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ケンドー・ナガサキ自伝、SWSが崩壊した理由を率直に語った [スポーツ]

『プロレスリングの聖域』桜田一男が打ち明けた“現役引退後”

ケンドー・ナガサキ自伝(桜田一男著、辰巳出版)を読みました。地下足袋や、剣道具などをコスチュームとして、アメリカ各地を転戦したレスラーです。デビューは1971年で、日本の大小各団体のリングに上っているので、昭和プロレスの出来事についても当事者として語っています。



桜田一男さんついては、以前も1度記事にしました。

『プロレスリングの聖域』桜田一男が打ち明けた“現役引退後”

そこでは、アメリカで試合をしていたのに、全日本プロレスでは自分に年金をかけていてくれた、という話をご紹介しました。

その桜田一男さんが、プロレス人生を振り返っている書籍です。

マニアでなければわからないところもありますが、一応目についたところを書き出します。

北海道網走刑務所刑務官の息子として生まれた桜田一男さんは、自分も将来は刑務官になるものと思っていたところ、中学で180センチを超えたところでスカウトがやって来て、卒業後、同郷の北の洋がいる大相撲の立浪部屋に入門しました。

7年後に、弟弟子をいじめる兄弟子を殴って廃業。

相撲時代の先輩の永源遙に誘われて1971年には日本プロレスへ入門しました

しかし、日本プロレスはジャイアント馬場がやめてから客の入りが悪くなり、テレビ局もアントニオ猪木の新日本プロレスを放送することになって崩壊。

桜田一男は他のレスラー同様、ジャイアント馬場の全日本プロレスに合流します。



その後、天龍源一郎が入団。

アメリカに行く際、まだ断髪をしていないので桜田一男が床山として同行することになり、向こうでキラー・カール・コックスに誘われてそのままアメリカマットを転戦します。

全日本プロレスでは、凱旋帰国しても華やかな見せ場は与えられず、ドリーム・マシーンなる覆面レスラーとして外国陣営に回されたことから“自分の居場所はない”と悟り、新日本プロレスへ。

しかし、そこでも大きなチャンスはなく、メガネスーパーが累計99億円使ったプロレス団体、SWSの立ち上げに関わり高い報酬を得るものの、団体は崩壊。

残った選手のために新団体NOWを作ったもののうまくいかず、いつの間にかプロレスからはフェードアウト。

アメリカではかなり稼いだといい、メガネスーパーからも契約金3000万円、月給200万円で大事にされていたはずですが、引退後も悠々自適とは行かず、不整脈の手術もしてるのでカムバックはない。

そこで、冒頭でご紹介した、「全日本プロレスは年金をかけていてくれた、ジャイアント馬場さん、ありがとう」という話につながるわけです。

同書を読んで感じたのは、桜田一男さんの信頼の置ける人柄です。

ひとつは、SWSが崩壊したことについて、一部のファンは、今でも『週刊プロレス』が叩いたからと思っていますが、桜田一男さんはそのような責任転嫁は一切していません。

・SWSは売り興行ができなかった
・もともと悪かったレスラー間の関係は、ドン荒川がけしかけて北尾光司に騒動を起こさせたことで一層ギクシャクした
・阿修羅原の入団で“反天龍”の機運が高まった
・エースで役員レスラーの天龍源一郎に団体運営のビジョンがなかった


このように、事実に基づいた理由を挙げています。

ファンは心優しいと言うか、それが客観的な見方から遠ざかる感情論に走りがちですが、一番下のことを指摘する人はいなかったので、レスラーの側からこの指摘があったのはいいことだとおもいました。

2つ目は、引退について、一部のレスラーがやっている、“引退宣言したのに後ほどカムバック”ということを考えていないことです。
年を食ってもリングに上がり続けるー。それもある種の美学かもしれないが、俺の中ではお客に対しての裏切りであり、自分に対しての裏切りだ。プロレスは趣味ではなく仕事なのだから、やってはいけないというのが俺の考えだ。

60~70代の人たちが、脱皮した後の抜け殻のような体でリングに上がり、「昔の名前」による郷愁だけで客を集めている興行もあるようですが、私はそういう興行を見たいとは思いません。

もちろん、かつて活躍したレスラーたちが、今もお元気であることは素晴らしいことですが、それと、今リングに上がることは別の話だと思うのです。

ジャイアント馬場には冷遇されましたが、それはそれとして、年金のことを正直に明かして感謝しているのも、良い印象を受けました。

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昭和プロレスマニア好みの小ネタが満載




プロレスマニアには、ほかにも楽しい『小ネタ』がたくさん書かれています。

その一部をご紹介すると……

日本プロレスの道場では、ミツ・ヒライが細かく巧い指導で基本をしっかり身につけた
日本プロレス出身者と国際プロレス出身者では、技術のレベルが違っていた
グレート草津は下手くそでくせがあり、国際プロレスで巧いのはマイティ井上だけだった
全日本の“若手三バカ”の中では、一番センスを感じたのは渕正信。
逆に駄目だったのは大仁田厚。要らないアピールを始めてすぐ弱音を吐く。
日本プロレス時代は上田馬之助の付き人だった。上田馬之助はレスラーとしてのアピールが華やかではないので、タイガー・ジェット・シンと暴れていた頃でも、アメリカでは自分より前で試合をしていた。
天龍源一郎のSWSの契約金は3億円
鶴見五郎は吝嗇家で、SWS時代もグリーン車を普通席にして金を浮かせていた。

マニア以外は、「なにそれ」という話かもしれませんが、まだまだそういう話は本書にたくさん出てきます。

昭和プロレスファンは、ぜひ本書を読んでいただきたいですね。

それにしても、以前もご指摘がありましたが、桜田一男さん、プロレスラーとしては、ちょっと顔優しくて(笑)育ちの良さがでていますね

ケンドー・ナガサキ自伝 (G SPIRITS BOOK)
ケンドー・ナガサキ自伝 (G SPIRITS BOOK)

ケンドー・ナガサキ自伝 (G SPIRITS BOOK)

ケンドー・ナガサキ自伝 (G SPIRITS BOOK)

  • 作者: 桜田 一男
  • 出版社/メーカー: 辰巳出版
  • 発売日: 2018/05/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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末尾ルコ(アルベール)

ケンドー・ナガサキ自伝、SWSが崩壊した理由を率直に語った・・・そう言えば、北尾が亡くなりましたね。まだ50代半ば。人間の人生は分からないものです。松田優作は40歳、ショーケンも70まで届かずと、才能はもちろんのこと、肉体的にも極めて恵まれていたように見える人たちでも、いつどうなるか分かりません。
ケンドー・ナガサキも若い頃は凛々しい顔立ちでしたね。毛が無くなったから当然かもしれませんが、ずいぶんイメージが変わっています。そして188㎝という身長。今の小柄なレスラーたちと比較するまでもなく、「プロレスらしい」体格ですよね。

>ドン荒川がけしかけて北尾光司に騒動

へえ~、そうなのですか。北尾VSテンタとか、ああいうきな臭い試合はけっこう好きです。今観てもおもしろいです。SWSとは関係ないのですが、高田VS北尾がわたしにとってはやや謎で、高田のブック破りとも言われてますけれど、そうした目論見があったにしては、高田がリラックスし過ぎていたなという印象なのです。

>引退宣言したのに後ほどカムバック

これは全面的にナガサキ支持です。今やネタのように引退宣言するレスラーが多いですが、情けないのひとことです。もちろんプロレスでなくても、スポーツや芸能界、引退からの復帰はあり得ますが、肉体で観客を愉しませるはずのレスラーが、60歳とか70歳とか、恥を知るべきだと思いますね、特に大仁田とか(笑)。

>国際プロレスで巧いのはマイティ井上

これは分かります。マイティの試合、おもしろいです。ただ、ラッシャーの試合なんかも、昨今のドタバタ試合を見慣れてしまうと、とても新鮮に感じます。

>逆に駄目だったのは大仁田厚

これも手に取るように(笑)分かります。どうしても好きになれません、この人の生き方とかは。

・・・

>家族としては電話が来ただけで焦ってしまいますよね。

そもそもわたしに携帯って、滅多にかかってこないので(笑)いつもバイブにしていたのですが、今は常にチャイムが鳴るようにして手元に置いております。古びたガラケーが母入院以前とはまったく違った存在に感じます。病院からの電話にいつもビクビクしている状態のところへチャイムが鳴り、出てみるとピカラからだったりとか、さらに腹立ちますね(笑)。毎日二回は面会に行っており、たあでさえ忙しいのに来週はピカラの工事が入ってるんです。頼みもしないのに新たなサービスだ何だといろいろやるので困ります。

>So-netブログなら日常茶飯ですよね。

これはどうなのでしょうね。一部ユーザーさんは、「このブログにはコメントを入れる」「このブログは原則押し逃げ」と概ね決めている感はありますね。いつもずらりと無意味コメントが並んでいるケースもありますし、まあ一つのキーワードとしては、「無難」というのがあるのではないかと。「無難な記事」に「無難なコメント」というパターンの方が多いのかもしれません。ただ、今回わたしの母の件では、いっぷく様はもちろんのこと、これまでさほどコメントの交流をしていなかった方からも温かなお言葉を戴いて、わたし自身の心が弱っていましたので(今もまだまだですが)、本当に感謝しております。                RUKO


by 末尾ルコ(アルベール) (2019-03-31 03:07) 

旅爺さん

プロレスは大好きで一時はまってましたが、
見るのが好きなだけなのでケンドー・ナガサキ選手は
知りませんでした。その頃はもう見なかったのかも?。
by 旅爺さん (2019-03-31 06:29) 

pn

ビジョンが無かったって誰も言ってないのがかえって不思議、逆にそーゆー事を言う人が多いと思うけど違ってたんだ。
by pn (2019-03-31 09:34) 

ルディパパ

この本は読もうと思っていますが、まだ未読です。
優しい顔、というのがまさにぴったりで、どうしてもファンなれないレスラーでした。それでも全日ファンだったので新日に行った時は腹が立ったり。なので未読(笑)
でも、ガチンコNo. 1の強さという噂があり、そのナガサキがリアルファイトで負けた時はプロレスファンとしてショックを受け、かつMMAもルールに基づいて行われる格闘技で、ただガチンコが強いってだけで勝てるものではない、と分かった節目でもありました。

この記事を読んでナガサキ自伝、やはり買おうと思いました!ありがとうございます。
by ルディパパ (2019-03-31 11:09) 

えくりぷす

桜田一男さんの年金を全日本プロレスが払っていたというお話を聞くと、ジャイアント馬場さんの経営センスの素晴らしさがわかる気がします。スタン・ハンセンの自伝でもギャラと税金のことを馬場さんに教えられたような話が("^ω^)・・・
SWSの崩壊のことも、結局馬場さんのようにちゃんと経営ができる人がいなかったことが原因のように思えてきます。
by えくりぷす (2019-03-31 14:05) 

ヨッシーパパ

ケンドーコバヤシなら、聞いたことはありますが、そのプロレスラーは知りませんでした。
by ヨッシーパパ (2019-03-31 18:30) 

Take-Zee

こんばんは!
明日から新年度。
新元号の発表もありますね!

by Take-Zee (2019-03-31 18:47) 

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