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司葉子、“禁断の愛”の『乱れ雲』で魅せた葛藤を思い出す [懐かし映画・ドラマ]

司葉子、“禁断の愛”の『乱れ雲』で魅せた葛藤を思い出す

司葉子(つかさようこ、1934年8月20日~ )さんの84歳の誕生日です。社長シリーズ他多数の映画に出演し、フリーになってからはテレビドラマでも活躍しました。今日は当たり役の『乱れ雲』と、マニアから再放送待望論が出ているドラマ『てんつくてん』をご紹介します。



司葉子は、このブログで何度かご紹介している社長シリーズで、小林桂樹の恋人を演じ、そしていったいは藤山陽子に代わったものの、結婚後はまた小林桂樹の妻として出演しています。

司葉子
『社長学ABC』より

また、黒澤明監督、三船敏郎主演の映画にも出演しており、三船敏郎に国民栄誉賞を授与することを、時の橋本龍太郎総理に提案したと言われているほどです。

201808200340.png
Google検索画面より

そんな多数の出演作の中から、今日は、成瀬巳喜男監督に松山善三脚本という黄金コンビによる『乱れ雲』(1967年、東宝)をご紹介します。

司葉子の代表作と言ってもいい作品ではないでしょうか。

『乱れ雲』


乱れ雲

通産省官僚である夫(土屋嘉男)のアメリカ行きが決まり、懐妊もして夢いっぱいの妻・由美子(司葉子)。

乱れ雲

しかし、夫は突然、史郎(加山雄三)の運転による交通事故で死亡します。

乱れ雲

由美子(司葉子)は夫をなくし、夫の実家からは離籍され(←どうやら設定は旧民法の時代)、胎児は堕胎を余儀なくされます。

一方、史郎(加山雄三)は事故は無罪になりましたが、常務の娘(浜美枝)と婚約解消、青森へ転勤となりました。

史郎(加山雄三)は自分の給料から毎月1万5000円を10年間由美子に支払うと、由美子の姉文子(草笛光子)に約束。

由美子も、東京の生活が辛くなり、義姉(森光子)が切り盛りするやはり青森の実家の旅館へ帰ります。

史郎は、由美子のために自分は青森にいないほうがいいと転勤を希望しますが、駐在員もいない西パキスタンにとばされることになり、お別れに由美子に十和田湖を案内してもらうことに。

乱れ雲

しかし、当日は突然の雨で、発熱した史郎を由美子が寝ずに看病。

由美子は思わず史郎の手を握りしめ、史郎も握り返します。

乱れ雲

深い因縁があるにもかかわらず、悪気のない真っ直ぐな気持ちの“若大将”にどんどん惹かれていく由美子。

史郎の求愛をいったんは拒み、悩み、

乱れ雲

しかし結局、由美子は自分から史郎のアパートに……

司葉子

史郎が発つ前に到着できた由美子の、喜びを抑えきれない、でも史郎が受け入れてくれるかどうかを心配する表情は、司葉子の芸能生活最高の表現ではないでしょうか。

素晴らしい!司葉子、最高の表情です。

……しかし、結局この禁断の愛は結実しませんでした。

二人が結ばれようとするときに、交通事故のけが人を運ぶ救急車を見てしまったのです。

乱れ雲

やっと、ここまできたのに、結末はあっけないものでした。

史郎は寂しく青森を発ちました。

まあ、なかなかそういう人が相手というのはむずかしいとおもいます。

もしそうなったら、腹をくくって、1度ぐらいケチが付いてもまたの機会を諦めないとおもいますが、この場合、もう西パキスタンに発つので一発勝負だったんですね。

由美子は、設定上やつれているわけですが、後半、史郎を思うあたりからどんどんきれいになっていきました。

成瀬巳喜男監督も素晴らしいですね。

ちなみに、どうして、司葉子の当たり役かというと、本作の上映の7年後、『もうひとつの愛』というタイトルで、やはり司葉子主演による同じストーリーで東宝がテレビドラマ化しているからです。

相手役は黒沢年雄。その恋人は酒井和歌子でしたが、浜美枝のように薄情ではなくて、黒沢年雄を「負けちゃダメよ」と励ましています。

みなさんは、もし史郎や由美子の立場だったら、相手を愛せますか?

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『てんつくてん』


司葉子はもうひとつ、マニアが再放送を待望する『お宝』作品に出演しています。

『てんつくてん』(1973年10月7日~1974年3月31日、NTV)といいます。

てんつくてん
Google検索画面より

せんぼんよしこがプロデュースしたホームドラマで、佃島にある佃煮屋と鯛焼き屋の話ですが、顔ぶれが面白いのです。

佃煮屋が、賀原夏子、息子の三波伸介、その子たちが渡辺篤史、和田アキ子、吉田次昭、桜田淳子

鯛焼き屋が、杉山とく子、娘に岡崎友紀、森昌子、

近所の自転車屋の兄弟が、新田昌玄と大石吾朗、

桜田淳子と森昌子の担任が前川清。

三波伸介の妹夫婦が宮本信子とささきいさお、

司葉子は、三波伸介の再婚相手です。

そして司葉子の父が松村達雄。

その他、ヒデとロザンナ、本郷直樹、菅原洋一、水原麻記など。

これだけ歌手がたくさん出ていても、主題歌は笠井マリ。
https://www.youtube.com/watch?v=nsoc9NT8udE

映画女優、司葉子の初めてのホームコメディ出演であり、当時新人賞をとって売出し中の桜田淳子と森昌子のドラマ初レギュラーということで注目されました。

脚本は、松田暢子、井手俊郎、鎌田敏夫、松原敏春、牧野和夫など、粒が揃っています。

しかし、放送終了直後に1度再放送されたっきりです。

『乱れ雲』で幸せになれなかった司葉子が、佃煮屋の後妻に入って幸せに暮らしているところもぜひもう1度見たいとおもいます。

乱れ雲
乱れ雲
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pn

うーん、カミさんよかべっぴんだったら考えるかもしれない(笑)
by pn (2018-08-20 12:03) 

末尾ルコ(アルベール)

司葉子、“禁断の愛”の『乱れ雲』で魅せた葛藤を思い出す・・・司葉子もたまたま最近鑑賞した『獄門島』に出演しておりました。もちろん多くの出演作を鑑賞しておりますが、あらためてチェックすると、やはり凄いフィルモグラフィーですよね。「昭和の大女優」の一人に相応しいものです。
ぜんぜん知らなかったのですが、司葉子の三男の妻が相田翔子なのですね。この前のNHK『思い出のメロディー』で「ウィンク、一夜限りの復活!」という驚愕(笑)の企画があったのですが、相田翔子と比べると鈴木早智子はいささか老いを感じました。
『獄門島』ではヒロインの大原麗子の影にやや隠れるような役だったのですが、その「陰に隠れている」のがポイントという横溝正史ミステリのパターン(笑)を踏襲したストーリーでした。そして司葉子、その日本人形のような美しさは際立っておりましたね。
成瀬巳喜男監督の『乱れ雲』、素晴らしいですね。ただ、高峰秀子の『浮雲』は何度も観ているのですが、『乱れ雲』はずっと前に一度鑑賞したのみに留まっておりますので、ぜひ再鑑賞したいと思います。
司葉子が大女優だということはもちろん分かっておりましたが、なにせ日本映画黄金期は綺羅星のごとく大女優が活躍しておりまして、原節子、田中絹代、高峰秀子、若尾文子らの「スーパー大女優」とでも呼びたくなる人たちよりは、やや控え目な存在だという認識でしたが、あらためてキャリアを見ると、司葉子、当然ながら凄い!時代が違うので比べちゃいけませんが(笑)、どうしても「今の女優は~~」になってしまいます。本当に日本は、「未成年の内にに邦画の主要な傑作を鑑賞させる」義務を創るべきだという気がしますね。日本映画が世界のトップクラスを走っていた時代を知らずして、日本の何を語れるのかとさえ思います。
それにしても司葉子、成瀬、小津、黒澤作品への出演と同時期に『社長シリーズ』へも出まくりなのがまた見事です。

>素晴らしい!司葉子、最高の表情です。

うわあ(笑)!一刻も早く再鑑賞したくなりますっ!
『獄門島』の司葉子に感じたのは、極めて日本的なノーブルさと、それであるが故の鬱屈間のある色気とでも言いましょうか。成瀬の世界に打ってつけだということがよく分かります。

『てんつくてん』の方は観たことないと思うのですが、そう言えばロザンナも『思い出のメロディー』へ出演しておりました。この人もあまり変わらないですね。

菅原文太に政治姿勢に対しての批判(のつもりの人たち)もそうですが、そもそも右も左も政治も何もかも分かってない人たちが昨今の「ナショナリストを気取ればカッコいい」という多数派幻想を含んだ風潮に乗って脊髄反射的に人を貶したり侮辱したりという状況が目にあまりますよね。
人間の営みで「白か黒か」と完全に割り切れることなどほとんどなく、いつもいっぷく様のおっしゃる「是々非々」こそすべての人々の基本姿勢となるべきだと思うのです。ところが多くの人が現在、自分たちの気に入らない言動が一つでもあると、「その人の人格全否定」に走ってしまいます。とても危険な風潮ですよね。

少女漫画をよくお読みになり、しかも投稿してらっしゃったとは素晴らしいですね。わたしももっと少女漫画を読んでおきたかったと今となっては思うのですが、当時は竹宮恵子や山岸涼子らの有名どころしか読んでませんでした。「漫画を描く」というのは、わたしが中学の頃、私を含めて同級生の多くがやっていたのです。けれど皆、学習ノートへ鉛筆で描くだけというお粗末さ(笑)。もちろん投稿できるレベルではありません。我が地域のレベルの低さを今更ながら微笑ましく(笑)感じます。

>胸にストンと落ちました(笑)

恐縮でございます!わたし自身、『悪魔が来りて~』を最近観て宮内洋を(あ、こんな人もいたなあ)と思い出した割には断定的なことを書いてしまいましたが(笑)、あの近くにいるだけで(特に精神的に)暑苦しく、周囲のストレス値を上げそうな雰囲気を見て、ついそのように書いてしまいました。性懲りもなくさらに書いてしまいますと(笑)、まともな会話が成り立たないタイプ・・・といったようにも感じられます。やはり中村雅俊とは真逆かもです(笑)。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-08-20 13:04) 

えくりぷす

自分が史郎だったら・・・、申し訳ない気持ちがずっと続くと思うと、男女関係はまあ無理のような…気がします。
『てんつくてん』再放送が1回だけでDVD化もされていない45年も前のテレビドラマについて語れるってスゴイなぁと思います。
どうでもよいですが「せんぼんよしこ」を「せんげんよしこ」と思ってビックリした私…^^;
by えくりぷす (2018-08-20 14:18) 

yakko

こんにちは。復活しました〜宜しくお願い致しますm(._.)m

by yakko (2018-08-20 14:21) 

ヨッシーパパ

司葉子さん、もう84歳ですか。
私も、歳をとりました。orz
by ヨッシーパパ (2018-08-20 18:41) 

kohtyan

ご主人の相沢先生を応援していましたので、なんどか
お会いしたことがあります。お元気のようですね。
by kohtyan (2018-08-20 18:50) 

ヤマカゼ

残念ながら、見たことがありません。
今夜、以前にブログに乗せていた三ツ矢堂製麺で鶏中華そばを食べてきました。スープが鶏、鶏の強い風味。きらいじゃないです。
by ヤマカゼ (2018-08-20 20:32) 

そらへい

懐かしい名前がどんどん出てきますね。
「乱れ雲」は見ていませんが、若大将がシリアスな役を演じたので話題になっていたのは覚えています。
by そらへい (2018-08-20 21:47) 

ナベちはる

>もし史郎や由美子の立場だったら、相手を愛せますか?
自分だったらどうするか…悩んでしまいます…
by ナベちはる (2018-08-21 00:43) 

うつ夫

人生とは簡単そうで難しいものですね。
by うつ夫 (2018-08-22 02:02) 

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