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『ブロンドの毒殺魔』アラバマ州家族ヒ素殺人事件容疑者の改心 [トレンド]

『ブロンドの毒殺魔』アラバマ州家族ヒ素殺人事件容疑者の改心

『ブロンドの毒殺魔』(神崎順子作、ユサブル)を読みました。1975年、アメリカ・アラバマ州アニストンで起こった、家族ヒ素殺人事件容疑者の生き様を描いた実話マンガです。この事件も話題になり、現在もネットで検索すると詳細を知ることができます。



浪費癖のある主婦が、保険金欲しさに夫や子どもを手に掛ける凶悪事件で逃亡。

しかし、地味な工員と知り合い改心するという、ドラマのような実話です。

あらすじ


本作の主人公は、マリー・ヒリー。

世界恐慌のド底辺にある1933年に生まれた彼女は、共働きの両親からかまってもらえないかわりに、高価なものでも次から次に買い与えられ、わがままで物のありがたみを教わらずに大きくなりました。

さらに美人でもあったことから、自分が中心に地球が回っているかのようなワガママで強欲な学生時代を過ごし、「何でも買ってくれる」事を約束した夫と学生のうちに結婚。

一男一女をもうけた後も、長年染み付いた浪費癖はなおりませんでした。

そのため借金は増え続けましたが、そんなときに夫が急死。

まとまった保険金を得た彼女は、保険金で借金を清算した後も浪費を続けます。

すると、今度は自宅が火災になり、火災保険や動産保険、盗難保険などの保険金が支払われました。

それでも借金に追われて逃げ回る彼女に、亡夫の両親が「家で暮らしなさい」と勧めます。

そして、亡夫の母親が他界。

それだけでなく、実の娘までが、父親と同じ症状で入院します。

娘の体内からは、多量のヒ素を検出。

警察が墓を掘り起こすと、死後4年の亡夫の亡骸は、ヒ素特有の防腐作用で腐敗しておらず、亡夫の母親の肝臓からもヒ素が検出されました。

逮捕されても多額の保釈金をポンと払ったマリー・ヒリーは逃亡します。

数カ月後、フロリダに流れ着いた彼女は、11歳サバを読んで髪の色を替えて造船工と知り合い、一緒に暮らすようになります。

造船工は給料は安く貯金もなしという、彼女の価値観とは相容れないはずの男でしたが、彼女が病気で化粧をしていないときでも、変わらず優しくしてくれることで情にほだされ、悪い癖(ヒ素殺人)は使えず、優しくされると罪の深さが胸をえぐるからと、心臓の病気により入院先で死んだことにしていったんは別れます。

しかし、彼女は造船工を忘れられず、双子の妹という設定にして、自分から造船工のところに戻ってきます。←※造船工も気づけよ

hilley_3.jpg
https://www.madisons.jp/murder/text/hilley.html より

彼女がやっと人並みの幸せを実感できた矢先、警察が彼女を連行します。

といっても、実は同名の麻薬密売人と間違えられただけなのですが、自分の過去の犯行がバレたと早合点した彼女は、自分からうたってしまい、逮捕されます。

事情を知っても、出所を待ち続ける造船工。

彼女はその誠意に応えようと模範囚で過ごして3日間の仮釈放を得ましたが、別れを告げずに3日目の朝、造船工の元を去り、その4日後、彼女が子供の頃に住んでいた家のポーチで、全身ずぶ濡れで体温の低下による心不全のために死亡しました。

本書は、マンガ図書館Z、紀伊國屋電子書籍Kinoppy、AmazonUnlimitedなどで読むことができます。


過保護はネグレクトの一形態か


本書の宣伝コピーは、「殺人・変身・逃亡の果てに悲惨な末路を歩み”アメリカの福田和子”の異名をとる稀代の女犯罪者の人生をスケール感たっぷりに」と書かれています。

が、家族の命を奪うことをしても人間らしい優しさに包まれた本当の幸せを経験し、逮捕されても男は待っていてくれたのです。

刑務所に帰って、残りのおつとめをしてからでも造船工は待っていてくれたかもしれませんが、自分の罪を自分自身が許すことができず、贖罪のつもりで命をたったのでしょうから、「悲惨な末路」とも違うような気がしました。

それにしても、またしても「不幸な犯罪の背景に毒親」ですね。

毒親の三要素は、過干渉、暴力、ネグレクトといわれますが、今回は物を買い与えて済ませるということで、ネグレクトの一形態といえるかもしれません。

あまりダメダメと押さえつけてもいけませんが、無原則に何でも買い与えるのは考え直したほうが良いですね。

ブロンドの毒殺魔~夫、実母、娘を手にかけた女~/ザ・女の事件Vol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)
ブロンドの毒殺魔~夫、実母、娘を手にかけた女~/ザ・女の事件Vol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)




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コメント 9

pn

最後は自分自身を裁いたのか、罪の呵責ってやつをもっと早く感じてれば幸せになれたのかな?
にしても造船工、マジで妹と思ってたのだろうか?(^_^;)
by pn (2019-11-10 12:03) 

犬眉母

あちらの刑法ですから、たぶん懲役100年とかではないでしょうか。
待たせたら相手の人生を棒に振る、ということも考えたと思います。
by 犬眉母 (2019-11-10 13:41) 

そらへい

豊でも、我慢を教えられず育った子は気の毒ですね。
ほとんどの子は、多かれ少なかれ我慢を強いられる物なのですが。
それでもその犯罪の大きさの悲惨さのわりには救いのある話でした。
by そらへい (2019-11-10 13:50) 

starwars2015

堕ちに堕ちた人間を、自然に改心させる造船工って、
いったいどんな人物なんでしょう。
お金ってコワイですね。
by starwars2015 (2019-11-10 18:49) 

ヨッシーパパ

海外の事件に、広がってきましたね。
by ヨッシーパパ (2019-11-10 19:17) 

こじろう

はぁ・・・感想が「凄まじいな」の一言しか出なかった ( ゚Д゚)!
by こじろう (2019-11-10 19:40) 

エンジェル

毒親はそこらじゅうにいるような気がします。まずは愛とは何かを学ぶ(教える?)のが先決ですね。
by エンジェル (2019-11-10 22:07) 

ナベちはる

実の親や子供まであやめてまで…恐ろしいです。
by ナベちはる (2019-11-11 00:53) 

なかちゃん

何かを買い与えることと愛情とをはき違えている親がたくさんいますね。
いや、親だけでなく、その親(爺&婆)の方がひどいかな?
そこから考えないといけないのかも(^^;

by なかちゃん (2019-11-11 07:12) 

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