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昭和のヤクザマンガがウケる3つの理由 [トレンド]

昭和のヤクザマンガがウケる3つの理由

ヤクザ、いわゆる暴力団を描いた実録漫画は、AmazonUnkimitedではニーズが有るようで、一覧でズラっと出てきます。実はこれらは紙媒体として店頭に出ていたこともあるのですが、2010年の暴力団排除条例以来、見ることができない本ばかりです、ヤクザのマンガはなぜウケるのでしょうか。



AmazonUnkimitedを検索していたら、ヤクザや暴力団組織を描いたマンガがズラーッと出てきたので驚いてしまいました。

つまり、ニーズが有るということです。

新刊こそありませんが、書店の店頭で、安定的な売上を出していたマンガです。

それが2010年の暴力団排除条例以来、コンビニや書店が販売自粛をし、実話雑誌を発行する出版社も、新刊の発行自体をやめました。

読者の飢餓感が、AmazonUnkimitedにおける商品価値につながっているのかもしれません。

以前、山口組6代目司忍組長の出所のときも、ネットではファッションまで話題になりました。

どうして裏社会の話がそれほど人気があるんでしょう。

ひとつは、暴力団に日の目を見せないことで、逆に見えないものを見るスリルがあるのだろうと思います。

ふたつめは、盃による人間関係が興味深いのだろうと思います。

そして3つ目は、ピカレスクロマン、またはアウトローロマンといわれるように、社会からはみ出た「個性的」な生き方を英雄視をしているところがあるのだろうと思います。

実は、そのAmazonUnkimitedでリストアップされているピカレスクマンガを、私はほぼ読んでいます(笑)

暴力に憧れるとか、暴力団に入りたいといった理由ではなく、読み物として面白いと思いました。

鶴田浩二殴打事件、夜桜銀次、美空ひばりのヤマケン(山本健一)慰問、仁義なき戦い、松山抗争発砲テレビ中継、記者会見による抗争終結宣言……

とくに昭和ならではの出来事を今回はご紹介します。

美空ひばり、ヤマケン慰問


山口組は、三代目の田岡一雄組長が、「ヤクザは博徒専業ではなく、正業を持たなければならない」という方針を持っていました。

田岡一雄組長自身、甲陽運輸という港湾事業と、芸能興行事務所の神戸芸能社を営み、日本港運協会副会長を務めていました。

そうした正業の積み重ねで、一日警察署長をつとめたり、市川房枝や平塚らいてうらとともに麻薬撲滅運動の世話人に名を連ねたりしています。

暴力団の組長が警察署長というのは、昭和らしいのどかなブラックユーモアのような気もしますね。

それはともかくとして、神戸芸能社は、美空ひばり、三橋美智也、田端義夫、江利チエミらを所属させ、コンサートなどを手掛けていました。

そして、田岡一雄組長、美空ひばり個人をマネジメントするひばりプロダクションの副社長もつとめていました。

その田岡一雄組長の三代目若頭(子分のリーダー)が山本健一(通称ヤマケン)。

ヤマケンが若い頃、山口組と他の組の小競り合いで前面に立ち、相手に重傷を負わせて懲役を食らったのですが、全盛中の全盛時だった美空ひばりが加古川刑務所を慰問。

『リンゴ追分』を歌った後、「ここには私のゆかりの方がおります。ケンちゃん、お元気ですか、ケンちゃん、体に気ぃ付けて、まじめにつとめて、はやく帰ってきてくださいね」とひと声かけてヤマケンを励ましたという話があります。

ケンちゃん、体に気ぃ付けて、まじめにつとめて、はやく帰ってきてくださいね
『劇画実録・山口組武闘史血と抗争!菱の男たち』第2巻より

ヤマケン
『劇画実録・山口組武闘史血と抗争!菱の男たち』第2巻より

今なら、慰問も、個人的な受刑者への声掛けもないと思いますが、これも昭和ならではのエピソードなのでしょう。

「十大歌手」の企画変更


神戸芸能社創設の頃、日本民間放送連盟の加盟者が連合して、ファン投票による「十大歌手による民放祭」が企画されました。

ところが、当時隆盛を誇っていたはずの三橋美智也(神戸芸能社)が選に漏れたため、田岡一雄組長もとい、社長が疑問に思い調べてみると、投票に不正があったことが発覚。

怒った田岡社長は、民放連の向こうを張って、同じ日時に「十大歌手競演歌謡ショー」を企画。

民放連は慌てて神戸芸能社と話し合い、合同で「二十大歌手による民放祭」を行うことに企画変更したそうです。

1955年の出来事ですから、51年に始まったNHK紅白歌合戦も始まって間もない頃で、大きな企画だったと思われます。

芸能界と暴力団のつながりが云々されることがありますが、当時はつながりというより、表立ってかなり有力な勢力として影響力をもっていた、というのが実際のところだったと思います。

第1次松山抗争発砲テレビ中継


ヤクザ抗争史に、第1次松山抗争(1964年)といわれるものがあります。

山口組系の若き直参、矢嶋長次率いる矢嶋組が、地元のヤクザ組織、郷田会の系列組員を人質にとり、ビルの3階と1階で、双方がライフル、散弾銃、拳銃を手に、3時間に渡る白昼の撃ち合いをおこないました。

第1次松山抗争
『劇画実録・山口組武闘史血と抗争!菱の男たち』第11巻より

それを当時のTV局が実況中継。

しかも、遠巻きに一般人が見物するという、これまた昭和らしいのどかすぎて困った事件でした。

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人の自由な生き方が面白かった時代を懐かしむ


コンプライアンス、非暴力、人権重視、という時代の流れは、私は正しい方向の発展だと思います。

ただ、制度の円滑な運用を重んじるあまり、人の生き様の自由さ・多様さががなくなってきているのではないかと感じることもあるのかもしれません。

今では考えられないおもしろ困った生き方に、自分がなれと言われてもできないけれど、そんな生き方をする人がでる社会の風通しの良さのようなものはいいかもしれない。

それがヤクザマンガの人気の最大の理由かな、と思います。


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コメント 10

犬眉母

現代では、昔のような抗争とかドラマとかは難しいでしょうね
by 犬眉母 (2019-09-29 00:58) 

ナベちはる

>逆に見えないものを見るスリルがある
裏社会、「危ない」と分かっていてもどんなのか気になる部分があります…
by ナベちはる (2019-09-29 01:26) 

mitsuya

そうですよね。うちも子供の頃に親父の知り合いにもんもん背負ったヤクザ屋さん普通にいましたもん(T_T)
by mitsuya (2019-09-29 02:32) 

pn

美空ひばりに見えない(^_^;)
by pn (2019-09-29 06:07) 

kohtyan

自分たちの年代には、ヤクザや山口組などに
郷愁を感じますが、今の若い人達はどうでしょうか、
関心がないのではないですか。
by kohtyan (2019-09-29 09:49) 

テリー

ヤクザの親分が、警察一日署長とは、びっくりですね。そういう時代があったのですね。
by テリー (2019-09-29 10:49) 

Take-Zee

こんにちは!
任侠映画がもてはやされた時代もありましたね!

by Take-Zee (2019-09-29 13:57) 

ヨッシーパパ

一部のポリシーだけが、美化されていたのでしょうね。
by ヨッシーパパ (2019-09-29 18:39) 

KOME

社会の管理が進んで、1人1人が監視されていくのかなと思うと、ちょっと。。
by KOME (2019-09-29 20:53) 

えくりぷす

昔、安藤昇の自伝を読んだら、戦後警察も取り締まれない三〇人たちから庶民を守ったのは、自分たちヤクザだという話(自負)があったと記憶しています。
堅気には手を出さない、が、今では、振り込め詐欺の胴元になっていていますし、ヤクザ自体も変わってしまっていることもあるのでしょうか。
by えくりぷす (2019-09-30 10:51) 

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