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さくらももこさんと水木しげるさんをADHD扱いする記事の問題点 [発達障害]

さくらももこさんと水木しげるさんをADHD扱いする記事の問題点

さくらももこさんと、水木しげるさんは、発達障害だった、という読み物が話題になっています。記事によると、2人はADHD(注意欠陥多動性障害)の特性である、マイペースで物事にこだわることが漫画家としての大成につながったというのです。



まず、記事では、「ADHDは自分の裁量で仕事を企画し、自分のペースで作業を行なうことが向いている。具体的には、イラストレーター、作家、コピーライター、プログラマーなどの分野で成功している人が多い。」とし、さくらももこさんを挙げます。

さくらももこさんは、自伝的エッセイ『まる子だった』において、「授業中、私はいつでも自己流に過ごしていた。先生の話もみんなの意見も何もきいていないのである」とマイペースだったから、ADHDだというのです。

つまり、本人の告白でもなければ医師の証言でもなく、この書き屋の憶測に過ぎません。

水木しげるさんは、言葉が遅かったので知的障害を疑われ、小学校を1年遅れで入学。

「1度夢中になると、飽きるまでやめられなかった」「1日中絵ばかり描いていたこともあった。」など、幼少期からADHD的なおおらかさと集中力で漫画家になれたというのです。



まず、自伝や伝聞だけで、本人に対する問診すらない発達障害認定など論外です。

しかも、亡くなった人だから、検証しようがないし。

「成功している人が多い」というのなら、現役の人を挙げて書いたらいいでしょう。

次に、まるでADHDが、イラストレーター、作家、コピーライター、プログラマーに向いているかのような書き方ですが、そのような統計は見たことありません

もちろん、発達障害にできるわけないよ、などと言いたいわけではありません

当該記事の前提には、よくある発達障害は隠れた天才という短絡的な誤解が感じられます。

いわゆるギフテッドですね。

しかし、それは結局、発達障害に対する差別と偏見の裏返しでしかなく、さらに発達障害者やその親御さんに対するミスリードにつながる有害な読み物と言わざるを得ません。

発達障害だから成功するわけではない


結論から書きます。

先日の、『知的障害のフィギュア選手から考えた障害者の“明日”の迎え方』で書いたとおりです。

発達障害であろうがなかろうが、自己実現にしろ社会的な評価を受ける偉業にしろ、成功するかどうかは、結局、やるかやらないかの違いが明暗を分けるだけです。

前向きにチャレンジして、すべき努力は怠らない人なのか、言い訳をして自分は前に進まず、チャレンジする人の悪口を言ったり嫉妬したり足を引っ張ったりするだけなのか。

それだけの違いです。

繰り返しますが、障害のあるなし関係ない、人間全体の普遍的な話です。

かりに、ADHDがクリエイティブな仕事に向いていたとしても、チャレンジも努力もしなければそれっきりなのです。

ADHDでない定型発達(健常)でももちろんそうです。

ADHDであろうがなかろうが、必要な能力と努力と環境によって自己実現の成否は決まります。

もちろん、チャレンジしても、できないこともあります。

しかし、結果が出ることで自分を知ることになり、再チャレンジするなり、別の道を志すなりするなど、次の人生を進む契機となります。

それに引き換え、何もしない人は、何も結果が出ないので、自分探しすらできないのです。

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嫉妬と言い訳ばかりの人間は信用するな


私は、障害者に理解のある通信制高校を、何校も回って、このブログでご紹介してきました。

しかし、一部の思考停止な親御さんは、

・障害者は支援学校に行かないでどうなる
・就職どうする
・障害者は無理なんだから勉強させる必要はない
・高校の資格なんてとってどうする

などなど、一生懸命、自分たちが「障害者は支援学校」と決めつけることの正当化に狂奔して、私に中傷の限りを尽くしました。

それらへの反論は、私がするまでもなく、自分が高校見学をすれば、すぐに解決することです。

通信制高校でも障害者の就労支援はあります。

学歴の問題ではなく、定型発達(健常)者との学園生活の中で、今まで見えなかった自分探しの視野が広がるかもしれないのです。

かりに卒業できなくても、そんなに致命的な問題とも思いません。

そしたら、またそのとき考えればいいでしょう。

じゃあ、逆に問うが、支援学校出たらバラ色の人生でも約束されているのか。

別にどちらに進んでもいいのですが、いずれの選択にしろ、いつもチャレンジする前向きな人生観こそがその人にとっていちばんよい人生につながるということです。

その子、発達障害ではありません IN―Childの奇跡
その子、発達障害ではありません IN―Childの奇跡

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コメント 11

犬眉母

障害者の親御さんは、日々育てるだけで精一杯で、
チャレンジ精神を持てないほど、疲弊しているのかもしれません。
だからといって、嫉妬や中傷は頂けませんが。
by 犬眉母 (2019-05-07 02:28) 

末尾ルコ(アルベール)

このような記事は折に触れて目にしますね。しかもお二人とも国内で極めて高い知名度の漫画家。そして亡くなっていて、本人たちから反論されることもないからこそ、こうした出鱈目を書けるのでしょうね。さくらももこのエピソードだけで発達障害と見做されるのであれば、高校時代のわたしなど精神異常者、あるいは犯罪予備軍と見做されかねません。こうした記事はある種のお目出たい逆バリのようなものであり、いっぷく様のおっしゃるように、偏見を助長する可能性の高い危険性を持っておりますね。もちろん適当な予断によって人様に病名をつけるなど、言語道断です。こうした記事のライターは、本来であれば厳しくその責を問われるべきです。穴居期のところこうした記事は、「発達障害」というキーワードを、「水木しげる」「さくらももこ」というあまりに高名な漫画家の名前と絡めて注目を浴びたかっただけでしょうね。昨今のネットではありがちの低レベルにして悪質な記事の一つだと思います。
いっぷく様のおっしゃるように、チャレンジ、そして継続的な努力なしに、誰であれ何ごとも成し遂げることはできません。いかにも物分かりよく、「自分は平等主義者でございますよ」とばかりのアピールをする人の中には、実は物事の本質を理解しておらず、偏見の助長に一役買っている手合いが少なからず存在していますね。
もう一つの大きな問題として、まあ昔から大衆向けメディアはこんなものだったかもしれませんが、ネット記事は無料でより多くの人の目に触れる機会が多く、しかも一読して頭痛物の低レベル記事があまりに多過ぎますね。ここは今後のメディアを考える上で、非常に大きなポイントかと思っております。

・・・

>看護師長の判断が大きいと思います。

そうなのでしょうね。前の病院では早い段階で師長さんとお話しできて、なかなか頼もしそうな方だなと。転院の時も師長さんはじめ、多くのスタッフがエレベータの前まで見送りに来てくださって、母は師長さんと握手しながら、温かい言葉をいただいておりました。

年金委託業者の電話なのですが、かかる度にわたしの現状とか、今後の支払い方とか話をするのですが、その情報がまったく共有されてないのです。それぞれの電話がまさに「ぶつ切り」状態で、毎度毎度同じ話をしなければなりません。だから、「下請け、孫請がたくさんぶら下がっている」というお話はとてもリアリティがありますね。たまにまともな応対ができる人もいるのですが、この前は陰気臭い声の(多分)中年婦人で、少し声を耳にするだけでも不快な気分になりました。他にもこちらの言う話にまるでピンと来ない(多分)初老男性とかもおりました。しかし年金催促は電話だけでなく、以前にも記事で書きましたが、封書でもけっこう頻繁に来ます。しかも封書の目立つところにわざわざ、「すぐに開封してください」的横着な文言があるのです。夕方疲れて家に帰って来た時にそれを見ると、本当に気分が悪くなります。一度電話で、「遅れているとはいえ、約束通りきっちり払っている人間になぜこんなに頻繁に催促するのか」と詰問電話を掛けたのですが、「~さんのようにしっかりお支払いしている方にこそ、未払いを無くしてほしいんですよ」なんて、明らかにその場限りの出鱈目な答えが出て、呆れてものが言えなくなったこともあります(笑)。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-05-07 03:51) 

ヤマカゼ

テレビで何度か出ていた二方、見た目は普通でしたね。
ただ漫画家さんは大変な職業ですね。
by ヤマカゼ (2019-05-07 05:50) 

Rinko

今日のいっぷくさんの投稿、絶妙なタイミングでした。失敗を恐れず前向きにチャレンジしていこう!と後押しされた気がします。
by Rinko (2019-05-07 08:21) 

這い上がるママ

うちの長女は人とコミュニケーションを取るのが苦手で、空気が読めないところがあるので、小学校の頃クラスメートと軋轢がありました。ADHDやアスペルガー症候群を疑いましたが、高校生になって楽しそうに通っているので様子を伺いながら見守っています。チックがあるので精神科の思春期外来に月1で通院しています。
by 這い上がるママ (2019-05-07 08:27) 

pn

ネットニュースのタイトル自体が何を伝えたいのか分からないやつが多い中、内容までこんなんじゃ記者のレベルも大した事ないんだろうなと。
by pn (2019-05-07 10:06) 

ヨッシーパパ

ASDなどを含めた疾患群は、今や、喘息患者を上回る頻度だそうです。
by ヨッシーパパ (2019-05-07 18:54) 

Take-Zee

こんばんは!
連休のお疲れは出ませんでしたか?

by Take-Zee (2019-05-07 19:28) 

足立sunny

知恵の伸び具合とか教育課程での対応とかは、障害とかではなく、個々人で違っているのが普通と思っています。
おふたりを発達障害と決めつけるレッテル貼りにはどうかと思います。
そんなことを言ったら、小学3年までオール1でした自分はまさしく発達障害で。しかし、自分的には、10歳ぐらいまでの子供の頃には単なる莫迦だったと思っています。
by 足立sunny (2019-05-07 20:58) 

ナベちはる

記事の真偽は別として、少なくとも注目を浴びたかったのだろうというのが、著者が挙げたお二方の名前から伝わってきます。
by ナベちはる (2019-05-08 00:21) 

レインボーゴブリンズ

24時間テレビなどで、努力して何かを成し遂げる障がい者たちの姿に感動するのは、最後まであきらめずに頑張る姿勢を彼らから学ぶためでしょう。支援の程度はともかく、最後は本人のやる気次第であることは、健常者も障がい者も同じです。
by レインボーゴブリンズ (2019-05-09 21:54) 

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