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医療的ケアが必要な子どもが学校に通えるかどうかの決め方 [障害者]

医療的ケアが必要な子どもが学校に通えるかどうかの決め方

医療的ケアが必要な子どもが、学校に通えるかどうかの決め方が問われるダイジェスト動画が、FacebookのNHK1.5チャンネルで投稿されたのでシェアします。『学校に通いたくても通えない“医療的ケア児”がいる。先天的な難病がある9歳の萌々華さんもその一人。』という動画です。




先天的な難病を持って生まれた9歳の萌々華さんの話です。

週3回、1日2時間の訪問教育を受けています。



萌々華さんは医師から「小学校への通学も可能」と言われているのに、学校からは「受け入れ体制が作れない」と断られたそうです。

というのも、医療的ケアが必要な子どもが学校に通えるかどうかは、教育委員会や学校の対応により大きな差があります。

つまり、同じ障碍のお子さんが、かりに学校に通えるお墨付きを医学的に与えられていたとしても、A市では学校に通えて、B市では認められない、ということが現実にあります。

つまり、本人の責任ではなく、そのときの担当者とのめぐり合わせ、運不運なのです。

萌々華さんの授業は、教員の訪問によるマンツーマン。

というと、何か家庭教師のような密度の濃い教育のように聞こえますが、学校生活はクラス授業で友達との関わりや集団生活を学ぶ場ですから、「私ができないところは友達関係」(訪問教員)という限界があります。

萌々華さん本人のインタビューでは、「学校でお友達と一緒に勉強したいとは思わない?」という問いに対して、

全然。まだ(学校に行ったことがないから)そういうのが分からないから

と答えています。

私は学校時代、学校に行きたくないときのほうが多かったですが、それは実際に行ったからそう思えるのであり、行かせてもらえないお子さんが、「分からない」というのは、それとは全く意味が違う切ない答えだと思います。

同じ自治体でも地域庁舎で異なる


医師から「小学校への通学も可能」と言われているということは、拒否する理由がありませんから、自治体によっては受け入れる場合もあると思います。

実際に、医療ケア児を受け入れている学校もあります。

つまり、問題は「教育委員会や学校の対応により大きな差がある」ところです。

これは学校だけの問題ではありません。

障碍児(者)の日常的な福祉サービスも、同じ障碍なのに、自治体の出張所や担当職員によって違いが出る場合があります。

障碍児(者)の通学をヘルパーがサポートする「移動支援」や、健常児の学童保育にあたるデイサービスを受けられる時間数などは自治体の担当者が判断するのですが、その地域や担当者の裁量で認められる時間数が変わってくる不安定なものです。

たとえば、私の住んでいる区は、全部で3つの地域庁舎があるのですが、地域庁舎によって時間の取れ方に「ゆるい」「厳しい」の差があります。

私が今住んでいるところは「ゆるい」地域ですが、国道を隔てたわずか徒歩10分の実家に住民票を移すと「厳しい」地域に変わります。

しかし、担当職員が変わると、その傾向はまた変わってしまうかもしれません。

公的サービス受給の仕組みが、そんな運不運レベルで決められていいのか、という疑問があります。

もちろん、裁判における裁判官にしてもそうですが、しょせんは人が決めることです。

ということは、その人の知識や価値観で左右されてしまうので、担当者による「おかしな判断」を完全になくすことはできません。

だからこそ、客観的に判断できるガイドラインを確立して、それをクリアしたら例外なく該当サービスを行う、クリアしなくても対応できる見込みがあれば個別に対応する、ただしその逆(クリアしてもサービス対象から外す)はあってはならない、ということにすべきです。

受け入れが心もとないのも事実


萌々華さんに友達と一緒に過ごす経験をさせない、教育の機会均等を実現しようとしないその地区の教育委員会の事なかれ主義は、社会的に断罪されるべき……と思いますが、現実には、受け入れる学校側に自信が持てない理由がないわけではありません。

東京都の公式サイトでは、「都立特別支援学校非常勤看護師(特別職非常勤職員)の募集」というページがあります。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/staff/recruit/administrative/nurse.html

障碍児を専門に受け入れる特別支援学校ですら、学校付きの看護師が非常勤採用なんです。

場合によっては、命に関わることがないともいえないのに、担当者が決まった時間だけ働く“パートさん”では、学校当局が不安になるのも無理からぬ事かもしれません。

この動画のコメントを一部引用します。

>日本にはまだ全く行き届いていないこの様な事例がたくさんある気がします。おもてなしが出来るのに、なぜこちらには気が向けられないの?

いずれにしても、萌々華さんを受け入れる学校が見つかるといいですね。

在宅医療が必要な子どものための図解ケアテキストQ&A: 家族といっしょに読める!
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pn

客観的に判断できるガイドラインは確かに必要だけど、今度はその型に囚われ過ぎる人も絶対出ますよね。おっしゃる通り個別対応が重要ですが担当者の知識意気込み思い込みで左右されそう。
by pn (2019-10-23 11:12) 

skeptics

担当者の当たり外れは、日常生活でもよくある話です。

でもそれを以て、学校に行けるかどうかが決まるというのは、只事ではありません。
不服申立てができるような機関があると、いいかもしれません。
by skeptics (2019-10-23 14:35) 

いっぷく

>by Enrique (2019-10-23 15:46)
まず、「二の足を踏む」のが悪いと言っているのではなく
二の足が運不運であることが問題だと書いているのですが。
そう読めませんか。

それから、学校側の意見が絶対とするのも賛成しません。
受け入れたくないという意見自体が妥当かを見る必要もあります。
「お試し」はありだと思います。
by いっぷく (2019-10-23 16:24) 

coco030705

色々な難しい問題があるものですね。
子どもや親の立場に立って、なんでも考えてほしいと思います。
by coco030705 (2019-10-23 18:00) 

犬眉母

普通学級、支援学級、支援学校の決定プロセスは、まず健康診断を行います。
つまり、健康診断はいずれかの学校に行けるかどうかの「ふるい」になっていて、それをクリアしているのに学校に行けないということは児童の権利に関わる大問題です。
その基本的なことを、ご存じない方がいらっしゃるようですね。
そして、健康診断をクリアした人は、そのいずれかの学校に進むかを、市町村教委と保護者で決定します。
支援学校には、知的、視覚障害、肢体不自由など複数の系統がありますから、健康診断をパスしても「二の足」なるものを持ち出すのは本来おかしいのです。
もう少し調べてから発言されては如何でしょうか。
by 犬眉母 (2019-10-23 22:53) 

ヤマカゼ

萌萌華さんが学校に行くとは、親御さんの願いなんでしょうか。いろいろな人と会うと刺激にもなるし経験も積めるしいいことだと思います。
by ヤマカゼ (2019-10-24 07:09) 

Rinko

積極的でない自治体や担当者に当たると、希望の道も断たれてしまうのは解せないですね。。。

by Rinko (2019-10-24 08:03) 

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