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武智豊子、女エノケンと言われたしゃがれ声のバイプレーヤー [懐かし映画・ドラマ]

武智豊子、女エノケンと言われたしゃがれ声のバイプレーヤー

武智豊子(たけちとよこ、晩年は武知杜代子、1908年08月25日~1985年07月18日)の命日です。女エノケンと言われたしゃがれ声のバイプレーヤーも昨年33回忌でした。年忌法要としては“弔い上げ”を過ぎたことになりますが、作品を振り返りましょう。(上の画像は『喜劇誘惑旅行』と『社長外遊記』より)



映画にしろドラマにしろ、主役や2枚目だけでは成り立ちません。

狂言回しも必要であるし、大きなストーリーの流れには直接かかわらなくても、その存在感でシーンのつなぎとしてメリハリをつけて、作品を盛り上げる存在も必要です。

現代劇の、とくに喜劇調となると、ひとくせありそうな、おしゃべりな中高年女性がその役を担うことが多いようです。

私が映画を見始めた1960年代後半ですと、おばあさんで、コミカルな仕事をする人といえば、飯田蝶子、それより少し若くなって武智豊子、都家かつ江などがいましたが、都家かつ江は料亭の女将や、本当に三味線を弾く芸者(本職は三味線漫談家)の役が多く、三人の中でもっとも大衆的な役を引き受けていたのが武智豊子だったようにおもいます。

武智豊子
Google検索画面より

私はもちろん、その全盛期を知りませんが、Wikiによると、若いときの人気はすさまじく、“女エノケン”と言われ、「東京六大学に『武智豊子親衛隊』ができたほど」と書かれています。

すでに30代から老婆役だったようですが、私が観たときは本当にその年代にさしかかっており、それでもしゃがれ声で、喜劇映画やドラマに数多く出演していました。

『社長外遊記』(1963年、東宝)


社長外遊記』は先日、BS11で放送することをご紹介したばかりです。

社長外遊記

東京有楽町の丸急百貨店社長(森繁久彌)が、古くから付き合いのあるハワイ在住の日系人(フランキー堺)のツテで、ハワイに支店を出す話です。

武智豊子は、フランキー堺を接待する料亭シーンで、芸者として出演しています。

社長外遊記

社長シリーズは、こういう場合、「美人を期待したのにがっかり」というのがお約束なのですが、塩沢とき、京塚昌子、そしてこの武智豊子などが、そのガッカリ役にキャスティングされています。

『馬鹿が戦車でやって来る』(1964年、松竹)


馬鹿が戦車でやって来る
『馬鹿が戦車でやって来る』より

サブ(ハナ肇)は、発話障害で発達障害の弟・兵六(犬塚弘)と、耳の遠い母親・とみ(飯田蝶子)との3人暮らし。

農地改革で自分の土地を持てたものの、地主だった仁右衛門(花澤徳衛)は、何とか自分の土地を取り戻したいという欲を持ち、とみを騙して土地を取り戻し、兵六もヤグラから落ちて死亡。

腹の底から怒ったサブは、旧陸軍のタンクを走らせ村中の家屋を壊し、最後はタンクのまま海に入り、その姿は杳として知れない、というラストです。

馬鹿が戦車でやって来る』は、喜劇ではあるのですが、かなり深く重い山田洋次監督のメッセージが込められています。

武智豊子は、地主の使用人の一人で、ハナ肇が正装をした姿に、馬鹿にしたように大笑いするシーンがあります。

山田洋次監督作品では、これ以外にもハナ肇、犬塚弘主演の『運がよけりゃ』(1966年、松竹)に出演しています。

『運が良けりゃ』
『運が良けりゃ』山田洋次監督が描く本音で逞しく生きる江戸庶民

『喜劇誘惑旅行』(1972年、松竹)


喜劇誘惑旅行』は、瀬川昌治監督、主演を国鉄マンを演じるフランキー堺で12本作った喜劇列車シリーズのひとつです。

当初は、伴淳三郎、フランキー堺の国鉄マン父子の話でしたが、シリーズ途中から、フランキー堺と森田健作(現千葉県知事)のコンビに代わり、フランキー堺が主役として一本立ちしました。

フランキー堺の相手役はほとんど倍賞千恵子で、『男はつらいよ』のさくらとは違い、フランキー堺との掛け合いでコミカルなシーンを演じています。

喜劇誘惑旅行

『喜劇誘惑旅行』では、クイズ番組でフィリッピン(劇中ママ)旅行に当選した妻(倍賞千恵子)と、フィリッピン航空の招待でフィリピン入りした夫(フランキー堺)が、現地で繰り広げるドタバタ劇ですが、武智豊子は、現地のお伽の相手嬢として出演しています。

喜劇誘惑旅行

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こうしてみると、数多くの作品に出演しているだけあって、松林宗恵、山田洋次、瀬川昌治という、邦画喜劇に名を残した監督たちの作品に出演していることが確認できました。

ネットの、映画や俳優を振り返る投稿でもバイプレーヤーは思い出される機会は少なく、とくに喜劇を中心に活躍した人は軽視されがちですが、ぜひ昨日命日の石原裕次郎だけでなく、武智豊子も忘れないでほしいとおもいます。

社長外遊記 [レンタル落ち]
社長外遊記 [レンタル落ち]

馬鹿が戦車(タンク)でやって来る
馬鹿が戦車(タンク)でやって来る

運が良けりゃ [レンタル落ち]
運が良けりゃ [レンタル落ち]

喜劇 誘惑旅行 [レンタル落ち]
喜劇 誘惑旅行 [レンタル落ち]
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ナベちはる

バイプレーヤーの存在がなければ成立しない映画、現代でもたくさんありますが過去においてもそれは同じですね。
by ナベちはる (2018-07-19 00:47) 

うつ夫

脇役も主役も大切です。どんな小さな歯車でも、欠ければその機械は動かなくなります。

by うつ夫 (2018-07-19 01:06) 

末尾ルコ(アルベール)

武智豊子、女エノケンと言われたしゃがれ声のバイプレーヤー・・・今夜もまた素晴らしい作品をご紹介くださり、本当に感謝、感謝でございます。しかもわたし、武智豊子というお名前も存じませんでした。出演作は少なからず観ておるはずなのですが。

>、「東京六大学に『武智豊子親衛隊』ができたほど」

へえ~、これは凄いですね。本当に芸能史もいろいろ調べてみたくなります。現在の大学生のレベルの違いも感じますね。今はもう、アイドルばかりですから。しかもグループアイドル。「もうちょっと、ましなことやれ!」ですよね。

>「美人を期待したのにがっかり」というのがお約束

こういうお約束も、力のある女優が演じているからおもしろいんですよね。しかも短い時間しか出てこないという贅沢さ。ただ、こういうギャグを今だと「女性差別」と主張する人たちもいるでしょうね。しかし喜劇にはどうしてもある程度以上のブラックユーモアや毒が必要で、わたしはこのようなギャグは愉しく観られます。ただ今後はギャグを作る側は、より社会性を考慮に入れなければならない時代にはなると思います。

『馬鹿が戦車でやって来る』も『運が良けりゃ』もわたしはまだ観てないという・・・自分を恥じて、滝にでも打たれたい気分になってきます(笑)。しかも岩下志麻や倍賞千恵子が出演していますね。本当に邦画だけでも、汲めども尽きぬ豊饒な作品群がありますね。まったく、映画をぜんぜん観ない人たちって、どうなんだろうと思います。

棚橋本なのですが、その内容はかなりの部分、今まで棚橋がメディアで言ってきたことなので、ゴーストライターが書こうと思えば簡単に書けると思います。なにせ字が大きく、時数も少ない本ですし(笑)。ただ、「ビジネスパーソン向け」という文脈での出版が、従来のプロレスラーにはあまりなかったかと思います。しかし思えば、もし猪木がビジネスパーソン向けの書籍を発行し、それがベストセラーになったとしたら、読者の多くが路頭に迷うことになったのかもしれないと想像すると、いささか感無量(笑)です。しかし猪木のビジネス本、おもしろそうな気がします。今からでも出してくれたら、ネタとしては最高のような気が(笑)。
棚橋の言う、「社長秘書」のファッションなどはいいですが、「皆の靴を揃える女」とか「お酌をする女」とかになると、わたしの感覚とは大きく異なってきます。そういう意味での「気が利く」でなく、もっと大きく人間的に「気が利く」人がいいですね。正直なところ、「皆の靴を揃える女はいいね~」なんて言う御仁には、「その前に、自分で揃えろ!」とアドバイス(笑)したくなります。

『テーミス』って、今も出てるようですね。それにしても、失礼な言い方の編集局長がいたものです。「ものの言い方」が分かってらっしゃらないようで。でも各業界の「上の方」の人たちは、いまだそんな人が多いですよね。わたしの中で「文章が下手」というと、すぐに「学者さんの文章」が頭に浮かびます。学会内の論文であれば、「ご勝手に」ですが、学者の書いた一般向けの新書本とか、(いったい誰に向けて書いてるんだ!)と憤り(笑)さえ感じるくらい下手な文章が多いです。

萩本欽一は、わたしがいつごろからはっきり認識したか、まだチェックしてないのです。しかし『スター誕生』はわたしも観ておりました。前にも書きましたが、一番印象に残っているのが、エロなピンクレディーという有様です(笑)。『欽どん』とか『欽どこ』とか、いろいろあったので、どの番組を自分が観ていたかも調べてみようと思っております。『欽どん』の放送をどれだけ観ていたかも記憶が曖昧ですが、『欽どん』のギャグを集めた文庫サイズくらいの本を愛読しておりました。
「いい人」のイメージが定着すると、芸能人としてはキツくなってくる場合が多いでしょうね。この前の京塚昌子のお話もそうした例の一つだと思いますが、特にお笑いには毒が必要で、毒抜きで続けるのは極めて困難であると容易に想像ができます。しかし考えてみれば、全盛期の欽ちゃんを知らないことは、全盛期の馬場・猪木を知らないようなものなので、わたしとしては今後の課題としてできるだけ観るようにしたいと思います。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2018-07-19 01:39) 

pn

女エノケンは聞いた事あるんですが誰だかは知りませんでした(^_^;)
by pn (2018-07-19 06:18) 

ヤマカゼ

武智豊子さん、はじめてしりました。昔の映画はたのしそうですね。
by ヤマカゼ (2018-07-19 06:32) 

kiki

武智豊子さん、覚えています。
元気のいい、しゃがれた声の女性でした。
by kiki (2018-07-19 06:40) 

チャー

運が良けりや 藤田まことさんみーつけた!
by チャー (2018-07-19 06:49) 

なかちゃん

残念ながらお名前さえも存じ上げない方ですが、いろんな映画にご出演されたんですね。
しゃがれた声というのを聞いてみたいです(^^;

by なかちゃん (2018-07-19 08:50) 

セイミー

エノケンと言えば武智豊子さんを思い出します
わたしも 歳 ですね
by セイミー (2018-07-19 12:52) 

ヨッシーパパ

若い頃の岩下志麻さん、大好きでした。
「離れ瞽女おりん」だったかな?映画館に見に行きました。
by ヨッシーパパ (2018-07-19 19:23) 

わたし

なぜか武智豊子さんの名前は鮮明に覚えていますが、どんな方だったか顔が思い出せません。でも昔のあらゆる映画に出演されていたと思います。たぶんお亡くなりになっていると思いますが、そのことすら知りませんでした。
by わたし (2018-07-22 11:57) 

Mae

Niⅽely boys,? Mommy lɑstⅼy mentiߋned after theyd give you a
number of foolish concеⲣts of what God Ԁid for
fun, ?What God really likes is when people love
one another and caгe for one another like we do in our family.?
That made sense to Lee and Larry so Lee hugged Mommy and Larry hugged daddy to ϳuѕt make God happy.
by Mae (2018-08-02 06:26) 

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