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常田富士男、たとえ俗悪でも斬新な「変化」を求めた役者人生 [芸能]

常田富士男、たとえ俗悪でも斬新な「変化」を求めた役者人生

常田富士男(ときたふじお、1937年1月30日~2018年7月18日)の訃報です。ここのところ、訃報と命日記事が続いていますが、今日もまた常田富士男を思い出します。マスコミでは、『まんが日本昔ばなし』の語りを代表作として紹介していますが、私はもっと別の作品も振り返ってほしいとおもいます。(上の画像は『日本一の裏切り男』から、以下の画像は当該作品から)



常田富士男は、私のイメージでは、『まんが日本昔ばなし』の穏やかな語りべというのは“世を忍ぶ仮の姿”で、本来の姿は、俗悪とか、斬新といわれる作品で、そのインパクトを創造する仕事師であったように思います。

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以前ご紹介しましたが、たとえばこんな作品に出ています。

『日本一の裏切り男』(1968年、東宝)


早坂暁(小説家、脚本家。1929年8月11日~2017年12月16日)の訃報のとき、ご紹介した『日本一の裏切り男』です。

日本一の裏切り男
早坂暁の訃報で『日本一の裏切り男』を思い出す

30本作られた植木等、およびクレージーキャッツの出演した「東宝クレージー映画」の中では、異色の作品といわれています。

どう異色かといいますと、東宝クレージー映画シリーズは全体を通して、植木等の演じる、有言実行型C調キャラクターが、明るく作品を引っ張る展開でした。

が、今回の『日本一の裏切り男』に限っては、植木等、ハナ肇、浜美枝という三者のトリプル主演が、戦後20数年間を舞台に、どん底からの復興を、綺麗事抜きで、裏切り合いながらたくましくしたたかに生き抜くブラックコメディーに仕上がっている社会派作品なのです。

映画ですからいささかデフォルメはありますが、終戦、朝鮮戦争、昭和元禄など実際の世相を舞台に、いかに当時の国民が翻弄されたかを喜劇として描いている深い深い作品です。

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セットの出来が素晴らしい。上は電車が走っています

常田富士男は、戦後のドサクサでパチンコ玉の景品化をシノギとする、渡辺篤組長、名古屋章若頭の一家の組員役です。

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本作は、名古屋章、熊倉一雄、渡辺篤、常田富士男、小沢昭一、牟田悌三、古今亭志ん朝など、通常の東宝クレージー映画とは異なる、個性派の豪華脇役が顔を揃え、早坂暁作品を盛り上げており、クレージー映画ファンならずとも必見の一作だと思います。

『カリキュラマシーン』(1974年4月1日~1978年3月31日、NTV)


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カリキュラマシーン、「大人の価値観」を教えた昭和の教育番組

昭和の教育バラエティ番組です。

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『カリキュラマシーン』は、短いシークエンスでひとつの寸劇を次々披露していく『セサミ・ストリート』のような「教育番組」の建前でした。

が、タバコの火を手の甲につけるとか、金魚入りの水槽の水を飲むとか、味噌汁で顔を洗うとか、いわゆる「俗悪番組」に入りそうなどぎついネタが遠慮なく出てきました。

しかも、当時アイドルであった、フォーリーブスや桜田淳子が、レギュラー出演してそれを演じていたのです。

教育番組といいながら、作り方は大人のサビのきいた視点で笑う番組。

子供相手にやるっていう感覚はやめようと思った。子供扱いというと変だけど、対等でいこう、と。(中略)理屈では言えないけど、頭では分かってる。子供ってものすごい鋭いから、「何とかちゃん」なんてバカにしちゃダメなんだよ。(DVDボックス・解説よりプロデューサーの齋藤太朗さん)

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右は藤村俊二

短いシークエンスでひとつの寸劇を次々披露していく斬新な発想は、1969年に放送された、『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』という、テレビ史を振り返る企画では必ずといっていいほど取り上げられる番組からといわれますが、どちらにも常田富士男は出演しています。

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首長の評価を変えた男


常田富士男が1977年、保谷市(現西東京市)の市長選に、日本社会党から出たときは少しびっくりしました。

もちろん、タレントでもいろいろな支持政党はありますが、立候補するなら、当選する確率が高く広告塔的な役割をつとめる自由民主党から出ることが多く、個性的な発言をする人は無所属でした。

要するに、タレントが議員になっても、議会を変えるような責任やポジションでは仕事なんかできないということです。

タレントとしても、与党ならともかく、野党から出てしまうと、党派色がついて、その後タレント活動がしにくくなるリスクもありました。

今のように、クラリオンガールが公党の代表になったり、政治番組のアシスタントが都知事になったりなんて考えられなかったですね。

それはともかくとして、俳優でそのような「本格的な」ポジションから、しかも陣笠議員ではなく首長選で立候補する人は当時大変新鮮でした。

以後、タレントに限らず、国会議員でも、知事や市長などの首長に転出する人が当たり前のように出てきましたから、常田富士男の立候補は、首長の評価やあり方を変えるエポックになったのかもしれません。

そうした「斬新な「変化」を求めた」姿勢は、まさに常田富士男の役者人生を含めた人生観そのものだったのでしょう。

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ナベちはる

「『まんが日本昔ばなし』の声の人」と聞くと分かるのですが、俳優をされていたのですね…
by ナベちはる (2018-07-20 00:25) 

末尾ルコ(アルベール)

常田富士男、たとえ俗悪でも斬新な「変化」を求めた役者人生・・・今夜も素晴らしいお記事!心から堪能しております。それにしてもマスメディアのお粗末な記事、何なのでしょうね。常田富士男=『日本昔ばなし』、生田悦子=『欽どこ』と決めつける出鱈目さ。俳優を馬鹿にしている以前に、人間というものを馬鹿にしています。
今夜のお記事、まず冒頭のお写真に驚かされます。まるで内田裕也のような雰囲気。この一枚だけで、わたしにとっても未知の常田富士男の世界を実感させていただけます。
『日本一の裏切り男』、観たいです。日本映画黄金期とそれに準ずる期間の作品は、本当にセットが見事なものが多いですね。ハリウッドのように莫大な予算をかけているわけではないけれど、素晴らしい。加えて、カメラも見事ですから、どのシーンも観応えがあります。そのような技術は、巨匠の渾身の作品だけでなく、プログラムピクチャーとされる作品にも存分に発揮されておりますよね。
『カリキュラマシーン』は、もちろん知っておりましたが、あまり観た記憶はないのです。米米CLUBがまださほどメジャーではない時期に、「カリギュラ・マシーン」というネタをやっていて、あの頃はおもしろかったなという記憶はありますが、それはまた別のお話です(笑)。

BOOK OFFができる前は高知にも街の古本屋がいくつかあって、そういうところではなかなか本を買ってもらえませんでした。もちろんそのような古本屋は隅っこの方に魅惑的な本がひっそりと置いてあったり、子どもの頃はプロレス誌のバックナンバーを多く買えたことが、全日本プロレスから観始めたわたしに少なからずプロレス史の知識を付けてくれる原動力になっていました。古本屋の薄暗さもよかったのですが、BOOK OFF店内の煌々と照りつける蛍光灯の明るさはすごいですよね。冷房がよく効いているので、夏場に立ち寄るには悪くない場所ですが。
必要ない本はネットで売れば意外な値がつくかもしれませんが、その手間を考えると、なかなか手をつけられません。お話は逸れますが、『Newton』なんかも、もうちょっとおもしろく書けないかなと、特に文系人間のわたしなどはよく感じます。「科学にもっと興味を」というのはもちろんですが、やはり科学者や科学ジャーナリストなど、もっと文章については考えていただきたいところです。

年配の方でも、映画も観ない、日本の名優についても知らないという人が多いですよね。正直、吃驚することもあります。映画やドラマだけでなく、小説なども含めて、「物語」を軽視する、それどころかまったく視野に入れてない人たちって多いです。そういう人たちと話をしても、普通はぜんぜんおもしろくないものです。
さらに、魅力的な物語を、人間の俳優たちがいかにして演じるか、ロケやセットを含めて、それらすべてをどのように映像として成立させるか・・・一流の人であればあるほど、その魅惑を理解しているものですし、そうしたことに生涯興味を持てない人は、(その程度の人)と思いたくなります。

>出演者の顔ぶれを細かく見るのが楽しみなのです。

これはもう、何度となく書かせていただいておりますが、本当にいっぷく様に学ばせていただいております。わたしにとって、映画やドラマに対する「まったく新しい視点」を与えてくださっているのです。それと同時に、俳優の方々にとっても、特にさほど有名でない俳優たちにとって、これほど嬉しい作品鑑賞方法はないのではないだろうかと、心から感服しております。特にメディアの映画や俳優たちに対する記事などがあまりにお粗末なものが多い昨今ですから、いっぷく様がお書きになるレヴューなどの貴重さ、素晴らしさが大きく際立って感じられます。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-07-20 00:38) 

pn

カリキュラマシーン懐かしい(≧▽≦)
次々とお亡くなりになるのがなんだかなぁ・・・
by pn (2018-07-20 06:15) 

ヤマカゼ

「まんが日本昔ばなしとは別の顔をもっていたのですね。
by ヤマカゼ (2018-07-20 06:21) 

Rinko

とても個性的な俳優さんだったイメージがあります。
市長選にしかも社会党から出馬していたのは知りませんでした。
ご冥福をお祈りいたします。
by Rinko (2018-07-20 07:40) 

Take-Zee

こんにちは!
ここのところ、有名人の訃報が続いて
寂しいですね。
 そんな中、一昨日叔父が逝去しました・・・
(いい話はないでしょうか)

by Take-Zee (2018-07-20 09:18) 

チャー

個性豊かな俳優さんでしたね
今も日本昔話の声が耳元で響いてきそうです
by チャー (2018-07-20 10:07) 

hana2018

先の武智豊子と言い、常田富士男と言い、どちらも記憶にある私・・・と言う事は、つくづく昭和の人なんだと実感します。
ただ彼のように脇役がほとんど、日本昔話のナレーションがあったものの、スターでもない人をいちいち取り上げる、マスコミの姿勢には疑問を禁じえません。
またタレントはタレント業を、テレビ番組の出演者が安易に政治の世界を目指すのも、何だか~~と思ってしまうのです。なーんて言ったら、二世議員ばかりになってしまう。これもまた困った事ですね、
by hana2018 (2018-07-20 13:26) 

えくりぷす

常田富士男といえば、日本昔ばなし以外だと、市川崑作品の脇役に出ていた味がある役者さんというイメージです。来週はNHK BSで横溝正史シリーズが放送されるので、常田富士男にも注目して観たいと思います。
日本のテレビマンとして最大の戦略家・井原高忠の手がけた2番組にも出ていたということも興味が湧きます。
by えくりぷす (2018-07-20 14:09) 

poko

俳優をされてたのはあまり覚えてなくて
日本昔ばなしがすぐに浮かびます。
by poko (2018-07-20 15:23) 

JUNKO

この人の昔話はすごい、絶対孫に聞かせます。
by JUNKO (2018-07-20 18:47) 

ヨッシーパパ

中年以降は、日本昔話のオジサンですね。
by ヨッシーパパ (2018-07-20 20:19) 

うつ夫

梅津栄さんと被りがちですが、存在感はありましたね。
by うつ夫 (2018-07-21 00:50) 

犬眉母

新劇の俳優さんだったんですね。
by 犬眉母 (2018-07-21 01:12) 

レインボーゴブリンズ

いつもありがとうございます(^^)/ 
常田富士男氏と言えば、テレビっ子の私は「ゲバゲバ90分」が思い出されます。カリキュラマシーンは、ゲバゲバの子供版に思えたのですが、案外とひどいネタをやっていたのですね。昭和史を賑わせた人達が次々と逝ってしまうのは、時の流れの過酷さと言えますね(◞‸◟)
by レインボーゴブリンズ (2018-07-21 17:56) 

Charla

Ꮇommy and Daddy hugged the twins as a result of it was getting time
to gеt to bed. ?Mommy thinks the most effective factor
about God is he gave me these two ⅼittle rascals
and they are the ƅest thing in Mommy?s worⅼԀ.? She mentioned cuddling
and tickling each bߋys. That was the kind of thing mommies аll the time say.
The giցgled and hugged Mommy and were virtually ɑble to go to their bunk beds when Lee said.
by Charla (2018-07-30 19:25) 

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