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災害時、重症心身障害児や高齢者用「福祉避難所」設置の必要性 [障害者]

災害時、重症心身障害児や高齢者用「福祉避難所」設置の必要性

『シリーズ「現場から、」』のダイジェスト動画が、FacebookのTBS NEWSで投稿されたのでシェアします。台風19号による影響は、福島県のいわき市の、重い障害がある子どもたちを預かる施設が浸水被害を受けたことを特集しています。



動画の内容を一口に述べると、災害時の避難所を作る際は、重障害児に配慮してください、という話です。

配慮するには、重障害児の何が大変かを明らかにしなければなりません。

元重症児の親であった私としては、他人事とは思えないし、それを伝えていくのも自分の役割と思うのでシェアします。


重い知的障害に加え、手足が動かせないなどの重症心身障害児を対象とした、福島県いわき市のデイサービス施設「どりーむず」を、動画では取材しています。

デイサービスというのは、障碍者や高齢者が、介護を受けたり機能訓練を行ったりする施設のことです。

「どりーむず」は施設が被災して、現在は仮の事業所で重症心身障害児を受け入れているそうです。

運営するNPOの理事長、笠間真紀さんは、自らも重度障害児のお子さんがいますが、施設に加えて自宅も被災しました。

全国から集ったボランティアの活躍で浸水対策し、市内の病院がスペースの無償提供を申し出たこともあり、デイサービスの臨時休業は1日で済んだそうです。

今回の災害で課題も浮き彫りになりました。

浸水時、笠間真紀さんが行った避難所は満員で、お子さんは12時間、車中泊を強いられたそうです。

また、災害があれば土砂など片付けをする必要がありますが、その際、安心してお子さんがいられる場所も必要です。

「土砂とか片付けをするのに重症児のお子さんを見ながら掃除するって……とてもできない」(動画で笠間真紀さん)

そこで動画では、笠間真紀さんが、障碍者や高齢者へのケアが必要な福祉避難所を早期に開く必要性を訴えています。

「車中」で何をケアするのか


「車中泊」というのは、救急車ではなく一般の車ですから、重度障害のお子さんのために作られているわけではありません。

重度障害児が長時間車中泊というのは、かなり厳しい条件での生活であると思われます。

たとえば、食事はおそらく、経腸栄養剤を鼻から経管摂取すると思われますが、点滴のように流動食の入った容器を、患者よりも上に吊るして流し込んでいくので、狭くて天井が低い車内で、どうやって流し込むのだろうと思います。

↓こんな感じですね。


鼻から胃袋までの管はずっと入れっぱなしなのですが、もし、お子さんが間違って管をとったりしたら入れ直すわけです。

経腸栄養剤もただ鼻から入れるだけではなく、前回入れた栄養剤がきちんと消化されているかどうか、胃の中のものを上げて確認してから行うのですが、そうした一連の作業が車中でうまくできるのかなと思いました。

あとは、自力呼吸に難のあるお子さんの、カニューレ越しの痰の吸引。


この画像でわかりますか、喉を裂いてはめ込んでいるカニューレの真ん中の穴から管を突っ込んで、気管支の痰を吸引するんです。

吸引動画も公開されていますね。


私は経鼻栄養も痰の吸引も、看護師さんがつきっきりで何日も特訓しましたが、痰の吸引は車中で衛生的な状態が保てるのか、という心配があります。

あと、狭い車中で十分に動けず、間違って気管支を吸引の管で突っついて傷をつけるとか。

怖いですよ、管を気管支に入れるときは……。

私は長男に対して、「刺さったらゴメンな」と心のなかで繰り返しながら恐る恐る管を入れていました。

痰の吸引は、当時は必死だったからやりましたが、今はもうやれないですね。

それはともかく、経管栄養や痰の吸引などは、重症児だけでなく高齢者でも必要な人がいます。

避難する場所としては、そうした人々のための福祉避難所が必要なのです。

障碍者も高齢者も他人事ではない


こう書くと、災害時の余裕のないときに障碍者なんかかまってられっか、という意見も一部にありそうですが、まあ、そういう人は、自分が重篤な病気や怪我で「災害弱者」にならないとわからないのでしょう。

高齢者や障碍者というのは、特別な人ではなく、誰でもなり得るということは、私はもう何度も書いてきました。

もとい、高齢者は「なり得る」ではなく、確実に「なる」です。生きてれば。

福祉避難所について、災害時に早期に設置するためにどんな働きかけが必要か、自治体に検討する機会を求めていきたいですね。

福祉避難所、必要だと思いませんか。

災害時における高齢者・障がい者支援に関する課題
災害時における高齢者・障がい者支援に関する課題

3.11東日本大震災と「災害弱者」 (避難とケアの経験を共有するために)

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pn

臨時の場所ならいざ知らず避難所指定されてる所はそこそこキチッとしてるのかと思ってたけどそうでも無さそうなのね。
by pn (2019-11-11 11:46) 

ヨッシーパパ

ここ数年、水害も含めて、大規模な災害を目にするようになったような気がします。災害対策も、一歩進めて、細かい配慮が求められるようになって来たようですね。
by ヨッシーパパ (2019-11-11 17:19) 

なかちゃん

弱い者から先にというのは当然なことで、子どもと年配者と障碍を持つ者とをまずは助けて、健康な者は最後にどこかの片隅でくらいの弱者保護の気持ちを持ちたいですね。
ただ、そんなことを書いてるボクでも、避難所にペットを連れてこられたらイヤですね。

by なかちゃん (2019-11-11 20:27) 

ナベちはる

車中泊は普通でもなかなか出来るものではないので、それを災害時にとなると焦ったりしてなおさら出来なくなりそうで、何が起こるか分からなくて怖いです…
by ナベちはる (2019-11-12 00:33) 

ゆうのすけ

日本はさらに高齢化が進みますものね。
先日も別の番組だったか 避難所の在り方について取り上げていた番組を見ました。簡易トイレの話題もやっていましたね。自治体はもちろん国も もっと力を入れなくてはならない政策や政治の在り方に重点を置いてほしいです。消費税は福祉にすべて向けてほしいとも思います。☆彡
by ゆうのすけ (2019-11-12 01:55) 

ヤマカゼ

福祉避難所の設置、運営時方法とか、設備の充実度とかいろいろ思案しなければいけないことがありそうですね。
今回の台風の影響の大きさがいかに甚大だったかわかりますね。来年はどうなるのでしょう?地球規模では氷河期らしいのですが。
by ヤマカゼ (2019-11-12 06:59) 

HOLDON

同意します。
高齢者は痰で窒息します。
私の父親は痴呆症になって最後は痰による誤嚥性肺炎でなくなりました。
そのとき痰の怖さを始めて知りました。
そして私も。
私はフルートを吹くのですが息を吸う時は一瞬。
風邪をひいている時で痰が一瞬で気管に入り肺炎になったことがあります。
まだ若いので助かりましたけどね。


by HOLDON (2019-11-12 07:49) 

kou

障害者の方の受け入れを拒否した避難所があったと報道で知りましたが、やはり必要性を感じます。
特に経管栄養の方は特別なケアが必要ですから、災害が頻発している昨今、避難所の整備は急務だと思います。
by kou (2019-11-12 07:57) 

Rinko

障がい者や高齢者向けの避難所の確保は大切ですね。
自治体や病院が連携し合って早急に考えていく必要がありますね。
by Rinko (2019-11-12 08:11) 

扶侶夢

いつの間にか「弱きを助け、強きを挫く」という言葉がなくなりました。時代と言ってしまえばそれまでですが…。
障碍者、高齢者、諸々のハンディキャップを負った人たちの「扶助教育」を学ぶ機会として、福祉避難所を実際に経験するというのも行政の教育機関でなら(その気があれば)出来る仕事なんですけれどね。
by 扶侶夢 (2019-11-12 10:08) 

そらへい

私も父の痰の吸引をやりましたが怖かったですね。
何よりあの吸引の音が嫌でした。
その後、姪がそんな目に遭うとは思いもよりませんでした。
姪は今はカニューレがとれました。とりあえずですが。
by そらへい (2019-11-12 21:03) 

犬眉母

介護の器具だけでなく、医療スタッフも
行動をともにする介護クルーとしての
避難先が必要ですね。
by 犬眉母 (2019-11-14 14:16) 

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