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都家かつ江、まっくろけ節でお馴染みの俗曲師は昭和映画の名脇役 [懐かし映画・ドラマ]

都家かつ江、まっくろけ節でお馴染みの俗曲師は昭和映画の名脇役

都家かつ江さん(1909年3月15日~1983年9月29日)の命日です。昭和期の三味線漫談家であり『まっくろけ節』などでお馴染みです。昭和の映画やテレビドラマでも活躍した女優です。ネットでは、ビートたけしがコスプレに名前を利用したことで森繁久彌が不快感を示したエピソードが拡散されています。



ネットで検索すると、都家かつ江さんの紹介のされ方は、都々逸を唄う三味線漫談家や俗曲師などといわれます。

都家かつ江
Google検索画面より

都々逸(どどいつ)というのは、江戸時代からうたわれてきた、不倫や叶わぬ恋をつづった情歌を中心とする、庶民の本音がわかる歌です。

そのせいか、都家かつ江さんご自身も、外見やキャラクターとしてはそういうことを売り物にしていたわけではない「クチの悪いおばさん」なのに、子供心になんとも言えぬ惹きつけられる色気のようなものを感じて、活躍されている頃、アイドル歌手とは別の魅力ですごく気になる存在でした。

Youtubeには、ご活躍の頃の録音がアップされています。




客の温め方が、すごく巧いのです。

寄席といえは、トリは落語家がつとめることはご存知ですよね。

都家かつ江さんは、『膝代わり』といって、トリの真打ちの一つ前に出る落語以外の演者をつとめていました。

つまり、プロレスで言えばセミファイナル。

非落語に限れば、東京に数多並ぶ名人の漫才師らを抑えて、メインイベンターだったわけです。

『まっくろけ節』などは今もCDなとで残っているのではないでしょうか。
https://www.uta-net.com/movie/225047/

俗曲師としては、やはり女優としても活躍された玉川スミさんと、イメージ的にかぶるかもしれません。

玉川スミ
Google検索画面より

映画やテレビドラマでも活躍


映画は、1950~60年代の東京映画によく出ており、もしかしたら専属契約をしていたのかもしれません。

9月10日にご紹介した『駅前旅館』(1958年)では、森繁久彌が番頭をつとめる旅館の仲居頭役で出演しています。

都家かつ江

都家かつ江と森繁久彌
ともに『駅前旅館』より

70年代のテレビドラマでも活躍しました。




料亭の女将、仲居頭などの役が多かったようにおもいます。

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都家かつ江、ビートたけし、森繁久彌のエピソード


ネットで「都家かつ江」は、ビートたけしコスプレ事件で知られているのではないでしょうか。

ビートたけしが都家かつ江のコスプレ
Google検索画面より

1990年、第13回日本アカデミー賞で、ビートたけしが都家かつ江さんのコスプレをしたら、森繁久彌に睨まれた、というエピソードです。

おそらくコピペの繰り返しで、あちこちのブログで紹介されているのですが、たとえばこういう書き方をしているブログもあります。

>4年後に日本アカデミー賞で都家かつ江なる人物に扮してやったら司会の西田敏行さんにバカ受けしたが、案の定森繁さんににらまれた。
https://blog.goo.ne.jp/todochan_1970/e/c8588d61dabe83ff82e86ae85dcacfac

おいおい、「なる」って書き方はねーだろ、お前が都家かつ江師匠を知らないだけだ、とおもいました。

それはともかく、なぜこのとき、ビートたけしは都家かつ江のコスプレなど扮したのか。

ビートたけしはこう語っています。

「芸能界で権力を持っちゃったら、とにかく自分でそれを壊しにかからないといけないんだ。」「ホームレスがバナナふんずけてスベっても笑えなくて、偉い人がスベって転ばなきゃダメ。そう考えると、俺は笑いのために偉くならなきゃいけないんだ」
https://www.cinra.net/interview/201710-outrage?page=3

このデンでいうなら、ビートたけしにとって森繁久彌はもちろん「壊す」べき人物。

そして、ビートたけしは、舞台芸人としては芽が出なかったため、これだけ有名になっても、実は当時の巧い芸人に対して大変なコンプレックスがあるようです。

つまり、都家かつ江は、少なくともビートたけしにとっての「偉い人」(芸人としてかなわなかった人)という気持ちがあるのかもしれません。

さらに、ビートたけしは森繁久彌が都家かつ江を評価していることを承知しているからこそ、あえて都家かつ江を「壊す」対象にしたのかもしれません。

しかし、人選として適切だったのでしょうか。

1984年の都家かつ江一周忌に、東京・文京区の海蔵寺内墓所に『都家かつ江之碑』が建立されました。




碑の下には愛用だった三味線のばちが納められ、碑の左側面に夫・福丸がかつ江に捧げた句が、右側面には森繁久彌による献句が刻まれているのです。(Wikiより)

都家かつ江の碑
Google検索画面より

君を偲ぶ
三味線の音に唄えば人は笑ってまた人は泣く
森繁久彌


森繁久彌が、NETの“木9”枠であった『ナショナルゴールデン劇場』の500回記念番組であり、かつ自身の芸能生活40周年記念に主演した『どてかぼちゃ』(1975年11月6日~1976年5月13日)というテレビドラマがあります。

どてかぼちゃ
Google検索画面より

ゆかりのある大物俳優が毎回ゲスト出演する中で、都家かつ江は森繁久彌が心を許す料亭の女将の役で堂々レギュラー出演しています。

森繁久彌と森光子のやりとりのシーンに見とれしてしまい、ハナ肇が自分の出番を忘れてNGになったというエピソードもある大人のドラマでしたが、都家かつ江がいかに重用されていたかがわかります。

森繁久彌としては、自分を「壊す」ならともかく、すでに亡くなって反論できない人を自分の代わりに「壊す」のは、やはりニコニコ笑って済ませる気持ちにはならなかったのでしょう。

都家かつ江さん、ご存知ですか。

駅前旅館 [レンタル落ち]
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どてかぼちゃ 向田邦子シナリオ集 (TVガイド文庫)
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末尾ルコ(アルベール)

都家かつ江、まっくろけ節でお馴染みの俗曲師は昭和映画の名脇役・・・日本アカデミー賞で森繫久彌がビートたけしに対して怒っていたのはよく覚えておりますが、こうした事情だったとは理解できておりませんでした。今夜も実に実に深いお話で、いろんなことを施行させていただく機会を与えてくださっております。
さらにわたしは情けないことに、都家かつ江を知りませんでした。今夜もまた、新しい世界をご教示いただきました。リンクくださっておられる動画、拝聴いたしました。実にまがい物のない、正攻法の喋りで心地よく感じました。そしてわたし、都々逸だけでなく、落語などにも疎くって、特に落語はやや避け気味のきらいがあるんです。しかし日本の話芸の中心はやはり落語ですし、この点も心をもっと開いて触れてみようかと思います。
都家かつ江の三味線粋談を拝聴しながら書いておりますが、ちょっとアジテーター風にも聴こえてとても興味深いです。例えば自由民権運動時代の演説であるとか、ちょっとそんなイメージの語り方のような気がします。おもしろいです。

>森繁久彌はもちろん「壊す」べき人物。

ビートたけしの中で森繫久彌はどのように位置づけられていたか興味深いですね。少なくとも映画を撮り始めてからはのたけしは、非常に「権威」と仲のよい人物に見え続けています。黒澤明にはべったりだったし、ヴェネツィアやカンヌで評価され始めると、有頂天になっていたと思います。まあ、たけしの映画は好きなものもけっこうあるのですが、学者との対談もよくやってますし、学者の方もたけしと対談することで箔が付くと思っているでしょうし、だから内容は「なあなあ」になってしまい、どうも好きになれません。そうしたことを考え合わせると、やはり都家かつ江のコスプレは、かなり「ずるい」感が強いですね。

>「逆張り」というのは、問題のたてかたとして、既存の説を否定したり、両立しない仮説を出したりすればいいので、楽ですよね。

ですよね。そして「逆張り」的な言動は、かつては「天邪鬼」や「反体制(反主流)のポーズを取りたい」人たちがもっぱらやっていましたが、現在は本当にそう思おうが思うまいが、「金儲け」の目的が専らになっている感があります。「逆張り」的な意見も本気でそう考えていればそれはそれで(すべてではないけれど)立派な意見なのですが、(さあ、金儲けのために、今度は何を逆張りしよう)という観点でいろんなニュースをチェックしている人がとても多くなっているのではないかと。しかもそうした「逆張り」の多くは、「誰か(何か)を貶める」ことで成立しています。こういうのが主流になると、社会全体が卑しくなっていくと憂いております。

お話は大幅に逸れますが(笑)、昨日のお記事でも酒井和歌子のお写真を載せておられて、またしてもグッと来たので、(ここは動かねば!)と(笑)、YouTubeをチェックしてみました。
こちらはある程度の年齢になった時期だと思いますが、男優が羨ましいです(笑)。

https://www.youtube.com/watch?v=AFAkI2Rfg1g
そしてこちらは動画ではなく写真だけですが、やはりいいですよ、酒井和歌子!!kokiなんか(笑)問題になりません。

https://www.youtube.com/watch?v=gFl2T9XxMrc

酒井和歌子の若き日と、わたしの10代が重なっておれば、林寛子を遥かに上回る「コタツで一緒に」妄想の対象となったに違いありません。客観的な大女優は若尾文子や原節子らだけれど、「コタツで一緒」したいかと言えばさほどでもなく、客観的評価と妄想は重なることもあるけれど、別枠の場合が多いですね。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-09-29 03:21) 

pn

途中まで玉川スミ?とごっちゃになってたけど新五捕物帳のおばちゃんなのね(^_^;)
by pn (2018-09-29 06:13) 

ヤマカゼ

まっくろけ節、題名は聞いたことあります。結構はやっていたような記憶があります。
by ヤマカゼ (2018-09-29 07:51) 

えくりぷす

私は、都家かつ江のことは、3代目三遊亭円歌のインタビューで知りました。
歌奴時代、都家かつ江の家に居候していて、ご飯のお代わりの仕方があんまり自然なので、それを見た小さん(人間国宝の方)師が、「あいつらできてる」と噂を広めた、とか。
また円歌師は、都家かつ江の三味線漫談をどうしても蘇らせたくて、女優養成所にいた女性をスカウトして育てたのが三遊亭小円歌(現:立花家橘之助)ということでした。
by えくりぷす (2018-09-29 09:20) 

kohtyan

都かつ江さん、名前は知っているけど記憶にありませんが
すごい芸人だったのですね、昭和は遠くなっていきます。
by kohtyan (2018-09-29 09:51) 

Take-Zee

こんばんは!
シャキッと威勢のいい姐さんでしたね。
口も悪かったなあ!

by Take-Zee (2018-09-29 17:53) 

ヨッシーパパ

さっぱり、存じ上げませんでした。
by ヨッシーパパ (2018-09-29 18:40) 

ナベちはる

都家かつ江さん、初めてお名前をお聞きしました。
大トリの前だと相当緊張するのではと思いますが、そんな局面を幾度となく任されてこなすような凄い方なのですね。
by ナベちはる (2018-09-30 00:42) 

うつ夫

三味線を弾けるというだけで「芸」という感じがします。
by うつ夫 (2018-09-30 02:18) 

犬眉母

それは森繁さんは笑えないでしょう。
by 犬眉母 (2018-10-03 01:57) 

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