『悪魔の女保育園長~園児6人虐待殺傷事件~』(小牧成、ユサブル)を読みました。2002年に高松市の無認可保育施設で発覚した、女施設長がわずか1年の間に園児2人を殺害、4人に骨折などのケガを負わせた事件です。死亡時の死体検案書には「SIDS(乳幼児突然死症候群)の疑い」と書かれていました。
あらすじ
建築会社を経営する裕福な家に育った元園長は、中高一貫教育の私立女子高に通ったお嬢様でした。
しかし、高校卒業後、専門学校に進むと、十分すぎるほどの小遣いをもらっているにも関わらず、売春やAV出演などをはじめました。
本書によると、子供の頃、近所の男児からうけたイタズラや、母親の暴力などが彼女の心に暗い影を落としたとしています。
建設会社に入社すると、上司との不倫。
最初は結婚まで求めない様子でしたが、関係をすると強く結婚を迫り、上司本人だけでなく夫人にも嫌がらせをしました。
しかし、結婚はかなわず、そのうち上司の子を“望まない妊娠”。
そして父親も亡くなり、売春やAV出演を続けながら、生活のために無認可保育施設もはじめます。
そこで、冒頭に書いた園児2人を殺害、4人に骨折事件。
懲役18年を求刑され、実刑10年をうたれました。
幸福な生活の中で愛する人と愛する子を育てる生活が実現できず、道を誤った彼女は、満たされぬ欲望と苛立ちに絶えきれず、犯行に及んだのかもしれないと本書はまとめています。
子供時代の生活がほとんど描かれていないのでわかりませんが、専門学校に入るとすぐに外車を買ってもらうなど、クラスメートからは羨ましがられるというよりも、浮いた存在になってしまい、心から打ち解ける関係をつくれなかったのではないでしょうか。
親の暴力もあったようですし、裕福な家庭にありがちな、金で何でも済ませる生活だったのかもしれません。
本書は、紀伊國屋電子書籍Kinoppy、AmazonKindle、マンガ図書館Zなどで読むことができます。
SIDSを隠れ蓑にした虐待
保育における虐待というニュースは今まで何度も報じられてきました。
不幸な事故が繰り返されるのは、事故の報告と検証が行われてこなかったことが背景にある、とするのは寺町東子弁護士です。
「事故が起きた際、法的責任ばかりがクローズアップされます。しかし、法的責任はずさんな保育と死亡結果の間に因果関係、つまり死因がクリアにならなければ問えません。そのため、法的責任が立証されない場合は誰も検証せずに放置されてきたという長い歴史があります」と寺町東子弁護士。
https://news.livedoor.com/article/detail/15077347/
たとえば、うつぶせ寝による死亡(SIDS)は、原因がクリアになりにくいため、施設側が『SIDS』の可能性を指摘さえすれば、
刑事的にも民事的にも責任が問われず、虐待の隠れみのになってきたといいます。
本書の事件についても、「赤ちゃんの顔はアザだらけで頭もパンパンに腫れ上がっていたのに、翌日出された死体検案書には『SIDSの疑い』と書かれてい」たのです。
つまり、事故死として処理できるから、施設側も虐待を反省せず、犯行が繰り返されるわけです。
それではいけないということで、事故のプロセスを検証して、法的な因果関係に関係なく、保育の中でセオリーとされていることに反していれば、それを改善策として提言しましょうという検証委員会が2016年から始まったといいます。
ただし、これではまだ保育プロセスの検証しか行われません。
欧米では、法医などの医療関係者、救急、検察、警察、児童相談所、かかりつけの医療機関・小児科医など、その亡くなった子どもに関する情報を持っている関係者が集まり、その死亡に至った原因を解明して再発防止につなげるCDR(チャイルド・デス・レビュー)が法制化されています。
我が国もそこまで行わないと、同じような事件は繰り返されるのかもしれません。
「ねばならない」と追い詰める不幸
子の虐待といえば、目黒の5歳女児が両親から虐待を受けて亡くなった事件が話題ですが、ワイドショーは、父親が実父ではなかった、というところばかり“面白おかしく”クローズアップします。
しかし、では世の中の再婚の相手と連れ子なら、すべてが悪い関係かというとそんなことはなく、「なさぬ仲」というだけでは虐待の説明はつきません。
寺町東子弁護士は、この両親は朝4時から起きて字を書かせるなど間違った努力で子どもを追い詰めており、「今の社会が教育脅迫ビジネスにどれだけ毒されていることかと感じさせます」とコメントしています。
間違った努力は、させられる子どもはもちろん、させる親をも追い詰めてしまうのです。
遊びながら、そして体験の中で学んでいく子供に対して、「ねばならない」と「教育する」こと自体が「間違った努力」であるというのは、保育施設の子ども虐待にも通じることかもしれません
保育施設にも、お勉強系、しつけ系など色々特徴がありますが、ただ預ければいいではなく、カリキュラムをチェックしてみる必要もありそうです。
悪魔の女保育園長~園児6人虐待殺傷事件~/ザ・女の事件Vol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)
するってーともう出所してんのか。
金が無いのは辛いけどあり過ぎ(と言うのもなんだが)も色々しんどいんだろうなぁ。
by pn (2019-10-21 11:42)
なんだか嫌なお話ですね。
保育施設というと、まずは何も疑わずに子どもを預ける親が大半ではないかと思いますが、その裏でこんなことがあったんですね。
やはりこの犯人の親も毒親ではないかと思いますね。
by なかちゃん (2019-10-21 12:42)
記事の内容からniceを押す手が・・・迷います
by ムサシママ (2019-10-21 14:00)
やれるところまで法整備をやらないと、延々と終わらない問題かもしれませんね。
by ナベちはる (2019-10-22 00:43)
無認可で保育園が経営できるのですね。世の中ちょっと怖いですね。
by ヤマカゼ (2019-10-22 07:24)
娘たちを保育園へ入れる時、とても注意しました。
まだ言葉で意思疎通できない年齢の子が1日の約半分の時間をそこで過ごすのかと思うと、慎重になりますね。どんな食事を与えているのか(これ、重要でした)、どんな方針でどんな遊び方をさせているのか。結果満足のいくとても良い保育園に巡り合えました。
この事件の加害者の他の面が分からないのですが、どうして保育園を開こうと思ったのか・・・理解に苦しみます。
by Rinko (2019-10-22 07:48)
子供を二人も殺しておいて10年で出所できてしまうのですね(>_<)もっと刑を厳しくすることは出来ないのでしょうか?
by エンジェル (2019-10-22 11:29)
このような人でも無認可で保育園が開けること
そして、無認可でも預けなければいけない親がいること
by そらへい (2019-10-22 22:12)
病気や突然死の因果関係なんて
神様でなければわからないといっても過言ではないですから、
裁判で認定してもらうのは、至難の業でしょうね。
by 犬眉母 (2019-10-23 00:32)