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笠原良三、1960年代東宝昭和喜劇と『父ちゃんのポーが聞える』 [懐かし映画・ドラマ]

笠原良三、1960年代東宝昭和喜劇と『父ちゃんのポーが聞える』

笠原良三さん(1912年1月19日~2002年6月22日)の生まれた日です。笠原良三さんといえば、森繁久彌の社長シリーズ、植木等の日本一シリーズ、加山雄三の若大将シリーズなど、喜劇の作家というイメージが強いのですが、『父ちゃんのポーが聞える』のような闘病の作品も書かれています。(画像は劇中より)



笠原良三さんの作品については、これまで何作かご紹介させていただきました。

1960年代は、社長シリーズとクレージー映画、若大将シリーズなど、東宝だけで65本を執筆されています。

青春群像劇の先駆けとなったお姐ちゃんシリーズ。

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サラリーマン映画100作記念として、東宝俳優オールスターによる『サラリーマン忠臣蔵』(1960年、東宝)など森繁久彌の社長シリーズ

サラリーマン忠臣蔵

サラリーマン忠臣蔵
『サラリーマン忠臣蔵』より

日本一のホラ吹き男』など、高度経済成長を象徴するキャラクターを描いた日本一シリーズなどのクレージー映画。

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日本一の若大将』など、悪気を知らず友だち思いの明るく楽しい青春を描いた若大将シリーズ。

走る若大将
『日本一の若大将』より

こうした喜劇だけでなく、映画館から出る観客をもれなく泣かせてしまった作品もあります。

『父ちゃんのポーが聞える』(1971年、東宝)



父ちゃんのポーが聞える

昭和40年頃の富山県が舞台です。

ハンチントン舞踏病という難病で、体が少しづつ動かなくなり、やがて死を迎える少女(吉沢京子)が、片思いの男性(佐々木勝彦)への恋心に生きる張り合いを求め、C58の機関士である父親(小林桂樹)が、療養所の近くを通るたびに汽笛をポーっと鳴らして知らせる話です。

映画では、体が動かなくなり、ナースコールを押したいのに押せずに亡くなる最期になっていますが、実際には呼吸筋も動かなくなるため、窒息あるいは肺炎で亡くなることも少なくないそうです。

原作は、『父ちゃんのポーが聞こえる <則子・その愛と死>』(立風書房)です。

つまり、実話です。

主人公は小学6年で発症。21歳まで闘病生活を送ります。

人里離れた病院で、かつ当時は今以上に患者へのケアが十分にできなかったので、そういう施設に入れたことに対して、批判的なレビューもあります。

今のトレンドである「平穏死こそすばらしい」価値観から見たら、その8年は本人が辛いだけだったろうという結果論で批評することになるのでしょうが、私はそう考えません。

最期まで前向きに病気と向き合う生き様を通してこそ、命の尊さや生きるとはどういうことか、という悟りも生まれるのではないでしょうか。

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喜劇を書く作家が闘病記も書く理由は?


「笑い」を描く喜劇作品を書いている作家が、「涙」を流す闘病の作品も手がけるというのは、一見正反対の作品を書いているように見えます。

しかし、実はそれらは軌を一にしているテーマではないか、ということを最近考え始めました。

とくに喜劇(笑い)と言うと、巷間どこか見下した評価があります。

もちろん、その質はピンからキリまでありますが、風刺であったり、人間の弱さや醜さの描写であったりする喜劇も、闘病とは別の意味で、「人間の極限」について考えさせるモチーフではないかと云う気がします。

また、闘病記というと、「どうせ死ぬんだろ。暗い話は苦手だ」という人もおられますが、「どうせ死ぬ」までのプロセスは、100人いれば100通りあり、それぞれに価値があると私はおもいます。

笠原良三さんの作品、BSやDVDなどで鑑賞できます。ぜひご覧ください。

『父ちゃんのポーが聞こえる』ポスタ-ー 小林桂樹 吉沢京子 森るみ子 司葉子 藤岡琢也 吉行和子 白倉かほる
『父ちゃんのポーが聞こえる』ポスタ-ー 小林桂樹 吉沢京子 森るみ子 司葉子 藤岡琢也 吉行和子 白倉かほる

父ちゃんのポーが聞こえる―則子・その愛と死 (1971年)
父ちゃんのポーが聞こえる―則子・その愛と死 (1971年)

日本一の若大将 [レンタル落ち]
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日本一のゴマすり男 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD


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コメント 6

犬眉母

いい作品ばかりですね。
by 犬眉母 (2019-01-19 02:25) 

末尾ルコ(アルベール)

笠原良三、1960年代東宝昭和喜劇と『父ちゃんのポーが聞える』・・・ハンチントン舞踊病は何かの小説で扱われていたので存じておりましたが、「ハンチントン舞踊病 小説」で検索しても、わたしの読んだものは1ページ目には出てきませんでした。東野圭吾も取り上げているようですが、この人の作品は読んだことありません。比較的白人に多い疾病のようですね。今のところわたしの周囲に罹患した人はおりません。
昨今の「絶対泣ける映画」は苦手なわたしですが、笠原良三のフィルモグラフィを見れば、昨今のそうした映画よりもずっとクオリティが高いだろうことは間違いなく、観てみたくなります。

>そういう施設に入れたことに対して、批判的なレビューもあります。
こういう、「現在の主流的価値観」や「自分の狭い価値観」などでしか作品を観られない人たちって困ります。そういう人たちがユーザーレビューなどに投稿し、読んで真に受ける人たちが少なからず存在しますから。

>とくに喜劇(笑い)と言うと、巷間どこか見下した評価があります。

こういう人たち本当に困ります。もちろん昨今のテレビ芸人にはロクでもないのが多くおりますが、本来「笑い」というものは、敢えてこの言葉を使いますと、「高級」なのですね。「笑い」を意識的に生み出せるというのはまさに才能で、いかに努力してもできない人にはできないものです。それはチャップリンらが生み出してきたものから、日常生活の中の「笑い」に至るまで同様なのですけれど、この真実が理解できてない人たちが多いですね。多分そういう人たちって、「笑い」のない日常生活を送っている可能性大です。

「闘病記」や「闘病映画」などは、結局「どう描かれているか」が大きなポイントとなりますね。もちろん作品性を度外視ししても価値ある闘病記もありますが、映画や小説にするのであれば、描き方にある程度以上の節度があればいいなと思います。最近では、『8年越しの花嫁』がなかなかよかったです。

インフルエンザのお話、有難うございました。と言いますか、1度目に罹患された際のご症状はすさまじいですね。本当にできるだけの予防はしていたいものです。特に母が罹ったら大事ですから、いつも注意を怠らないようにしております。ただ、予防接種はわたしも母も受けません。わたしはそもそもほとんど医療機関を利用しないのですが(もちろん現代医療否定ではありません)、母はきつい注射や薬、あるいは検査などで副作用が出たことがあり、まったく受けたがりません。それにわたしの周囲にも、「予防接種受けたのにインフルエンザになった」という人、少なからずおります。
わたしの胃腸が虚弱なのは子どもの頃からですが、できれば今からでも改善したいといろいろ試しております。近所にヤクルトの販売所がありまして、近所付き合いで仕方なく(笑)取っていて、わたしがほぼ毎日飲んでいるのですが、それで腸の調子が整ったというのはまったくないです。ヤクルトさんを批判したいわけではありませんが(笑)、事実として、飲んでも飲まなくても、わたしの場合は同じです。
やはりビタミンCや葛根湯は常備しておくとよさそうですね。わたしもさっそく買っておきます。
ウォーキングや室内でのストレッチ、筋トレも適宜やっているのですが、空いた時間にやっているという状況で、本当はもっとまとまった時間を取りたいところなのですが、時間の使い方にはまだまだ改善すべき点があると自覚しております。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2019-01-19 02:59) 

pn

喜劇の真逆が悲劇とするなら対称を描くのは実は同じ事なのかも。
by pn (2019-01-19 06:17) 

なかちゃん

『父ちゃんのポーが聞こえる』はタイトルしか知らなかったのですが、富山が舞台だったのですね。
今度観てみたいと思います。

by なかちゃん (2019-01-19 13:30) 

ヤマカゼ

東宝だけで65本とはすごい数ですね。かなりの努力家でもあったのでは。
by ヤマカゼ (2019-01-19 16:36) 

ヨッシーパパ

父ちゃんのポーが聞こえるは、タイトルだけは聞き覚えがありますが、内容は覚えていません。
見たことも無いのかもしれません。
by ヨッシーパパ (2019-01-19 19:17) 

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