SSブログ

樹木希林さんに心を動かされた『ゆうひが丘の総理大臣』のシーン [懐かし映画・ドラマ]

樹木希林に心を動かされた『ゆうひが丘の総理大臣』あのシーン

樹木希林さんの訃報で昨夕から持ちきりです。樹木希林さんというと、晩年は第36回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞するなど、大作に出演する大女優としてのポジションを獲得しましたが、その部分だけをとりあげるのは、女優生命をリアルに語ったことにはならないと思います。



そこに到達するまで、いろいろな作品に出た積み重ねがあります。

やはり、私がしょっちゅう思い出している昭和のドラマや映画の数々に、その軌跡を見ることができるのではないでしょうか。

私も記憶が定かではないのですが、テレビの本格的なデビューとなった『七人の孫』(1964年1月6日~7月6日、TBS)で、森繁久彌との掛け合いがあり、そこで後のコメディドラマの呼吸を覚えたのではないかとおもいます。

そして、『時間ですよ』(1970年2月4日~1973年9月5日)における森光子や堺正章との出会いで、泣かせる演技も笑わせる演技もできる基礎を作ったのではないでしょうか。

マスコミやネットは、『寺内貫太郎一家』や『ムー一族』、岸本加世子とのCMなどをさんざん取りざたしているので、私は別の作品をご紹介します。

たとえば、1978年、『トラック野郎・突撃一番星』(1978年、東映)は、原田美枝子がマドンナの回ですが、



樹木希林はイルカの調教師役で出演しています。

トラック野郎・突撃一番星

三つ編みで未婚の役です。

スポンサーリンク↓

「他人の身になって考えられる」ことをおとえてくれた芝居


その同じ年に、テレビドラマ『ゆうひが丘の総理大臣』にもレギュラー出演。

ゆうひが丘の総理大臣

主人公・大岩雄二郎(中村雅俊)と木念(神田正輝)が住む下宿兼食堂『お多福』の女将さんとして、短大生の娘(岡田奈々)をもち、普段はソーリ(中村雅俊)と軽口の掛け合いで笑いの場面を受け持ちながら、要所要所ではほろっとさせるシーンも演じています。

同作でもベストワンの呼び声高い第21回(1974年3月7日放送)の『子は親を求めているか?』の巻から。

ふく(樹木希林)が、ソーリ(中村雅俊)を座敷にひっぱってきて、離れ離れだった親子を対面させる番組を見せます。

ゆうひが丘の総理大臣

ソーリ(中村雅俊)は、子供の頃、自分が母親に捨てられたことを思い出します。

ゆうひが丘の総理大臣

ふく(樹木希林)は、親切心からソーリ(中村雅俊)の代わりに離れ離れになった母親探しを番組に応募。

それらしき人がいたから確認してほしいという局からの電話に、ソーリは「余計なことはするな」と激怒しますが、

ゆうひが丘の総理大臣

同僚の大坂先生(名古屋章)の説得で、結局は局に行くことに。

ふくは、局まで付き添いますが、残念ながら「それらしき人」は人違いでした。

ゆうひが丘の総理大臣

マッチ棒を少しずつ積み上げて待ちますが、「人違い」を暗示する失敗したシーン。いいコンテです。

ソーリ「おばさん、あんみつ食おうか」
ふく「食おうか」

ゆうひが丘の総理大臣

ソーリ「俺くらいの息子を探してる母親ってのは、いるんだね」
ふく「そうだねえ」
ソーリ「その人さあ、俺が人違いだとわかって、がっかりするんだろうね」
ふく「……あんた、他人の身になって考えられるんだねえ

これが、先月19日に南風洋子さんの記事でご紹介した、ソーリ(中村雅俊)が実の母親に会う回の伏線になっています。

南風洋子、青春学園ドラマを泣かせた母親役の熱演を思い出す

いずれにしてもこのシーン、樹木希林の台詞の間の良さや、芝居の巧さにシビれてしまった放送当時のおぼこい私は、よし、これからは「他人の身になって考える」人になろうとおもいました。

まあ、どのくらい実践できているかはともかくとして(汗)、良い芝居は、人の心を動かすということです。

樹木希林さんの生前のご遺徳をお偲び申し上げます。

トラック野郎 突撃一番星 [DVD]
トラック野郎 突撃一番星 [DVD]

ゆうひが丘の総理大臣 DVD-BOX 2
ゆうひが丘の総理大臣 DVD-BOX 2
nice!(280)  コメント(15) 
共通テーマ:テレビ

nice! 280

コメント 15

pn

ばあさんのイメージがほとんどだったから三つ編み姿が衝撃的だ(笑)
他人の身になって考える、うん、そんな人になりたい。
by pn (2018-09-17 06:18) 

kiki

9月の初め頃、
『危篤状態から抜け出して退院』との
会見を観たばかりでした。

by kiki (2018-09-17 07:20) 

Rinko

個性的な女優さんでしたね。大好きでした。
ご冥福をお祈りいたします。
by Rinko (2018-09-17 08:35) 

末尾ルコ(アルベール)

樹木希林さんに心を動かされた『ゆうひが丘の総理大臣』のシーン・・・ずっと前からご本人がガンである旨語っていたのですが、間断なく映画に出ているし、今年はカンヌへも行ったし、さらにそのあと、トーク番組でも見かけましたから、この時点で亡くなるのはとても残念です。河瀨直美監督の『あん』は、樹木希林と永瀬正敏のアンサンブルが見事な、近年まれに見る、「二人の俳優で魅せきる」一本だったと思います。
考えてみれば、今の日本の俳優たちを見ましても、凄みある老婦人を演じられる人がなかなかいないですよね。いっぷく様にいつも様々なバイプレイヤーなどをご紹介いただいき、未知の俳優を知っていけばいくほど、現状の日本の貧弱な俳優陣を憂いていしまいます。
そう言えば樹木希林は以前、「映画は後へ残るから、出演したくなかった」旨語っておりました。この言葉の中にどれだけの本音が含まれているかはいろいろ考える余地がありますが、ある程度の年齢から映画中心にシフトしてきたとはいえ、いっぷく様のおっしゃるように、その演技の基礎がテレビドラマにあったことは間違いないようです。
NHKは昨日のニュースでは、まず自局の『はね駒』を挙げ、そしてパルム・ドールの『万引き家族』と、まともに樹木希林を振り返ろうという気はまったくないようでした。ニュースの中心は安室奈美恵の引退公演でしたし。
『トラック野郎・突撃一番星』は近いうちにぜひ観たいです。原田美枝子がまた素晴らしいですね。中年以降の原田美枝子もカッコいいのですが、若いころは野性的でさえありましたね。
『ゆうひが丘の総理大臣』は観ていたと思うのですが、細かいところまでは覚えてないのです。いっぷく様のお気に入りのドラマですから、機会があれば、ぜひ観てみたいと思います。

>「無理に生かすな」の大合唱ですね。

本当に、どうして日本にこれだけ心が卑しく、想像力が欠片もない人間が増殖してしまったのか、暗澹たる気分になりますね。こうした風潮に対してはできる限り戦っていこうと思っております。
同様に、「老害」なんていう言葉がネットでは頻繁に使われているのもいただけません。まあ10代の人間が、20代、30代を早くも「老害」と呼ぶとか、論外の使われ方もありますし、最近最も怒りがこみ上げたのが、西日本豪雨の後、あるネット界隈ではやや知られたライターが、「非難すべき時に避難しないような老害を助けるために、若い救助員の命を懸ける必要はない」という意味の文章を書いていたんです。つまり、「災害が迫っているような事態に避難しなかった老人など死んでもいい」という意味なわけですね。その短い文章の中でも「老害」という言葉を繰り返し使い、それはもちろん炎上狙いでもあったのでしょうが、高齢者の尊厳を侮辱する内容でした。高齢の方々は体の具合などで、避難したくてもできない人がとても多いことくらい分かりきったことなのに。これがネットではかなりのアクセスを得ているライターの書くことなのですから、どうしようもありません。

>新たに見えてきたものもあるわけです。

本当におっしゃる通りです。その時々に「見えるもの」を大切にし、さらに「まだ見えてないかもしれないもの」に対する想像も忘れることのない、そんな生き方をしたいですね。なにせ人生、「思うように」などなかなかならない。しかし「ならない」中だからこそ、見えてくるものってとても貴重なのだと思います。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-09-17 09:21) 

てんてん

樹木希林さん
大好きでした。
真っすぐで、周りの人を気遣い、思いやりのある人でした。
ご冥福をお祈りいたします。
by てんてん (2018-09-17 09:27) 

jane

惜しい人を亡くした、と思わせないところがすごいよね。
by jane (2018-09-17 11:20) 

kou

大好きな女優うさんでした。ご冥福をお祈りいたします。

しかし、気になることが一つ。
悠木千帆の名前を買った一般の人は今どうしているのでしょうか・・・?

by kou (2018-09-17 12:35) 

ヤマカゼ

<良い芝居は、人の心を動かすということです。>
同感です。それで明日の自分の人生が変わるのかといえば、変わってないですね。
by ヤマカゼ (2018-09-17 16:38) 

ヨッシーパパ

ホームドラマで、良い味を出していましたね。
浅田美代子や郷ひろみとの絡みも面白かったです。
by ヨッシーパパ (2018-09-17 18:54) 

poko

寺内貫太郎一家や富士フイルムのCMくらいからはよく覚えていますが、何といっても「ジュリー」って叫んでる可愛い姿が一番印象に残ってます。若い時からおばあちゃん焼きをされてたんですよね。大好きな女優さんだったので残念です。
by poko (2018-09-17 19:53) 

Take-Zee

こんばんは!
今年は同じ時代を生きた方々が亡くなられ・・
本当に悲しくも寂しくもあります。

by Take-Zee (2018-09-17 21:10) 

みうさぎ

味のある女優さんでしたね
凄い自分を持ってらして
見習いたいと思う。全身ガンて
聞いてからどんな生活なのか
コメントしてる番組を見て
あーそういうのもありなんだー
て思ったし結婚されてお子さん出産された
報道は脳裏に焼き付いていて昨日のことの
ように思ってます。
強くご自分を持たれている
女性だと感銘を受けてました。
とても残念ですね。
でも良い人生歩んで来られたと
思ってます。
痛みから解放されてゆっくり休んでもらいたい
です。
by みうさぎ (2018-09-17 21:12) 

ナベちはる

樹木希林さん、独特な世界観を持つ女優さんだったと思います。
by ナベちはる (2018-09-18 00:21) 

うつ夫

何でもないシーンの演技でホロッとさせるのがプロですね。
by うつ夫 (2018-09-18 23:45) 

犬眉母

笑わせながら、泣かせる演技ができたんですね。
by 犬眉母 (2018-09-19 00:13) 

Facebook コメント

Copyright © 戦後史の激動 All Rights Reserved.
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます