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赤木春恵さん訃報『喜劇駅前温泉』など若い頃の好演を振り返る [東宝昭和喜劇]

赤木春恵さん訃報『喜劇駅前温泉』など若い頃の好演を振り返る

赤木春恵さんの訃報が話題です。20年にわたって『渡る世間は鬼ばかり』の姑役を演じてきましたが、日本喜劇人協会相談役でもあったように、かつては喜劇映画にも出演していたのです。『喜劇駅前温泉』など懐かしい映画を振り返ってみます。



私が最初に赤木春恵さんを見たのは、NHK連続テレビ小説の第12作『藍より青く』(1972年4月3日~1973年3月31日)でした。

『藍より青く』


藍より青く
Google検索画面より

真木洋子が、頑固な父親(高松英郎)に反対されながらも、大和田伸也と結婚しますが、大和田伸也は出征して戦死。

しかし、その後真木洋子は中華料理店を開き、東南アジアに支店も出すまでに大きくするストーリーです。

山田太一原作、森崎東脚本・監督作品です。

赤木春恵は佐野浅夫と夫婦で、大和田伸也の両親役でした。

細かい場面は覚えていないのですが、ちょっときつい人柄の役でした。

本田路津子の歌『耳をすましてごらん』が、テーマソングとは別に、エンディングに入っていました。

耳をすましてごらん

この歌がいい歌なのです。

Youtubeに、歌についての的確なコメントが入ってます。
人生は地獄だと実感させ、同時に、それでも生きるに値すると私たちを鼓舞する歌。

まさにそういう歌です。

私はこういう“悟りの歌”が好みなのです。

とくに3番の歌詞が素晴らしく、フルに聴くことで、もう1度1番から聴きたくなる歌です。

『水もれ甲介』


水もれ甲介
チャンネルNecoより

赤木春恵はこの2年後に、『水もれ甲介』(1974年10月13日~1975年3月30日、ユニオン映画/NTV)で、「やさしい母さん」の役を演じています。

『水もれ甲介』は、東京・豊島区南池袋の鬼子母神近くにある、「三ツ森工業所」という水道工事業者が舞台です。

長男の甲介(石立鉄男)は家業を手伝っていましたが、昔気質の職人の父親・保太郎(森繁久彌)になじられて、仕事が嫌になり家出。

ベース奏者・須貝(犬塚弘)に拾われて、ドラマーとしての腕を磨いていました。

石立鉄男の家出以来、森繁久彌は酒を飲むようになり体を壊し、危篤状態に。

石立鉄男が駆けつけると、森繁久彌は、石立鉄男と次男の輝夫(原田大二郎)は自分の息子ではなく、命の恩人である倉田兵長の息子を引き取ったことを打ち明け、「頼んだぜ、甲介」と言い残して死去。

保太郎(森繁久彌)から出生の秘密を聞かされた甲介(石立鉄男)は、ドラムを捨てて家に帰り、育ててくれた保太郎の妻の滝代(赤木春恵)や、保太郎と滝代の娘である朝美(村地弘美)とも、親子や兄妹としての関係を大切にしていくというヒューマンコメディです。

私個人の考えですが、このストーリーは、クレージーキャッツのハナ肇がモデルではないかと見ています。

石立鉄男は生前、『スタジオパーク』というNHKのトーク番組で、印象に残る仕事は、『水もれ甲介』と『おくさまは18歳』と答えていました。

『ああ家族』


『ああ家族』(1987年1月5日~2月27日、TBS)は、『渡る世間は鬼ばかり』のプロトタイプともいえる、石井ふく子Pと橋田壽賀子脚本の嫁姑ホームドラマです。

当時、ゴールデンタイムは2時間ドラマのブームだったために、おそらく枠がなくて、本来はメロドラマ枠の『花王愛の劇場』で放送されました。

赤木春恵が、石井ふく子ドラマの姑役を演じたのは、連続ドラマではこれが初めてだと思います。

私の一つ話になってしまいましたが、その第一回で、私は鑑識の役で出ています。

ああ家族.jpg
『ああ家族』より。左から大空真弓、山口崇、私、ベンガル(刑事役)

赤木春恵さんと一緒のシーンでなかったのが残念。

この収録日、赤木春恵さんは、休憩時間もセット内に居残ったまま、タバコを美味しそうに燻らせ、やはり石井ふく子ファミリーの大鹿次代さんを相手に世間話をしていました。

大鹿次代さんはもっぱら聞き役でした。

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『喜劇駅前温泉』


喜劇駅前温泉』(1962年、東京映画/東宝)は、全24作ある喜劇駅前シリーズの第4弾です

『喜劇駅前温泉』より
『喜劇駅前温泉』より

本作『喜劇駅前温泉』から、三木のり平・池内淳子・沢村貞子などがシリーズのレギュラーに加わりました。

喜劇駅前温泉

植木等主演のクレージー映画第一弾『ニッポン無責任時代』と同時公開されました。

「なんと贅沢な2本立てだったのでしょう」(DVDで解説の林家正蔵)というのはもっともで、この2本立ての大ヒットで、1960年代の東宝喜劇を、駅前シリーズ、社長シリーズ、クレージー映画の3シリーズで支えていく前提ができあがったのです。

舞台は、スカイラインが開通したばかりの会津磐梯山です。

客をどうやったら呼び込めるかということで頭を悩ませている旅館組合。

保守的な森繁久彌と、エロのサービスを入れようという伴淳三郎が対立しています。

間に入りオロオロしているのがフランキー堺

駅前トリオのズーズー弁と、会津磐梯山の風光明媚なロケーション、多分にカリカチュアされた登場人物たちの右往左往ぶりが見どころです。

なお、今回は夏木陽介が伴淳三郎の息子役として、司葉子が森繁久彌の娘役として出演。

親は対立するのに、子供はアツアツカップルという、喜劇にありがちな設定です。

赤木春恵は、伴淳三郎の旅館に出入りするマッサージ業者です。

赤木春恵は、伴淳三郎の旅館に出入りするマッサージ業者
『喜劇駅前旅館』より

三助コンクールなるシーンで、赤木春恵は伴淳三郎と組んで水着になっています。

赤木春恵もまだ若かったので、頑張ってました
『喜劇駅前旅館』より

赤木春恵もまだ若かったので、頑張ってましたね。

京塚昌子も、森光子も、こういう時代を経て、テレビでブレイクしたのです。

『喜劇駅前温泉』は現地の温泉と全面的にタイアップしているため、ロケーションがすばらしく、そして高度経済成長時代の、古き良き活気ある日本が描かれています。

赤木春恵さんの追悼として、ぜひこの『喜劇駅前温泉』をBSやCSで放送してほしいとおもいます。

赤木春恵さんの、生前のご遺徳をお偲び申し上げます。

昭和の名作ライブラリー 第15集 水もれ甲介 HDリマスター DVD-BOX PART 1
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犬眉母

森繁劇団に在籍されていたんですね。
by 犬眉母 (2018-11-30 02:10) 

末尾ルコ(アルベール)

赤木春恵さん訃報『喜劇駅前温泉』など若い頃の好演を振り返る・・・赤木春恵や森光子は、わたしが子どもの頃から、(いつでもテレビに出ている人)というイメージでした。あくまで印象なのですが、ドラマをつければ何らかの役で出ている頻度が高かった感がありました。主役でなくても存在感抜群なので、記憶に残るのですよね。『金八先生』は特に第一シリーズのインパクトが強かったですから、赤木春恵の頼もしい風情も印象的でした。
『水もれ甲介』も観ておりました。ただ残念ながら、当時は森繫久彌の何たるかさえ知らずに観ておりましたので、このドラマの価値が理解できていたとは言えません。とにかく石立鉄男は、子どもにとっても実に魅力的な俳優でしたね。

>人生は地獄だと実感させ

これは人生の真実の一つですよね。ところが多くの人は人生に生温い期待をしてしまうために、ちょっとした困難に遭うと崩壊してしまいます。そもそも(人生とは、いかなるものか)という自問自答自体、80年代あたりから「ダサいもの」という認識が広まってしまいました。中途半端な教養主義や青臭い説教主義などの反動もあったのでしょうが、(人生とは、いかなるものか)という問い掛けを常に持っていなければ、結果的に衆愚になりさがってしまうことが多いのではと思います。

今回の追悼報道で、わたしの見かけたものの多くで、『ペコロスの母に会いに行く』を取り上げていたのはよかったと思います。88歳にして映画初主演。ギネスにも載り、しかも作品的にも映画賞を総なめと、赤木春恵の長きに渡る女優人生の総まとめ、ファンにとってはもちろん、ご本人にとってもとてつもなく大きな贈り物となったのではと思います。

>もともと知らないんじゃないでしょうか。

確かにです(笑)。いちいち日本人レスラー同士の心象風景とか、外国人レスラーにそこまで理解する義務はないですよね。新日で日本人抗争が中心となってももちろん外国人レスラーも来ていたわけですが、日本人との間に明らかに溝があった感が今となっては可笑しいです。日本人同士のクサいノリについていけるわけもなく、その周辺で黙々と自分の仕事をやっている印象でした。今の新日って、レギュラー外国人レスラーもそんなクサい芝居の正式メンバーという感じで、それがまた味がないのですよね。WWEももちろんクサい芝居満載ではありますが、日本人の妙な情念とかスポ根性を打ち出すところとかは米国には感じられません。かなり芝居の質は違いますね。
藤波は何だかんだで、いまだにこうしてお間抜けキャラクターとして取り上げたくなる時点で既に有難い存在と言えなくもないですね。長州力だとおもしろく取り上げるのは難しいですし、ジャンボ鶴田のように若くして亡くなると、取り上げるのにも心が痛むものです。




>「薄笑いのできない人間」

その点はわたしも同じです。薄笑いで諂っておれば無難に行ったり、時に得したりしていたのでしょうが、それはできないですね。でもお記事やいただくコメントからは、いっぷく様は藤波とは比較にならないほどご決然としたご性格、さらに、ご知性、ご見識、そして精神力など、凄い方だと確信しております。対して藤波にそうした要素を感じたことはございません(笑)。藤波の場合本当に、「何を言いたいか分からない・何をやりたいか分からない」という言動ばかり目立ちます。だからネタとしてはいつまでもおもしろいのでしょうが。同年代のレスラーたちと比べて、身体のシェイプを保っているのは立派だとは思いますが。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-11-30 03:08) 

旅爺さん

赤木春恵さんは脇役が多かったですが良いお母さん役や
お婆ちゃん役が光ってましたよね。昔の役者がどんどん消えていくのが寂しいです。
by 旅爺さん (2018-11-30 06:09) 

pn

耳をすましてごらんが気になって仕方ない(^_^;)

俺的には金八の校長の方が印象深いけど、若い事とは言え水着にもなってたのかぁ。樹木希林のツインテールと言い皆さん昔はいろいろやってるんだなぁ。
by pn (2018-11-30 06:17) 

ヤマカゼ

やはり、大きな俳優さんがなくなると昭和が駆け抜けていった感がありますね。
by ヤマカゼ (2018-11-30 06:33) 

ピストン

『喜劇駅前温泉』,見てみたいと思いました。
赤木春恵さんは存在感のある俳優さんでしたね。
by ピストン (2018-11-30 08:55) 

なかちゃん

とてもステキな役者さん…というか、配役の中しか知りませんが、いいお母さんという感じでした。
また一人素晴らしい人が…

by なかちゃん (2018-11-30 09:08) 

marimo

昭和の名優たちが次々といなくなってしまって何だかさみしい気持ちです。
by marimo (2018-11-30 10:02) 

えくりぷす

赤木さんは『渡る世間は鬼ばかり』のきつい姑役が記憶にありますが、可愛さというか愛嬌があって、憎めないところがありましたね。(嫁がピン子さんということもあるかも…)
いっぷくさんがご覧になった、赤木さんの舞台裏の様子を伺えるのは貴重ですね。
by えくりぷす (2018-11-30 10:02) 

チナリ

こんにちは。

赤木春恵さんの訃報は、昨日たまたまネットのニュースで見て、とても驚きました。

出演されたドラマなどは、おそらく一度も見たことがなかったと思いますが、お母さん役 (おばあちゃん役) が多い女優さんというイメージが強いです。

以前に、何かのテレビ番組で、転倒された際の骨折によって女優の引退を決められ、その後、どういう暮らしをされているのかを見たことがありました。

その番組では、確か本を出されるまでを密着したかのような内容だったと思うのですが、私にとってその番組が赤木さんを見た最後の番組になってしまいました。

誰しも毎年年齢を重ねていくので仕方がないのですが、昭和を代表する方々の訃報は、とても強いショックを受けてしまいます。

by チナリ (2018-11-30 12:53) 

Take-Zee

こんばんは!
また昭和の名優がいなくなってしまいました。
このかた、私の父親と同い年なんですね!!

by Take-Zee (2018-11-30 17:39) 

kou

また昭和が一つ消えてしまいましたね。
寂しいの一言です・・・。
by kou (2018-11-30 19:51) 

ナベちはる

またお一人、昭和を代表する俳優が亡くなってしまいましたね…・
by ナベちはる (2018-12-01 00:09) 

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