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野添ひとみ、夢みる女優も惜しまれる早逝 [懐かし映画・ドラマ]

野添ひとみ、夢みる女優も惜しまれる早逝

野添ひとみさん(のぞえひとみ、1937年2月11日~1995年5月4日)の命日です。SKD(松竹歌劇団)の出身で、映画は『うず潮』(1952年、松竹)でデビューしています。双子の姉は、後にテレビ史に残る“大映ドラマシリーズ”のプロデューサーである野添和子さんです。



野添ひとみは本当なら、松竹で次々大作にキャスティングされるはずでしたが、急に大映に移籍。

もと大映社員・中島けんさんのブログによると、川口浩がファンだったため、大映重役だった川口松太郎の口利きで大映に引き抜いたようです。

https://blog.goo.ne.jp/ken401_001/e/544bd2e2ddcdb3adfd327c8dc9ab433f

そして、川口浩と結婚後はフリーになりましたから、大映映画もキャリアのわりにはそれほど出ていません(40本)



野添ひとみは、『明星』の1958年度人気投票では大映の先輩の京マチ子にも勝っていたんですね。

過去の出演作については、このようなツイートもあります。



姉妹




『姉妹』(1955年、大映)では、リアルで年齢は一つ下、学年は同じである野添ひとみ(姉)と中原ひとみ(妹)が物語の中心です。

野添ひとみは、5人姉弟の長女で家庭的な大人しい性格で、中原ひとみは3つ年下の天真らんまんな“近藤のちび”(役名が近藤)といわれています。

ぜひご覧頂きたい作品です。

喜劇婚前旅行


喜劇婚前旅行』(1969年、松竹)は、東京ー長崎間寝台特急『さくら』の専務車掌(フランキー堺)と、いきつけのちゃんぽん店の娘(倍賞千恵子)の話です。

フランキー堺は、若くして生まれた息子(森田健作)の、幼稚園時代の先生だった野添ひとみに熱中しています。

野添ひとみ

この喜劇旅行シリーズは、瀬川昌治監督、フランキー堺主演で11作撮られていますが、いつもフランキー堺はお目当ての人とは結ばれず、結局以前から付き合いのあった倍賞千恵子と結ばれる、もしくはよりを戻すという展開です。

以前もご紹介しましたが、このシリーズは、何と言っても昭和の労働や生活が描かれているところが見どころです。

たとえば、伴淳三郎、フランキー堺、森田健作の3人に、家政婦役のミヤコ蝶々を加えた晩御飯で、フランキー堺が漬けたとされる「カブの漬物」を、みんなでおいしく食べながら笑いが絶えない「茶の間」のシーン。

伴淳三郎

当時は、暮らしのありふれた一場面として撮っているはずですが、今それを見る人は、そこに資料的叙情的価値を見出すことでしょう。

顔で笑って


『顔で笑って』(1973年10月5日~1974年3月29日、大映テレビ/TBS)は、野添ひとみの双子の実姉で、大映テレビのプロデューサーであった野添和子が企画・制作し、妹の野添ひとみも出演したテレビドラマです。

顔で笑って
tbsチャンネルより

放送されたのは、サントリーがスポンサードする“金9”。

1960年代は『ザ・ガードマン』、1980年代は“赤いシリーズ”で高視聴率をとった枠です。

事件もの(ザ・ガードマン)とサスペンス(赤いシリーズ)にはさまれていますが、『顔で笑って』の基本はホームコメディです。

ガードマンのキャップ役だった宇津井健が、デビュー半年の山口百恵と父娘を演じているほか、病院の婿養子に入ったり、倍賞美津子と山口百恵の“なさぬ仲”に悩んだり、口先ばかりで役に立たない松村達雄の院長をたてたり、意地悪な事務長の冨士眞奈美、看護師長の初井言榮らとの関係に苦労したりなど様々なシチュエーションを演じさせたことで、後の宇津井健、山口百恵主演の“赤いシリーズ”のプロトタイプの役を果たしているのではないかとおもいます。

野添ひとみは、宇津井健の大学の先輩で、内科クリニックを開業しているフランキー堺の妻役です。

こちらは、『喜劇・婚前旅行』と違い、フランキー堺が亭主関白で、なんでも“ハイ、ハイ”と言うことを聞くのですが、子宝に恵まれず、山口百恵を養女にほしいと、時に寂しそうにしている姿を演じています。

おそらくは、“なさぬ仲”の苦労など、子供のいない寂しさに比べたら恵まれている、ということを表現していると思われ、なかなかホームコメディと侮れない深いドラマでした。

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夫も次女も、そして野添ひとみさんも……




そんな野添ひとみさんですが、夫の川口浩さんや、次女に先立たれています。

若くして家族を失うのは、客観的に見ても幸せではないなあと思いますが、野添ひとみさん自身も甲状腺がんにかかり、享年58歳でした。

野添ひとみさんと同じぐらいのお年の方で、子どもが独立して寂しい、とおっしゃる方もおられますね。

おめでたいことじゃないですか。

お子さんの自立を見届けられる幸せを実感すべきです。

まあ、そのことに限らず、こうした早逝のご家族を思うと、長生き=いい人生とは限りませんが、いずれにしても命あっての物種と思いますし、いくつになろうが生きること自体に素直に喜びを感じ、前向きであってもいいのではないかと私は思います。

婚期 [DVD]
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浩さん、がんばったね

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  • 作者: 野添 ひとみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1988/06
  • メディア: 単行本



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末尾ルコ(アルベール)

野添ひとみ、夢みる女優も惜しまれる早逝・・・この方のことはほとんど知りませんでした。とてもおもしろそうな作品へ出演しているのですね。

>川口浩がファンだったため

そういうことを川口浩がやっていたのですね。どうしても「探検隊」のイメージが強くって、「隊長」と色恋のイメージが結び付きません(笑)。
そして非常に興味深いのが、ご掲載くださっている人気投票です。女優の7,8,10位の人たちは、わたし知りませんでした。作品の中では観ている可能性が高いのですが、名前に憶えがないのです。後になってオールタイムベスト10などにランクインする人たちと、その年代に特に人気のあった人たちはまた違う場合もあるということなのでしょうね。そしてこれは『明星』の人気投票ということで、やはりややアイドル的な要素も必要だったのかなとも想像します。京マチ子とかはあまりアイドル的なタイプではないですよね。

>昭和の労働や生活が描かれているところ

あとあとになってこのような描写が映画の価値を上げるのですよね。いっぷく様に教えていただいた昭和喜劇の多くにはそうしたものが織り込まれており、薄っぺらな昨今の映画とは段違いの観応えを感じております。
『顔で笑って』の頃の宇津井健はタフな雰囲気がいいですね。このような魅力ある大人の俳優も平成になってからは見かけないですよね。もちろん50代以降でいい男優も少なからずおりますが、宇津井健のような味わいとなると、見当たりません。

>生きること自体に素直に喜びを感じ

本当にその通りですね。そして、生きていたらいくらでも愉しみは見つかるはずです。それはお金のあるなしとはほとんど関係ないのですよね。

・・・

『サンガリア』は東京でも売っているのですね。わたしの見た範囲では、「神戸居留地」シリーズの次に安いのです。ドリンク系は利用頻度が多いので、高いものなんてしょっちゅう買えるはずもありません。それと気温が上がると、どうしても炭酸系を飲みたくなりますが、その場合甘いのは避けたいこともあり、安くてなるべき味のついてない炭酸がどのスーパーに置かれているのかしっかり把握しております(笑)。それにしても、「原産地韓国」で一気に不評になる時代なのですね。その割には韓国アイドルとか、日本ですごい動員のようですが。そういう状況にも苛立っている人たちが多いのでしょうね。

>長崎風牛めしは不吉な牛めし

普通迷信は受け付けないわたしですが、今のような状況ではついそんな意識が出ることがあります。例えばわたしはファッションとして黒のスカーフをよく着用するのですが、病院へはしていく気が起こらないですね。

>人間はすべてを後先考えて行動するとは限らない

こうしたお言葉に救われます。母もわたしがどれだけの気持ちで毎日面会へ来ているか十分理解してくれているはずで、さらに毎日「ベッドの上で大人しくしてくれなければならない」ことを口をそれこそ会う度に行っているのに(なぜ?)と、病院からの連絡があった時には頭を抱えたのですが、そうですよね、時に辻褄の合わない行為をするから人間なんですよね。そして既に1か月半を超えた入院期間。心臓の状態こそよくなっているものの、足腰の強度などを考慮すれば、まだ時間はかかります。そのストレスたるやいかほどのものか。いかにわたしが毎日必死で母のためになることを試みても、現在母の経験していることと同じ立場に立てるわけもありません。(母は自分の想像を絶する闘病を経験しているのだ)という点は、もっと自分に言い聞かせねばと、ここでまた教えていただけた思いです。いつも有難うございます。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-05-04 03:18) 

pn

旦那はともかく先に子を亡くすと傍から見ても元気無い。
同級生が中学の時死んじゃったんだけどあれ見てから少なくとも親よりは長生きしないとなぁと思いました。
by pn (2019-05-04 06:20) 

kohtyan

58歳とは早逝です。美人薄命なのでしょうか、
純真可憐な印象でした。
by kohtyan (2019-05-04 09:58) 

ヤマカゼ

可愛らしい女優さんでしたね。
見たのは初めてです。
by ヤマカゼ (2019-05-04 18:15) 

ナベちはる

58歳、若くして亡くなられたのですね。
by ナベちはる (2019-05-05 01:23) 

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