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真・輪島伝 番外の人、元夫人の視点で語る輪島伝 [スポーツ]

真・輪島伝 番外の人、元夫人の視点で語る輪島伝

『真・輪島伝 番外の人』(武田頼政著、廣済堂出版)を読みました。元横綱であり、元プロレスラーであった輪島大士について、師匠花籠親方の娘であり元夫人である中島五月さんの語り口でまとめています。花籠部屋だけでなく、頂点に上り詰めた花田一族(二子山部屋)の消滅まで語っています。



輪島博(大士)は、日大で学生横綱を戴冠。日本相撲協会の花籠部屋入りしました。

そして、学生横綱としては初めて大相撲でも横綱になり、輪湖時代といわれる隆盛を築いて14回優勝。

その輪島が引退する頃、花籠部屋は親方が定年になるため、「政略結婚」で娘の中島五月さんが妻となります。

そこで五月さんが経験したのは、輪島が相撲の天才と言われながら、稽古嫌い(痛いことが嫌い)で金と女にだらしなく、社会常識ゼロであったこと。

年中飲み明かし、ホステスに入れあげ、稽古嫌いのつじつま合わせに、特に押し相撲の力士からは星を買い(要するに八百長)、桁違いの借金を抱えていました。

それだけでなく輪島の実妹は、商売の才覚もないくせに輪島の名前を使って事業に手を出し、これまた多額の負債を抱えていたため、なんと花籠の年寄名跡を借金のカタにし、相撲界を追われてしまいます。

戸籍上は離婚したものの、全日本プロレスには2人で挨拶に行き、輪島はプロレスラーに転向。

しかし、輪島は五月さんの養母(先代花籠親方の後妻)が亡くなっても葬式には来ない、自己破産したはずなのに借金取りがきたからと言って五月さんに2000万も無心、プロレスは痛いから長続きせず2年で退団など、身勝手なふるまいを続けたと五月さんは糾弾。

呆れて完全に縁を切ると、輪島は再婚し、2人の間にはできなかった子どもまで直ぐにできて甲子園球児になりました。

五月さんとすれば、いったい自分の人生は何だったんだと思うでしょうね。

輪島を、神が定期的に人間の生活をご破算にする「厄災」、もしくは「騒擾の神」ととらえています。

一方、花籠部屋から独立したのは、先々代若乃花の二子山親方こと花田勝治。

同じ阿佐ヶ谷に部屋を構えますが、理事を狙って師匠であった花籠理事を落とそうとした野心家で、年寄名跡問題では、どさくさ紛れに花籠名跡を自分のものにしようとするなど権勢をふるいましたが、欲の皮を張りすぎて脱税事件で相撲界からは退かざるを得なくなりました。

そして、あとを継いだ貴乃花一家は離散。次男の貴乃花が日本相撲協会を退職したことで、3横綱1大関の一族に、弟子たちも関取多数で隆盛を誇った花田一家は、相撲界から完全に消えてしまいました。

花籠部屋にしろ、二子山部屋にしろ、いくら隆盛を極めても、消え去るときはあっけないものだなあと思いました。

暴露することの意義


本書は、元横綱輪島の「負の真実」が元夫人によって徹底的に暴かれる、いわゆる暴露本のジャンルに入ります。

しかし、一般に、我が国では「暴露本」というだけで、良い評価をしない向きがあります。

「悪口」とか「陰口」とか、自分の立場だから知り得た情報を吹聴するのはフェアではないとか、そういった理由と思われます。

しかし、暴露者を軽蔑するのは自由ですが、だからといって暴露した内容の真偽や公益性の評価は全く別問題ではないでしょうか。

好き嫌いはどうあれ、「暴く」という行為なしに、真実にアプローチすることはできません。

私は、「暴露」が嫌いな人は、突き詰めると、人間が本当に好きではない人ではないかと疑っています。

人間の評価というのは弁証法的にできていて、往々にして欠点と魅力がコインの裏表にあるからです。

有り体に述べれば、汚い面があるから、きれいな面も見えてくるのです。

私も若い頃は、好きな芸能人のスキャンダルはショックでした。

でも最近は、「面白困った一面」として、その人をより深く知る契機として受け止めるようになりました。

今回だってそうです。

輪島はプロレスではがんばっていたのではないか


痛いことが嫌いで八百長に2000万円も使った輪島が、1試合「たった」5万円のファイトマネーで、タイガー・ジェット・シンに額を割られたり、天龍にシューズの紐をこすりつけられるように蹴られて額に靴の紐の後をつけたりしたのを思い出し、むしろ2年もよく頑張ったなと思いました。

ジャイアント馬場が亡くなったときはアメリカにいたそうですが、帰国後にお線香を上げに行ったそうですし、インタビューでも感謝の気持ちを述べています。

相撲で失敗した輪島ですが、ことほどさようにプロレスでは多少なりとも心を入れ替えていたことが伺えたので、むしろ輪島を再評価したほどです。

ですから、五月さんの意図とは違うかもしれませんが、私は暴露してくれてよかったと思います。

あなたはどう思いますか。輪島さんについて。暴露することについて。

真・輪島伝 番外の人
真・輪島伝 番外の人

真・輪島伝 番外の人

真・輪島伝 番外の人

  • 作者: 武田頼政
  • 出版社/メーカー: 廣済堂出版
  • 発売日: 2019/07/03
  • メディア: 単行本



nice!(206)  コメント(14) 
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コメント 14

Rinko

輪島ってそんな力士だったんですね。
花籠部屋、二子山部屋、まさに「栄枯盛衰」の文字を思い浮かべました。
by Rinko (2019-11-14 10:09) 

pn

盛者必衰ですね正に。
団子屋はどうなったんでしたっけ?
by pn (2019-11-14 11:42) 

犬眉母

暴露することで、むしろその人に
興味が湧くというのが
暴露本の理想かもしれませんね。
by 犬眉母 (2019-11-14 14:07) 

えくりぷす

輪島といえば、私にはとんねるずと一緒に出ていた面白いおじさんのイメージ(蛭子さんに近いかも)です。
暴露本は、あくまで一方の立場からのものと理解して読めば良いと思います。(Amazonの酷評レビューを見ると、バランスが取れる気がしました)
まあご本人の自殺未遂とか義母の首吊りとかあったそうなので、相当な恨みがあったのだろうと推測します。
by えくりぷす (2019-11-14 15:04) 

ヨッシーパパ

輪島は、少し、相撲を見ている時代に活躍していたので記憶にあります。
by ヨッシーパパ (2019-11-14 18:49) 

ピンキィモモ

こんにちは。
輪島は地元石川県出身の力士で、地元では悪くは言ってないです。
by ピンキィモモ (2019-11-14 21:53) 

そらへい

暴露されなくても、輪島の不行跡は世間では
ある程度知れ渡っています。
深い所まではわかりませんが,推して知るべしですね。
双子山部屋の隆盛と凋落は、本にしたら面白いかも知れませんね。

by そらへい (2019-11-14 22:11) 

starwars2015

なかなか手厳しい内容の本のようですね。
あまり公にならない角界のようすがうかがい知れる貴重な資料かも知れません。
by starwars2015 (2019-11-14 23:41) 

ナベちはる

「自分たちが知らないところを知れる」という意味では暴露本に興味がありますが、それで今まで持っていたイメージがガラリと変わってしまう可能性もあるので、そのあたりが怖いなぁと思います…
by ナベちはる (2019-11-15 00:36) 

ヤマカゼ

強い力士でしたが、そんな経歴だったとは。
見かけじゃ分からないですね。
by ヤマカゼ (2019-11-15 06:48) 

なかちゃん

女好き、痛いこと嫌い、なんとまぁ普通の人ではないですか。
好きの度合いはそれぞれとはいえ、女が嫌いという男がいたら、ボクはその人とはお付き合いしたくないし、痛いこと大好きなんてのはもっと精神構造を疑います(^^;

by なかちゃん (2019-11-15 07:00) 

kou

暴露本でそんな事まで・・・。
以前、貴乃花の実父が輪島だとどこかの週刊誌で読んだ記憶がありますが、言われると顔が似てるように思えた記憶があります。
by kou (2019-11-15 08:05) 

skeptics

輪島妹の年寄株質入れは事実ですから、借金もあったでしょうし、社会的糾弾は当然のことです。
ただ、「政略結婚」という不純な動機が気になります。
愛のない結婚はお互い様ではないかと??

by skeptics (2019-11-15 21:57) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございます。

by skeptics>輪島妹の年寄株質入れ

質入れではなく、広島の暴力団組織(書籍では実名)が絡んだ「預かり」の証文です。
輪島が、社会人として受忍の限度を超えたちゃらんぽらんだったことは確かです。

それだけに、プロレス入り後の「改心」は、プロレスファンのわたしとしてはちょっとうれしいという話です。
by いっぷく (2019-11-15 22:54) 

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