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障害者同士の恋愛と結婚、そして優生保護法、あなたはどう考える [障害者]

障害者同士の恋愛と結婚、そして優生保護法、あなたはどう考える

知的障害のある男女が、出会って40年かかって結婚式をした、という話を『NHK1.5ch(NHK1.5チャンネル)』が配信しているのでご紹介します(2019年04月07日)。なぜ40年かかってしまったのか。理由は、平成8年まで存在していた優生保護法にあったといいます。



もう廃校になってしまったのですが、私の地元にあった特別支援学校の高等部では、男女の生徒がアベックで下校する姿を見ることがありました。

青春。すばらしいことだなと思いました。

私は男子校だったからそういうのなかったし…。

ところが、それが「犯罪に近いような取扱」をされていたことがありました。

『出会って40年。 夢だった結婚式を挙げた、知的障害のある男女。思い続けてやっと愛を実らせた2人の背景とは…』という『NHK1.5ch(NHK1.5チャンネル)』が配信している動画をご紹介します。

【ETV特集×1.5ch】https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259567/index.html


知的障害がある2人の男女は、施設で出会いました。

しかし、当時は優生保護法がありました。

優生保護法というのは、障害者は家族と社会の負担で、本人も不幸に違いないから、障害をもつ子どもを産む可能性のある障害者の生殖機能を奪おう、という考えを国が法律にしたものです。

つまり、国が“子どもを産んでよい人”と“子どもを産んではいけない人”を勝手に選別することになります。

施設での恋愛はご法度で、女性と男性が交流できないように男女を区分して鉄の扉をつけ、交際は犯罪に近いような取扱をしていたと、当時の施設長は告白します。

そこで、結婚まで40年かかってしまいました。

「もっとはやく結婚できていたら、子どもを育てたとか、もっと違う人生を送れたかもしれない」(当時の施設長)

2人は出会って40年で結婚式を挙げます。

「愛する人とふれあい、愛する人と支え合う。あなたたちのおかげで、私も実にいろいろなことを教えていただきました」(式で当時の施設長のスピーチ)

優生保護法の何が問題だったか


旧優生保護法の何が問題だったかを、私がまとめてみました。

1.優生保護法による強制不妊手術が、人権侵害であり科学的医学的根拠もないこと
(1)どういう子どもなら生まれても良い、ということを国が決められるものではない
(2)障害者から生まれる子が障害者とは限らないし、健常者からも必ず一定割合で障害者が生まれる
(3)発達障害や知的障害は、「ここから先は障害」という客観的な境目があるわけではないので、灰色部分は為政者や専門家が勝手に区切りを決められる
(4)障害のある子が自分を不幸と思っているに違いないと国や他人が決めつけるのは思い上がり
2.(3)の延長で、優生保護法がきっかけとなり、例えば貧しくて学校に通えず知能テストの結果が悪かったり、非行を繰り返していたりというだけで、障害者と認定され強制不妊手術させられていた

つまり、為政者の主観や、社会の「雰囲気」で、障害者であるかどうかに関係なく、国は国民全体に対して勝手に“子どもを産んではいけない人”認定をすることができた、ということです。

たとえば、兄が万引きをした、というだけでその妹が出産を許されなくなる、ということだってあり得たわけです。

にもかかわらず、社会が目を向けてこなかったために、なんと平成8年まで法律が存在し、その間、国際的な批判を我が国は受けてきたのです。

いわゆるネトウヨ的な知識人が、日本はすばらしい国だというけれども、我が国はそういう人の道を外れた面ももっている国だったんです。

にもかかわらず、いまだにネット掲示板では、障害者叩きがお約束になっていますね。

自虐じゃないんですよ、目をそらしてはいけない、こんにちもなお続いている我が国の恥ずべき事実なんです。

現在行われている裁判で、もっともはやく判決が出るのが仙台地裁で5月。

新元号に変わる前に結着をつけたかった負の遺産だと思います。

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障害者が排除される社会はそうでない人も排除される


先日の、障害者が支える北海道北見市の美好湯から接客サービスを考える、の繰り返しになりますが、障害者が排除される社会というのは、そうでない人にとっても排除の論理を強いられる社会である、ということですね。

私も、このブログで、幾度となく障害者関連の記事を書いてきましたが、差別と偏見のコメントは論外としても、中には、本人が善意のつもりで述べていても、実は障害者の側からすると「違う」と思えることがありました。

何より、私自身が障害者ではありませんから、そういう間違いをしてしまっているかもしれません。

そういうことで、お互い気をつけましょう、というのが本日の結論です。

発達障害と結婚 (イースト新書)
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ブ~ケを手わたす 知的障害者の恋愛・結婚・子育て
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あきらめない恋愛と結婚―精神障害者の体験から (やどかりブックレット・障害者からのメッセージ 22)
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【増補新装版】優生保護法が犯した罪: 子どもをもつことを奪われた人々の証言

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コメント 12

犬眉母

感動ポルノに毒されないようにしないと。
by 犬眉母 (2019-04-17 02:13) 

末尾ルコ(アルベール)

障害者同士の恋愛と結婚、そして優生保護法、あなたはどう考える・・・こうしてあらためて概要を見させていただきますと、優生保護法というものの愚劣さが浮き彫りになりますね。しかもほんの最近まで同法が有効だったというのは、「近代とは何か?現代とは何か?」といった根源的な疑問にまで達してしまいます。「人権」などと言っても、その中身は実に薄っぺらいもので、いまだ「野蛮」が罷り通っている世の中だとつくづく感じます。昨今は「人権」とい言葉さえ否定する人が少なからずおりますからね。もちろん「いわゆる日足」の人たちが「人権」という言葉を都合よく使い過ぎてきた戦後の経緯もありますが、そうした文脈とはまったく関係なく、「人権」は重要です。「人権の尊重」を否定するような人たちと同じように社会生活は送ることはできません。

>「ここから先は障害」という客観的な境目があるわけではない

これはもうおっしゃる通りでして、昨今つくづく感じることです。どんな人間でも少なからず心身に不調を抱えているものであり、厳密に言えば、「すべての人は障害者である」とも言えるわけですね。その中で人によっては軽い不調のまま過ごす場合もあるだろうし、様々な理由で不調が重くなってしまうこともある。あるいは突然の病気や事故で思わぬ不調を抱えてしまうことも、どんな人間にも起こり得るわけです。人間というものは本質的にそのような存在であり、「健常者と障害者の区分け」が絶対的なものであるなんていう考え方は勘違いも甚だしいですよね。

>自分を不幸と思っているに違いない

「自分たちが幸福だと信じていたい妄想」に合致しない状態をすべて「不幸」とみなしたい人たちですね。そういう思考が一番腹立ちます。

>自虐じゃないんですよ

日本の状況についての批判をすべて「自虐」で片づけようとする思考停止の人たち、多いですね。まあ確かに戦後自虐史観的な流れはあったのですけれど、そうした文脈とは全く別に、自国の「悪い面」に対する健全な批判は常にアクティブであるべきであって、批判自体をすべて潰そうという動きはファシズム以外の何ものでもありません。まあネトウヨの中には、ファシズムの怖さも知らず、ファシズム的雰囲気に憧れている人たちも多いと思います。
・・・

>「白でも黒と診断してほしい」

そのようなお考えも実質的療養を考慮すれば十分あり得ますね。わたしももっと柔軟に考えてみたいと思います。心臓の大きな手術でしたので、リハビリでどれだけ戻るかは未知数ですが、障害者手帳取得の方向で進んでおります。

>自力歩行能力

人間にとってこれがいかに大切か痛感しております。昨日、「リハビリテーション総合実施計画書」をいただいたのですが、現段階での母の総合評価は100点満点中「15点」でした。まだまだ先は長い感はありますが、これをどのように上げていくか。けれど、「リハビリテーション総合実施計画書」という段階へ来れたというだけでも取り敢えず大きな感謝をしなければなりません。その意味では「差し入れ可」になったのは大きいです。病院食で食に対する意欲が薄らいでいましたから、こちらでいろいろと工夫できるとなると状況はまったく変わります。課題はもちろん多くありますが、現在は「腰痛」がかなり大きな壁となっております。                     RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-04-17 03:30) 

Rinko

恥ずかしながら今まで知らなかった事がこうして表に出て来た時、自分がどう判断するのか毎回自問自答いたします。

by Rinko (2019-04-17 08:07) 

pn

管理物件に支援センターのお店があるから身近な分だけ気を付けているつもりではあるんだけどねぇ。
by pn (2019-04-17 08:38) 

えくりぷす

すごく勉強になりました。障害があっても、それは個性として認めることかと思います。
>障害者から生まれる子が障害者とは限らない
反対に、父親が頭脳明晰でも息子に遺伝することはない(確率ゼロ)であることが週刊現代に載っていました。
by えくりぷす (2019-04-17 10:03) 

kohtyan

戦後の民主主義の時代に優生保護法があったとは
知りませんでした。戦前はお国に役に立たないものは
すべて抹殺されました。戦後もそのような法律が
作られたとは、驚きです。
by kohtyan (2019-04-17 10:06) 

ヨッシーパパ

優生保護法は、「中絶」を規定した別の形での知識しかありませんでした
by ヨッシーパパ (2019-04-17 18:44) 

coco030705

優生保護法って、酷い法律だったんですね。それがH.8年まであったとは!びっくりです。
政府が全ての国民を守ってくれるわけではないですね。いったい、政府ってなんなのでしょう?よくわからなくなりました。

by coco030705 (2019-04-17 18:51) 

スー

nice!
を百個送ります。
by スー (2019-04-17 20:46) 

そらへい

>自虐じゃないんですよ、目をそらしてはいけない、こんにちもなお続いている我が国の恥ずべき事実なんです。
>障害者が排除される社会というのは、そうでない人にとっても排除の論理を強いられる社会である
一人一人に問われている問題なんだと思います。
by そらへい (2019-04-17 21:08) 

ナベちはる

優生保護法、とんでもない内容の法律ですね。
それが平成8年まであったとは…信じられません…
by ナベちはる (2019-04-18 00:33) 

いっぷく

みなさん、コメントありがとうございます。

障害者から生まれる子が障害者とは限らないし、健常者からも必ず一定割合で障害者が生まれる、というのは、調べれば分かることんですけどね。
by いっぷく (2019-04-24 01:26) 

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