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大前均、『水滸伝』の李逵も演じた実は「薄幸な善人」 [懐かし映画・ドラマ]

大前均、『水滸伝』の李逵も演じた実は「薄幸な善人」

大前均さん(おおまえひとし、1935年12月19日~2011年3月1日)の生まれた日です。大きな体で野太い声を出す体力自慢の悪役を中心に、数多くの映画やテレビドラマに出演しました。リアルでは「気は優しくて力持ち」ともいわれましたが、トラブルで表舞台から消えてしまったのは大変残念でした。





大前均は、現役時代、身長190cm、体重115kg、柔道五段をプロフィールで明らかにしていました。

そこで、「大きな体と海坊主のような風貌」で相手を威圧する、悪役の用心棒やボディーガード役が多かったのですが、何しろ出演作は数え切れず、中にはそうではない役もありました。

今回は、過去にもご紹介した作品の中から「そうではな」かった役を3作ご紹介します。

『水滸伝』


水滸伝

水滸伝』(1973年10月2日~1974年3月26日、国際放映/日本テレビ)は、中村敦夫主演のテレビドラマ。

当時、「日本テレビ開局25周年」という銘打って放送されました。

もとの話である『水滸伝(すいこでん)』は、明代の中国で書かれた伝奇歴史小説です。

天傷星、天狐星など、108の魔星が各地に飛び散り、その生まれ変わりといわれる人々が、中国の北宋末期、汚職官吏や不正に対して、それぞれいわれなき理由で世間からはじき出された108人の好漢として、梁山泊と呼ばれる要塞に集結。

悪徳官吏を打倒し、国を救うことを目指すようになる話です。

12世紀初めに、36人が梁山泊の近辺で、反乱を起こした史実をもとにしているといわれます。

梁山泊というのは、盗賊のアジトですが、彼らはもともと、官吏や軍人、商人など、お金や権力を持った社会的に信用される立場にいた優秀な人たちです。

それがゆえに、時の権力者、高求(佐藤慶)から自分を脅かすものとして恐れられ、罠にはめられて“反社な人”のレッテルを貼られて、堅気の社会を追われてしまうのです。

彼らは、その恨みを晴らすとともに、民衆の社会にするために彼らを倒すことをモットーとしています。

梁山泊の首領は、大林丈史が演じた、“呼保義”宋江(こほうぎ・そうこう)ですが、ドラマでは、中村敦夫演じる“豹子頭”林冲(ひょうしとう・りんちゅう)が中心人物に書き換えられています。

中村敦夫
『水滸伝』(国際放映/日本テレビ)より

大前均は、天殺星の生まれ変わりで、梁山泊108星中第22位の好漢である李逵(りき、別名鉄牛)を演じています。

水滸伝で大前均

かなり重要な役です。

好漢たちの顔ぶれは、当時のドラマや映画の売れっ子を集めました。

他局のテレビドラマの撮影所をからっぽにするのでは、といわれるほど、……というのは大げさですが、さすがに25周年記念番組だけのことはあります。

晁蓋(山形勲)、盧俊義(山村聡)、宋江(大林丈史)、公孫勝(寺田農)、史進(あおい輝彦)、戴宗(黒沢年男)、武松(ハナ肇)、魯智深(長門勇)、鉄牛(大前均)、柴進(田村高廣)、花栄(原田大二郎)、黄信(峰岸降之介=峰岸徹)、関勝(若林豪)、楊志(佐藤允)、阮小二(品川隆二)、阮小五(常田富士男)、阮小七(渡辺篤史)、張順(長谷川明男)、燕青(灰地順)、朱仝(浜田晃)、雷横(長谷川弘)、朱貴(太古八郎)、杜遷(近水圭二)、李雲(睦五郎)、李少(生方中)/ 梁中書(山本耕一)、呼延灼(丹波哲郎)、轟天雷(根上淳)、高求(佐藤慶)、徽宗皇帝(水谷豊)、単廷玉(平泉征)、祝朝奉(下條正巳)、富安(穂積隆信)、董超(人見明)、如海(小林昭二)/扈三娘(土田早苗)、燕麗(中山麻理)、小蘭(松尾嘉代)……

このとき、すでに水谷豊は、若き皇帝の役に抜擢されていました。

本作は、水谷豊がブレイクした『傷だらけの天使』よりも前の作品ですから、水谷豊は役者としてこの時期から期待されていたことがわかります。

『ダイナマイトどんどん』


以前もご紹介した、福岡のヤクザが野球で決着をつけるという『ダイナマイトどんどん』では、審判の役を演じています。

ダイナマイトどんどん

やはり、これも悪役ではありません。

『仁義なき戦い代理戦争』


仁義なき戦い代理戦争』(1973年、東映)では、プロレスラーの役を演じています。

仁義なき戦いの大前均

主人公(菅原文太)が仕切るプロレスの興行が、あまり盛り上がっていません。

そこで、菅原文太は外国人レスラーに反則勝ちして戻ってきた大前均に、ビール瓶で頭を叩き割り、「これで遺恨試合してこい」とハッパをかけます。

ネットでは、大前均のモデルは力道山ということになっています。

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気は優しくて力持ちかも……


大前均は、悪役でずいぶん出ていますし、私も子供の頃は、「怖い人」かとおもっていました(笑)

でもよく見ると、体が大きく、スキンヘッドで声が太いだけで、悪い人の佇まいではないのです。

所属はアクターズプロで、明大の同級生である、八名信夫の悪役商会所属ですらありません。

「自分は悪役専門ではない」という気持ちがあったのかもしれません。

Wikiにも書かれていますが、大林宣彦監督作品の常連で、「ダンディな声質を生かして薄幸な善人やロマンチスト」を演じています。

そして、「やくざ絡みの恐喝事件に巻き込まれ、まったく無関係であったが、芸能界から引退同然に遠ざかった」(Wikiより)とありますが、言い訳を一切していません。

実際に、芸能界からの消え方も、「薄幸な善人」そのものだったわけです。

大前均さん、覚えてらっしゃいますか。

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末尾ルコ(アルベール)

大前均、『水滸伝』の李逵も演じた実は「薄幸な善人」・・・190cmはすごいですね。棚橋弘至に少し分けてあげたいような(笑)。プロフィールをチェックすると、観ている作品はいろいろあるのですが、「大前均」という名前までは存じませんでした。実はわたし、中国史にやや疎くて、理由はただ一つ、日本語とは違う漢字の名前が多く出てくるのがやや苦手なのです。中国の地名とかはカッコいいなと思うのがあるのですけれど。外国小説が苦手な人がよく、「カタカナの名ばかりなのが・・・」と言うのですが、わたしはそちらは大丈夫で、そして日本語なら漢字もOKなのですが、中国関係がいまだにもう一つなのです。かつて日本は漢文の習得が一般教養だったことを考えると、いささか情けない気は致しますが。よって、『水滸伝』についても、映画、ドラマ、小説などでも、ほとんど接してことがないのです。しっかり読めば(観れば)、おもしろいことは間違いなのだから、そのうち挑戦してみたいですね。
『仁義なき戦い代理戦争』の中での風体は、力道山と言うよりもキラー・カーンといった感じですね。こうした作品の中でプロレスがどう描かれているのか興味があります。それにしてもポスターがなかなかですね。いわゆるモンド映画のポスターのようです。

>総理のくせに、批判されるとSNSでネチネチやってるのは

この前の有田芳生のお話にも通じますが、しつこい誹謗中傷でもあればまだしも、多少の批判でSNSをブロックするとかいう人って、幼児的であり、狭量であり、とてもヒステリックで、まともな会話とか成り立ちそうにないですね。何やらネットには、まったく絡みがなくても、どこかで誰かのコメントが気に入らなかったらそれだけで「前もって」ブロックする人もいるようですね。ホント、神経がどうにかしてます。
SNSのお話で言えば、ブロック云々のようなタチの悪さはありませんが、無駄に小ぎれいな写真を並べる投稿も少々頭が痛くなります。もちろん綺麗な写真はいいのですが、「綺麗」と「小ぎれい」とはかなり違っていると思っておりまして、例えば、「今朝のご飯です」とかいって、食べ物の写真を載せたりしているのがやたらと多いのですが、(どうしてこんなに小ぎれいで、こざっぱりしているの?)とツッコミたくなるような、何の工夫もないものが多過ぎます。しかも添えられているコメントが、「今朝のご飯です」とか「今からこれ食べます」とか(笑)、嘘か本当か分かりませんが、(それがどうした?)と思ってしまいます。「インスタ映え」という言葉がずっかり定着しておりますけれど、この言葉も日本人の美的感覚を浅薄にするのに大きな役割を演じている気がします。

女優としての、岩下志麻と桃井かおりを客観的に比較すれば、桃井かおりがかなり下でしょうね。ただその桃井かおりも今の女優たちと比べれば、存在感とか影響力、バリューなどがまったく違ってました。結局またしても、時代が下るにつれてクオリティが下がっている・・・というお話になってしまいますが。あの頃の桃井かおりと秋吉久美子の存在感が絶大でして、クラスメートの間でも、どちらがいいか話題になることもありました。わたしはその頃は秋吉久美子がピンと来ておらず、桃井かおり派でした。「いい子ちゃん」が好みの父はどちらも好きではなかったですが(笑)。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-12-19 02:56) 

pn

名前は知りませんでしたがよく見かけてました(笑)
言われて見れば知らぬ間に見なくなったけどそんな理由でしたか。
by pn (2018-12-19 06:18) 

ヤマカゼ

見た目で判断されたのか、残念な引退ですね
by ヤマカゼ (2018-12-19 06:36) 

Rinko

190cmに115kgとは大きな方だったんですねー。
お名前は知りませんでした。

by Rinko (2018-12-19 07:25) 

チナリ

こんにちは。

>大前均は、現役時代、身長190cm、体重115kg、柔道五段をプロフィールで明らかにしていました。

大前均さんのことは知りませんでしたが、身長190cm、体重115kg、柔道五段というと、プロレスラーでいらしてもおかしくはない体格やバックボーンですね。

>そして、「やくざ絡みの恐喝事件に巻き込まれ、まったく無関係であったが、芸能界から引退同然に遠ざかった」(Wikiより)とありますが、言い訳を一切していません。

引退のされ方はとても残念ですが、言い訳を一切していないところに男気というか人柄が表れている気がします。

>Wikiにも書かれていますが、大林宣彦監督作品の常連で、「ダンディな声質を生かして薄幸な善人やロマンチスト」を演じています。

映画版の「ふたり」は、大人になった現在、いつかまた観てみたいと思っている作品です。

その映画版の「ふたり」に出演されていらしたようですが、子供の頃に観た記憶しかないので、どのような役で出演されていらしたのかが気になりました。

by チナリ (2018-12-19 11:37) 

えくりぷす

大前均の名前は知りませんでしたが、顔は見覚えがあるような…。私の中では、宇梶剛士とイメージが重なります^^;
by えくりぷす (2018-12-19 12:01) 

レインボーゴブリンズ

お名前は存じ上げませんでしたが、よく見るお顔でした。
私が好きな俳優だった大滝秀治さんがもしプロレスラーになっていたら、こんな感じですね(^^♪
by レインボーゴブリンズ (2018-12-19 14:40) 

なかちゃん

大前均、名前だけは何かで見たような気もしますが、記憶にないです。
それにしても水滸伝、凄いメンバーだったんですね。
今放映されても観たくなるメンバーだと思います。
当時も観ていたとは思うのですが、佐藤慶が悪役だったような記憶が微かにあるだけです(^^;


by なかちゃん (2018-12-19 16:35) 

ヨッシーパパ

水滸伝は懐かしいですね。
扈三娘(土田早苗)が大好きでした。
by ヨッシーパパ (2018-12-19 18:35) 

ナベちはる

見た目が大柄だとそれだけでインパクトがありますが、それこそ「それだけで」人の印象を決めてはいけないですね。
by ナベちはる (2018-12-20 00:25) 

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