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東野英治郎さん、善人も悪役も演じた演劇界の大重鎮 [懐かし映画・ドラマ]

東野英治郎さん、善人も悪役も演じた演劇界の大重鎮

東野英治郎さん(1907年9月17日~1994年9月8日)の命日です。戦前は治安維持法で逮捕された経験もあり、小沢栄太郎、千田是也、青山杉作、東山千栄子らと共に俳優座を結成。テレビドラマでは初代水戸黄門の“御老公”を演じるなど、日本の演劇界の大重鎮でした。



舞台、映画、テレビドラマと、たくさんの仕事をされていますが、東野英治郎と言えば、なんと言っても初代水戸黄門でしょう。

水戸黄門


水戸黄門自体は、映画も含めて何度も作られていますが、TBS系で毎週月曜20時から放送していた時代劇ドラマの初代黄門が東野英治郎でした。


実は水戸黄門はもともと、森繁久彌でいくと内定していたそうですが、制作会社が東映でした。

森繁久彌といえば、東宝映画のドル箱シリーズである、社長シリーズや喜劇駅前シリーズを年に1~2回ずつ撮り、東宝の封切館で1年の半分は出演者に名を連ねている“東宝の顔”。

競合他社の仕事をすることにストップがかかり、その結果、善人役も悪人役もしっかり仕事ができる、俳優座の東野英治郎がキャスティングされたといういきさつは有名です。

余談ですが、その後、東宝映画も、森繁久彌版水戸黄門を作っています。

宝田明と、高島忠夫の助さん格さん、コント55号や三木のり平も出ているので、時代劇というより喜劇ですね。


水戸黄門の助さん格さんは、タイプが違っていますが、助三郎(杉良太郎)は御老公となにかと衝突するタイプ、格之進(横内正)は優等生タイプです。

山本周五郎の『赤ひげ』の、保本登と森三太夫もそんな設定でした。

サラリーマン忠臣蔵


東宝映画で東野英治郎は、その社長シリーズの準レギュラーでした。

森繁久彌が社長で、東野英治郎は、時にはライバル会社の社長、時には森繁久彌の会社の会長役などをつとめました。

たとえば、1960年に「東宝サラリーマン映画100本記念作品」と銘打って作られた東宝オールスター出演の『サラリーマン忠臣蔵』『続サラリーマン忠臣蔵』では、悪役の吉良剛之介役を演じています。

サラリーマン忠臣蔵

タイトル通り、ストーリーは忠臣蔵をベースにしたもの。

赤穂産業の浅野卓也社長(池部良)が、あることから松の廊下、ではなくパーティー会場で銀行頭取の吉良剛之介(東野英治郎)を殴ってしまい、その直後に自殺を疑わせる謎の死を遂げます。

東野英治郎の憎々しい話し方で、いったんは我慢して拳を引っ込めた池部良がまた拳を握り直して殴るのです。




しかも、吉良剛之介は赤穂産業の新社長として乗り込み、大野久兵衛常務(有島一郎)が味方についたため、大石良雄専務(森繁久彌)、小野寺十三郎部長(加東大介)、寺岡平太郎秘書兼運転手(小林桂樹)は退社。

大石は独立し、赤穂産業の株を少しずつ買い取り、株主総会で赤穂産業の社長の座を奪い返すという劇的なラストです。

サラリーマン忠臣蔵劇的なラスト
『続サラリーマン忠臣蔵』より左から宝田明、小林桂樹、加東大介、森繁久彌、三船敏郎、志村喬、河津清三郎

社長行状記


『社長行状記』(1966年、東宝)は、森繁久彌主演社長シリーズの24作目です(全33作)。

社長行状記ポスター
DVD『社長行状記』解説より

金策で困っている森繁久彌社長が、取引先の東野英治郎に不渡りを出さないようにかきあつめた、回収金や融資金6000万円を持参し、いったん支払いをした上で、改めてその金を貸してくれと頼みます。

東野英治郎はニッコリ笑って承諾。森繁久彌社長の会社は無事、1966年の正月を迎えるというハッピーエンドの結末です。

社長行状記でニコッと笑う東野英治郎
『社長行状記』より

『水戸黄門』の起用は、本作の笑顔が“ご老公”の笑顔になり得るという判断だったかもしれません。

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黒澤明やオー・ヘンリーの作品も


その他、黒澤明監督作品にも出演。

『天国と地獄』では、町工場のオヤジ役でたった1シーンの出演でしたが、存在感を示しました。

再放送がまたれるのですが、オー・ヘンリーの短編小説『よみがえった改心』という、定年間近の老刑事と時効間近の金庫破りの話がドラマ化されたとき(『最後の賭け』1977年、テレビ朝日)も、老刑事役で出演しました。

金庫破り(石立鉄男)が、金庫破りしか持ち得ない道具を使って金庫に閉じ込められた子供を救出。

しかし、それが金庫破りであることの証拠であっても、老刑事は逮捕しなかったというストーリーです。

東野英治郎さんというと、どんな作品を思い出されますか。

水戸黄門(1978年)
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サラリーマン忠臣蔵 正・続篇 [DVD]
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コメント 8

ヤマカゼ

東野英治郎さんというとやはり、黄門様ですね。
顔をくしゃくしゃにして笑う姿がなんというか平和感が味わえました。
by ヤマカゼ (2019-09-08 06:41) 

犬眉母

やっぱりイメージは「水戸の御老公」ですね。
by 犬眉母 (2019-09-08 06:58) 

an-kazu

子供の頃視た映画トラ・トラ・トラでの
南雲中将役・・・

くしゃくしゃ笑顔が親しみやすかった
黄門様とのギャップが印象的でした!


by an-kazu (2019-09-08 06:59) 

pn

最後の賭けを見てみたい!
by pn (2019-09-08 07:48) 

kou

水戸黄門はやはりこの方のイメージが強いですね。
他の方とどうしてもしっくり来ません。
by kou (2019-09-08 10:07) 

Take-Zee

こんにちは!
水戸黄門は東映では月形龍之介・・・
いくらテレビとは言え、東野さんは
いかがなものかと思いましたが、人気出ましたね!

by Take-Zee (2019-09-08 14:22) 

れもん

東野英治郎さんの水戸黄門大好きでした。懐かしいです。
by れもん (2019-09-08 17:19) 

我流麺童

水戸黄門で「カッ。カッ。カッ」と聞こえる笑い声が思い出されます。
by 我流麺童 (2019-09-09 06:18) 

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