『魔性の中年女~杉並資産家老女殺害事件の黒幕~』(神崎順子、ユサブル)を読みました。1989年に起こった東京杉並の資産家老女詐欺殺害事件です。資産家老女から男女3人が騙して資産を奪った上に殺害し、さらに仲間割れから1人が射殺された事件です。
あらすじ
事件名は正確には、杉並資産家老女ら2人殺害事件 (準広域重要5号事件)といいます。
広島で、夫と3人の子供を捨てた女と、事業がうまくいかない男が、駆け落ちのように東京にやってきて起こした事件です。
事件は、その内縁関係の2人が主犯ですが、本書は女性主導で描かれています。
中央高速道路高架下に捨てられたトランクから、人間の腐乱死体が発見されました。
都内杉並区の資産家老女と身元は判明。
老女の不動産は売却されていました。
逮捕されたのは、どこといって取柄も特徴もない40代の女。
食い詰めた主犯2人は、女が住むアパートの大家である老女に狙いを定め、孤独な独居老女に取り入ります。
そして、病気で入院中の老女の長女と、主犯男の元部下を偽装結婚させ、老女の身内になります。
「偽装」というのは、長女も知らないでっちあげの婚姻届で、主犯女を信じ切っている老女は長女に確認もとりません。
しかし、不動産権利証は、老女の長男が持っていることを知った主犯女は、保証書を作成して土地を売却します。
保証書というのは、所有者が登記済証(権利証)を紛失した場合の代替書類です。
3人は2億8000万円を手にします。
用が済んだので、主犯女は主犯男に命じて老女を絞殺。
分け前を巡って、元部下ともめると、またもや主犯女は主犯男に命じて元部下を射殺。←つまり拳銃まで持っていた
さらに元部下の首から上を切断して、見つかっても身元確認を困難にします。
元部下の胴体は、1年後に発見されます。
指名手配の2人は茨城でスナックを経営していましたが、4年後の1995年、主犯男がテレクラで知り合った女に覚醒剤を使ったことであっけなく逮捕。
主犯男は直接手を下したので、死刑が求刑され執行されました。
一方、主犯女は懲役5年です。
もし、本書のとおりなら、主犯女の懲役5年は少なすぎやしないかと思いました。
本書は、紀伊國屋電子書籍Kinoppy、AmazonKindle、マンガ図書館Zなどで読むことができます。
不動産の法律を変え加害者報道にも影響
この事件は、社会的に2つの影響を与えました。
ひとつは、
不動産登記法がなんと105年ぶり(2004年)に改正されたことです。
事件の経緯から、不動産の保証書制度と予告登記制度がなくなり、資格者代理人による本人確認制度が導入されることになりました。
もうひとつは、
容疑者側のプライバシー配慮です。
事件は、倍賞千恵子と岩城滉一により『闇に咲く女 杉並老女殺人事件』(フジテレビ)としてドラマ化されましたが、当初の放送予定日だった1993年3月19日当日に、突然放送中止に。
「放送直前に容疑者の家族の関係者から「家族の気持ちを考え実名での放送に配慮してほしい」と連絡があり差し換えになった。」(1993年3月31日付朝日新聞)のです。
「関係者」というのは、Wikiによると「犯人(当時はまだ逃走中であった)の子息が通う学校」だそうですが、これでお蔵入りとなり、結局ドラマはその後も放送されませんでした。
その後の松本サリン事件で無実の人を犯人として実名報道して問題になって以来、容疑者の実名報道はニュースですらメディアは慎重になりました。
一方で、被害者側や、事故の犠牲者などはいまだに晒しまくりです。
メディアが加害者側に「優しい」理由
この放送中止は、メディアが、なぜ
事件加害者の人権に優しく、被害者や事故犠牲者に優しくないのか、その理由を考えさせてくれます。
容疑者の段階では冤罪もあるし、今回の事件のように関係者からねじ込まれると、後々名誉毀損の問題が出てくるので、メディアは容疑者の実名さらしには慎重なのです。
一方、被害者や犠牲者は、加害者よりも客観的に特定しやすく(つまり間違う確率が少なく)、また名誉毀損というのは、真偽に関係なく「事実を摘示」すると該当しますが、亡くなった人に対しては、それが虚偽でない場合は名誉毀損にならないことになっています。
ですから、死者に対するプライバシー暴きなど加熱報道は、報道されている内容が虚偽でさえなければ、どんなにエグい覗き見やセンセーショナリズムであろうが、被害者・犠牲者本人に対しては法的にはシロというわけです。
つまり、メディアがプライバシーに配慮するかどうかは、訴えられたら困るかどうかだけで、当事者の人権に対する配慮ではないと思います。
それはともかくとして、独居の高齢者に言い寄ってお金や不動産を巻き上げ、挙げ句に口封じで命まで奪う事件はその後もあとを絶ちません。
高齢者ご自身だけでなく、独居高齢者の身内がおられる方も、知っておいていただきたい事件です。
魔性の中年女~杉並資産家老女殺害事件の黒幕~/ザ・女の事件Vol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)
こんにちは!
神戸市の教師によるいじめ事件もそうですが、
日本って加害者の人権ばかり保護、被害者は
マスコミなどによって丸裸にされます。
by Take-Zee (2019-10-25 10:36)
刑事ドラマ以上の凄い話ですね。残された被害者の家族は、二重の苦しみを味わうことになるわけで、本当に不合理だと思います。
by えくりぷす (2019-10-25 11:14)
結婚までぎそうされたらたまりませんよね。
ホントに恐ろしい事件だと思いますが、ま、ボクは狙われるほどのお金は持っていないので大丈夫でしょう(^^;
by なかちゃん (2019-10-25 12:47)
そんな真相だったのですか。大家さんも大変ですね。
by 足立sunny (2019-10-25 14:08)
お菓子のお供は、朝の野菜ジュースです。^_^
by ヨッシーパパ (2019-10-25 17:50)
欲望だけのむちゃくちゃな犯罪ですね。
5年の服役を終えた女は
その後どうしているのでしょう。
by そらへい (2019-10-25 21:00)
倍賞千恵子さんはイメージ的に合ってるかも。
いや、犯罪者という意味ではなく、どこといって取柄も特徴もなさそうで、でも相手を虜にしていく深い魅力があるという・・
by skeptics (2019-10-25 22:28)
やったことに対して5年の服役は、かなり短すぎると思いました。
by ナベちはる (2019-10-26 00:25)
まあドラマは実名はやめといてあげても良いと思うが。
容疑者の時点なら名前伏せてもいいけど刑確定してんなら加害者は立派な犯罪者だからそこで名前出せばと思ったけど犠牲者の名前が出る理由はまさに死人に口無しってーのは気に入らんなぁ。
by pn (2019-10-26 06:16)