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瀬川昌治、『喜劇大安旅行』など温かみのある働く者の喜劇を描く [懐かし映画・ドラマ]

瀬川昌治、『喜劇大安旅行』など温かみのある働く者の喜劇を描く

瀬川昌治さん(せがわまさはる、1925年10月26日~2016年6月20日)の生まれた日です。東映や松竹で主に喜劇を撮った映画監督です。私が印象に残るのは、渥美清主演の列車シリーズ(東映)と、フランキー堺主演の旅行シリーズ(松竹)など“国鉄マンシリーズ”です。



『喜劇大安旅行』は、子供の頃、つまり封切りのときに父に映画館に連れられて見た記憶があります。

瀬川昌治
Google検索画面より

専務車掌の並木大作(フランキー堺)と、蒸気機関車運転士の父親・晋吉(伴淳三郎)を中心に繰り広げられる旅行シリーズ第一作。

喜劇大安旅行

本作は、もともと東映で、瀬川昌治監督で渥美清が車掌を演じた喜劇列車シリーズ(3作品)の松竹版です。

旅行シリーズは、シリーズ後半は伴淳三郎にかわり森田健作が入り、シリーズは全部で11本制作されました。

『喜劇大安旅行』(1968年、松竹)


『喜劇大安旅行』のマドンナは新珠三千代。

喜劇大安旅行の新珠三千代

伴淳三郎と、フランキー堺行きつけの、めはり寿司店の娘です。

そして、倍賞千恵子が片思いで、フランキー堺を狙っています。

倍賞千恵子

新珠三千代の所属会社は、生涯東宝でしたが、『社長千一夜』以後、常連だった社長シリーズはフランキー堺や三木のり平とともに降板し、本作や『男はつらいよ、フーテンの寅』(1969年)など他社出演でマドンナ役を演じています。

さて、本作の舞台は、阪和線・紀勢本線です。

阪和線・紀勢本線

東京育ちには詳しくはわかりませんが、当時の貴重な車両が映っています。

伴淳三郎が機関士をつとめるC58型蒸気機関車は、紀勢本線だそうです。

C58型蒸気機関車

C58型蒸気機関車の映像は貴重らしいので、鉄道ファンはぜひ実際の映像でご確認ください。

見どころは、伴淳三郎が急勾配の上りを走らせるシーンです。

緊張しながら煙に巻かれ、顔を真っ黒にして煙でむせりながら必死になってハンドルを握り石炭をくべ、

大安旅行

伴淳三郎

やがて長いトンネルを抜け、輝かしい視界が画面いっぱいに広がり、伴淳三郎が充足と安堵の表情でそれを見つめるシーンは、感動せずにはおれません。

伴淳三郎

伴淳三郎が、実にいい表情をしています。

本作での伴淳三郎は、喜劇駅前シリーズで見せるアチャラカはほとんどみせず、機関士として真面目に働く姿を演じ、息子であるフランキー堺に、国鉄マンとしての誇りと責任を無言のうちに教える役どころです。

その意味で本作は、喜劇というより、観光&労働者映画といった趣きです。

松竹らしい「喜劇」ですね。

ダイレクトに笑える喜劇のシーンは、ボケ老人役の左卜全が、フランキー堺の楽しみにしていためはり寿司を押しつぶしてしまうところと、貴乃花元親方の母親の藤田憲子が、

藤田憲子
右端の人

お座敷ストリップ芸者の役で、間違ってスカートを引っ張られ下着を見せているシーンでしょうか。

本作はDVD化されていないため、すべてこちらからのスクリーンショットです。
https://www.youtube.com/watch?v=A3__ncKloHg

Gyaoでは有料(300円)で配信していますが、私は同じ作品を何度も見ないと頭に入らないので、できればDVDで時間をかけて繰り返し観賞したいところです。

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一所懸命生きている人を温かく描く


テレビでは、やはりフランキー堺主演の『赤かぶ検事奮戦記』(1980年10月3日~10月31日、松竹/朝日放送) 『顔で笑って』(1973年10月5日~1974年3月29日)、

顔で笑って
TBSチャンネル

赤いシリーズ、『スチュワーデス物語』(1983年10月18日~1984年3月27日)(以上大映テレビ)などが記憶に残っています。

列車シリーズ、旅行シリーズ、そしてそれらの作品を通して言えることは、働く者の苦労や苦悩をユーモラスに表現するということです。

喜劇というと、コミカルなふるまいで笑わせることというイメージがあるかもしれませんが、一所懸命に生きる市井の人々の、ありがちな迷いや失敗などを優しさのフィルターを通して描いているのが、瀬川昌治監督ではないかと思います。

『スチュワーデス物語』なんて、バカバカしいかなと思いながらも見てしまったのは、そこに人を描く優しさのようなものを感じたからかもしれません。

喜劇・大安旅行 [VHS]
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喜劇 初詣列車 [DVD]
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大映テレビ ドラマシリーズ スチュワーデス物語 DVD-BOX 前編
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乾杯!ごきげん映画人生

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  • 作者: 瀬川 昌治
  • 出版社/メーカー: 清流出版
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 単行本



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末尾ルコ(アルベール)

瀬川昌治、『喜劇大安旅行』など温かみのある働く者の喜劇を描く・・・『スチュワーデス物語』の監督でもあるのですか!これは素晴らしく幅広い手腕を持った方だったのですね。そしてキャリアを見れば、『スーパーポリス』も何話分か監督しています。残念ながら映画の方は観る機会がなかったようなのですが、瀬川監督と知らずにテレビドラマは、赤いシリーズも含めていろいろ観ていたようです。
『スチュワーデス物語』はおそらく今観てもけっこう愉しめるのではないかと思います。あのカリカチュアされた台詞や展開は当時としては非常に斬新でしたし、キャストもはまっておりました。
このところ社長シリーズや駅前シリーズに挑戦しておりますので、ほとんどしょっちゅうフランキー堺を観ている印象です(笑)。凄まじい売れっ子だったのですね。倍賞千恵子がフランキー堺を狙うという設定からも、フランキーのスターぶりがうかがえます。後年の倍賞千恵子の相手役と言えば、高倉健や(禁断の 笑)渥美清ら、歴史的大スターばかりですからね。
わたし、列車の旅って好きなのですが、ここでまた余談となりますけれど(笑)、四国には土讃線という路線がありまして、香川県や中国地方などに行くのに利用することしばしばだったのですが、四国山脈を通るときにかなり揺れるのと、列車内にこもった臭いが苦手で、何度も酔ってしまったことがあるのです。最近はぜんぜん利用しておりませんが、一時期は必ず酔い止めを飲んでから、乗るようにしておりました。

>伴淳三郎が、実にいい表情をしています。

これまたぜひ観たいですね。こってりとした芸を披露する駅前シリーズとはまったく異なるキャラクターなのですね。懐の深さが違います。
『喜劇 初詣列車』には佐久間良子が出演しておりますね。この人も全盛期は綺麗ですよね~。こうした喜劇の中の超一流女優を鑑賞できるのも大きな愉しみです。

>「ないだろうなあ。でもあったらいいなあ」

そうなんですよね。そして、「こんなこと、絶対ないだろう」ということでも、料理の仕方によればとてもおもしろいものになるはずです。小説の世界ではもう目茶目茶な設定で目茶目茶おもしろい作品は星の数ほどありますし、映画でもそうですよね。
映画と言えば、観ました、『喜劇 駅前茶釜』!なかなかに凄い作品でございます(笑)。そして観どころ満載。もはやわたくしは、淡路恵子と淡島千景を混同することはありません!出番は多くないですが、若き日の池内淳子もいいですね。テレビドラマで活躍していた中年以降の池内淳子も好きだったですが、リアルタイムで若き日の作品を観ておればきっとホの字(笑)だったに違いありません。馬場がまたでかい、動きが速い!そしてどことなく爽やかですよね。この映画の馬場であれば、『タイガーマスク』の人格者で爽やかな馬場と完ぺきに一致します。(おもしろいとは何だろう?可笑しいとは何だろう?)ということまで考えさせていただける見事な作品でございました。いつもご紹介、ありがとうございます。
映画やテレビドラマについてのお話を続けさせていただけば、昨今の状況を見てみるに、このままではジャンル自体の危機に繋がるに違いないという強い危惧を抱いております。
そもそもゲームや手軽に観ることのできる動画ばかりが中心の(こういうものがダメなのではなく、生活の中のバランスの問題だと思うのですが)生活を送っておれば、しっかり作られた映画やドラマを腰を据えて観るだけの鑑賞眼はもとより、「鑑賞するための精神的体力」がつくはずありません。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-10-26 03:14) 

旅爺さん

フランキー堺や伴淳ほか喜劇は大好きなので沢山見ました。
当時の喜劇役者はもうみな千の風になってしまいましたね。
by 旅爺さん (2018-10-26 05:49) 

ヤマカゼ

スチュワーデス物語は見たことあります。
当時はやってましたね。
コメント、ご訪問ありがとうございます。
by ヤマカゼ (2018-10-26 06:16) 

pn

普通に暮らしている人達こそ、地道に働いている人こそ感情移入するには主役にふさわしいと思います。
by pn (2018-10-26 06:21) 

Rinko

当時スチュワーデス物語を見ては、堀ちえみのセリフをマネしたりしていました。笑
by Rinko (2018-10-26 07:25) 

みうさぎ

懐かしい[るんるん]伴淳?ファンじゃあなかったけど
今時はスタイルとかイケメンとか多いけど
昔は演技力その人物が醸し出す雰囲気が物語を表現されてました
癖の多い役者さんが
画面を飾っていたんだよね
今はのっぺらぼうの役者が多いて思う
はっ失礼な発言だったかな?(笑)
by みうさぎ (2018-10-26 09:05) 

tsun

フランキー堺と言えば『赤かぶ検事奮戦記』でしょうか。
春川ますみさんの名古屋弁が、とくに印象に残ってますね。
by tsun (2018-10-26 11:10) 

なかちゃん

今回も監督の瀬川昌治さんは知らない人でしたが、伴淳三郎さんとかフランキー堺さんとか、面白そうな面々ですね。
ちゃんとスクリーンで観てみたいなという気がします(^^)

by なかちゃん (2018-10-26 13:36) 

hana2018

私もこの監督、瀬川昌治さんについての認識はゼロに近いです。
赤いシリーズ、…はちょっとどうかな?と思えるオーバー過ぎるシーン、台詞が印象的でした。
『スチュワーデス物語』は堀ちえみのキャラのバカバカしさには違和感がありすぎて、深田祐介の原作はどうかは知りませんけれども。
どちらにしても、テレビより映画監督として撮った作品の方が鑑賞に耐える出来に仕上がっているように感じられました。
国鉄、国鉄マンと言った言葉の響きが時代を感じさせますね。
by hana2018 (2018-10-26 22:34) 

ナベちはる

>働く者の苦労や苦悩をユーモラスに表現する
苦労や苦悩をそのまま表現すると見たくなくなる部分も出ますが、ユーモラスに表現されるとそれが面白いに変わるので良い手法だと思いました。
by ナベちはる (2018-10-27 00:36) 

えくりぷす

瀬川昌治さんははじめて知った名前ですが、有名ドラマや映画をたくさん撮っているんですね。φ(・_・”)メモメモ
wikiで見たら日活ロマンポルノも1作品あって、幅が広い活躍ぶりだと感心しました。個人的には『顔で笑って』が見たいです音符
by えくりぷす (2018-10-27 09:31) 

犬眉母

フランキー堺さんの邦画喜劇における
貢献度は高いですね。
by 犬眉母 (2018-10-27 18:48) 

うつ夫

喜劇は奥が深いですね。
by うつ夫 (2018-11-03 02:12) 

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