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北浦昭義、広島平和記念日に『喜劇駅前開運』で思い出す [東宝昭和喜劇]

北浦昭義、広島平和記念日に『喜劇駅前開運』で思い出す

北浦昭義(きたうらあきよし、1940年4月10日~ )という役者をご存知ですか。8月6日は広島平和記念日です。Wikiによると、北浦昭義は5歳の夏に広島市の爆心地から1.9キロ南の自宅で被爆したといいます。軽い火傷だけで一命を取りとめたものの、被爆者手帳を持っているそうです。(画像は断りのない限り劇中より)



爆心地から1.2キロメートル圏内の被爆は、その日のうちにほぼ50%が死亡したそうです。

無傷と思われた人たちも被爆後、月日が経過してから発病し、死亡した例も多くあるという中で、「1.9キロ」で「軽い火傷だけ」ですんだのは、不幸中の幸いとしかいいようがありません。

北浦昭義は、広島大学附属高等学校から一浪後、日本大学芸術学部演劇科に入り、在学中に東宝の喜劇駅前シリーズ(1968年の『喜劇駅前競馬』)に出演し、俳優生活をスタートさせました。

201808052317.png
Google検索画面より

役柄はサラリーマン、刑事、教師、酒場のマスターなど地味なバイプレーヤーですが、逆に地味な役を一貫して演じ続けることもひとつの功績ではないでしょうか。

ということで、具体的に作品をご紹介しますと、『喜劇駅前開運』(1968年)があります。

喜劇駅前開運
『喜劇駅前開運』豊田四郎が描く赤羽近代化を巡る住民闘争喜劇

文芸映画の巨匠といわれた豊田四郎監督が、喜劇駅前シリーズでは、社会派喜劇を撮っています。

『喜劇駅前開運』もそのひとつで、舞台は東北本線赤羽駅前商店街。

東口と西口を大きな踏切が分断しており、開かずの踏切は住民たちにとって最大の悩みでした。

そんな東西赤羽商店街の対立をめぐる騒動が展開されていきます。

開かずの踏み切りだけでなく、当時話題になりつつあった公害も取り上げられ、随所に実在する社会問題の風刺がなされたブラックな笑いは、同じ東宝映画でも社長シリーズとは一味違います。

劇中、東口スーパーで売られていた即席袋麺『駅前ラーメン』は、エースコックによって商品化され、フランキー堺がCMにも登場しました。

駅前ラーメン

出演者が多彩です。

森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺のほか、池内淳子、沢村貞子、森光子、大空真弓、黒柳徹子、佐藤友美、野川由美子、藤田まこと、山茶花究、藤村有弘、小鹿番、頭師佳孝など。

これだけのメンバーに、それぞれ見せ場を作ってひとつのストーリーにまとめているのです。

『喜劇駅前開運』の黒柳徹子
左から沢村貞子、伴淳三郎、森繁久彌、フランキー堺、黒柳徹子、藤村有弘


北浦昭義は、小鹿番とともに価格Gメンと称して、メーカーの命を受けてダンピングのチェックに目を光らせる役どころです。

『喜劇駅前開運』で北浦昭義

『喜劇駅前開運』で北浦昭義

しかし、大学在学中に駅前シリーズデビューしたということは、ダブリがなければ、このとき北浦昭義はまだ24歳のはずです。

24歳にしては老けて見えるような……、ま、いいですけど。

仕事の実績を見ると、80年代にフェードアウトしたようですが、今も元気にしておられるでしょうか。

ところで、『喜劇駅前開運』には、新東宝から東京映画に移籍してきた大空真弓も出演しています。

大空真弓

父親は沖縄県、母親は広島県の出身である大空真弓も、同県佐伯郡五日市町(現在の広島市佐伯区)で被爆しました。

その時は誰も症状は出なかったものの、姉が20代後半に白血病で亡くなっているそうです。

喜劇駅前シリーズに出演していた頃の大空真弓は、ヒロイン然とした輝きがありました。

その20年後、まさか自分がそのとなりで、ドラマに出てしまうとは思いませんでした。

ああ家族
『ああ家族』(1987年、TBS)で左から大空真弓、山口崇、私、ベンガル

今も現役でご活躍で何よりです。

いつまでもお元気でご活躍いただきたいとおもいます。

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佐野浅夫、江戸家猫八も……


被爆経験の有無にかかわらず、原爆との関連で語られる俳優は、佐野浅夫、江戸家猫八(3代目)などもそうです。。

テレビドラマ『水戸黄門』の3代目だった佐野浅夫は、苦楽座という劇団に所属していましたが、劇団は広島慰問中に被爆。宿舎にいた9人が全員亡くなりました。

佐野浅夫は本土決戦特攻隊員だったため、たまたま劇団を離れていて被爆しませんでした。

江戸家猫八は、爆心地から3キロ離れた宇品(現・広島市南区)に駐屯する陸軍船舶砲兵第1連隊の兵長を勤めていましたが、二日酔いで、広島慰問中の苦楽座女優・園井恵子と会う約束を守れず、一方園井恵子は被爆して亡くなりました。

園井恵子
Google検索画面より

人生というのは、「偶然」によって翻弄されることは避けられません。

でも、2度と被爆の悲劇をないようにすることは、「偶然」扱いにして棚上げせず、歴史に学ぶ「必然」とすべきです。

喜劇 駅前開運 [レンタル落ち]
喜劇 駅前開運 [レンタル落ち]
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ナベちはる

爆心地からかなり近いところでも軽い火傷で済んだこと、奇跡ですね…
by ナベちはる (2018-08-06 00:29) 

末尾ルコ(アルベール)

北浦昭義、広島平和記念日に『喜劇駅前開運』で思い出す・・・現在活躍中の俳優としては、広島出身の綾瀬はるかが原爆に関する活動をしていますね。綾瀬はるかは普段わざとぼかした発言をすることが多いのですが、立場的にももっといろいろなことに積極的な言葉が欲しいところです。
原爆に関しても日本ではどうしても右か左かの思想的な争いになってしまうのが残念ですね。もっと人類史的な視点で語るべき悲劇なのですが、近視眼的な話になってしまうことが多いです。
豊田四郎は未見の作品が多いのですが、最近観た『雪国』が驚くほど素晴らしかったので、他の作品もどんどん鑑賞したいものです。文芸作品ももちろんですが、今夜紹介くださった『喜劇駅前開運』も素晴らしそうですね。わたしとしては、(あの凄い『雪国』を撮った豊田監督が、一体どんな凄い喜劇を演出するのだろう)という強い興味がありますね。
北浦昭義という俳優については不肖わたくしめ、名前さえ存じませんでした。こうしていっぷく様がバイプレイヤーをご紹介くださるので、本当に助かりますし、世界が広がります。最近は日本映画はもちろん、洋画も脇役の名前を可能な限りチェックするようになりました。作品鑑賞がよりおもしろくなり深まるだけでなく、人間そのものへの関心や理解がグッと深まりますよね。映画ファンって、「作品を語ればそれでいい」という傾向の人が多く、わたしもそんな傾向があったのですが、スタッフを含め一人一人の人間がいなければ作品が成立しないということを忘れてはならないことをいつもお教えいただいております。
北浦昭義ってキャリアをチェックしましたら、『愛と誠』へも出てるんですね。そして『青春の蹉跌』へも。名前も知らぬうちに、そうした重要な映画でわたしも目にしていると考えると少し不思議な気分です。テレビドラマで、『プロレスの星 アステカイザー』第24話に出演とあるのでちょっと気になって調べてみたら、これって、猪木や佐山、藤原、山本小鉄らも出演してるんですね。高知では放送してなかった可能性大ですが、(こんなドラマがあったんだ!)と新鮮な驚きです。

>随所に実在する社会問題の風刺がなされたブラックな笑い

これはますます興味が湧いてきます。今、ブラックな笑いを作れる人ってなかなかいないですよね。松本人志の頭じゃ無理ですし(笑)。きっと本人はブラックは笑いだと思っているのでしょうけれど、全然違います。
『駅前ラーメン』って、子どもの頃あったような。エースコックというだけで、美味しそうな期待感がありました。
出演者の方も、森光子や黒柳徹子の若い頃の演技はあまり観たことないので興味があります。

園井恵子という女優もものすごく綺麗ですね。『無法松の一生』へ出てたのですね。ここ2日ほど、ちょっと古い山田洋次の本を読んでたんですが、とてもおもしろく、中でちょうど『無法松の一生』についても言及されておりました。またすぐに観たくなりました。

>「偶然」扱いにして棚上げせず、歴史に学ぶ「必然」とすべきです。

おっしゃる通りです。昨日たまたま、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリンに関するドキュメントを観ていましたが、現在の世界、ファシズム台頭当時と確かに似ています。どうにか踏みとどまっているのは、第二次世界大戦の教訓があるからでしょうが、かなり危険水域にあるのは間違いありません。これ以上悪い方向へ行かないように、できることはやっていきたいと思っております。

力道山VSボボ・ブラジルのあの10分強の動画だけでも、100杯以上おかわりできますよね(笑)。やはりこの、今のプロレスとの圧倒的違いを考えてみると、今のプロレスは「消費して、終わりの商品」という感じなのです。昭和のプロレスでインパクトの強い試合は、「単なる商品」じゃないんですよね。ただこの辺の違いが、「昭和の凄い試合」を知らない今のファンには理解できないのでしょうね。でもそれって、小津、溝口、黒澤、成瀬の映画を知らずに、「『シン・ゴジラ』、最高!」なんて言ってるのと変わらない気がします(笑)。  RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-08-06 01:59) 

pn

特攻隊員が生き残り劇団員が全滅なのかぁ、どんな思いですごしてきたんだろう。
by pn (2018-08-06 06:16) 

ヤマカゼ

喜劇駅前開運は
豪華キャストですね。
by ヤマカゼ (2018-08-06 06:17) 

チャー

駅前ラーメン NICE〜♪笑
お風呂の栓ありますよ えーっとがっかりです
by チャー (2018-08-06 07:33) 

なかちゃん

森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺、池内淳子、沢村貞子、森光子、大空真弓…スゴイ役者さんたちを集めて作られた映画なんですね。
今の時代でいうと誰に当るのやら見当もつきませんが、素晴らしいと思います。

by なかちゃん (2018-08-06 11:57) 

ヨッシーパパ

本日と三日後と、広島、長崎と続きますね。
by ヨッシーパパ (2018-08-06 19:12) 

うつ夫

邦画の俳優も層が厚かったんですね。
by うつ夫 (2018-08-07 00:56) 

犬眉母

駅前ラーメン、また復活すればいいのに。
by 犬眉母 (2018-08-09 19:41) 

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