『新ナニワ金融道』が、全20巻AmazonUnlimited(指定Kindle本定額読み放題)で公開中によりハマっています。青木雄二作『ナニワ金融道』の続編として、作者死去後に「青木雄二プロダクション」の作品として7年間連載されたものの単行本化です。
『ナニワ金融道』とはなんだ
マルクス主義者を標榜する青木雄二さんが、金融業界を描いたマンガ『ナニワ金融道』は、売上が1000万部を突破。5億円稼いだことは、以前このブログ記事に書きました。
『ナニワ金融道』のストーリーをかんたんに振り返ると、零細町工場の工員・灰原達之は、社長に頼まれて自分の健康保険証を使い、サラ金から金を借りて資金繰りに協力しましたが、その甲斐もなく会社は不渡りを出して倒産してしまいました。
就活をしようにも、サラ金から“つまんだ”ことが明らかになると不採用に。
やっと雇ってもらえたのが、帝国金融というマチ金(中小規模消費者金融)でした。
灰原達之は葛藤しながらも、金融屋として生きることを決意。
困って借りにきた人を、ときには会社の利益のために身ぐるみ剥がし、女性は風俗に沈めていきます。
灰原達之が非情というより、お金を借りる人たちは「損切り」という思考がすでに働かず、自分から泥沼にハマっているのです。
『ナニワ金融道』が大ヒットしたのは、ネットのコンテンツの極意にも通じる、
面白くてタメになってエロという3拍子が揃い、さらに切なさが加わったからだとおもいます。
1.闇金融というそれまで描かれたことのなかった世界が舞台だったこと。
2.『仁義なき戦い』のような“様式美”として極端な表現の大阪弁が使われマチ金の世界の独自性が演出されていたこと(会話の中にいちいち「お前ダボか」などと入れるなど)
3.設定や登場人物名がエロと皮肉で貫かれていること
4.灰原達之は人格的には極悪人ではないけど葛藤の末仕事を遂行していること
たとえば、街金から借りることを「つまむ」と表現したり、地上げの方法や逆にそれを阻止する方法を描いたりマンガは、『ナニワ金融道』が初めてでしょう。
マルクス主義者だから描けたのかもしれない
堀江貴文氏が、『ナニワ金融道』を評価しながらも、惜しむらくは青木雄二氏がマルクス主義者である、ということを『稼ぐが勝ち』という自著で書いています。
要するに、もし青木雄二氏が資本主義のファンだったら、『ナニワ金融道』はさらに完成度の高い作品になったのではないか、ということらしいのですが、私はその意見に賛成しません。
堀江貴文氏は、同作に対して、手形や地上げの仕組みや方法など、お金を転がすうわべのテクニックの部分しか興味がないから、その程度の発想になるのです。
『ナニワ金融道』で青木雄二氏は、お金に翻弄される「人」を描きたかったのです。
そして、「そこまで描くか」といいたくなるほど、えげつなく人の転落を描きました。
青木雄二さんは、マルクス主義者だからこそ、“資本主義の闇”に泣く人々を容赦なく描けたのです。
もし青木雄二さんが資本主義のファンだったら、資本主義に不都合なことは描き控えていたかもしれません。
といっても、「反自民」のような党派的な話は一切なく、むしろ『新ナニワ金融道』では、いわゆるプロ市民のインチキぶりも描かれています。
『新ナニワ金融道』とはなんだ
さて、『ナニワ金融道』が爆発的人気で終了したのが1996年。
その後、2006年に貸金業法が改正され、ヤミ金融といわれる悪質な違法業者を取り締まるとともに、「貸金業の適正化」として、取り立ての方法にも規制が加わりました。
債権回収会社はサービサーといわれ、無許可の債権回収は違法となったのです。
それによって、『ナニワ金融道』で描かれた債権取り立ての手法の多くは、過去のものになってしまいました。
そこで、翌2007年から、改正貸金業法を含み置いたストーリーを再構成して、続編が始まりました。
しかし、作者は亡くなっているので、作者名の後ろに「プロダクション」とつけて、おそらく当時のスタッフによって、『ナニワ金融道』を引き継いだ『新ナニワ金融道』として発表されました。
ストーリー
貸金業法改正で、債権回収業務がむずかしくなった帝国金融は、入社したての灰原達之の教育係を勤めた桑田澄男を独立させ、帝国金融が買い取っていた債権を引き取らせます。
灰原達之も辞表を書かされ、桑田澄男の新会社へ。
帝国金融から買い取った債権は、そのまま債務者に追い込みをかけると違法になります。
そこで、桑田澄男の新会社から新たに債務と同額を借りさせて従来の債務は精算させ、新会社が債権者になるなど、司直の手がまわらないよう工夫しつつ、債権を回収する“闇サービサー”としての仕事をはじめます。
全巻無料漫画が32,000冊以上読み放題!を標榜するスキマでは、『ナニワ金融道』『新ナニワ金融道』の一部が読めるようですね。
自分に山師の志向があったとは
本書を読み、金融業の底知れない恐怖が描かれているはずなのに、それでも読み進めているうち、「金融の仕事も悪くないな」などと考えてしまう自分がいることに多少なりとも驚いています。
しくじれば、あっという間に億単位の債務を抱えてしまうかもしれないのに、でも1度しかない人生だからこそ、どでかいリスクを背負った勝負をしてもいいのではないか、と思わせるのは、本書のストーリーが、『ナニワ金融道』にもまして高度で複雑になり、そしてより深く人間ドラマが描かれているからだと思います。
AmazonUnlimitedは、3ヶ月99円のキャンペーン(通常月額980円)だったので申し込み、今月が3ヶ月目なのですが、一気に20巻読み切ってしまい、さらに続きが読みたいので続けることにしました。
AmazonUnlimitedは、パソコンやスマホ、タブレットなどで読める電子書籍が読み放題のため、場所やお金のコストを心配せず、色々なジャンルの本を次々読めますから、本好きの人なら十分モトが取れるであろうサービスです。
先日ご紹介したKindle本など、加算課金を心配せずに読みまくりたい場合などは、1冊ずつ購入するよりは、AmazonUnlimitedがよいかもしれません。
金融の世界、興味ありませんか。
新ナニワ金融道 1
こんにちは。
「ナニワ金融道」はチラ見程度です。
「面白くてタメになってエロ」納得かな?(笑)
マルクス主義者かどうか?分かりませんが・・・
客観的に「搾取」を描いている点は多々あります。
「プロ市民のインチキぶり」は興味惹かれますね(笑)
最近、市民を名乗る人々の言動が気になっています!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2019-12-05 11:15)
行きつけの散髪屋さんに全巻置いてあるので、散髪に行くたびに読んでます。読むとけっこう勉強になります。
by ピストン (2019-12-05 15:12)
中居くんのドラマの「ナニワ金融道」シリーズでみていました。漫画にも興味ありますが、AMAZONのPrime Readingでは、読めないのが残念です
by わたし (2019-12-05 17:12)
学校では教えてくれないし、お金の話はタブー視する文化があるので新鮮な題材だと思います。
by skeptics (2019-12-05 18:49)
新ナニワ金融道シリーズがあったのですね。
ナニワ金融道は元スマップの中居君がドラマか映画に出ていましたね。
by ヨッシーパパ (2019-12-05 18:57)
借金取りに泣かされた身としてはこの類は見るのが辛くて。
あ、俺が借金した訳じゃないよ(笑)
by pn (2019-12-05 21:01)
ナニワ金融道は知っていましたが、読んだことはありませんでした。読んでみようかな。
by mau (2019-12-05 22:37)
「ナニワ金融道」は名前だけ聞いたことがあります。
by ナベちはる (2019-12-06 00:48)
電子書籍って、ちゃんと印税が作者に届いているんですかね。
カメラ市場も縮小していますが、本業界も厳しいようですからね。
by starwars2015 (2019-12-06 00:55)
連載を続けて見れるのはメリットがありますね。
by ヤマカゼ (2019-12-06 07:10)
漫画であること、そして中居くん主演のドラマになっていたことは知っていましたが、内容を全く把握していませんでした。おもしろそうですね^^
by Rinko (2019-12-06 08:14)
青木雄二さん、講演会のあとだったかで、少しだけお話したことがあります。確か遅い結婚された直後だったと思います。
by そらへい (2019-12-06 21:40)