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殿山泰司、邦画界で縦横無尽に活躍した“三文役者” [懐かし映画・ドラマ]

殿山泰司、邦画界で縦横無尽に活躍した“三文役者”

殿山泰司さん(とのやまたいじ、1915年10月17日~1989年4月30日)の生まれた日が17日でした。まさに名脇役という言葉は、この方のためにあるようなものかもしれません。数え切れないほどの映画、テレビドラマに出演し、文筆業でも活躍しました。



今日の殿山泰司さんも、もう数え切れないほどの出演作がありますので、映画については、キネマ旬報ベストテンにランクインした作品で、過去にこのブログで触れたものを改めてご紹介いたします。

『幕末太陽傳』(1957年、日活)


幕末太陽傳』は、川島雄三監督による、東海道品川宿・相模屋を舞台にした時代劇です。

フランキー堺を中心に、石原裕次郎、小林旭、二谷英明、左幸子、南田洋子など、当時、日活映画で活躍していた顔ぶれが勢揃いです。

オープニングには、1950年代後半の懐かしい八ツ山橋や北品川の町並みも写っています。

殿山泰司は、おそめ(左幸子)と人気を争う女郎・こはる(南田洋子)の客です。

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DVD『幕末太陽傳』より

若い頃は、晩年に比べてふっくらしていたことがわかります。

それにしても、こはる(南田洋子)は実に妖艶でしたね。

南田洋子

第五福竜丸(1959年、近代映画協会・新世紀映画/大映)


第五福竜丸』は、1954年(昭和29年)3月1日、アメリカ合衆国の水爆実験(キャッスル・ブラボー)で被曝した遠洋漁業船第五福竜丸と、その船員たちの悲劇を描いています。

殿山泰司は、マスコミの矢面に立つ静岡県の助役を演じました。

第五福竜丸の殿山泰司

制作した近代映画協会というのは、映画監督の新藤兼人や吉村公三郎、映画プロデューサーの絲屋寿雄らとともに、殿山泰司も参画して設立した映画製作会社、今風に言えば制作プロダクションです。

配給映画会社に対しては独立した立場のため、所属俳優としての殿山泰司は五社協定に縛られず、新劇の劇団員のように、呼ばれれば各社の映画に出演しています。

『近頃なぜかチャールストン』(1981年、ATG)


近頃なぜかチャールストン・国会
DVD『近頃なぜかチャールストン』より

近頃なぜかチャールストン』は、タイトルからしていかにも岡本喜八監督らしい作品です。

大作刑事(財津一郎)に留置場に入れられた非行少年・小此木次郎(利重剛)がそこで出会ったのは、国会議事堂で無銭飲食をはたらいて留められている中高年たち。

ヤマタイ国という独立国の国民を称していました。

内閣総理大臣(小沢栄太郎)、陸軍大臣(田中邦衛)、文部大臣(殿山泰司)、外務大臣(今福将雄)、大蔵大臣(千石規子)、逓信大臣(堺左千夫)、内閣書記官長(岸田森)の面々です。

近頃なぜかチャールストンの殿山泰司
DVD『近頃なぜかチャールストン』より

留置場でだけの冗談ではなく、彼らは「政府」として実際にアナーキーな行動を繰り広げます。

体制に逆らう、コミカルな中高年たちの話です。

題名のチャールストンは、世の中が右傾化などキナ臭くなると流行するという説から採られたものですが、この当時は、社会科教科書検定で、「侵略」「侵攻」の文言が問題になった頃です。

ATG配給の自主映画(つまり超低予算)ですが、それでいて、これほど豪華な俳優が集まったのは、岡本喜八監督のお得意の、反戦平和メッセージを意気に感じたからでしょう。

わたしは「自主映画のモデル」という最大級の評価を差し上げたいとおもっています。

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特捜最前線


テレビもたくさん出ていますが、『特捜最前線』の第1回に出演しています。

特捜最前線の殿山泰司
DVD『特捜最前線Vol.1』より

退職を間近にした、警視庁捜査一課のベテラン刑事、西田(中村竹弥)は、暴力団・たちばな会(会長・殿山泰司)幹部の矢沢(志賀勝)のアリバイを偽証する代償として、再就職の口の聞いてもらっていました。

つまり、西田には、暴力団のたちばな会との癒着の疑惑が持ち上がっていたのですが、西田がたちばな会に刺されてしまい、たちばな会だけが逮捕され、西田は入院中、無事定年を迎えてしまいます。

人情噺のようなうやむやな結果は『特捜最前線』らしくないのですが、第1話で、まだドラマとしての方向性が定まらなかったのかもしれません。

殿山泰司は、志賀勝をしょっぴくために、高価な腕時計をしているだけで「関税法違反」(もちろん令状なし)で逮捕される役どころです。

特捜最前線で殿山泰司
そりゃびっくりするよねー。DVD『特捜最前線Vol.1』より

また、殿山泰司は俳優だけでなく、文筆でも『三文役者の無責任放言録』(ちくま文庫)『三文役者の待ち時間』(ちくま文庫)などを上梓。

自らを「三文役者」と称して自叙伝も書きましたが、波乱万丈なその人生は竹中直人によって映画化されています。

殿山泰司さんの作品は、何か覚えてらっしゃいますか。

幕末太陽傳 デジタル修復版
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第五福竜丸 [DVD]
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近頃なぜかチャールストン ≪HDニューマスター版≫ [Blu-ray]
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特捜最前線 BEST SELECTION VOL.1【DVD】
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末尾ルコ(アルベール)

殿山泰司、邦画界で縦横無尽に活躍した“三文役者”・・・殿山泰司くらいになるともう、いい意味で「怪人」とでも言いましょうか、ちょっと人間離れした凄い俳優というイメージです。人間の格が違うという感じですね。ただ、殿山泰司出演作品はかなり観ておりますが、注視したことはあまりなかったので、「どの作品の殿山泰司が・・・」というお話がなかなかできないのが、またしてもわたしの弱点でございます。
『幕末太陽傳』は2度くらい鑑賞しておりますが、また観返さねばと思っております。この邦画史上の傑作を、わたしは今一つピンときたことがなかったのです。何か大事な点を観逃しているのは間違いないと、観返す機会をうかがっております。
『第五福竜丸』は未見でして、これも必見の作品ですね。近年社会的事件をしっかり描いた映画はほとんど作られなくなっておりますので、だからこそこの作品がどのように作られているか、とても興味があります。
『近頃なぜかチャールストン』は十代の頃に観たと思うのですが、作品的価値が分かりませんでした。

>「自主映画のモデル」という最大級の評価

これまた絶対に観返さねばなりませんね。嬉しい悲鳴が上がりそうです(笑)!
昨日もいくつかのネット記事を観てつくづく感じたのですが、映画、ドラマ、そして俳優たちに関するネット記事が本当に酷いレベルなのです。しかもある程度以上の規模のサイトの記事にどうしようもなく酷いものが多い。これはもう本当に、個人ブログなどがもっともっと頑張れねばと心底感じています。中でもいっぷく様のお記事はいつも別格!こうしていつも拝読させていただけること、本当に幸せです。

昨日、オープン選手権のブッチャーVSジョナサンを観たのですが、お約束のてんこ盛りで、心が豊かになる(笑)試合でした。特にやはりラスト、ジョナサンがサンセット・フリップを避けられ、すぐにブッチャーのエルボードロップを被弾してスリーカウント。しかしすぐに立ち上がり、(おれの方が強いぞ!)とばかりブッチャーを殴打!昭和の香しさが濃厚な展開に嬉しくなりました。
この時点でジョナサンはけっこうな年だったはずですが、それでもかなり手加減している印象でした。本気を出すとブッチャーを壊しそうなほどの肉体的説得力があります。他の多くの巨漢レスラーと比べても、ジョナサンの手加減している感はとても強いです。

そう言えば昨日昼前にYouTubeが視聴できなくなり、わたしのlenovoがボロだからかなと思ったのですが、世界的な障害だったようですね。こうしたことが世界規模になってしまう可能性があるのがネットの怖さと弱さで、あらゆる方面で依存し過ぎないよう注意が必要だとあらためて感じました。
わたしもうどんと言えば。「讃岐」というイメージだったので、各地に多様なうどんがあるのに驚きました。アレンジが効きやすいのがうどんの強みかと思いますし、家庭でも作りやすいというのはありますね。
わたしが小中時代は、学校帰りの買い食いはやはりうどんかラーメンでした。自販機スタンドがあって、そこでショボいラーメンの自販機もあったのですが、お腹を空かした子供には十分ご馳走でした。それと、うどんとおでんを両方やっている小さなお店も少なからずあり、そんな場所に寄るのも放課後パターンの一つでした。確かに真っ白くてふにゃふにゃのうどんはよく見かけました。過酸化水素水の影響が大きかったのですね。RUKO


by 末尾ルコ(アルベール) (2018-10-18 03:14) 

pn

角川金田一シリーズでよく殺されていたような(^_^;)
by pn (2018-10-18 06:20) 

Rinko

見覚えのある役者さんです。1989年にお亡くなりになっていたんですね。
by Rinko (2018-10-18 07:37) 

Take-Zee

こんにちは!
このおっさんはホントにスケベでした。
役柄とは思えないほど。

by Take-Zee (2018-10-18 14:41) 

kiki

気持ちの悪い役が得意のようでした(笑)
by kiki (2018-10-18 14:46) 

犬眉母

名優かつ怪優ですね。
by 犬眉母 (2018-10-18 17:49) 

ヨッシーパパ

芸名は知りませんでしたが、特徴のある大きな耳とスキンヘッドは記憶にあります。
by ヨッシーパパ (2018-10-18 18:40) 

なかちゃん

残念ながら、お名前しか存じません。
でも第五福竜丸は一度見てみたいので、その時に見てみます。

by なかちゃん (2018-10-18 20:01) 

みうさぎ

懐かしいお方ですねっ
子供頃から~観てたなぁ
昭和てぇ泥臭い時代で魂が
こもった俳優さんが多かった気がする

by みうさぎ (2018-10-18 22:19) 

ナベちはる

お名前も存じないのでどのような方かは分かりませんが、他の方のコメントを拝見している限り見た目やその演技にかなり特徴があった方なのだろうというのが伝わってきました。
by ナベちはる (2018-10-19 00:21) 

えくりぷす

私が殿山泰司で印象に残っているのは『復讐するは我にあり』で、緒方拳に最初に殺される専売公社の職員役です。
かなり泥臭い殺人シーンでした。本屋に行くと、ちくま文庫のコーナーにエッセイが目立っていたのもよく覚えています。
by えくりぷす (2018-10-19 10:57) 

うつ夫

まさに怪優ですね。
by うつ夫 (2018-10-21 01:36) 

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