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梨元勝、芸能報道のヒューマンインタレストを支えた名リポーター [マスコミ]

梨元勝、芸能報道のヒューマンインタレストを支えた名リポーター

梨元勝さん(なしもとまさる、1944年12月1日~2010年8月21日)の誕生日が1日でした。日本に芸能リポーターという仕事を定着させた先駆者と言っていいでしょう。「恐縮です」という挨拶で低姿勢に入りながらも、核心を突くリポートは、芸能報道にヒューマンインタレストを感じさせました。(上の画像はGoogle検索画面より)



貴乃花元親方と、景子さんの離婚報道がかまびすしいですが、フジテレビ編成担当の石原隆取締役は30日、「可能性はないとは言えない」と、“古巣復帰”示唆とも取れる発言をしています。




もちろん、離婚した女性の“たつきの道”をとやかくいうものではありません。

が、相撲協会理事長の芽が完全になくなったところで離婚、という打算的にも見えるタイミングは、以前梨元勝さんが話していたことを改めて思い出します。
彼女たち(女子アナ)は、パリとかニューヨークとかの支局に1回行って、30歳になったら配置転換になるってわかってるんです。その前にやることは、IT長者捕まえるか、野球捕まえるか、相撲捕まえるかなんですよ。 妊娠は黙って、河野景子みたいに後で発表する。彼女はお腹が大きいのに、ずーっと「違う(妊娠じゃない)、違う」って言い張って、結局結婚して5ヶ月で生んでるんだからね。
まあ、これは人に聞いた話ですけど、婚約指輪だけ見せちゃってね。みんなレポーターが直撃するじゃないですか。普通なら、「困ります」っていうと、こう(手で遮るポーズ)するじゃないですか。ところが、彼女はそういいながら(手のひらをひっくり返して指輪を見せる仕草をして)こうですからね(笑)。この人たちはこういうところで生きているんだなあ、と思いましたね。(『紙の爆弾』2008年1月号で梨元勝)

河野景子アナ時代から、すでに女子アナのタレント化がいわれていましたが、凋落が言われて久しいフジテレビとしては、タレントとしてどうしてもほしい存在なのかもしれません。

梨元勝は、講談社の『ヤングレディ』(現在休刊)編集部で、記者生活をスタートしました。

梨元勝

当時の週刊誌は、データマンといわれる契約記者たちが現場を取材して情報を集め、それをアンカーマンといわれる、立花隆、小中陽太郎、草柳大蔵といった著名な作家が整理して最終的な記事にしていました。

梨元勝は、文字のデータ原稿を書くより、話で伝えたほうが面白いと当時からアンカーマンに言われていたそうです。

その才能が買われて、『アフタヌーンショー』(NET=現テレビ朝日)という昼のワイドショーの芸能コーナーに、リポーターとしてスカウトされました。

梨元勝が現場に出て芸能人を取材し、スタジオで、司会者の川崎敬三と、芸能評論家の加東康一がそれを整理するという、「テレビ週刊誌」のスタイルが確立したのです。

これは、以後の芸能ワイドショーのモデルとなるスタイルでした。

「週刊誌っていうのは、新聞の1行、2行を拡大して記事を作ってきたわけです。小さい事件をどれだけ人間的問題に広げられるか、ということですよ。そうやって、『週刊新潮』や『女性自身』の草柳大蔵、『週刊明星』や『週刊文春』の梶山季之といった人たちの時代があったわけです」(『紙の爆弾』2008年1月号で梨元勝)

新聞記事の5W1Hだけではわからない、背景にある事件当事者の心や周囲の変化を明らかにし、書き屋のプロの価値観やイマジネーションでそれらを整理して、その出来事の真相に肉薄して記事ができたということです。

その広げ方が、根拠のない創作ではジャーナリズムになりませんから、梨元勝らは現場に裏とりの取材に行ったわけです。

当時、自分に都合の悪い取材を嫌がる芸能人のご都合主義に同調した一部視聴者は、芸能レポーターというのは、他人の生活に入り込むことを飯のタネにする、との評価を少なからず抱いたようですが、私はその意見には全く賛成しません。

べつに、一般人の夫婦の営みに割って入って、「お気持ちはいかがですか」と尋ねているわけではないんですよ。

芸能人のスキャンダルについて、真相や心境はどうなのですか、と当事者に尋ねているだけです。

公共性は間違いなくあることですし、離婚や不倫にしても、芸能人である以上、マスコミに突かれるのは有名税。

たしかに、何でもかんでもマイクを突きつける姿に鼻白むこともあったかもしれません。

しかし、取材というのは決して格好いいものではなく、非常識と特ダネは紙一重なのです。

非常識だからといって腰を引いていたら、真実へのアプローチは永遠にできません。

不必要な方向に踏み込みすぎた報道があるとすれば、それは編集方針そのものの誤りであるか、むしろ読者・視聴者の民度(低俗好き)の問題ではないでしょうか。

私は、別に細かい経緯はどうでもいいですが、その有名人がどういう生き方をしたのかは知りたいですね。

その中にスキャンダルがあれば、それも含めて、その生き様が仕事ぶりにどう反映されているのかをきちんと見極めたいとおもっているからです。

人が、人の生き様に興味をもつのは、まさにヒューマンインタレスト(人間の根源的な関心)ではないですか。

ですから私は、プロの映画評論であれ、個人ブログのレビューであれ、そこにヒューマンインタレストがあるかどうかが評価基準になっています。

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突撃型リポートは番組に活気と緊張感をもたらした


以前、妻と、梨元勝さんの事務所をお訪ねしたことがあるのですが、その事前連絡で梨元勝さんから電話がかかってきたとき、妻が出て、「梨元さんてほんとに『恐縮です、ナシモトです』って言ってた」と感動していました。

内田裕也の『コミック雑誌なんかいらない!』(1986年、パイオニア)という映画でも、内田裕也扮する人気芸能レポーターは「恐縮です」を口癖にしていました。

明らかに梨元勝さんを意識していました。

梨元勝さんは、「稲垣メンバー」などと呼び、ジャニーズ事務所に「忖度」する報道に抗議してレギュラー番組を降板したり、覚醒剤に手を染めた芸能人の復帰を厳しく批判したりと、気骨のあるリポーターでしたが、惜しくも2010年8月に亡くなってしまいました。

テレビがつまらなくなったといわれる時期と、梨元勝さんのような突撃取材型の芸能リポーターが消えていった時期は重なります。

今は、記者会見で記者が無難な質疑応答だけをやりとりする、予定調和ジャーナリズムに成り下がってしまいましたが、たたかうリポーターによる踏み込んだ取材活動が行われた時代は、ワイドショーも週刊誌も、もっと活力と緊張感があって面白かったと思います。

絶筆 梨元です、恐縮です。―ぼくの突撃レポーター人生録
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腰の低い人、頭の高い人―人づきあいのコツ、教えます

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  • 作者: 梨元 勝
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本


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犬眉母

芸能人の信頼も厚かったですね。
ナアナアという意味ではなくて、
ちゃんと報道してくれるという意味で。
by 犬眉母 (2018-12-02 02:17) 

末尾ルコ(アルベール)

梨元勝、芸能報道のヒューマンインタレストを支えた名リポーター・・・「ヒューマンインタレスト」という言葉はこれからの日本社会を考える上での大きなキーワードの一つとなりそうですね。なにせ多くの日本人からヒューマンインタレストが希薄になっております。
梨元勝について積極的な興味を持って見ていたわけではありませんが、確かに昨今のテレビ人と比べると、人間味は大いに感じました。

>IT長者捕まえるか、野球捕まえるか、相撲捕まえるかなんですよ。

何とも浅ましい世界ですね。でも確かに河野景子あたりから、「女子アナ」という存在がそのような浅ましいものになってきた感がありました。そういう人たちだと世の中も割り切っておればまだしも、何だかんだ言って、「女子アナ」という存在に大きな価値を見出す人たちが多いのも当時から現在まで変わりありません。朝の民放番組なんかで、スタジオに男が一人か二人、後は女子アナだか女子タレントだか分からない女性がずらり座っている図というのはかなり異様です。
貴乃花のところは息子のことでも夫婦でもめていたのではと、昨日目にしたテレビ番組でやっておりました。一流の靴職人を目指していた息子かタレントも始めたことを貴乃花は不満だったけれど、河野景子は擁護していたとか、そのような内容でした。まあその番組の情報が正しいかどうかは知りませんが、息子のタレント化を擁護する河野景子という図式はとても自然だとは感じました。女子アナとか、日本独特の「タレント」というコンセプトがなければ、存在してなかったでしょうからね。

『アフタヌーンショー』、ありましたね。いろいろ問題を起こした番組でもありました。夏場の怪奇特集とか、あまりに馬鹿馬鹿しくて逆に爆笑して観ておりましたが。

>人の生き様に興味をもつのは、まさにヒューマンインタレスト

確かにその通りです。そしてその点にどれだけ興味を持てるかも、映画やテレビドラマを愉しめるか否かの大きなポイントとなっていますよね。俳優が役柄を演じることで成立する映画やドラマは、まず俳優たちの人生があり、そんな人生を背負った彼らが演じる役柄に(フィクションではあっても)人生がありと、最低でも二重構造になっており、さらに深く鑑賞していけば、三重、四重、五重・・・と無数に複雑な構造をしているものだと理解できます。制作に関わるスタッフにもそれぞれの人生がありますから。そうした真実を踏まえた上で鑑賞するのとしないのでは、愉しむ際の深さがまったく異なってきますよね。歌も同じことですね。ヒューマンインタレストがなければ、歌手や歌の本当の魅力が分からない。そして小説や人間を扱ったノンフィクションも同様です。

『コミック雑誌なんかいらない!』は当時わたしの周囲の、映画、ロック、プロレス、本好きのメンバーの中でも話題になっておりました。あの頃は内田裕也、俳優としてもいい作品に出ておりましたね。

>ジャニーズ事務所に「忖度」する報道に抗議してレギュラー番組を降板したり
>覚醒剤に手を染めた芸能人の復帰を厳しく批判したり

こうしたこともおぼろげながら、記憶しております。梨元勝と比べると現在のワイドショーなどはジャーナリストとして、そして人間として欠けている部分が大きいですね。なにせニュース番組やワイドショーにジャニーズが座ってますから(笑)。

ジャイアント馬場に関する次のような展覧会があるようですね。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181201-00000089-sph-fight
最寄なら駆け付けたいところなのですが、この展覧会は芸術家気取りのタレントの展覧会などよりはずっと価値があると思います。昭和プロレスの写真展とかもおもしろそうですよね。写真ならではの迫力を今のプロレスファンたちも味わうべきです。もちろん実際の試合よりも写真の方がずっと迫力がある場合も含めて(笑)。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-12-02 04:06) 

ヤマカゼ

たしかに。芸能リポートというとこの人、梨元勝さん、という感じでしたね。
by ヤマカゼ (2018-12-02 07:21) 

チナリ

おはようございます。

梨元勝さんがお亡くなりになってから、もう8年経つんですね。

芸能リポーターとしてはよくわからないのですが、私は、バラエティー番組に出演されていたとき、とてもおもしろい方だなぁと思ったことがありました。

by チナリ (2018-12-02 08:10) 

poko

亡くなられてもう8年なんですね。
毎日のようにワイドショーで見てる人でしたね。
by poko (2018-12-02 11:31) 

coco030705

おっしゃるとおりですね。今のワイドショーは、なあなあでどこの番組を観ても、鋭い持論を展開する人が少ないです。花田景子さんにしても、添い遂げるなら最後まだそうしてほしかったですね。アナウンサーに復帰して貴乃花さんを支えていただきたかったです。
以前、歌舞伎の坂東三津五郎と略奪結婚したナントカいう女性アナウンサーも、2年ぐらいで離婚したと思ったら、金持ちの男性と結婚してまたマスコミに出たりしてますものね。不倫で奪い取った人なんだから、なにがあっても、添い遂げるべきだったと思いますが……。


by coco030705 (2018-12-02 11:54) 

kou

芸能レポーターも質が変わってきましたね。
梨本さん時代の芸能レポーター全盛期が懐かしいです。
最近のテレビはあまり面白くなくなり、あまり見る機会が無くなってきたように思います。
by kou (2018-12-02 16:02) 

Take-Zee

こんばんは!
こんなコメント不適当かも知れませんが、
私は芸能レポーターをどうも好きになれません。

by Take-Zee (2018-12-02 18:01) 

pn

全てが予定調和になっているのかな?今のテレビは。
前はいろんなキャラのレポーターが居た気がするけど今はなんだろか?あちこちに気を使っていると言うか見えない力の下意見している感じだから見ていて嘘臭く聞こえる。
by pn (2018-12-02 20:02) 

ナベちはる

梨本さん、「恐縮です」というフレーズが印象に残る方でした。
by ナベちはる (2018-12-03 00:31) 

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