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石坂洋次郎の青春恋愛小説『若い人』は松坂慶子を輝かせた [懐かし映画・ドラマ]

石坂洋次郎の青春恋愛小説『若い人』は松坂慶子を輝かせた

石坂洋次郎さん(1900年1月25日~1986年10月7日)の生まれた日です。『陽のあたる坂道』『若い人』『青い山脈』など数多くの小説を上梓。何度も映画化やドラマ化されています。私はその中の、1972年にテレビドラマ化された『若い人』で石坂洋次郎の世界を知りました。



『若い人』は、悲劇と若さが内在した、青春群像劇です。

舞台は、北国の港町のミッション系女学校。

新任教師である間崎慎太郎と知的な女性教師橋本スミ、感情的で破滅型の女学生江波恵子の三角関係を描いています。

江波恵子は激しい情熱をむき出しに体当りしてくるし、橋本スミは今で言うツンデレ。

でも、間崎慎太郎は、両方に惹かれます。

この3者がお互いに影響しあう日々の描写が青春小説らしく、また結末に説得力をもたせる伏線になっていて私は気に入っています。

結局、間崎慎太郎は恵子と結ばれます。

本作は、何度も映画化、テレビドラマ化していますが、肝心の結末は様々です。

それは、橋本スミが社会主義運動で検挙されるという、その時代に対する理解がないとむずかしい展開になっているのと、先生と生徒が結ばれることをハッピーとしない感覚が制作側にあるのかもしれません。

今回は触れませんが、池部良、島崎雪子、久慈あさみ主演(1952年、東宝)、石原裕次郎、吉永小百合、浅丘ルリ子主演(1962年、日活)もあり、1990年代までほぼ10年ごとに映画化ないしはドラマ化されています。

『若い人』(1972年、NHK)


1972年にNHK銀河テレビ小説枠で放送された『若い人』は、間崎慎太郎が石坂浩二、江波恵子が松坂慶子、橋本スミ子が香山美子でした。

私はこのドラマで『若い人』を知りました。

NHK銀河テレビ小説というのは、NHK総合テレビの夜の帯ドラマ番組で、原作がある作品も数多く作られました。

『大番』(左とん平主演、映画は加東大介) 『ゼロの焦点』(松本清張原作、十朱幸代主演)『江分利満氏の優雅な生活』(杉浦直樹主演、映画は小林桂樹)『新自由学校』(獅子文六原作、中条静夫主演)『総務部総務課山口六平太』(林律雄原作、堤大二郎主演)などはドラマで知り、原作を読み始め映画化されていればそれも見ました。

石坂浩二が、松坂慶子の家で介抱してもらい、寝ている石坂浩二に松坂慶子がキスをするシーン(実物ではなく影)で、2人が結ばれたことを示唆してその回が終わったときは、子供心に胸いっぱいになったものです。

松坂慶子にとって江波恵子は当たり役であり、大映の脇役だったのが、この作品を契機に映画やテレビの主役にキャスティングされていきました。

再放送がないのが残念です。

『若い人』(1977年、東宝・サンミュージック)


1977年に東宝が制作した『若い人』は、江波恵子が桜田淳子、間崎慎太郎が小野寺昭、橋本スミ子が三林京子です。

原作や、他の映画化ドラマ化された作品は、教師の視点で書かれていますが、この桜田淳子主演については、生徒である桜田淳子が主役で描かれ、不良少女が男性教師を愛することによって大人に目覚めていく、というストーリーになっています。

新人教師の男性が、頭がよく美人で、勉強ができるくせにわざとしないでいる女生徒に次第に惹かれていく。

同じように女生徒も教師に惹かれていくものの、最後に女生徒の方が裏切り、恋は結実しません。

青年教師の青春の蹉跌と、思春期の少女の多感な心理を描いた、何ともほろ苦い展開です。

原作も書き換えさせてしまうほど、当時の桜田淳子にはパワーがあったようです。

まあそういうことならそれでもいいですが、吉永小百合も出演しているのですから、ここは、日活映画では江波恵子を演じた吉永小百合に、橋本先生を演じていただきたかったところです。

それにしても、このキャスティングには、当時意外におもったものです、

山口百恵は東宝の文芸路線、一方の桜田淳子は『スプーン一杯の幸せ』『遺書 白い少女』など、落合恵子原作の松竹青春路線で棲み分けていました。

ではなぜ、本作は桜田淳子で、しかも東宝だったのか。

理由は、石坂洋次郎が、ヒロインのイメージに、山口百恵は合わないと首を縦に振らなかったからといわれています。

石坂洋次郎は、どのへんがそう感じたのでしょうね。

山口百恵には、当時で言うところの「ネクラ」なイメージがあったからではないかと私は思いました。

それにしても、山口百恵の本拠地である東宝に、文芸路線で桜田淳子が主演をはるというのは、当時のホリプロの社長である堀威夫や山口百恵としては、心中穏やかざるものがあったんだろうとおもいます。

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『あいつと私』


石坂洋次郎作品は、以前『あいつと私』(1967年)をご紹介しました。

日活が制作しましたが、映画ではなくテレビドラマです。

あいつと私.jpg
チャンネルnecoより

映画も石原裕次郎主演で作っています。

映画のほうが原作に近いと思いました。

石坂洋次郎作品は、映画ならやはり日活が、そしてテレビドラマなら、原作に比較的忠実なNHKがよかったというのが今日の結論です。

石坂洋次郎作品、原作も含めてご覧になりましたか。

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末尾ルコ(アルベール)

石坂洋次郎の青春恋愛小説『若い人』は松坂慶子を輝かせた・・・石坂洋次郎は『青い山脈』の作者ということで、あまりに明朗快活なイメージで、わたしの読書アンテナには引っかかって来なかったのです。だからいまだ一冊も読んでないのですが、きっと今読めば違った印象を持つと思います。かつてのわたしは、「ラジカル」とか「ダーク」とか「アヴァンギャルド」などの方向性を最上としていたのですが、その当時ほとんど興味が持てなかった山田洋次作品が実は「ラジカル」性も「ダーク」な影も持ちあわせながらの大衆性だということにここ数年で気づいたものですから(いっぷく様のおかげであります)、かつてのわたしの偏向性は十二分に見直す余地があると痛感しております。

>橋本スミが社会主義運動で検挙される

こういう時代の雰囲気はぜひ描いてもらいたい気がします。昨今の日本映画は時代劇どころか、多少時代をさかのぼった昭和の世相などを描くものもほとんどなくて、物足りません。
恥ずかしながら、『若い人』は映画もドラマもまったく観ておりません。機会があれば、ぜひ観たいです。松坂慶子のドラマ版もおもしろそうですね。松坂慶子が大きくステップアップするきっかけの作品となれば、一層興味が湧きます。
桜田淳子の映画版は、吉永小百合が特別出演なのですね。すごいですね。当時の山口百恵や桜田淳子は、国民のほとんどが知ってましたものね。いわばジャイアント馬場やアントニオ猪木並の知名度がありました。今はももクロや乃木坂なんたらでも、メンバーの名前までは人口に膾炙してませんからね。
山口百恵主演映画についても、かつては(こんなの、観ちゃいられない!)くらいに思っていたのですが、今読んでる映画本でも比較的信頼している批評家の山根貞男が高い評価をしておりまして、やはり先入観で「観ない」のではなく、まず観てみるべきだとあらためて感じております。


>コアな人は一部に過ぎず商業的には必ずしも最優先でない

そうなんですよね。わたしの経験からも、残念ながらコアな映画ファンの言動や雰囲気は、映画好きを増やすどころか、映画を一般の人たちから遠ざける要素になっております。わたしが高校の頃、映画、小説、音楽、プロレス、漫画などを愛好する顔ぶれが集まる複数のカフェによく出入りしておりましたが、その一つで働いていた10歳くらい年上の男が、まあ別に悪い人間ではなかったですが、わたしが映画『卒業』に話をしたら、鼻で嗤うように、「あんな馬鹿馬鹿しい映画はないわねえ」と言ったんです。10歳年下の高校生が好きな映画の話をしているのに、わざわざそんなこと言わなくてもいいですよね(笑)。このように、映画に限らないのですが、コアなファンのかなりの部分に、(自分が一番分かっている)と信じ込み、自分が評価する作品以外を小馬鹿にする傾向がありますね。わたしは幸か不幸か高校の時にそういう人間を複数見ましたので、(自分はそうならないように)と、その連中を反面教師としております。内心、(その作品はちょっと・・・)と思っても、それを「好きだ」と言っている人がシンプルに愉しんでいるのなら、決して難しい作品批評はしません。ただ、「それが好きなら、こんなのも観てみたらいい」と、別のもっといい(とわたしが考える)作品を薦めるとか、いろいろ工夫しております。けれど、(自分は分かってる)と勘違いして偉そうに見当外れの発言をするような手合いにはキツく言うことはあります。
地元で自主上映している人たちもだいたい知っているんですが、閉鎖的雰囲気プンプンです。あまり言うべき(書くべき)ではないかもしれませんが、見た目もよくないし(笑)。「人を迎える・来ていただく」と思うのであれば、見た目もある程度以上はしっかりしてほしいのですが。もちろんもともとの容姿のお話ではなく、服装や佇まいなどのことです。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-01-25 03:21) 

pn

確かに77年版は吉永小百合が先生の方が話題にもなっただろうにね、もったいない。
by pn (2019-01-25 06:19) 

ヤマカゼ

俳優さんは懐かしい面々ですね。残念ながらこちらの作品は見てません。見てみたいですね。
by ヤマカゼ (2019-01-25 06:29) 

なかちゃん

松坂慶子さん、とても好きな女優さんです。でも、やはり脇役だった時代もあるんですね。
山口百恵と桜田順子に関しては、やはり山口百恵には影がついているようなイメージだったのではないかと思います。

by なかちゃん (2019-01-25 11:47) 

ヨッシーパパ

松坂慶子さんは、「愛の水中花」の頃とはうって変わって、最近では、朗らかで風格のある名脇役になりましたね。
by ヨッシーパパ (2019-01-25 19:08) 

coco030705

松坂慶子さん、山口百恵さん、桜田淳子さん、皆若くてキラキラしていましたね。青春はすばらしいです。

by coco030705 (2019-01-25 20:33) 

犬眉母

いかにも青春小説というストーリーですね。
by 犬眉母 (2019-01-26 02:26) 

そらへい

石坂洋次郎の作品は、若い頃テレビドラマでいくつか見た気がしますが、タイトルも内容も曖昧になっています。
青春ドラマだったので、それなりに胸ときめかして見ていたような記憶があります。
by そらへい (2019-01-28 20:31) 

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