「発達障害は遺伝子組み換え食品で起こる」論を考える [発達障害]
「発達障害は遺伝子組み換え食品で起こる」というブログ記事を無批判にFacebookでシェアした区議会議員がいます。発達障害と遺伝子組換えの因果関係は立証されていませんし、そもそも根拠となる人たちは本当に発達障害かどうかもわからない怪しい記事だと思います。
以前、大田区議会議員の奈須りえさんの話を書きました。
⇒国立(くにたち)・マンション訴訟を改めて考える
東京都国立市の上原公子元市長が、任期中に街の景観を守るため、マンション建設をストップ。
ところが、市が業者に支払った賠償金を元市長個人で負担せよ、という最高裁判決が出たことをFacebookで紹介していました。
奈須りえ大田区議会議員が重視されている事件で、大いに理解を助けていただきました。
奈須りえさんは、水道民営化など自由民主党の新自由主義的批判を行うだけでなく、血税を蝕む議員年金に党利党略で賛成する日本共産党の実利主義の真実なども暴いています。
野党の側から、与野党斬ってくれる方だと大いに期待していたのですが、今回、やはりFacebookで残念な投稿(シェア)がありました。
遺伝子組み換え食品についての表示が年内に内閣府令で変わり、ノンGM表示ができなくなる!~【重要・拡散希望】山田正彦元農水大臣のオフィシャルブログより
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=162871&fbclid=IwAR33upWMa8zT7euVyY9lGYTF-keLVdthJn4e6B6f0PktOzilIFnxLQqrKTI
遺伝子組換え食品の議論は昨日今日に始まったことではありませんから、どんな科学的新真実が出てくるのかと思いきや、しんしん丸なるクレジットの入った記事で、あろうことか、発達障害の子どもがあまりに増えた米国にて、お母さんたちはいろいろと調べ、GM(Genetically Modified=遺伝子組み換え)食品の危険性に気づき、GM食品の排斥に立ち上がったという話が書かれていました。
これはすなわち、「発達障害が食べ物と因果関係がある」という決めつけの前提で、つまり発達障害をダシにして遺伝子組み換え食品反対している記事です。
しかし、「発達障害の子どもがあまりに増えた米国」といっても、数字などの具体的な説明は一切なく、発達障害のうちの、どのような障害がどんな状態で起こっているかなど医学的な確認も一切不明です。
発達障害というきわめてデリケートな障害に対して、この限りにおいても十分乱暴な記事だと思いませんか。
以前から何度も書いてきましたが、食べ物と発達障害の因果関係など解明されたことはありません。
そこに何の言及もなく当該記事をシェアした奈須りえさんは、因果関係の立証は大変だから「予防原則」で遺伝子組み換え食品をやめましょうなどと述べています。
あのですね、おやめになるのはご自由です。
食品添加物、牛エキス、たんぱく加水分解物、輸入食品、福島の農産物……
やめたきゃ、どーぞ、おやめになってください。
ただし、その「予防原則」なる意味は、しょせん「私が避けたいから」という個人的な価値判断に過ぎません。
米国の「お母さんたち」だって、個人の価値判断の集合体に過ぎず、そこに科学的な裏付けは何も示されていません。
一方、「遺伝子組み換え食品と発達障害は因果関係があるのか(ないのか)」というのは、科学的に結論をだすべき命題です。
当たり前ですが、個々人の意見と、科学的真偽は全く別次元の問題です。
明け方の夢枕に、死んだ親父の幽霊が出てきたからといって、社会の定説として、幽霊はいる、となりますか。
ならないでしょう?
なったら大変だよね。
その人が「幽霊はいると思う」というのは勝手ですよ。
でもそれはあくまで、個人が「思う」だけの話なんです。
個人的に「思う」ことと、客観的に「在る」ことは別の話です。
ですから、個人的な価値判断をもって、答えの出ていない科学的命題を決めつけてさらに自分の主張のダシに使うというしんしん丸という人の書き物は、二重に乱暴なロジックです。
そもそも本当に発達障害なの?
以前、この記事を書きました。
↓
⇒発達障害は食品添加物で「作られる障害」か
「発達障害は、親の育て方と食品添加物で作られる障害」と、2017年10月20日放送の『バイキング』(フジテレビ系)で放送されました。
言い出しっぺの「教育評論家」曰く、
「アメリカの報告では、食品添加物の摂取で多動性が増えている。それが3割4割にも及ぶ」
もちろん、ネットで叩かれました。
科学的な根拠がなかったから。
もし、「食品添加物の摂取で多動性が増えている」というのが検証に足る事実なら、それによって脳機能がどう障害されているかを立証しなければなりません。
でもまあ、もしそれが立証できるなら、科学者、医学者はほうっておかないでしょう。
発達障害の解明につながるし、それでノーベル賞もとれるかもしれません。
にもかかわらず、これだけ掃いて捨てるほど、科学者も医学者もいるのに、それらの続報はありません。
どうしてでしょうね。
そもそも、その「教育評論家」が言っているのは、発達障害ではなく愛着障害ではないか、という指摘もありました。
つまり、おおもとが間違っていたと。
しんしん丸という人のいう「米国のお母さんたち」だって、発達障害ではなく別の病気や障害らしくみえるものと誤認識している可能性だってあるのです。
いずれにしても、軽率な発達障害の「認定」は、発達障害に対する誤解や偏見を生み差別の温床となるだけでなく、医学的、科学的にアプローチする研究者たちの努力をも踏みにじるものです。
発達障害を研究する、児童精神科医・目白大学教授の山崎晃資氏は、次のように述べています。
最近,「発達障害」という言葉が安易に使われる傾向にある。発達障害がどのような経緯で登場し,どのような問題を抱えているのかを考慮せずに,慎重な鑑別診断も行わずに,発達障害と診断することは厳に慎まなければならない。
https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/csken/pdf/63_04.pdf
ネットでこうしたいい加減なシェア情報を目にした人々が、「安倍政権を倒すために、反自民の人のすることの批判は手控えなければならない」などとして、浅学な主観を鵜呑みにするような情弱に転落することのないよう切に願いたいものです。
まとめ
1.発達障害と食べ物の因果関係は立証されていません
2.避けたいという「予防原則」と避けるべきものという科学的な認定は別です
3.発達障害はデリケートな障害であり勝手に診断できるものではありません
4.議員のシェアする記事だから全て正しいとは限りません
遺伝子組み換え食品をどう見るかは人それぞれ判断すべきですが、いずれにしても軽々しく発達障害と結びつけるロジックは厳しく批判せざるを得ません。
発達障害グレーゾーン (扶桑社新書)
「発達障害」という言葉さえ使えば人の気を惹く
という傾向があるのかもしれませんね。
by 犬眉母 (2019-02-13 02:27)
「発達障害は遺伝子組み換え食品で起こる」論を考える・・・こういう「論」を唱える人たちがいるのですか。もうどうしようもないですね。「発達障害」というものを根本的に理解しようという気はまったくなくて、自分らの偏向した主張のダシに使おうという気がまんまんのようですね。このような、「盲目的に批判したい対象」があって、「どんなことでもダシに使おうという気まんまん」の「説」や「論」は、ちょっと読めばすぐ分かると思うのですが、ところが分からない人の方が遥かに多いのでしょうね。なにせ、「サバ缶が体にいい」とテレビでやれば、すぐさまスーパーへ直行してサバ缶買い占めるような人が多いわけですから。
しかしこの「しんしん丸」なるライターの過去記事をチェックしますと、次のようなものも書いておりますね。
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=184136
いきなり、『週刊金曜日』かと思いました(笑)。
それはさて置き、いっぷく様のおっしゃる通り、そもそも「発達障害」という言葉が軽々に使われ過ぎておりますね。そして現在の日本の世間一般の理解度の低さを考えれば、「発達障害」という言葉だけが独り歩きしてしまっているのは目に見えておりますから、責任ある立場の人はより厳密にその概念を吟味したうえで発信する必要がありますよね。それなのに根拠なく遺伝子組み換え食品と発達障害を結びつけるとは、デマゴーグでしかないですね。
>お母さんたちはいろいろと調べ
だからどうしたって、お話ですよね。もちろん「お母さん」たちの生活感覚は重視されるべきですが、こうした人たちの傾向として、往々にしてヒステリックになりがちです。特に米国はヒステリックな集団に歯止めが利かなくなることも少なくありません。わたしは原則的には「お母さん」感覚を尊敬しておりますが、政治利用する勢力に対しては一切信用しておりません。
「年齢の括りからの解放」についての続きで、また少し長くなりますが(笑)、わたしももちろん、とうに、(いわゆる)中年以降ですから、「いつ死んでも不思議でない」という覚悟を持って日々生きておりますし、「いつ死んでも不思議ではない」というのは実は老若男女同じことなのですが、数字的に年齢が上がれば、そのリスクは当然高くなると、そのような認識ですね。
ただ昨今、特に注意深く生活しているわけではなくても、90代、100歳以上でお元気に過ごしているご高齢者も少なくないですし、(それではより意識的に注意深く生活すればどうなるのか?)という挑戦でもあると思っております。
で、ここからがまたポイントなのですが(笑)、「注意深く生活」と言っても、どこやらのヘンな元女優らのように、「自然食しかない~~」とか「無農薬に限る~~~」とか「添加物許さない~~」とか、そこまで凝りまくるつもりはないのです。それは経済的(とほほ)あるいは時間的理由もありますけれど、ああいう極端な潔癖主義を喧伝するのは主務ではありませんし、インスタントラーメンならではの美味しさも捨て去るつもりありません(笑)。
いっぷく様が教えてくださった、「3人」、素敵ですね。
有名人の社会に対する「役割」の一つが、彼らの人生そのものによって多くの人々を勇気づけたり、考えるきっかけを与えたりなのだとあらためて感じます。
それこそこの前のお記事で教えてくださった、荒井注が35歳以上年下の女性と結婚したというお話も、それだけで何か嬉しくなりました。
若い男性はこういうニュースに嫉妬してボロカスに言う人が多いのでしょうが、一般的に女性にとって、「同年代の男は幼稚でつまらない」場合が多いのも事実ですよね。決して、「お金」や「名声」だけに惹かれているわけではないと思います。 RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2019-02-13 03:32)
遺伝子組み換え食品と聞くとなんとなく不安感があり、避けたくなりますが、案外知らないところで既に食べてたりするのかも知れないですね。
by ヤマカゼ (2019-02-13 06:55)
公の立場にある方がこうした発言をすることにまず驚きます。
食に敏感になっている方って、きっと外食なんてご法度なんでしょうね。外食したら添加物や避けている産地のモノがてんこ盛りでしょうからね~。
by Rinko (2019-02-13 07:44)
おはようございます!
2月も半ばになってもまだ寒いですね。
インフルエンザもピークを超えたようですが
用心ですね!
by Take-Zee (2019-02-13 09:29)
自称発達障害がいたけどあいつは実際の所どうだったんだろうとふと思う。
変な行動とか全部発達障害なんだって言えば許されると思ってる人たちが勝手に判断してるんだろうかね?
by pn (2019-02-13 11:19)
遺伝子組み換え食品を叩くのに発達障害をダシに使った論調では、いかにも信憑性に乏しいですが、アメリカを引き合いに出すことにより誤魔化しに権威を持たせようとしているというところでしょうか。
今身近にいる自分の同僚ひとりは発達障害だろうとは思いますが、彼の場合は育った特殊な家庭環境に起因しているように思えます。
自分の場合は、小学3年生まではどうみても発達障害的な子供として成長した感じでしたが、今考えても家庭環境に特に問題があったとは思えず単に本人(自分)に何がしかの原因があったのだろうと思っています(小学校入学以来3年1学期までいくら何でも全教科オール1の成績をもらったことから、マトモでなかったことは確かと思います)。
さまざまの要因が考えられる発達障害を、遺伝子組み換え食品と密接に結び付ける試みは、大衆扇動以外の何物でもない気がします。
by 足立sunny (2019-02-13 14:07)
ひとくくりに発達障害と言っても、困りますね。
by ヨッシーパパ (2019-02-13 19:01)
遺伝子組換えも発達障害も、ボクには詳しいことは解らないので意見は書けないですね。唯一書けるのは、『よく知らないくせに自分の意見をそれらしく見せるための道具にするな…』ですね(^^;
by なかちゃん (2019-02-13 20:03)
因果関係が全くないところでの「発達障害」という発言、残念極まりないですね…
by ナベちはる (2019-02-14 00:26)
発達障害が社会的に認知されたのは1980年代以降とされ、その研究は遺伝子組み換え食品の登場前から行われていたのですから、発達障害と遺伝子組み換え食品を関連付けるのは論理的でないですね。
by robotic-person (2019-02-14 00:32)