品になっているようですね。
そのときの出演者は、木場勝己と、すまけいの2人。
木場勝己のプロデュースによるものでした。
ストーリーは、映画を完成させ、当日に上映会を控えた監督と助監督の2人が、上映があと5分というところで、些細な事がきっかけで口論になり揉め出します。
監督と助監督の、不毛で出口の全く見えない議論、しかしテンポの良いやりとりが延々と繰り返されます。
「あと5分」を60分以上、汗とツバをほとばしらせながら、たった2人だけで演じるのです。
間の良さ、演技の説得力がないと、「あと5分」を60分以上も見せることはできません。
舞台の小道具も上映会という設定の椅子が10脚あるだけ。
映画やドラマとも違う独自の世界で、素晴らしい舞台でした。
すまけいは、映画では、『男はつらいよ 幸福の青い鳥』(1986年、松竹)以降6本に出演しました。
テレビドラマにも多数出演しています。
すまけいさん、覚えていらっしゃいますか。
キネマの天地
男はつらいよ・幸福の青い鳥 [DVD]
今回の記事のすまけいさんや前回記事の佐藤充さんもですが
いっぷくさんの記事を通して亡くなられてたんだと知る事も多いです。
名前や出演作品はよく知らなくてもお顔は知ってる方も多いので、そんな年になられてたんだと年月が経ったのを感じます。そりゃ私も歳をとるはずだわ。
by poko (2019-12-07 11:44)
映画館って、今でも相次いで閉館しているんですね。
今年は興行収入が新記録だった?とかいう記事を読んだ覚えがあります。
天気の子、アラジン、トイストーリー4が100億円超えだとか。
家族など幅広い年齢層に受け入れられる作品が好調のようです。
by starwars2015 (2019-12-07 16:24)
若い頃の有森也実さんは、本当に可愛らしかったですね。
by ヨッシーパパ (2019-12-07 19:00)
そういえば寅さんは年2本でしたね、あまり映画館には行かなかったけど犬神家と寅さんは記憶に残ってる。あとはヤマトくらいか、もっと観に行ってるはずなんだがなぁ(^_^;)
by pn (2019-12-07 20:29)
蒲田は映画の町って思ってました。
キネマ通りの一回だけしか行けなかった洋食屋、美味しかったな
by mau (2019-12-07 23:07)
全盛期と打って変わって、ついに全滅…寂しいですね。
by ナベちはる (2019-12-08 00:42)
蒲田の街に撮影所があったことを知ったのは結構大人になってからでした。
大学の頃は池上線沿線に住んでいたのですが蒲田は怖いイメージがあり、ほとんど行ったこと無かったです。
万博は名古屋に住んでいたから行けたのでしょうね。
by こんちゃん (2019-12-08 04:06)
蒲田撮影所に一度行ってみたいと思っていたのですが随分変わったのですね。
by ヤマカゼ (2019-12-08 06:56)
すまけいさん、よく覚えています。
と言ってもボクの場合は『男はつらいよ』の中の場面だけですが、北海道は知床の船長だったりオープニングシーンの花嫁の父だったり、満男の会社の役員さんだったり・・・
キネマの天地、早速見たくなりました(^^)
by なかちゃん (2019-12-08 07:34)