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山岡久乃さん、実生活で「お母さん」ではない名母親役を考える [懐かし映画・ドラマ]

山岡久乃さんら実生活で「お母さん」ではない名母親役に考える

山岡久乃さん(1926年8月27日~1999年2月15日)の生まれた日です。山岡久乃さんは生前「日本を代表するお母さん女優」としての地位を築きました。しかし、実生活では離婚後は独身を貫き子供もいませんでした。こうした実生活と役のギャップにこそ、女優としての凄さを感じることができます。



山岡久乃さんは、『肝っ玉母さん』3シリーズ、『ありがとう』4シリーズ、『渡る世間は鬼ばかり』3シリーズなど、石井ふく子プロデューサーのホームドラマで、それぞれキャラクターは違いますが「お母さん」を演じて大ブレーク。

『ドラマのTBS』といわれた同局のドラマ枠の評価に大きく貢献しました。


宝塚音楽舞踊学校⇒俳優座と舞台で女優生活をスタートさせ、1954年には、初井言榮、東恵美子、成瀬昌彦らと劇団青年座を結団しました。

青年座というのは、先日ご紹介した湯浅実さんや西田敏行、竹中直人などが在籍していたところです。

映画は日活と契約していましたが、1957年には、マリリンモンローの生涯を翻案したと思われる大映の『砂糖菓子が壊れるとき』にも出演。

砂糖菓子が壊れるとき

自分の夫(田村高廣)が、マリリン・モンローにあたる若尾文子と不倫されると、「どうぞ勝手に引き取ってください」と、若尾文子に夫を渡してしまう気丈な役でした。

ちなみに、同作の脚本は橋田壽賀子です。

このときから、山岡久乃さんと仕事をしていたんですね。

家庭運がうすい「お母さん」女優たち


山岡久乃は、ドラマで演じるだけでなく、若い俳優の相談に乗るなど、公私ともに「お母さん」役として活躍しました。

ホームドラマが全盛の1970年代~80年代、「お母さん」としてのポピュラリティを得ていた女優は山岡久乃の他に、池内淳子京塚昌子、森光子、加藤治子など、離婚経験があって子供のいない独身女優ばかりでした。


これは偶然なのか。

少なくとも山岡久乃の場合は、俳優座の創設に関わった大物、小沢栄太郎との不倫生活があり、小沢栄太郎の息子である演出家の小沢僥謳によれば、山岡久乃の存在で家庭が壊れたといいます。

小沢栄太郎の(最初の)妻は自殺しています。

その後、青年座を立ち上げた同志である森塚敏と、1956年に結婚するも、1971年には離婚。

それ以来独身を貫き、復縁を求めたといわれる森塚敏とも再婚はしませんでした。

この生き様から勝手に意味付けをすれば、実生活で家庭を作ることができず、母親になれなかったことが、「お母さん」の名演技の原動力になったと見ることもできます。

役と実生活と社会は切り離せるものか


役者としてのキャラクターと実生活の関係


その推理が正しいかどうかは措くとして、そもそも俳優の実生活と、演技を結びつけて評価することについては、それをまちがっているかのように見る向きも一部にはあります。

その女優がどんなスキャンダルがあろうが、演技とは関係ない、という見方です。

しかし、私はそれは違うと思っています。

といっても、興味本位にゴシップを楽しみたいわけではなく、1人の人間としての生き様を知りたいのです。

このような演技をできる人は、どんな人生を過ごしたのだろう、と考えるヒューマンインタレストは順当な欲求ではないでしょうか。

自分の人生経験と重なる役だからこそ、経験者しかなし得ない演技というのはあるはずです。

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作品論と現実社会


同時に、映画や芝居などを語る「芸術論」を、ことさら現実生活の政治や経済と切り離す見方もあるのですが、私はそれも賛成しません。

というより、そんな見方はありえないと思います。

なぜなら、芸術に評価を与えるのは人間にほかなりませんが、その人間が感動したり驚いたりする価値観は、規範や法律や経済など、現実社会の反映であることは疑いようがありません。

新劇やソウルミュージックが、虐げられた民衆の訴えであることは以前書きました。

現実社会と切り離すどころか、人間と現実社会の摩擦でこそ発生する文化と言っていいでしょう。

芸術はジャーナリズムではないので、現実社会を直接反映するわけではありません。

が、人間の観念というフィルターを通した、現実社会の反映であると思います。

ですから、政治や経済など現実社会に背を向けている人が、「私は芸術を語れる」と言ったところで、どれだけ本質に迫れることが語れるのかは大いに疑問です。

歌も、芝居も、そして芸術に含まれるモノすべては人間の観念の反映であり、それはいきおい、人間に対して関心を持てる人だからこそ理解し得る世界ではないでしょうか。

それはともかくとして、新劇、そこからの離反と新劇団結成、不倫、離婚などを経験した山岡久乃さんのモットーは「自分の始末は自分でつける」。

その生き様に、大女優にふさわしい人生の陰翳を感じずにはいられません。

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コメント 10

ナベちはる

実生活とのギャップがある役でもそれを感じさせないところ、素晴らしいです。
by ナベちはる (2019-08-28 00:20) 

ヤマカゼ

女優を貫き通した方なんですね。
by ヤマカゼ (2019-08-28 07:12) 

Rinko

山岡久乃さんが亡くなって20年経つ事にまず驚いています。
お母さん役・妻役の印象が強かったですよね。
by Rinko (2019-08-28 08:36) 

扶侶夢

そんなに詳しくは知りませんでしたが、大人しい印象とは違って気丈夫な人だったんですね。

>人間の観念というフィルターを通した、現実社会の反映であると思います。
この意見、大賛成です。色々葛藤しましたが結局ここに落ち着きました。
by 扶侶夢 (2019-08-28 09:28) 

pn

シンママだったらまた違ってたのかもしれないけど自分の始末は自分で着ける、大女優と言うより人として立派ですね。
by pn (2019-08-28 09:33) 

なかちゃん

確かに『お母さん』としてよく拝見しましたね。
実際に母親でなくても名お母さん役というのは、自分の中にしっかりと母親というものがどんなものなのかが確立していたのだと思います。
ま、宝塚の方たちも男でないのに男の役を演じておられますからね(^^;

by なかちゃん (2019-08-28 10:36) 

Take-Zee

こんにちは!
私の母親よりちょっと年上だったんですね。
そんな彼女ですが好きなタイプでしたよ!!

by Take-Zee (2019-08-28 11:19) 

ヨッシーパパ

山岡久乃さんは、私の記憶の中で、初めてドラマで印象的だったお母さんでした。
by ヨッシーパパ (2019-08-28 17:47) 

sana

名お母さん役、私生活では母親じゃない女優さんが多かったですよね。
しかし離婚など‥‥何も知りませんでした!
女優として成功するには並々ならぬ強さも必要だし~
現実にものすごく面倒見のいい母で主婦だったら、女優をやっている時間なんかない、というのもあるのでは。
山岡さんは芸能界で、母のように慕う俳優も多かった印象があります。確か、現場に食事を作ってきたりもしていたとか。
ものすごく気丈で、母親的な内面も併せ持った人だったのかも‥^^
by sana (2019-08-28 21:01) 

そらへい

何事も、芸の肥やしにする凄みがありますね。
by そらへい (2019-08-29 21:57) 

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