『波の数だけ抱きしめて』(1992年、小学館・フジテレビ/東宝)を観ました。「ホイチョイ三部作シリーズ」といわれた、ホイチョイ・プロダクションズ原作の映画化作品の三作目にあたるものです。すでに多くの方がご覧になっていると思いますが、先日久しぶりにDVD鑑賞しました。(画像は『波の数だけ抱きしめて』より)
大学4年生の小杉(織田裕二)、芹沢(阪田マサノブ)、裕子(松下由樹)、真理子(中山美穂)は、真理子のバイト先である湘南のサーフショップを拠点に、ミニFM局Kiwiを運営。放送エリアを湘南一帯に広げたいという希望を持っていました。
小杉(織田裕二)と真理子(中山美穂)は、お互いを思う気持ちがあるのですが、「好き」といいません。
とくに、小杉(織田裕二)は、高校時代に告白して「今は付き合えない」と断られたので、告白には慎重です。
真理子(中山美穂)は、アメリカ在住の両親から航空券を送りつけられており、小杉(織田裕二)に「行くな」と言ってほしいと思っています。
ある日、湘南に遊びに来た大手広告代理店社員・吉岡(別所哲也)は、真理子(中山美穂)に一目惚れ。
真理子(中山美穂)もはっきり断らないため、吉岡(別所哲也)もFM局中継局づくりに仲間入りしします。
吉岡(別所哲也)は、自社イベント企画ににFM放送局の設立を提案。
会社のゴーサインが正式にないままいまま金をつぎ込んで、中継局は葉山まで伸びます。
そしていよいよスポンサーが試験放送を聞きにくるという前の晩、小杉(織田裕二)は真理子(中山美穂)に打ち明けようとしますが、真理子(中山美穂)は吉岡(別所哲也)と約束をしていました。
それでいて、真理子(中山美穂)は吉岡(別所哲也)が好きなわけではなく、小杉(織田裕二)を刺激するためにそう振る舞っていたと告白し、吉岡(別所哲也)をがっかりさせます。
失恋したと思った小杉(織田裕二)は、裕子(松下由樹)を話し相手に付きあわせますが、実は裕子(松下由樹)も小杉(織田裕二)が好きで、真理子(中山美穂)はそれを知っていたから、高校時代に「今は付き合えない」と答えたのです。
真理子(中山美穂)は吉岡(別所哲也)に気持ちが移ったと誤解した小杉(織田裕二)は、裕子(松下由樹)の気持ちを知り、サーフショップで裕子(松下由樹)と……
そのとき、真理子(中山美穂)はサーフショップに戻ってきました。
そのあとは織田裕二のクサイ芝居がクライマックスにあり、真理子(中山美穂)と小杉(織田裕二)は結局結ばれず、青春のほろ苦い思い出だったのだ、というラストです。
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青春の蹉跌
好きなのに好きと言わない。
そして恋の鞘当て……
公開は1992年ですが、まだまだ昭和の薫りがする映画です。
本作の序列は、織田裕二ではなく中山美穂がトップになるのでしょうが、考えてみると、この人の演じる真理子とは、周囲を引っ張り回したり傷つけたりするトンデモない役なんですよね。
小杉(織田裕二)との関係をはっきりさせないことで、小杉だけでなく、小杉を想う裕子(松下由樹)まで傷つけ、吉岡(別所哲也)のことは、小杉を刺激する当て馬に利用して、でも吉岡は可能性を信じて彼女にのめり込み、会社の金を1千万も注ぎ込んでFM放送開局につきあい、にもかかわらず開局まで責任持たないで彼女はアメリカに行ってしまうのです。
そもそも大学まで入った“ほぼ大人”が、親に呼ばれて海外転居について行くというのも解せません。
自分では何もしなくて、でも狡猾な女性なんです。
FM放送局開設の夢が表向きのテーマですが、そういう嫌な女を好きになってしまった、根は善人の2人の恋の鞘当てと破綻を描いた物語、というふうに観ました。
ネットのレビューは、賛否のうち否の方が多いようですね。
でも私は、なぜかこの映画が好きです。何度も観直しています。
男の側からすると、いや、男女関係なく、青春時代というのは、そういう思い出が、ひとつやふたつあるんじゃないでしょうか。
今だったら、その人格を見透かして相手にしないような異性を、なぜか好きになり、そしていったん好きになると夢中になった自分を止められない。
若気の至り、青春の蹉跌……
レビューで“なつかしい”という人々は少なくないのですが、そんな意味も込めているのかもししれません。
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