真相究明!!和歌山毒入りカレー集団殺人事件、改めて報道を考える [トレンド]

『真相究明!!和歌山毒入りカレー集団殺人事件』(画:桐野さおり/原作:有田万里、Kindle版)を読みました。1998年の和歌山毒物カレー事件を漫画にしたものです。一部で言われている、実は真犯人は別にいるのではないか、という視点で事件を振り返っています。

あらすじ
1998年7月25日、和歌山市園部地区で開かれた夏祭りで、提供されたカレーライスに亜ヒ酸が入れられ、食べた67人が急性ヒ素中毒となり、うち4人が死亡しました。
和歌山毒物混入カレー事件といわれています。
本書は、同事件を漫画で描いています。
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事件は、「動機なし、自白なし、物証なし」のまま林眞須美容疑者が起訴され、死刑判決が下されました。
物的証拠もなく自白の強要で……という冤罪事件は過去にもありますが、本件は事件への関与を裏付ける根拠が何一つないまま死刑判決に至るという、稀有な事件です。
それでも死刑に至った状況証拠にはどんなことがあったのか。
林眞須美夫妻は、後に放火で全焼しますが、地域では目立つ豪邸に住んでいました。
夫妻の近所の評判は、夫妻に非常識なふるまいがあったことや、おそらくは「金持ち」に対する嫉妬もあったのか最悪でした。
カレーづくりの現場にいたとされる目撃証言には、「辻褄の合わない証言も多く、関係者から疑問視されるケースもある」(Wikiより)といいます。
地域住民の、林眞須美夫妻に対するバイアスのかかった感情的な証言があったことが想像できます。
テレビのワイドショーは、そんな近所の聞き込みから林眞須美死刑囚を犯人と見立て、有名ブランドのロゴが入っているTシャツを着た林死刑囚が、自宅を取り囲む報道関係者たちに、ホースで放水している姿を連日何度も繰り返し報じ、視聴者に対する悪い印象を刷り込みました。
そして、林夫妻宅にはヒ素がありました。
また、豪邸は、保険外交員である林眞須美死刑囚夫妻による事故を装った保険金詐欺であるかのような報道もありました。
しかし、だからといって、それらは、林真須美死刑囚がカレーにヒ素を入れたという証拠にはなりません。
本書は、ある女子高校生を主人公に事件を描き、林真須美死刑囚の夫の犯行を疑わせる描き方になっています。
私も「林真須美」だった
本事件は、
1.「動機なし、自白なし、物証なし」のまま死刑判決に至ったこと
2.メディアの報道が常軌を逸しており、「撮影や描画された側の人物が社会生活上の我慢の限度を超える」違法なものと最高裁に判断されるものもあったこと
という、2つの問題点がありました。
とくに「2」については、後に他人事とは思えなくなり、この事件には関心を持つようになりました。
8年前、私が火災を経験したとき、当日は他に大きなニュースがなかったのか、私はその日のネット掲示板の主役になってしまいました。
私の著述活動の一部が、恨まれて火をつけられたという憶測がありましが、それはまだいいでしょう。
子どもがキラキラネームだの、年をとってからやっと授かった子どもなのに可愛そうだの、といった大きなお世話もまあ、世間の関心なんてそんなものということでしょう。
問題は、私が犯人ではないかという話で盛り上がり、それを見たのか、もしくはもともとそちらが源泉だったのかはわかりませんが、興奮した近所の人々の中には、私が火の出ていた現場から飛び出してきた(つまり私が火をつけた)などと証言した人がいたことです。
私は出火当時現場にはおりませんでした。
いたら消してるでしょう。
おかけで、私はしばらくのあいだ、マスコミにパパラッチをされました。
NHKと日本テレビは、報道局の人が名刺を持って実家まで訪ねてきました。
ドアを閉めようと思っても、「少しだけお話を」と食い下がり、玄関にあった、長男が幼稚園のときにのっていた自転車の写真を撮っていきました。
こっちは、妻が心肺停止、子どもたちも深昏睡で、それどころじゃないのに……。
おかげで我が家の火災は、2日またぎでNHKで報道されました。
政治家でも芸能人でもない一般人の火災2日目を、なんで昼のニュースでどーんと報じる必要があったのか。
そこに事件性を疑ったからでしょう。
さらに、毎日新聞などは、長男が通っていた小学校名まで明かしたため、週刊誌の記者が長男の同級生の祖母にまで掛け合って長男の写真をよこせと食い下がるトラブルがあり、小学校では集団登下校の措置が取られました。
それだけ騒ぎになると、それか既成事実になり、「火のないところに煙はたたず」などと、マスコミに狙われるにはそれなりの理由があるのだろう、などと思われるようになります。
でもそもそも、根拠はネットや近所のでたらめな噂話に過ぎないのですから、「虚」からいくら推理しようが拡散しようが「虚」のままなんですよ。
今も、マスコミの数行の記事から、犯人探し⇒犯人たたきに勤しむネット民の行動原理はかわっていませんが、そんな連中が「マスゴミ」などと唾棄するのはちゃんちゃらおかしい。
「ゴミ」の報道を疑いもせず額面通り受け取り、さらに憶測を加えて暴走している自分たちはゴミ以下でしょう。
……ああ、私の体験談のほうが長くなってしまいましたね。
「すべてを疑え」の精神が大切
あるテーマで、学者と一般の人たちが語らう懇親会があり、日本学術会議(学者の国会)の委員だった池内了さんが、カレー事件について触れたことがあります。
林真須美(当時)容疑者の犯行であるかどうか決めつけないで、「すべてを疑え」の精神が大切だという話だったのですが、一般の人たちが、「どうしてそんなこと言うのだろう」と、それを理解できなかった様子でした。
事件の詳細を知らない一般の人が、林真須美犯行説を揺るぎないものとするのは、マスコミ報道の先入観があるからでしょう。
ワイドショーの報道は万死に値するものだったと思います。
そして、何でもネット掲示板の無責任な書き込みを額面通り信じて完結する軽率な方々も、心を入れ替えることをおすすめします。
カレー事件の真相はわかりませんが、いずれにせよ、どんなことであっても、メディアに引きずられず、事実と道理で真相にアプローチできる理性はもっていたいですね。

真相究明!!和歌山毒入りカレー集団殺人事件/ザ・女の事件スペシャルVol.1 (スキャンダラス・レディース・シリーズ)

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- 出版社/メーカー: ユサブル
- 発売日: 2019/06/29
- メディア: Kindle版
今でも謎の事件ですね。
本当に彼女が???という疑念もあります。
by mayu (2019-10-07 10:12)
本当に謎ですが、「疑わしきは被告人の利益に」の大原則を素直に適用すれば、犯人とするのは無理では?と当時思いました。一方で、被害の大きさから、これで無罪にしたら、司法が世間(マスコミ)から糾弾されたでしょうし…。
by えくりぷす (2019-10-07 12:09)
和歌山と聞くだけで笑ってしまうのは私だけでしょう、ね。
と言った訳でではまた、
ありがとうございました。
by PopLife (2019-10-07 14:14)
冤罪は受けた者にしか分からない、怒りを通り越した不条理に対する憤りがあります。私の親もかつて火事の濡れ衣を着せられた事がありました。遥か昔で、まだまだマスコミ報道の少ない時代だったのが幸いでしたけれど。
by 扶侶夢 (2019-10-07 15:48)
学生の頃、何の授業だったか忘れましたが、
教授が云っていた言葉は忘れられません。
新聞10紙を読んでも新聞が云っっていることが真実だと思うな、と。
by 斗夢 (2019-10-07 16:23)
こんにちは!
マスコミと視聴者があの特異なキャラクタの
彼女を犯人に仕立てた感が拭えないですね・・
本当に犯人か
by Take-Zee (2019-10-07 16:34)
そんなことがありましたね。
今日は息子が来てるので昼も今夜も子供が好きな
カレーなんです。この記事読ませたら食べないかも、笑
by 旅爺さん (2019-10-07 17:17)
何十年前の事件でしたか?
20年も前の事件だったんですね。
世間を賑わわせましたね。
by ヨッシーパパ (2019-10-07 18:11)
もうかなり昔の感がある事件になっちゃいましたね。
確かにあの時の報道は、犯人を作りたい報道だったようにも感じます。
ま、あの女性がそう見えるほどにふてぶてしかったから?かななんて思います。
by なかちゃん (2019-10-07 19:34)
マスコミもネットも当てにならないってーのは身に染みて分かりましたよ、特にネットの書き込みなんてただの思い込みって言うか自分はこう思うってだけの話をさも真実かの如く書き並べてるだけだったわ。
by pn (2019-10-07 21:45)
カレー事件は、ワイドショーの報道を連日見ていたような気がするのですが、実証のない死刑判決には驚きました。「あの人しか考えられないから」で死刑では法も何もありません。
火災などの際の事件ワイドショー的発想の報道も、いいかげん止めて欲しいとは思います。
デマを真に受ける人も世の中には多いということは、同僚と話していて最近ようやくわかりました。
by 足立sunny (2019-10-07 22:13)
友人が発行するミニコミ誌に「林眞須美さんが犯人とする物証がないこと」を記事にするまで、あのテレビでふてぶてしくホースで水をかけていた人=犯人と思っていました。
今は冤罪である可能性は否めないと思っています。
長い間の独房生活で精神的に大丈夫なのか、と案じて時々切手など送っています。
by 森田惠子 (2019-10-07 23:01)
カレー事件、発生から既に20年以上経ったということに驚きです…
by ナベちはる (2019-10-08 00:51)
やはり集団心理の操作なのでしょうか?
by ヤマカゼ (2019-10-08 06:39)
数ヶ月前にこの事件の特集をしていました。林死刑囚の息子さんが無罪を訴えていましたが、本当の所はわかりませんね。自分は今こんな生活ですが、これでも嫉妬を受けることがありますから世の中はわかりません。お気楽そうですが実はかなり難儀なんですよ(笑)
ヒ素事件は少なからずマスコミの報道が影響したのかもしれませんね。
by kou (2019-10-08 07:58)
バイアスのかかった思考って怖いなーと思いますが、果たして自分はバイアスがかかってないのか?と自分自身を疑ってみる事も大切ですね。
by Rinko (2019-10-08 08:02)
印象で決めてしまうというのは、
普段の生活でもよくあることですが、
さすがに死刑がかかっていたら、物的な証拠は
ちゃんと前提にしたほうがいいと思います。
by 犬眉母 (2019-10-08 10:06)