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橋本忍、多くの名監督と名作を世に送り出した骨太の脚本家 [芸能]

橋本忍、多くの名監督と名作を世に送り出した骨太の脚本家

橋本忍(1918年4月18日~ 2018年7月19日)の訃報です。ここのところ、訃報・命日記事が続きましたが、だからこそ大御所についても振り返る必要があるでしょう。橋本忍訃報については、マスコミは黒澤明作品の数々が紹介されています。



今、メディアで書いている現役のライターは、もう平成生まれも入っているはずですから、昭和30年代前半の作品を、時代背景込みで批評するのはなかなかむずかしいと思うのですが、黒澤明絡みで語っておけば無難、ということもあるでしょう。

常田富士男なら『日本昔ばなし』とか、生田悦子なら『欽ドン!』というのもそんな感じで。

『羅生門』『生きる』『七人の侍』『生きものの記録』『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』『悪い奴ほどよく眠る』『どですかでん』と、計8本の黒澤明作品で書いているからです。

201807202330.jpg
Google検索画面より

ただ、橋本忍はその当時から、マキノ雅弘、野村芳太郎、岡本喜八、今井正、山本薩夫、成瀬巳喜男ら錚々たる面々と仕事をしているので、そのへんも含めて語られることで、より個人の業績にリアルに迫れると思います。

私にとっては、『どですかでん』以外の黒澤明作品は、私が生まれる前のことで、だいぶ歳をとってからテレビやDVDなどで見た作品ばかりであることから、あくまでも時系列で私が見た順番で、マスコミが詳しく触れていないところをいくつかご紹介します。

『私は貝になりたい』(1958年、TBS)


私が最初に見た作品は、『私は貝になりたい』(1958年、TBS)です。

私は貝になりたい
劇中より

招集された理髪店主が、撃墜したアメリカ軍の搭乗員捕虜を上官の命令でヤリでひと突きしたものの、戦争が終わってからBC旧戦犯として裁かれ死刑になるというストーリーです。

「“ドラマのTBS”の礎となった作品として、日本のテレビ史に語り継がれている」(Wiki)ドラマです。

といっても、私が見たのはもちろん初出の時ではなく、1975年に『月曜ロードショー』の枠で荻昌弘の解説で放送されたときです。

荻昌弘の解説では、当時の番組は前半が録画、後半を生で放送したそうです。

つまり、後ろ半分の記録がなかったために再放送ができなかったものの、どなたかが録画していた奇跡で、それを借りて今回の再放送が実現した、というような話をしていたと思います。

あまりに悲惨なドラマだったので、その直後に放送開始されたフランキー堺出演の連続ドラマ『おふくろさん』(日本テレビ)が、京塚昌子に片恋するホームコメディだったので、なんかホッとした記憶があります。




このほか、戦争関連では、岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』(1967年、東宝)などが印象に残ります。

『黒い画集あるサラリーマンの証言』(1960年、東宝)


黒い画集あるサラリーマンの証言』(1960年、東宝)は、松本清張の同名の原作を橋本忍が脚色、小林桂樹が主演です。

監督は、その小林桂樹の当たり役である『裸の大将』のメガホンをとった堀川弘通です。

黒い画集あるサラリーマンの証言
『黒い画集あるサラリーマンの証言』より

松本清張作品では、このほか、野村芳太郎監督の『張込み』(1958年、松竹)『砂の器』(1974年、松竹)が記憶に残りますが、マスコミはそれらについて、「骨太のサスペンス」と称していますね。

『張込み』の大木実は格好良かったですね。

なお、『証言』については、この作品だけでなく、柳生博、市毛良枝でドラマ化された『松本清張サスペンス 証言 私の愛人ー29才、独身OL、関係5年…』(1984年7月7日、大映テレビ/テレビ朝日)もこのブログではご紹介したことがあります。

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『白い巨塔』(1966年、大映)


『白い巨塔』は、何度も映画化、ドラマ化していますが、この大映版と、先日の生田悦子訃報でご紹介した、フジテレビ版(1978年)は、主演の田宮二郎ほか、小沢栄太郎、加藤嘉ら、一部主要なキャスティングが同じです。



ただし、作風は全く違います。

フジテレビ版は全31話なので、財前五郎の人間的な弱さと葛藤にスポットをあて、それをゆっくり掘り下げていったヒューマンインタレストな仕上がりでしたが、この大映版は山本薩夫監督で、医学界の暗部に切り込む社会派のモチーフでした。

『白い巨塔』というと、すぐ田宮二郎版と唐沢寿明版(2003年版)でどっちがよかったかという議論をしたがる人がいるのですが、私に言わせれば、それはナンセンス!←古い?

なんとなれば、医学が進歩し、胃がんから食道がんにストーリーを書き換えている、つまり前提が変わっている唐沢版と比べて何の意味があるのか。

比べたければ、同じ田宮二郎主演の、大映映画版とフジテレビ版を見るべきでしょう。

いずれにしても、私は単純に「どっちがよかった」という話にしてしまうと、薄っぺらい主観で終わってしまうので、優劣ではなく、作風の違いをじっくり検証していくほうがいいとおもいますけどね。

みなさんは、橋本忍作品、どんな作品が思い浮かびますか。

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うつ夫

100歳ですか。1世紀の間に映画も変わったでしょうね。
by うつ夫 (2018-07-21 00:49) 

末尾ルコ(アルベール)

橋本忍、多くの名監督と名作を世に送り出した骨太の脚本家・・・本当にどのメディアも判で押したように黒澤作品一色ですね。確かにこれら黒澤8作品は世界的に見ても極めて重要なものばかりですから、取り上げられて当然ですが、他にもそうそうたる作品の脚本を書いているわけで、この偉大な芸術家の業績を讃える気持ちがあるのなら(今のメディアのそれはないのでしょうが)、できるだけ多くの代表作に言及すべきですよね。
そして今夜もいっぷく様ならではのお切り口、堪能させていただいております。
『私は貝になりたい』は『月曜ロードショー』で放送したのですね。この一件からだけでも、当時は現在よりも遥かにテレビ局が「まとも」だったことが分かります。現在では、20年近く以前の、しかも重いテーマのドラマをメインの時間帯で再放送するなんて、あり得ません。ただ、わたしが『私は貝になりたい』を観ているかどうか、はっきりしません。ということは、観ていたとしてもまだその価値が分かっていなかったということで、このドラマもぜひ近いうちに観てみたいものです。

>「骨太のサスペンス」

松本清張物には必ず使いますね、このフレーズ(笑)。これはもういつも思っているのですが、「言葉のプロ」のはずの記者が、「誰でも使う紋切り型のフレーズ」や「新語・流行語」などをよく恥ずかしげもなく使うなあということですね。だいたいが「骨太のサスペンス」と書いて、それで終わりですからね。小学生が書いても同じことです(笑)。
『黒い画集あるサラリーマンの証言』はまだ観てないのですが、このところ社長シリーズの小林桂樹をしょっちゅう観ていて(笑)、こうなると他の小林桂樹も観たくなります。子どもの頃にドラマなどで目にしてはいましたが、その時の印象からすれば、社長シリーズのようなキャラクターは吃驚で、小林桂樹の芸域をさらに見極めたくなっております次第です。
橋本忍作品としては、『切腹』も大好きです。サムライ映画大好きなわたしですが、『切腹』はその中で上位に入る作品です。出演が、仲代達矢、岩下志麻、丹波哲郎、三國連太郎と、もう文句なし。若き日の岩下志麻がまた、瑞々しいのですよね。そして全編を貫く緊張感はまったく途切れず、そのストイックな雰囲気にシビれます。音楽も武満徹で言うことなしです。

告白いたします。ひし美ゆり子さんの画像を検索してしまいました(笑)。豊かで魅力的なお身体ですね。そして背徳の極みで恐縮ながら、この当時のひし美ゆり子さんとアンヌ隊員時のひし美ゆり子を巧妙に変換しようと試みる自分がおります。いけないことだとは分かっていても、思考が勝手にそちらへ動いてしまうのです・・・と、少々江戸川乱歩短編風に書かせていただきました。

もう一つ告白いたします(笑)。このところ何かに憑かれたように(笑)、丸美屋の「ごはん付きシリーズ」を利用しているわたしですが、昨日朝は『ビビンバ』をいただきました。なかなかよかったです。何よりも200円くらいで、朝から「ホットなビビンバ」という充実感に加え、皿を用意する必要も洗う必要もないという充実感(笑)ですね。丸美屋「ごはん付きシリーズ」、リピート率高くなりそうです。

ツイッターでフォロワーを多くつけるのは、基本的に「オピニオン系」が多いですね。その「オピニオン」のクオリティはほぼ関係なくて、特にネット民的な人たちが潜在的に求めている内容を中心にしていれば、人にもよりますけれど、けっこう多くのフォロワーを集められるという傾向がありますよね。だから俳優や歌手で、穏当なことしかアップしない人たちは、その知名度からすれば、意外なほど少ないフォロワーだったり・・・というのも一つの傾向のような気がします。
そして多くのフォロワーを集めるのに、「乱暴な言葉づかい」は欠かせないようで、ここがわたしの非常に気に入らない現状なのです。
例の(笑)長谷川豊が当人のブログに関して、「普通の書き方ではまったくアクセスが上がらなかった」けれど、「乱暴で言葉づかいで書き始めたら、めきめきアクセスが上がってきた」という趣旨の内容を書いていました。結局長谷川はそれで調子に乗って、墓穴を掘ってしまいましたが、BLOGOSというオピニオンサイトによく転載されていたのでたまに読んでいましたけれど、その言葉の汚さときたらなかったです。
わたしはもともと気が短い方で(現在はだいぶましになっておりますが 笑)、今でも心の中や、あるいは一人でいる時には人一倍スゴイ(笑)言葉が口をついたりすることもありますが、不特定多数が閲覧する可能性のあるブログやSNSでは最低限の言葉使いがあると思うのです。その「最低限」ができない、あるいは「人気取りのために」敢えて破っている人たちの人間性については疑ってかかります。もちろん稀にですが、乱暴な言葉づかいが「芸」あるいは「芸術」の域に達する場合もありまして、そういう境地であれば、例外と言えますが。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-07-21 01:05) 

犬眉母

砂の器が良かったですね。
by 犬眉母 (2018-07-21 01:11) 

旅爺さん

橋本忍や係わった多くの作品の主演者などが次々消えていくのは寂しいものですね。昔は良かった~・・ですね。
by 旅爺さん (2018-07-21 05:47) 

pn

確か中居君も私は貝になりたいやらなかったっけ?そこを比べよう(笑)
100歳かぁ、暑さとかだったらなんか悲しいな。
by pn (2018-07-21 06:09) 

えくりぷす

この記事を拝見するまでは、橋本忍さんがこんなに多くの名作の脚本を書いた方だとは知りませんでした。(私もマスコミに勘違いさせられたクチです)切腹、ゼロの焦点、八つ墓村、隠し砦の三悪人などリメイクされた作品も多いのですね。見比べたものは、作品の内容の理解が深まったと感じます。(私は「どっちがよかった」と言うことはないですが)
by えくりぷす (2018-07-21 06:19) 

チャー

私は買いになりたい
多くの俳優さんが演じていますが、フランキー堺さんの映画は衝撃を受ける作品でした
by チャー (2018-07-21 06:41) 

deepredcocktail2

最高傑作「砂の器」にかかわって、最低の駄作「幻の湖」を作った映画人ですね。
by deepredcocktail2 (2018-07-21 10:42) 

kou

「私は貝になりたい」は中居君の出演しか物しか観たことがありません。

借りて観てみたくなりました。
by kou (2018-07-21 19:00) 

ヨッシーパパ

この方も存じ上げませんでした。
by ヨッシーパパ (2018-07-21 20:07) 

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