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中北千枝子、ニッセイのおばちゃんは柴又『とらや』も顧客だった [懐かし映画・ドラマ]

中北千枝子、ニッセイのおばちゃんは柴又『とらや』も顧客だった

中北千枝子(なかきたちえこ、1926年5月21日~2005年9月13日)の命日が13日でした。日本生命のCM『ニッセイのおばちゃん』として覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。それ以外にも、黒澤明監督や植木等初主演の映画など多くの作品に出演しています。(画像は断りのない限り当該劇中から)



デューク・エイセスのコーラスをバックに、中北千枝子が自転車を走らせる日本生命のCM『ニッセイのおばちゃん』は、Wikiによると1969年~86年と、足掛け18年もの長きに渡ってオンエアされたそうですね。

201809122339.png
Google検索画面より

このCMが知れ渡っていたからこそ、実現したであろう役が、『男はつらいよ』シリーズの31作目の『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』(1983年、松竹)です。

男はつらいよ 旅と女と寅次郎

演歌歌手役の都はるみがマドンナのときです。

このとき、冒頭のシーンで、保険外務員の中北千枝子が、『とらや』でつね(三崎千恵子)を前に書類を作成し、さくら(倍賞千恵子)に保険商品を勧めるシーンがあります。

男はつらいよでニッセイのおばちゃん

中北千枝子は、ストーリーを動かす役割ではない「端役」ですが、出演者の序列は、御前様(笠智衆)や、マドンナの所属プロダクション社長(藤岡琢也)と並んで、トメ前(トメは都はるみ)です。

中北千枝子の出演者の序列

中北千枝子の女優としての格が、高く評価されていることがわかります。

劇中では、中北千枝子が倍賞千恵子に、息子のことを聞かれ、「今年どうやら大学に……」と話しています。

中北千枝子の外務員としてのイメージは、自らのノルマ第一でセールストークや女性の魅力で強引に入れてしまうのではなく、お客さんをないがしろにしない笑顔のお母さんであり、それは映画に反映されていました。

このCMが流れている時期に出演したのが、田宮二郎版『白い巨塔』(1978年、フジテレビ)です。

息子が結婚して財前を名乗って以来、1度も会ってなかったのに、息子が訴訟を起こされて、いてもたってもいられなくなって会いに来たという設定です。

白い巨塔

田宮二郎は、愛人の花森ケイ子(太地喜和子)に中北千枝子の京都見物をお願いします。

中北千枝子は、財前の医師になる経緯を太地喜和子に話し、裁判についても「自分がふがいないばっかりに」と息子を少しも責めず、太地喜和子がもらい泣きするシーンがあります。

この時は、保険外務員ではなく、元教員という設定でしたが、やはり決して自分を誇示しない控えめで優しい笑顔のお母さんキャラクターを演じきりました。

では、『ニッセイのおばちゃん』の前はどうだったかといいますと、1947年には『素晴らしき日曜日』(黒澤明監督、東宝)に出演しています。

素晴らしき日曜日

戦後まもない東京でお金もなく、住むところもない雄三(沼崎勲)と昌子(中北千枝子)のカップルが、野外音楽堂に来ると、沼崎勲はエア指揮者になり、中北千枝子はカメラ目線で拍手を求め、演奏が終わったところでなんとなく明るい明日を期待できるエンディングという、劇団の芝居のような演出です。

最初鑑賞したときは、失礼ながら絶世の美女というわけでもない中北千枝子がどうして主役と思ってしまいました。

でも、ありふれた、どちらかというと不遇のカップルという設定で、観終わった後は、このキャスティングでよかったとおもいました。

若い頃から、相手をたてる温かい人というイメージを抱かせるキャラクターであったようです。

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無責任男ともまんざらでもない?


そして、クレージー映画の第一作である、『ニッポン無責任時代』(1962年、東宝)で中北千枝子は、主人公の植木等が住む下宿のおばさん役で出演しています。

中北千枝子は、主人公の植木等が住む下宿のおばさん役

おばさんといっても、中北千枝子も植木等も、実年齢ではともに1926年生まれで同い年なんですけどね。

下宿代を払ってくれないと、夫(人見明)が疑うからと中北千枝子。

夫(人見明)が疑うからと中北千枝子

「だったら本当にそうなっちゃおうか」と植木等がいうと、「私は人妻よ」と中北千枝子は慌てます。

中北千枝子

すると植木等も、「ぼくだって出世前の大事な体なんだから」と言い返します。

私の妻は、このセリフが可笑しくてしかたないそうです。

私はそれより、植木等が背広を脱いでモモヒキになっているところに中北千枝子が遠慮せず入って来るし、

中北千枝子が遠慮せず来る

夫が疑うから催促するという言い方をしたり、「嫌だからやめて」ではなく「私は人妻よ」という断り方をしたりするところなど、なんとなく植木等に好意を持っているように描かれていて、ああこういう下宿生活もしかしたら楽しいかも、と少しドキドキしてしまいました(笑)

中北千枝子、覚えてらっしゃいますか。

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kohtyan

中北千枝子さんは記憶にないですね。
名優だったのですね。
昭和には残したい名画がたくさんありますよね。
by kohtyan (2018-09-14 09:42) 

末尾ルコ(アルベール)

中北千枝子、ニッセイのおばちゃんは柴又『とらや』も顧客だった・・・『ニッセイのおばちゃん』役をそんなに長い間やっていたのですね。最近の生保コマーシャルは中北千枝子タイプではなく、美人系のご婦人が多いような気がします。最近はよくBSの番組を見るので、別に見たくもないのに(笑)チューリッヒのオペレーター役の女性が目に入ってくる頻度が高いのです。
CMの影響で『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』の役を得たというのはおもしろいですね。それだけ社会の津々浦々まで浸透していたCMだったのですね。もちろんご本人の実力と実績あってこそのキャスティングなのでしょうが。オープニングクレジットでしっかりその「格」を明記しているのも山田監督らしいですね。これ、とても大切だと思うんです。昨今は映画もドラマも、(こんな順序で俳優の名前を並べるなよ!)と憤りを感じることが多くあります。要するに、「実力・実績」ではなくて、「事務所の力やCMの本数」などでクレジットの並びがかなり影響を受けている感があるのです。もちろんメディアに登場する人気俳優にはいろいろな要素が加味されるわけですが、やはり「まず俳優としての実績」であり、『男はつらいよ』での中北千枝子のクレジットはもちろんCMでの認知度以前に、その実績や実力を山田監督が知っていたからだと想像します。
それはさておき、『男はつらいよ』には細かなところでいろいろな仕掛けが隠れているのでしょうね。エロティックでフェテイッシュなシーンもそうですし、お約束の展開の中に、どれだけ多くのお愉しみがあるのかも今後の鑑賞のテーマの一つとしたいと思います。そう言えば、例の『男はつらいよ』新作制作に合わせて、BSジャパンで全作品放送するそうです。これは嬉しいことです。眉間の作品を含め、またじっくり鑑賞したいです。
『素晴らしき日曜日』は中北千枝子にとっても生涯の誇りだったのではと想像します。こうしていっぷく様のお記事を拝読し、また『素晴らしき日曜日』を鑑賞すると、きっと新たな感興が生じると思います。ぜひやってみたいです。

>ああこういう下宿生活もしかしたら楽しいかも

実際に「付き合う」までには至らなくても、そんな存在がいるだけで日々に張りができますね。そして案外そうした人の方が肉体関係を持った人よりも生涯大きな存在になってしまうこともあります。

>回りくどい質問ですぐ頭に入らなかったのですが(笑)

そうなんです(笑)。質問の内容以前に、まずそれでわたしはとても嫌な気分になりました。全体が30分で、各社ほぼ1~2問の質問、大坂なおみが答える時間は一つの質問につき、せいぜい1~2分です。その中でこの抽象的な質問に対し、(一体何を聞きたいのだろう)と彼女は怪訝に感じたでしょうし、「アイデンティティ」の問題など、20分あっても足りないくらいですよね。そうした時間の制約があることが分かっていながら、わざわざこの質問を出す態度に、「自社の主張をアピールすること」しか頭にない偏狭性を感じました。何よりも、大坂なおみの立場や心情について一切おかまいなしという傲慢さを感じましたです。

>ずるくたちまわれるように、わざとそうしているのです。

戦前・戦中・そして戦後から現在までの『朝日』の風見鶏ぶりについてはある程度存じておりましたが、今回また、わたしの存じてなかったこともいろいろお教えいただき、いつもながら感謝感謝です。『朝日』というものをさらに深く理解できてきた気がいたします。「ずるくたちまわれるように」・・・まさにその通りですよね。そして今回の大坂に対する質問の時にも濃厚過ぎるほど感じられた「正義面」も大きな特徴だと感じております。(ワイドショーなどのくだらない質問などとは違い、自分たちは人種や国籍の壁を打ち破るために戦っているんだ。大坂なおみからはぜひ「日本人の狭量さ」についての言及を引き出したい)という意図がビンビン伝わってきました。しかし不思議なのは、彼らは自分らが「するく」立ち回っていることを分かってやっているのかどうかです。『朝日』の社史(笑)を調べれば、いくらでも風見鶏ヒストリーが出てくるわけですし、社員、記者などがそうした事実を「まったく知らない」とは考え難いのですが、知っていてまだあれだけ「正義面」できるのか。『朝日』関係者の言動を見ていたら、「自分らは心底ピュア(笑)な側にいる」と信じているような雰囲気を漂わせておりますが、ある意味(すごいなあ・・・)と呆れ返ってしまいます。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-09-14 14:10) 

Take-Zee

こんにちは!
いろんな女優さん、名前は知らなくても
見たことが。
 でもこの方は記憶に乏しいですね!

by Take-Zee (2018-09-14 15:48) 

kou

ご本人の記憶は無いのですが、ニッセイのおばちゃんというフレーズは何故か脳裏にハッキリ刻まれています!
by kou (2018-09-14 17:29) 

ヨッシーパパ

♫ニッセイのおばちゃん、自転車で〜♫って、言うフレーズだけ覚えています。
by ヨッシーパパ (2018-09-14 19:30) 

pn

ニッセイのおばちゃん今日もまたーだっけ?都はるみの奴見てるけど全然気付かなかったなぁ(^_^;)
今はニッセイレディでしたっけ?おばちゃんの方が親しみがあると思うのはやっぱ昭和人なのかね(笑)
by pn (2018-09-14 20:06) 

ヤマカゼ

残念らがラ中北千枝子知りませんでした。良い役をこなしてたようですね。
by ヤマカゼ (2018-09-14 21:30) 

gardenwalker

こんばんは
懐かしいですね~
あのメロディは耳に残っています
by gardenwalker (2018-09-14 21:31) 

poko

こんばんは。
ニッセイのおばちゃん・・・っていう歌だけは覚えてますが
この方だったんですね。
あのメロディ懐かしいです。
by poko (2018-09-14 22:11) 

きたろう

佐渡の港の大衆食堂で、寅さんがついうっかりと「ハルミちゃん、明日の予定は・・・」のようなことを言ってからの展開、腹をかかえて笑いました。冒頭のシーンの保険のおばさんのシーンは、最初はのうちはわかりませんでしたが、後になってから、有名女優が演じているということは認識していました。
そういえば、最近は、テレビ(地上)で「男はつらいよ」の放送はしなくなりましたね。
by きたろう (2018-09-15 01:22) 

犬眉母

ニッセイのおばちゃんのCM、最初は本当の外務員のおばさんだと思っていませんでしたか?私は思ってました(笑)
by 犬眉母 (2018-09-15 02:02) 

旅爺さん

中北千枝子は知りませんが映画やコマーシャルに出てたんですね。当時映画は沢山見てましたがもう一度見れば思い出すかも?。
by 旅爺さん (2018-09-15 06:23) 

うつ夫

優しそうな方ですね。
by うつ夫 (2018-09-18 23:48) 

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